Cigarのある生活 オマスのローカル色

Cigarのある生活 オマスのローカル色
Cigarのある生活 オマスのローカル色

当店5周年を記念したオリジナル万年筆“Cigar”を手に入れて1ヶ月近くが経ちましたが、毎日嬉しく使っています。

スターリングシルバーに金張りの金キャップにこだわったため、キャップの重い万年筆になりました。
どうしてもキャップをつけて書きたいと思っている私は、握る場所を色々試行錯誤の末に、首軸のグレカパターン(ラーメン模様)上辺りを握ると良いことが分かりました。

こんな表現をしていいのか分かりませんが、乗りこなすのに時間がかかる車を乗りこなせたような喜びを万年筆で味わいました。

万年筆は自動車とともにそのお国柄をよく表している製品のひとつだと思っています。そしてイタリア製の万年筆は、さらに地域性も現れていると思います。

例えばアウロラのあるイタリア北部の古都トリノは、イタリア最大の工業都市で、フィアットなど世界に名立たるイタリア企業が軒を連ねています。
アウロラの万年筆作りはイタリア製らしい美的感覚に優れたものになっていますが、インテリジェンス漂う抑えた感覚を持ったものに仕上がっていると思っていて、そこにスイス国境に近いトリノという街らしさ、半分イタリアらしく、半分スイスやドイツの物作りに似た部分が出ている。

それに対して南部ナポリにある、私が最もビジネスの上手い会社だと思っているデルタは一目で伝わる美しい色合いと形を持っています。
北部の万年筆メーカー、アウロラ、モンテグラッパにない明るさがそこにみとめられます。
大陸内にあるトリノほどではないけれど、イタリア半島の北部に位置するボローニヤにあるオマスも、北イタリアらしい物作りをしていますが、アウロラのそれとは少し感じが違います。

抑えの利いたわずかな装飾に独自の機能やこだわりを盛り込んだオマスの万年筆は、中央政府から独立した考えで独自の発展を遂げた工業都市ボローニヤの街の感じやイタリア人の機能へのマニアックなこだわりを感じ取ることができて面白いと思っています。

例えばオマスのトレードマークである12面体のボディは、机の上に置いた時に転がらないというメリットがあります。
六角形や八角形の断面を持つ万年筆は角が手に当たる感じがありますが、12面体では断面が丸のものに近い握り心地です。

角があることで、ペン先の向きが安定するというのもメリットで、角数が多いとその微調整が利きやすい。
製造効率的には、断面は丸の方が作りやすく、角が多くなるほど難しくなると思いますが、この12面体のボディの恩恵は非常に大きくオマスの万年筆の魅力に寄与しています。

クリップも魅力のひとつです。
日本や他の国万年筆でいつも不満に思うのはクリップの機能性です。
クリップの形状がジャケットやシャツの布地を傷めそうですし、その硬さも硬すぎる。
イタリアのメーカーはクリップの形状と硬さが良く、服を傷める心配がない。
オマスの万年筆もクリップ先端にホイールをつけて、ポケットに通すときにそれが回転するようになっていますし、硬さも硬すぎず、柔らかすぎず適度な力でポケットを挟んでくれます。

それらは書く機能においてあまり関係のないことかもしれませんが、万年筆を日常的に使う時に、その日持って出掛けるかどうか決定付ける大切な要因のひとつだと思っています。
夜リラックスした時間を過ごしている時に、旅行で完成した旅ノートとCigarの万年筆を片手にGoogle Earthでボローニヤの街を懐かしく見ることがあります。
市中に世界最古のボローニヤ大学が点在していて学生たちが行き交う、夕方になると大人の男たちがお洒落をして街に出てきて、そこここで楽しそうに立ち話をしている。
そんなボローニヤの街の適度なローカルな感じと、モンブランやペリカンのように世界中で何百万本も万年筆を売っている大規模メーカーとは違う、万年筆の世界において適度にローカルな存在であるオマス、こういうところにも私は味わいを感じます。

⇒限定生産品Pen and message.オリジナル万年筆「Cigar」
*少量ですが在庫ございます。