中屋万年筆のオーダーの仕方

中屋万年筆のオーダーの仕方
中屋万年筆のオーダーの仕方

手作りオーダーの「中屋万年筆」のホームページを見ながら、無数にある組み合わせの中から自分好みの組み合わせを考えたり、試作品や特注で作られた過去の作品を見て自分ならどうするかなどと考えるのは本当に楽しい時間です。
時にはお客様からのご注文で、仕事としてそれができることは本当に恵まれていると思います。

先日、お客様からの依頼で、お持ちの濃紺のズボンのベルト(オーダー品)の色を、中屋の漆で再現してボディカラーにするということをしました。

出来上がってきた黒と見紛うばかり(光に照らしたり、黒と比べると分かるくらいの)の濃紺の中屋は、極太軸という、ホームページにはあまり表面的に出ていない直径17mmのボディで、迫力のある仕上がりとなりました。

極太軸は、碧溜め色のものを店でも作ってみました。
中屋万年筆の母体となっているプラチナが得意とする細字をその万年筆には装着しています。
いつも店でオーダーする黄金のコンビネーションとしては、濃茶のブライヤーにシルバーの金具を合わせるというもので、豊かで柔らかい木の手触りを持っていながら、凛とした締まった感じのものになります。

中屋万年筆の注文は、難しいと言われることが多く、その無限の組み合わせがお客様からすると難しく感じられるのだと思います。
中屋万年筆をオーダーをするにあたって、これだけの情報があれば作ることができる、というものを以下に挙げておきます。

(1)ボディのデザインあるいは素材を選ぶ⇒中屋HPサイト
(2)色を選ぶ:漆 11色・ブライヤー 2色・セルロイド 3柄 *あるいは特注色
(3)ペン先のサイズを選ぶ

カタログモデルとは違い、多くのバリエーションがありますのでお好きなサイズを選ぶことができます。

(4)ペン先の色(デザイン)選ぶ
金色そのままか、ピンクゴールド、ロジウム、ルテニウムあるいは金とロジウムの染め分けか、ボディの色、雰囲気を合わせて選ぶことができます。

(5)金具の色を選ぶ
クリップのついているものならクリップの色を選ぶことができます。リングもついていればリングの色も合わせましょう。

(6)オプションをどうするか
漆塗りのモデルでしたら、グリップに象嵌を埋め込むことが可能です。
その他小物もお選びいただけます。

(7)書き方(癖)を指定する
筆記角度(紙面とペンの角度)
ペン先の向き 親指側にひねるか、小指側にひねるか 真直ぐか
筆圧の強さ(弱い、普通、強い)
運筆の速さ(早い、普通、遅い)
書く文字の大きさ(大きい、普通、小さい)

非常に多くの選択肢があり、難しく、悩み多いものですが、考える楽しみ、悩む楽しみがあるものだと思います。

中屋万年筆は、最も日本的で美しいデザインを持った万年筆で、多くの人に使っていただきたいと思っています。筆記角度など、ご自分での判断が難しい場合は、当店でもご相談に乗りながら決めていただけます。
ぜひ中屋万年筆のオーダーにチャレンジして下さい。

*画像手前が碧溜塗りの極太軸の中屋万年筆です。

⇒Pen and message.オリジナル長寸用万年筆ケース

オリジナル長寸用万年筆ケース完成

オリジナル長寸用万年筆ケース完成
オリジナル長寸用万年筆ケース完成

ペンケースのサイズについて考えに考え続けてきました。
いろんな種類の万年筆に対応して、それらをスマートに収めることができるものができないだろうか。
M800、モンブラン146などのレギュラーサイズの万年筆はペンケースに納まって当然で、逆にこれらの万年筆が入らないとそのペンケースは万年筆用と言えない所があります。
そしてモンブラン149が入るとかなり説得力がありますが、サイズを149に合わせるとほとんどの万年筆が中でカタカタと遊んでしまうほど大きくなってしまいます。
149はペリカンM1000などとともにオーバーサイズというカテゴリーになりますので、これらが入らなくても仕方ない、ということになります。

そういえばパイロットカスタム743は、手の小さな日本人に合ったサイズのボディにオーバーサイズ並みの大きなペン先ついた万年筆で、メーカーからのアナウンスはありませんが、その辺りが開発思想としてあるのかもしれません。
話が少し横道に反れましたが、オーバーサイズやそれ以上の大きさの、例えば中屋万年筆ロングや工房楔のクローズドエンドなどを入れるペンケースに困っている方も多いと思い、当店オリジナル 長寸用万年筆ケースを発売しました。

中に入れる万年筆として一番イメージしたのは、中屋万年筆のロングサイズです。
キャップを尻軸につけなくても書きやすいサイズを保つ、この特長ある長寸万年筆を格好良く収めるための万年筆ケースの必要性を感じていました。
オーバーサイズの万年筆は、大太刀のような存在で、それ1本だけで持っていてもいいのではないか。
そういったものとして万年筆を捉えた場合、ある程度和の雰囲気を持ったものがいいのではないか。

当店の小器用なスタッフKが、自分のシガーロング黒溜めを収めるために自作していた簡単なペン入れの形をそのまま採用した、シンプルで和の雰囲気を持った万年筆ケースです。
表にはしなやかさと耐久性を持つ黒桟革を使っています。
黒桟革は非常に柔らかい、国産黒毛和牛の革にシボ加工して、シボの出っ張った部分に漆を塗るという加工が施されています。
この万年筆ケースに実用的にも質感もピッタリの素材だと思っています。

内側は柔らかさと粘りをもったソフトカーフを使っていますので、中の万年筆を保護するとともに、万年筆が滑り落ちてしまうことを防止してくれます。
シンプルな形だからこそ素材の持ち味が生きてくる。
当店オリジナル長寸万年筆ケースは黒桟革の持ち味が生きたものだと思っています。

夏服の万年筆

夏服の万年筆
夏服の万年筆

冬に選んだ手帳が、自分にとって最も合ったもので、これから生涯これを使い続けたいと思っても、季節が変わると急に違うものに変えたくなったりしたことはないでしょうか?

私はよくそういうことがありますし、それは万年筆にも言えることだと思っています。
心境の変化というか、用途の変化は季節と関係があって、服装が変わることにも関係があると思っています。
服装が変わるとポケットの数も変わるし、鞄も変わるかもしれない。
携帯の仕方が変わるとどうしても使い方が変わってしまいますので、季節に関係なく一生使い続けられるものというのは本当に少ない、あるいは存在しないのかもしれません。

季節は巡って、今年もまた暑い夏が来ます。

私は今までがんばって、長袖のシャツを着るように心掛けてきましたが、さすがに記録的な猛暑だった昨夏は諦めて、半袖のポロシャツなどで仕事をしていました。
今年もきっと暑い夏になると思いますので、夏向きの万年筆について考えてみたいと思います。

最初から夏服のための万年筆だと決めていると、毎年夏に登場して使わなくなるということは起こらないと思います。
私が考える夏向きの万年筆は、マーレリグリやマリーナピッコラなどのように、色が夏らしいとかそういう意味ではなく、半袖のシャツのポケットに差してもかさばらず、重さを感じにくい、という意味になります。

やはり万年筆はポケットに差していると、使用頻度も高くなるし、何か書きたいと思った時にすぐに書くことができます。
そのために胸にポケットがついたシャツが必要になり、今年は胸ポケットのついた半袖のシャツも欲しいと思っています。
スーツのポケットなら多少大きくて、重いものでもいいですが、シャツのポケットに差す万年筆は小さくて軽いものがベストで、筆頭はやはりペリカンM300だと思います。

とても小さな万年筆で11gという軽さ。もしかしたら、万年筆最軽量かもしれません。
小さなボディなのにカートリッジ1本分近くの容量のある吸入式です。
このサイズでよくぞここまでペリカンらしさにこだわってくれたと思います。
小さなペン先なのに、非常に柔らかい書き味を持っているのもこの万年筆の特徴です。
このサイズの万年筆で、長時間何か書きものをし続けるということはあまりイメージできませんし、この万年筆の意図するところではないと思います。

ポケットからちょっと出して、手帳やメモ帳にサッと書いて、またポケットに戻すということを繰り返すのがポケット用万年筆なので、M800のようにハードなものよりも、一瞬の筆記が柔らかく、気持ちよく書けることをペリカンは選んだのかもしれません。

また、柔らかいペン先は軽く書くと細かい文字が書けて、力を入れると太目のインパクトのある文字を書くことができますので、そういった使い方もイメージしたのかもしれません。
ポケット用万年筆は立ったままで筆記することが多く、立ったままの筆記では筆記角度、ペン先の向きなどが定まりません。
そういった時に柔らかいペン先の方が、ペン先のひねりなどについてきてくれますので、そういった意味でも、このペン先は辻褄が合っています。

M300は今では少なくなってしまった、紳士の小物という趣を感じます。

本格的な、プロにも愛用されるタフな万年筆にして、ペリカンを代表する万年筆M800をそのままスケールダウンしたところに、ペリカンのユーモアを感じますし、ポケット用、手帳用のペンだからといって、簡略化のないところにペリカンのこだわりを感じます。

夏用万年筆ペリカンM300、胸ポケットのある半袖のシャツとともに夏に向けて用意したいと思いませんか?

*画像手前がM300、奥がM800です。

⇒Pelikan M300