工房 楔訪問

工房 楔訪問
工房 楔訪問

今まで永田氏のフットワークの軽さに甘えて、来てもらうばかりでしたので、長年の念願が叶った、今回の工房楔訪問です。

羽島の町は広大な稲田があって、その中に集落が点在している昔ながらの町、村のつくりで、集落内には水路と曲がりくねった細い道があって、とても懐かしい気持ちにさせてくれるところでした。
どこをどう走ったか分からなかったけれど、永田さんの大きなハイエースの後部座席で揺られて工房に着きました。

学校の体育館くらいはある建物の中に機械や木材が転々とレイアウトしてあるこの工房で、永田さんは深夜まで一人木と向き合っているのだと思うと、職人の孤独のようなものを想います。
機械の説明などを聞いて、永田さんが作業しているところを写真に撮らせてもらいました。
最近カメラを買って、その楽しさが分かり始めたばかりですが、今回の出張では本当にたくさんの写真を撮りました。
永田さんの写真を撮った後、パトリオットボールペンを削らせてもらいました。
すでに粗削りはしてあるので、一番楽しい仕上げの工程です。
と言っても、高速で回転する木材に大きな刃物を当てて削り出していく作業は、なかなかスリルがありました。
永田さんは迷いなく、とてもスムーズに1本のペンを作るけれど、いざやってみると思い通りの形にするのは本当に難しい。すぐに刃物の筋がつくし、いびつな形になる。

轆轤で器を作るような感覚に似ているけれど、大きな刃物を使っているし、相手が硬い木なので余計に力が要りました。
でも本当に楽しかった。
木が自分が当てた刃物に敏感に反応して形を変えていくのがとても気持ち良く、もちろん簡単だとは思わなかったけれど、またしてみたいと思いました。
今回永田さんの作業と工房を見ることができて、木工家の生き方の大変なところと、楽しいところを垣間見ることができました。

木があるところでは冷暖房はご法度で、夏はじわじわと体の内側から出て来るような汗と、冬は冷たくて木も触れないような寒さがある中で、自分自身との戦いを繰り広げている。
出来上がった作品に一喜一憂することもあるだろうし、上手く出来なくて苦しむこともあるかもしれません。
永田さんの工房訪問は、ある雑誌に久保が永田さんの作業中の絵を描かなければならないことがあって、そのための写真撮影が目的でした。
イベントで永田さんのサービス精神に感心させられることがよくあるけれど、今回の工房訪問でも永田さんのお客を楽しませる心に触れ、暖かい気持ちになりました。
自分たちが削った木はそれぞれパトリオットボールペンになりました。
私は木目が美しく、以前から好きだったキングウッド。久保は質量が高くズシッとくるブラックウッド。宝物までいただいて帰ってきました。

この道に入って十数年のキャリアがあり、相当な腕を身につけた永田氏が1本1本削り出したペンへの思い入れが、さらに強くなりました。

旅の仕度

旅の仕度
旅の仕度

旅はいくら先のことでも、その日程が将来に存在するだけで楽しいもので、服など何でもその旅を意識して買ってしまったりするものです。
私も気が付けばそのように行動していて、Tシャツなど着ても1週間に1度だけなのに買い込んでいたりしています。

当店は今夏8月31日(日)~9月4日(木)まで休業させていただく予定にしていますが、その時に恒例の家族旅行に出かけることになっています。
ウチはあまり大自然志向ではなく、いつもどこかの町に旅に出ていて、今年は東京に行く予定です。
旅の仕度の時に、いつも持って行く本について真っ先に考えるので、妻によくからかわれるけれど、何の本を持っていくかということは非常に重要な問題で、移動中の新幹線で、夜のホテルで旅先にちなんだものを読むのはなかなか良いものだと思います。

私がイメージする東京らしい作家と言えば池波正太郎、山本周五郎で、私の東京のイメージが江戸だということが分ります。

ペンとノートは本よりも大切な旅の携行品だと思っています。
日常と違う場所に行ってその場所について書かないのは、私からすると観光地に行って写真を撮らないようなものだと思っています。

何を書いているのか妻に聞かれるし、いろんな人から何を書けばいいのか分らないと言われることもあるけれど、行った先々の街はこんな風に見えたとか、こんな人たちが歩いていたとか、こんな店に入って、何を食べたとか、どんな電車に乗ったとか、書くことはいくらでもあります。

そして何で書くのかと言われると、それは自分がその場所に行った記念に、その場所に対する自分の想い、考えを書くのだということになります。
それが何かを生み出すわけではないけれど、書かずにはいられない。

その時に使うペンとノートは特別なものではなく、日頃使い慣れたものを持っていきたい。
柔らかいペンケースでは不安なので、比較的しっかりした構造のものなら鞄の中に放り込んでも万が一、他の荷物の下敷きになっても守ってくれる安心感があります。
旅に持って行くのにル・ボナーの3本差しペンケースが最適だと毎年この季節になると申し上げていますが、もしかしてそれを言えるのは今年が最後かもしれません。

このペンケースの型絞りを担当している職人さんの引退により、もう作ることができなくなるかもしれないというのが理由ですが、この独特のいかにも鞄職人が作っている雰囲気の武骨で頑丈なこのペンケースが手に入らなくなるのはとても惜しいと思っています。

1本差しではなく3本差しを勧めるのは、旅先でどの万年筆を使いたくなるか分からないからです。
電車の中で使う万年筆と、夜宿で使いたい万年筆は違うかもしれない。
なるべくその時の気分に合ったものを使いたいから、3本もの万年筆を旅に携える。
そしてそれを可能にするル・ボナー3本差しペンケースです。

ル・ボナーさんでは最近印鑑マットを作りましたが、なかなかこれが好評でよく売れています。
レジャーではないけれど、この印鑑マットも出張先で印鑑を押す時に役に立ってくれる旅の仕度になるのかもしれません。

⇒ル・ボナー 3本差しペンケース

サマーオイル革のピノキオ(2本差しペンケース)

サマーオイル革のピノキオ(2本差しペンケース)
サマーオイル革のピノキオ(2本差しペンケース)

ペリカンの万年筆の中でレギュラーサイズのM800の書くことにおいての完成度は疑う余地のないところですが、万年筆というものの面白さで言うとM400も侮れないものがあります。

名品のM700トレドもM400サイズですし、今年ペリカンが立て続けに発売しているステンレスペン先の特別生産品のM200クラシックコニャック、カートリッジ式のP200/P205もM400サイズで、手軽に本格的な万年筆を使っていただき、万年筆を使う人を増やしたいというペリカンの会社としての志のようなものが感じられます。
そしてこのサイズはやはりペリカンにとって、スタンダードなのかもしれないと思います。

P200/P205、M200コニャック、いずれもペン先の素材や、装飾の簡略化によって価格を抑えたもので、実用性は高いし、趣味的にも遊べる万年筆だと思うようになりました。
例えばM400とM200などはペン先ユニットの互換性があるため(P200/P205はペン芯の構造が違うためにできません)、M200コニャックのステンレスペン先をM400の金ペンに差し換えて使うということが、ペン先をユニットごと外すことができるペリカンならできます。

これは正規品を販売している私たちのような店の者が言ってはいけないことなのかもしれないけれど、それぞれ個人の人が自己責任で楽しむという断り付きでのつぶやきです。
でも、暑い季節に使いたいと思う、軽く透明感のある、なかなかセンスが感じられるコニャックのボディと柔らかい書き味のM400の金ペンとの組み合わせがアンバランスで、通好みな設えだと思うのは、私だけではないと思います。

そんな遊べる要素のあるM400サイズのペン2本をコンパクトに収めることができる、ホーウィン社のコードバンを使ったWRITING LAB.オリジナルペンケース“ピノキオ”は発売後すぐに完売してしまい、革が希少だということもあり、再製作もままならず多くお客様にご迷惑をお掛けしてしまいました。

ピノキオのコードバンタイプとほぼ同時進行で、サマーオイル革のピノキオもベラゴの牛尾さんに製作してもらっていたのですが、今回それが完成しました。

サマーオイル革は、北米から輸入された革を栃木のタンナーがなめしている栃木レザーで、WRITING LAB.としては、サマーオイルメモノートの底革としてすでに愛着のある革です。
丈夫で手触りが良く、使い込むとよりはっきりと艶が出てくれます。
革質が違うだけで、構造やサイズはコードバン製のピノキオと同じになっています。
ジャケットのポケットに入れて持ち出すペンケースという存在は同じなので、ピノキオの機能性を気に入って下さっていた方には朗報だと思います。



⇒ペリカン クラシックP200/P205(カートリッジ式)

共感する愉しみ~文集作品募集します~

共感する愉しみ~文集作品募集します~
共感する愉しみ~文集作品募集します~

自分の愛用万年筆の良さを多くの人と共有したいという気持ちと、あまり評価されることがなかった隠れた名品を取り上げて、その良さを知って欲しいという気持ちから、いつもこのコーナーやブログに書いています。

もちろんそれは仕事だけど、とても楽しい、万年筆店店主の特権のようなものだと思っています。
でも、私の偏った見方だけではたくさんある万年筆の中でも同じ系統のものばかりを取り上げてしまったり、同じアングルからしか見てなかったりするのではないかとも思います。

お客様方それぞれが最も愛用する万年筆についての話を聞きたいとずっと以前から思っていました。
私のように仕事が絡んでいる者よりも、そのペンと長い時間向き合ってきた人の万年筆についての話、いわゆる生の声を聞いてみたいと多くの方も思われていると思います。

たまに当店で、お客様同士がそういう話になって、とても楽しそうに話されているところを見ることがあります。
そんな話をもっとたくさんの人から聞きたいと思いましたし、多くの人にも聞かせてあげたいと思いました。

皆様それぞれのご愛用の万年筆は何本もあると思いますが、その中から1本だけお選びいただいて、その万年筆にまつわる話、使用感、用途、使用インクなど(全てを網羅しなくても構いません)を1000文字程度の文章にしていただければと思います。

作品は当店メールアドレス(penandmessage@goo.jp)にお送りいただいても構いませんし、手書き原稿でしたら、手渡しや郵送でも結構です。
郵送の場合ご連絡先も明記下さい。
また文集に掲載する際のお名前を、本名かペンネーム、どちらで表記するかもご指示下さい。

お送りいただきました原稿は来年初め(予定)に発行予定の文集に収録させていただきます。締め切りは2014年9月30日(火)です。
多数のご参加、心よりお待ちしております。

以前、当店5周年の記念で「初めての万年筆」というテーマでお客様からの投稿を収めた文集を作りました。
それが出来上がった時、皆様の万年筆との出会いの思い出が飾らない言葉で語られた、名文揃いのとても良いものができたと思いました。

イラストは学級文集をイメージしていて、ホッチキス止めのとてもシンプルな装丁で懐かしい雰囲気です。
「初めての万年筆」もまだ在庫がございますので、興味を持って下さった方はぜひお買い求め下さい。