野趣好み ~コンチネンタルペンレスト兼用万年筆ケース、サマーオイルメモノート~

野趣好み ~コンチネンタルペンレスト兼用万年筆ケース、サマーオイルメモノート~
野趣好み ~コンチネンタルペンレスト兼用万年筆ケース、サマーオイルメモノート~

革の好みのタイプを乱暴に2つに分けると、素材感そのままの光を吸収するような抑えた光沢の革を好む人と、クロムなめしで作り込んだ個体差の少ない、整ったエレガントな感じの革を好む人がいると思っています。

それがその人の外見では判断つかない内面を物語っているかどうかはわからないけれど、ワイルドな印象だから素材感溢れる革を好むかというと、そうではないことも多いので面白い。
これは私が勝手に思っている根拠のないことなので、あまり真に受けて欲しくありませんが。

自分の話で恐縮ですが、私はずっと一貫して素材感のある方を好んできました。
野趣という表現が合うほどの、手をかけていない、あるいは手をかけていないように見せているものが好みで、それが表れている商品が2つできあがりましたのでご紹介します。

「コンチネンタルペンレスト兼用万年筆ケース」は、当店オリジナルの3本差しペンケースで、もう4年近くも色を変えたりして販売しています。
最もこの形に合っていると思われるシュランケンカーフでずっと作り続けてきましたが、オリジナルコンチネンタルシステム手帳と合わせて使えるようにしたいと思って、システム手帳と同じ革ダグラスで仕立ててもらいました。

カーフでも何でもない成牛の革ですが、革の素材感が出るように工夫が凝らされていた革で、こしらえなど太すぎるペンを無理やり入れて酷使した私のこのペンケースはとても良い味が出ています。
扱いにとても気を使ったり、常に手入れしておかないといけない革はあまり好みではない。たまに気が向いた時にブラシをかけたりした時に艶が出てくれるところが気に入っています。
私が最も理想的だと思っている革は、ライティングラボのメモノートで使っているサマーオイル革で、これは艶やかで生命力に溢れ、手触りも良く、色も完璧な私の理想を見事に表した革だと思っています。

サマーオイルメモノートはしばらく品切れしていたけれど、先月この革の問屋さんである四天王寺のハシモト産業さんを訪ねて仕入れてきましたので、また作ることができました。
底に原厚のままコバ処理した厚みのある革を、表には薄く漉いた革でメモ紙を挟み、靴ヒモで綴じただけのシンプルな仕様ですが、このシンプルさもまた、ライティングラボという山科のインディアンジュエリーショップリバーメールさんとの共同ブランドではあるけれど、私のモノの理想を具現化したものです。
一時期、他に代わる革を探してみたことがあるけれど、やはりこのメモ帳にはサマーオイル革しかないと確信しました。
このシンプルな仕様のメモ帳にたくさんの紙が挟んである安心感と存在感は、なかなか理解されないけれど、道具として機能も気持ちも満たしてくれるものだと思っています。
今回底革と同じサマーオイルを薄く漉いて表紙も作りました。
使っていくうちに自然に艶が出てきますし、傷が気になったらブラシを掛けていただくと目立たなくなるのはブッテーロ革などと同じです。

茶道のお稽古で、季節の良い時に先生がたまに野点風の設えで丹波などの土モノのお道具を合わせたりして、それに共感します。
焼物は京焼などの繊細で薄作りの都会的なものよりも、信楽や備前のような厚みがあって、野趣味のある田舎っぽいものが好みだと気付きました。
ものの好みは結構はっきりと分かれるものだと、今まで仕事してきて痛感しています。
両方の好みの人に好まれる店でありたいとは思っていますが、モノを作る時は思い切って偏った方がいいのではないかと思っています。