ブッテーロの革を使ったペントレイとデスクマット

持っている万年筆の書き味を少しでも良くしたいというのは、万年筆を使う人共通の思いだと思います。

だから万年筆をペン先調整に出したり、インクをいろいろ変えてみたり、持ち方を変えてみたりする。

万年筆の書き味、使い勝手は紙でも変わります。

百貨店や店舗にある試筆用の紙は、万年筆の書き味の良さを引き立たせるものが多い。そのため購入後自宅でいつも使う紙に書いてみると、それほどでもなかったという話を聞くことがあります。それは紙で万年筆の使用感が変わる分かりやすい事例です。

当店ではそういうことがないように、日常的に書く機会が多い普通の上質紙を使った試筆紙を置いています。

大量に使うのでお店の試筆紙として作ったものですが、ご要望が多いので販売もしています。書き味が自然でにじみも少ないので、普段使えるものとして当店の売れ筋商品となっています。

その試筆紙がちょうど入って一緒に仕舞っておける、大きめのペントレイを先日発売しました。

当店が使っている、万年筆の試筆の際にペンを並べているトレイと同じもので、5~6本は余裕を持って並べることができます。

万年筆を取り替えながら何か書く時、万年筆を並べて眺めながらお酒を飲む時にも、机の上にそのまま置くよりもペントレイの上に置くとキチンとした感じも安心感もあります。

トレイはウォールナットの指物の枠組みに天板はブッテーロの革が張ってあって、ペンに傷がつかないようになっています。

ブッテーロの革は手触りがとてもスムースで質感も豊かな感じがするし、使ううちにきれいな艶が出るエージングも楽しく、トレイの天板に貼るにはもったいないくらいの贅沢な仕様です。

枠も指物でしっかりと留めてあり、特にトレイの側面には職人さんの丁寧な仕事を見ることができます。

ウォールナットの枠は、家具職人のSMOKEの加藤さんが作ってくれています。

側面に職人さんの誠実な仕事振りが表れると思って感心したのは、新しく作った革のデスクマットでもそうでした。

6mmの厚みのある側面はエッジがキリッと立っていて、しっかりとしたものであることがこの部分を見ても分かります。

幅400mmで、A4サイズの紙を中央に置いても、左右に50mmの余裕があって、書いている時に手に段差を感じることがありません。2枚の革を接着した構造で強度的には充分ですが、さらにステッチを施した堅牢な作りで、引き締まった仕上がりになっています。

デスクマットにもブッテーロ革を使用しています。

スムースで手触りが良く、おまけにタンニンなめしで香りもいいブッテーロ革は、デスクマットにこれ以上ないほど適した素材だと思っています。

万年筆の書き味はペン先だけで成り立っているわけではないことが実感できますが、このデスクマットに紙を1枚だけ置いて書いてみると、ペンの運びを邪魔しない適度な柔らかさが、ペン先を通して手に伝わって極上の書き味を得ることができます。

今まで作ってもらっていたデスクマットもとてもいいもので、他にないコンパクトさから多くの人にお使いいただいているものです。それとはまた違った、魅力のあるデスクマットが仕上がったと思います。

⇒Pen and message. オリジナル ブッテーロ革デスクマット・ステッチ

⇒SMOKE ウオルナット×ブッテーロ革 ペントレイ

万年筆を自然体で使うためのペンレスト兼用万年筆ケース・ダグラスⅡ革~

万年筆の用途はだいたい決まっているという人が多いと思います。だから使い慣れた人ほど購入される字幅は決まっていて、中字を買われる方、細字を買われる方、と思い浮かぶお客様が何人もおられます。

そういう方は3本差しのペンケースに入れる万年筆はどういうふうに決めるのだろう。

私は手帳用、手紙/原稿書き用、ペン習字用という3つの用途がありますので、例えば普段は手帳用1本、手紙/原稿書き用2本の3本セットをペンケースに入れて鞄の中に入れています。ペン習字のある日だけ、そこにペン習字用の3本セットが加わります。

そんなふうに3本で1チームの3本差しペンケースに入ったセットがあればそれを持っていくだけでいいので、便利に使っています。

万年筆を道具と考えた時に、3本というのは必要を満たすいい本数なのかもしれません。そう考えると、3本差しのペンケースはスタンダードと言えるのではないだろうか。

当店の定番商品「ペンレスト兼用万年筆ケース」を新しいダグラス革でカンダミサコさんに作っていただきました。

以前使っていたダグラスは、最初から艶があって、少し使い込むとさらに激しい艶が出る革でした。人気もあったので、この革を使って色々な商品を作りましたが、数年前に廃番になってしまった。

それが今回「ダグラスⅡ」を入手しましたとカンダさんから連絡があったので、早速3本差しを作っていただきました。新しいダグラス革は、艶を抑えた、豊富なオイル分を感じさせる革で、じっくり使い込んで育てながら艶を出していく趣があります。

新しいダグラス革もプルアップレザーなので、ペンを入れると膨らんだ部分の色が変わります。

タンナーは同じダグラス革として発売していますが、かなり違う風合いの革なので、当店ではダグラスⅡといって区別しています。

3本差しのペンレスト兼用万年筆ケースは、万年筆を日常の道具、普段の仕事の道具として使っている人のために、万年筆を自然体で使えるペンケースとして企画しました。

持ち運ぶ時にペンが落下しないようにフタを被せて脱落を防ぐことができて、机上で使う時にはフタをペンの枕のように後ろにまわすと、いちいちフタをあけてペンを取り出さなくてもサッとペンを取り出して使うことができます。

万年筆を使われている方は意外とせっかちな人が多くて、ペンを取り出すスピードとか書き始めるまでの早さを気にする人は多いのかもしれません。

そういう意味でも万年筆を普段使っている人の実情に合ったペンケースだと思っています。

意外と太めのペンも収めることができて、はじめはかなりきつめですが、モンブラン149などのオーバーサイズのペンも入れているうちに革が伸びてくれて、スムーズに出し入れできるようになります。

万年筆を、構えずに日常の筆記具として自然体で使って欲しい、という思いで長く作り続けている、当店定番のペンケースが久しぶりに入荷しました。

⇒Pen and message.オリジナルペンレスト兼用万年筆ケース・ダグラスⅡ

綴り屋 漆黒の森

開業当初から店として生き残るということだけを考えてやってきました。当店が生き残るためにはどうすればいいのか。この店にしかない特長を作っていきたいと思って、当店なりに様々な試みをしてきました。

しかし、行き着いた答えは自分たちでできることをまず磨いて、あとはプラスアルファで考えるということでした。

自分たちでできること、特長はペン先調整です。

当店は万年筆店で、ペン先調整をして販売することを特長としていることは創業当時から変わっていません。このやり方で15年やってきていますので当たり前になっているけれど、他にあまりないサービスなので特長だと思っていい。結局それが当店に求められていることなのだと思っています。

それをしっかり認識して、もっと調整に磨きをかけて鋭く尖らせたい。

齢相応の年数、日々調整しながら、考えたり、たくさんの場数を踏んで経験を積むことでいろんな気付きがありました。以前から比べると、ペン先調整の腕は上がっていると思っています。

ペン先調整は、手の技術というよりも気付きによって進歩していくものだと思うので、今までのことが蓄積されていれば、年数を重ねるだけ調整士は上手くなっていきます。もっと色々なことに気付いて、いい調整ができるようになりたい。

昨年から扱い始めた綴り屋さんのペンは、当店のペン先調整を生かすことができる相性がいいものだと思っています。綴り屋さんは、木やアクリルレジン、エボナイトなど様々な素材を使って、作品と言えるペンを作られています。

定番はスチールペン先ですが、当店では金ペン先を装着できる仕様にしていただきました。

今回は、綴り屋さんのエボナイトを中心にしたシリーズ「漆黒の森」が入荷しました。ブラックエボナイトに木やアクリルレジンなどのアクセントあしらったシリーズで、抑えの利いた大人のセンスによって作られた万年筆です。

少し太めの握りで、キャップを尻軸に差して書くこともできるので、長めに持つ人でも書きやすい。バランスもかなり考えられていて、万年筆らしい万年筆だと思っています。

アクセントがレジンやエボナイトのものはレギュラーサイズのペン先、花梨やメイプルなど木製のものはオーバーサイズのペン先が選べるようになっています。

意外かもしれませんが、レギュラーサイズの方は柔らかめの書き味で、オーバーサイズの方がより粘りがある弾力が適度に強めの書き味になりますので、お好みに合わせてお選び下さい。

今回入荷の「漆黒の森」も当店オリジナル仕様で、キャップに素材違いのリングを付けた仕様になっています。

メーカーの定番品もいいですが、この万年筆のように作家さんが趣向を凝らしたものも、色々な良さが組み合わさって、1×1が何倍の魅力になっていくようなものも扱っていきたいと思っています。

⇒綴り屋・漆黒の森TOP

手帳用のおすすめ万年筆

20代の時に、ToDoや調べたことなどを書き込んで手帳が充実していくと、何だか気分が楽しくなることに気付きました。そして翌日書いたことを実行していくと仕事が楽しくなった。

もし仕事を始めたばかりの若い人に言えることがあるとしたら、手帳にキチンと今日学んだことと、明日やるべきことを書くようにされてみたらということです。手帳を充実させるとその紙面を眺めているだけで嬉しくなり、それが実行できてToDoが消えていくのは嬉しいもので、それは30年経った今も変わりません。

今の時代は、私が若い頃ほどのどかでおおらかではないかもしれませんし、私が勤めていたのが店舗だったからかもしれません。

職場によっていろんな事情があると思いますが、指示されるより自分で積極的に仕事を見つけてやるということが、仕事を楽しくするコツだと思います。

会社はチームなのでオーダー通りの仕事をするチームプレイも必要ですが、その中に自分の意思による仕事も差し込んでいく。労力を惜しまず自分の前向きな意思で仕事をしていくと、それはできます、それはできませんがこうならできるということがはっきりしてきますので、それを上司に伝える。それが信頼になっていき、チームの中で地位が確立されていきます。そうなると自分が得意な仕事が集まってくる。そしてより信頼される。自分の仕事においてのブランド作りに役立つことだと思います。

そんな簡単なことではないのかもしれませんが、おじさんから言えることはそれくらいです。

今は正方形のオリジナルダイアリーを使っていますが、若い頃は普通の手帳をズボンのお尻のポケットに突っ込んで使っていました。

最初はボールペンで書いていましたが、万年筆で書くと少しきれいに見えたので万年筆にハマりました。

私の万年筆と仕事の歴史は手帳に書くことから始まったと言えます。

当時万年筆クリニックはそれほど混んでいなかったので、隙間の時間に太字で使い方の分からなかった万年筆を「もったいないのう」と言われながら細字に研いでいただいて、使い方を教えていただいたインキ止め式のものが私の最初の手帳用の万年筆でした。

手帳と国産細字の万年筆は相性が良いですし、手帳用にお勧めしたい万年筆をいくつかご紹介したいと思います。

まずは廃番が決定してしまいましたが、パイロットデラックス漆です。

細身で出っ張りのない軸と可動式のクリップは、システム手帳などのペンホルダーでも出し入れしやすい。すぐに書き始められる勘合式のキャップも手帳用を考えた時には大切な要件で、全ての機能が手帳に向いています。

価格も金ペン先万年筆の中では最も安い部類で、惜しげもなくハードに使えるのものだと思います。

最近M5手帳を使う人も多く、そのペンホルダーにきれいに収めようとするとどうしても長さの制約が出てきます。そんな中パイロットエリート95Sなどはコンパクトなサイズなので、M5手帳のペンホルダーにピッタリ収まります。

エリート95Sは、これ1本で手帳から手紙まで、仕事の全てに使われていた時代の万年筆の復刻です。たしかにペン先も柔らかく、筆圧を抜いて細く書く、ところどころ筆圧を掛けながらメリハリのある文字を書くことも可能で、幅広い用途でお使いいただけるものだと思います。

セーラーから新しく発売された手帳用万年筆ランコルトは、カンダミサコM5手帳用ペンホルダーにピッタリと収まりますので、M5手帳ユーザーに特にお勧めします。

軸は新しい技術が導入されて製作可能になったマーブル軸で、女性の方にも好まれるものになっています。

ペン先は14金とセーラーにしては硬めのもので、中細のみの設定ですが、ほど良い温かみのある細い字が書けると思いました。

サイズ、機能ともに手帳用に向いたものを手帳用万年筆としていくつかあげさせていただきました。

手帳を万年筆でキチンと書くと、仕事や生活に張り合いができて、人生が良い方向に向かうものだと信じています。

⇒パイロット デラックス漆(廃番)

⇒パイロット エリート95S

⇒セーラー ランコルト