ル・ボナーさんと590&Co.さんとのプエブロ革のデブペンケース

先日、590&Co.の谷本さんに誘われてお客様のAさんと閉店後に食事に行きました。

谷本さんに言われて気付いたけれど、前に谷本さんと食事をしたのは1年前でした。お店も近いし、文具イベントでもよく会っていたので気付かなかった。

今年は今までの年と違う色々なことが起こって、私なりに気忙しい時間を過ごしていたし、谷本さんも店を移転させたりして、お互い忙しく過ごしていたと思います。そんな中で、会ってゆっくり話していないことに気付きませんでした。だから先日はAさんも交えて、久しぶりにゆっくり食事をしながら楽しく話すことができました。

夕食は1年振りだけど、ル・ボナーの松本さんと3人では2回ほど昼食を一緒にしています。デブペンケースの別注品プエブロとサドルプルアップレザーを作ってもらうための打ち合わせで、谷本さんとル・ボナーさんのお店がある六甲アイランドを訪れました。

1回目の発注ではその需要を少なく見積もり過ぎていたため、590&Co.さんも当店も1日で完売してしまって、多くのお客様から再販のリクエストをいただきました。

すぐに2回目の注文をお願いしましたが、それはかなり思い切った数の注文になりました。谷本さんの「バブル期のおっさんのような発注をしてしまった」という言葉の通り、ものすごい数で、職人さんや松本さんは大変だったと思います。

かなり人気があって売れるものだとは思いますが、両店の在庫が膨大で、プエブロはまだ在庫があります。でもこれは宝物だと思っています。

11月初めに当店に泥棒が入った時、高価な万年筆とともに、プエブロとサドルプルアップレザーのデブペンケースも盗まれていないか気になって、真っ先に確認しました。

万年筆は20本近く盗まれていたけれど、デブペンケースは盗まれていなかった。

よくよく考えてみると、セコムさんが急行するわずかな時間にカサ張るペンケースを盗むはずがないけれど、真っ先に思い付いた自分が可笑しい。

定番のブッテーロ革も乾いた布やブラシをかけたりして丁寧に扱うと、キラキラしたきれいな艶を出してくれるけれど、オイル分の多いプエブロも手入れすると劇的な艶を出してくれます。

表面をヤスリのようなもので擦ってマットな質感に仕上げられている革なので、余計にその艶の出方に驚く人も多いと思います。

ル・ボナーさんやカンダミサコさんの革製品でよく使われている、同じタンナーバタラッシィのミネルヴァボックスも劇的に変わる革で、艶の塊のようになります。グリージョなどは最初緑みのかかったグレーですが、使い込むうちに焦茶色に変化します。もともとは同じ革であるプエブロも変化しないはずがありません。

万年筆を1本ずつ入れる仕切りのついたル・ボナーさんの絞りペンケースも使うけれど、やはり一番使うのはデブペンケースのような、雑多なペンや文房具をたくさん入れて持ち運ぶことができる大きなペンケースです。

そういう日常的によく使うものを普段作らない特別な革で作ったプエブロのデブペンケースは、多くの人に革の面白さを知ってもらうのにすごくいいものだと思っています。

今回が今年最後のペン語りになります。皆様今年一年も読んでくださり、ありがとうございました。次回の更新は1月7日(金)です。良いお年をお迎えください。

⇒ル・ボナー デブペンケース(ペンケースTOP)

自分だけの名品を探して~ウォールエバーシャープ~

色々なものの好みと同じように、服装もカジュアルで自然体なものが好みです。

基本的にジャケットにデニム、革靴という組み合わせが好きで、それぞれどのブランドがいいという決まったものはないけれど、お店やネットで見つけたものが自分の好みに合っていたらそれでいいと思って、こだわりなく必要な時に買っています。

デニムは、こだわりの強い国産メーカーのものよりも、どこかの服飾ブランドのものの方が自分の感覚には近くて、そういうものの中から選んでいました。でも最近は始めから色落ちしていたり、ダメージ加工をされたものが流行しているようで、好みに合わなくなっていました。

GAPはファストファッションの代表のようなブランドですが、GAPのデニムの中に、日本のカイハラの生地を使った、リジット(未洗い)でスタンダードな型があるのをネットで見つけて履くようになりました。

最初はカチカチのデニムが、履いては洗うを繰り返すうちに、少しずつ縮んで馴染んでいくのが楽しく、生地がいいので数日続けて履いてもヨレヨレになりません。今はそればかり何枚も買って、毎日履けるようにしています。

その仕様が自分の好みに合っているから選びましたが、雑誌やネットの評価を気にせず、自分で見つけ出せたことが嬉しい。

そういう評判になっていない何でもないものの中から、自分にとっての宝物を見つけることを色々なものでできたらと思っています。

もちろん万年筆でもそういうものを見つけて、紹介していきたいと思います。

ウォール・エバーシャープデコバンドは、皆様に見つけて欲しいと、当店で直接輸入して扱っている万年筆です。

モンブラン149とほぼ同じ大きさのオーバーサイズのボディに、大きなペン先を備えた万年筆で、ゴツゴツとした武骨なデザインは、アメリカ製らしさに溢れています。だけど使い始めると、日本の文字と相性がいい万年筆だとすぐに分かります。

デコバンドのペン先は、とても柔らかいスーパーフレックスニブと、弾力のあるフレキシブルニブの2種類があって、硬い方(といっても充分に柔らかいけれど)のフレキシブルニブは、美しい日本の文字を書くために生まれたのではないかと思えるほど、強弱のついた筆のような文字を書くことができます。

私も気合を入れて手紙を書く時はデコバンドを使いますが、日本の中字に近い字幅も手紙には合っていて、自分なりにいい文字が書ける万年筆だと思っています。

デコバンドは、尻軸を引っ張り出して押し込むことでインクを吸入、排出する機構を備えていて、インクの交換や洗浄も楽なところも気に入っています。

ウォール・エバーシャープにはもうひとつシグネチャーという万年筆があって、デコバンドより一回り小さなレギュラーサイズの万年筆です。

これもデコバンドのフレキシブルニブの動きをコンパクトにしたような、似た良い書き味で、持ち運んで使うなら、シグネチャーの方が使いやすいでしょう。

例えばモンブラン149や146、ペリカンM800、アウロラが良いものであることは、ある程度万年筆に知識があれば誰でも知っていることだし、私も安心してハードに使うことができる万年筆はどれですかと聞かれたら、それらを勧めると思います。

でもウォール・エバーシャープの武骨なデザインながら、繊細で良い書き味を持った万年筆も、それを使う人だけの宝物になるのではないかと思っています。

色々なお店で売っているメジャーな万年筆ではないけれど、使う価値のあるいい万年筆だということを知って欲しいと思っています。

⇒WAHL-EVERSHARP(ウオールエバーシャープ)TOP

長軸万年筆の誘惑~セーラーエボナイト彫刻万年筆~

手紙の楽しさを多くの人に伝えたいという想いを持って発行されているフリーペーパー「ふみぶみ」vol.9が出来上がり、当店にも届いています。

読んでみると、コラムや情報、旅案内など多岐に渡る記事があって、様々な人がこの冊子を支えていることが分かります。発行者のうちだまきさんの手紙を書くことを楽しんでほしいという想いがつまった、読んでいて優しい気持ちになれる冊子です。私も寄稿させていただいていますが、これだけのものを1年に4回も発行しているうちだまきさんの情熱とパワーにいつも感心しています。

「ふみぶみ」は、ご来店いただいたお客様にはお持ちいただけるようにしていますし、WEBショップをご利用いただいた方には、ご希望があれば商品と同梱してお送りしています。

今回ご紹介するような万年筆は、ご自宅でゆっくり手紙を書くということに向いたものだと思います。

最近ではあまり使われなくなり、殆どのものが廃番になってしまいましたが、ペン習字などによく使われる長い軸の万年筆でデスクペンというものがあります。ほとんどがスチールペン先の安めのものが多いですが、妙に書きやすい。

それは長いボディがバランスに影響して、コントロールしやすくなるからだと思います。通常、普通サイズの万年筆がキャップを尻軸に差した方が書きやすく感じるのは重量が増えるからですが、ボディが長くなるだけでも書きやすさにつながるという証明のような万年筆かもしれません。

ペリカン、アウロラは尻軸へのキャップの収まりが良く、抜けにくいので使いやすいと思いますし、パイロットシルバーンも尻軸のキャップが抜けにくい万年筆で、バランスの優れた万年筆だと思います。

だけどデスクペンはキャップを尻軸に差さなくてもボディが長いので、キャップが抜ける心配もいりません。胸ボケットに差して持ち運ぶ携帯性を考えなければ、ボディは長い方が使いやすいのではないかと思っています。

それを実現した万年筆が発売されました。

セーラーエボナイト彫刻万年筆は、ボディが長く、尻軸にキャップをはめる必要のないバランスを持った万年筆です。

家の書斎でゆっくり書き物をする時に使うというコンセプトで作られていますので、この万年筆は持ち運ぶということは考えず、家のペン皿に寝かせて置いておく万年筆なのかもしれません。

長軸エボナイトボディは、艶消し加工や模様が彫刻されているものがあり、渋みのある和のテイスト、筆と万年筆の中間のような趣を持ったものに仕上がっています。

私は時間ができたら、文字の形を気にしながらゆっくり写経でもしたいと常々思っていますが、そんな使い方をしてみたい万年筆です。

付属しているインクもそんな万年筆の使われ方を意識していて、彫刻の柄の違いによって、それぞれ微妙に違う色の黒インクが付いています。

万年筆の趣味と一口に言っても、いろんな楽しみ方があります。

美しい万年筆を愛でながら、ボディの色とインクのコーディネートを楽しむ、書き味を味わいながらゆっくり文字を書くなど、人によってそれは様々です。

この万年筆は、21金のペン先の柔らかな書き味を楽しみながら文字を書く楽しみをもたらしてくれる、万年筆で文字を書く豊かな時間をイメージさせてくれるものになっています。

⇒セーラー エボナイト彫刻万年筆「夜霞」「夜光」「夜風」

正方形ダイアリー〜システム手帳と綴じ手帳の中間の存在〜

若い頃、手帳を使わないと言う同僚がいました。手帳使わないでどうやってスケジュールを把握するのかと聞くと、「覚えておく」という返事でした。私にとっては、仮に覚えておけたとしても手帳がないということは味気なく、つまらないものに感じたのを覚えています。

それでも彼は仕事ができる人だったから、全ての人に手帳が必要というわけではないらしいとその時思いました。

手帳を書くのはすごく良くて大切なことに思えるけれど、それは人によるというのは読書と似ています。読書は色々な事を考えるきっかけになっているので、私にはそれがない生活は絶対考えられません。

だけど本がなくても常に何か考えている人はいるし、もっと効率よくインスピレーションを得ている人もいます。

話が反れたけれど、私にとって手帳は、自分の代わりにいろんなことを覚えておいてくれて、他に考えないといけないことのために頭を空にしてくれるもの、そして仕事を楽しくしてくれて、良くしてくれる大切な存在です。

自分が使いたいように自由にページレイアウトを作ることができるシステム手帳は、使っていて楽しいものだと思いますが、綴じ手帳も充分仕事を良くしてくれるツールになることを今年は再確認できました。

いろんな使い方があると思いますが、正方形オリジナルダイアリーの私の使い方を申し上げると、月間ダイアリーページに予定を記入して、ウィークリーダイアリーページはto doや記録を書くページにしています。

ウィークリーダイアリー右ページの4分割の余白欄にそれぞれ項目を与えていて、項目名をスタンプで押しています。

私の場合は、取り寄せや別注の記録を書く「ORDER」、書いた原稿を記録する「WRITE」、ネタや覚書を書く「MEMO」としていて、1番下のチェックボックスのついた欄を「THINK」として、考えなくてはならないことを書いています。

システム手帳ならそれぞれの項目にインデックスを立てて、ページを分けることで、時間で進んでいくダイアリーと区別したページ分類になります。

綴じ手帳は、時間という厳然なものがページの進行を支配していますが、その中に自分に必要な各項目が同時に表示されます。

全ての項目を同時に見渡せるのが綴じ手帳の良いところですし、書き込む場合も何箇所ものページをめくって、行ったり来たりする必要がないので、記録を書き込むときその週のページだけを開けておけばいい。書いたものを探すときは時間という分類を手かがりに探せばいいということになります。

そう考えると、面倒臭がりな私には綴じ手帳が合っていると思うし、この手帳で店の普段の仕事が回せているので他を使う気にもなれず、結局ずっとこの手帳を使い続けています。

時間軸でページが進みながらも、システム手帳のように自由に項目が作れるこの正方形ダイアリーも、誰にとっても仕事を良くしてくれる大切なものになり得ると思います。正方形ダイアリーは当店と分度器ドットコム(590&Co.)さん、大和出版印刷さんの共同企画のオリジナル商品で、カバーなども揃えています。

昨年表紙のデザインを一新しましたし、そのまま使うのもいいですが、私は軽く使いたいのでビニールカバーをしています。革やミツロウ紙のカバーなどもありますし、まだHPには掲載できていませんが、手帳に項目を振るための項目用文字スタンプも販売しています。(近日中にホームページでご紹介します)

正方形ダイアリーは使いやすいことはもちろん、色々なアレンジができる楽しみを持った手帳であることにも自信を持っています。

⇒正方形ダイアリー2022年/ウイークリー

⇒正方形ダイアリー2022年/マンスリー