エラボーの復活

エラボーの復活
エラボーの復活

廃番になっていたパイロットエラボーが昨年復刻されました。
ナミキファルコンとして、輸出用としては作り続けられていましたので、国内向けにリニューアルして復活させたというのが正しいのかもしれません。

最近の万年筆は全てペン先が硬くなってきていましたので、今なぜエラボーが復活したのかを考えると非常に興味深いと思います。
エラボーの特長は非常に柔らかいペン先にあります。
書くことを趣味的に楽しむ人に向いていて、そういった柔らかい書き味に喜びを見出す人たちのための万年筆と言えます。
逆に、万年筆で長文を書き続けたりするような使い方には、あまり向かないかもしれません。

エラボーのペン先の柔らかさの理由は、独特の形にあり、段差の部分がサスペンションのような役割をしています。
そのサスペンションの働きでペン先が上下に動きますので、ペン先があまり開かず、滑らかな書き味も持っています。

ペン先が硬い、柔らかいは好みの問題であって、それほど重要な問題ではないのかもしれませんが、おもしろいのはそのペン先の仕様から、顧客設定がはっきりと分かるところです。

設計の古いパイロットの万年筆の多くは、大容量で使いやすいコンバーター70を使うことができません。
旧型エラボーもコンバーター70を使うことができませんでしたが、新しいエラボーはボディが大きくなり、金属製になって内径が大きくなっていますので、大きなコンバーター70を使うことができます。
これはちょっとしたことと思われるかもしれませんが、パイロットの万年筆を知る人にとって大変歓迎されるところで、これもターゲットとする顧客の声に反応した結果だと思っています。

エラボーと同時期に発売された同じパイロットのヘリテイジ91は、今までカスタム74という金色の金具しか持たなかったパイロットの金ペン先入門用、あるいは実務用万年筆の新製品ですが、金具を銀色にし、ボディカラーを渋めですがカラフルなものにして、万年筆を使う人としては比較的若い30代くらいの人をターゲットとしていることが分かります。

このヘリテイジ91は、今までのパイロットらしくペン先を硬めに調整してありますので、エラボーと対比して考えると使う人の設定の違いがよく分かります。
もう少し掘り下げて考えると、メーカーは今まで、ボールペン慣れしているユーザーのために、ボールペンと同じように万年筆を使えるような改良を優先してきたように思います。そのために本来の柔らかい書き味が失われているにも関わらず、それが万年筆というものだと認識されるようになってきました。それを根底から本来の認識へ戻していこうとしているのかもしれません。
また、柔らかいペン先を求めてビンテージへと流れて行っている万年筆愛好家を引き戻したいという意図が表れているのが、エラボーの復活なのかもしれません。

⇒パイロット ERABO(エラボー)