ペリカン M400

ペリカン M400
ペリカン M400

仕事柄、日々日常の書き物はほとんど万年筆で行っていて、私くらい万年筆を使うということに恵まれた仕事環境の人間はいないと思っています。
万年筆が使える仕事環境の条件として、複写式でない書類、慌しくない、などがあるかもしれませんが、使おうと思えば何とかしてでも使えるのではないかと思います。
万年筆を使うことができる環境にあるかどうかは別として、日常のちょっとした書き物などに使いやすく、適している万年筆は少し小型のM400のような万年筆で、このようなサイズの万年筆が最もよく使う万年筆なのではないかと思うようになりました。

万年筆が日常の筆記具でなくなってしまってから、それは大型化していき、デスク用のM800のようなペンがスタンダードとなっています。
しかし、それはポケットに入れておいて、サッと出して書くには大きすぎますので、字幅と同じように、万年筆の大きさは用途によって使い分けるべきものなのだと思っています。
そう考えるとM400を選択するのは、万年筆をオンタイムの実用品と考える人、あるいはオンタイムに使うものを探している時ということになると思います。

ペリカンの130年に及ぶ長い歴史の中で、途中途切れたこともありましたが、代表的な役割を務めてきたのは100やM400のような小型の万年筆であるということを考えると、ペリカン社の万年筆は実用の道具であるということになり、それはステーショナリーメーカーの考え方です。軽く、小型で携帯性に優れていながら、M1000と同じ容量の1.5ccのインクを吸入することができることは、このペンの実力を知るのに十分なデータだと思います。
書き味に関しては、時代による僅かなデザインの違い同様に変化していて、今発売されているものは、ボールペンに慣らされた現代人の高い筆圧、仕事中の様々なシチュエーションでの筆記などを考慮してか、硬く実用的なものになっています。

ペリカンはかなり以前の♯400頃からハードニブを設定するなど、実用の筆記具としては硬いペン先が適しているという提案をしていますので、今のM400の書き味はその流れの中にあるものなのでしょう。
M400には、M420、M425、M450などのボディ素材の違うデラックスなものがあり、それらは物にこだわる紳士の小道具的な趣きを持っています。
ペリカンを語る時に、どうしても引き合いに出されるのがモンブランで、両社は非常に比較されることの多いメーカーです。
ペリカンとモンブランは、同じドイツのメーカーですが非常に対照的なもの作りの考え方を持っていて、それはそれぞれの代表モデルという切り口で考えても同様です。
ペリカンはM400を代表モデルにしてきただけあり、実用的なもの、日常の道具としての万年筆を提案してきましたし、モンブランの代表モデルはやはり149で、モンブランが訴えてきたのは、日常の生活を超越したイメージを持った万年筆なのだと思います。

そんなステーショナリーメーカーに実用筆記具M400は、楽しむという要素の少ない万年筆なのかもしれませんが、仕事中や外出中でもどんどん万年筆を使いたいと思っている人に選ばれるべき、偉大な普通の万年筆なのかもしれません。

「ペリカンM400」