IL Quadrifoglio のイベント開催(1月12日・13日)

IL Quadrifoglio のイベント開催(1月12日・13日)
IL Quadrifoglio のイベント開催(1月12日・13日)

独立して仕事をしようとしている人にとって、その人の成功を願って応援してくれる人の存在は必要不可欠です。
人脈を紹介してくれたり、商品を供給してくれたり、あるいは作っているものを扱ってくれたり。
私もそういう人に恵まれて、多岐に渡る分野の人を紹介してもらったし、商品を供給してもらいました。
その応援があったから店を始めることができたし、今もこうして続けていられる。店を始めて5年が経って、応援したいと思う人に出会うことが何度かありました。
それほど力にはなれていなけれど、心から応援したいと思い、ともに良くなっていけたらという想いで一緒に仕事をさせていただいています。

イル・クアドリフォリオの久内さん夫妻にも私は心から彼らの成功を祈って応援したいと僭越ながら思っています。
イル・クアドリフォリオの作品にももちろん魅力がありますが、いつも皆を楽しい気分にさせてくれる明るさ、人柄の良さに周りにいる人たちは楽しい気分にさせられる。

彼らは私が持っていないものを持っていて、とてもまぶしく感じるし、彼らが大好きな仕事でずっと生きていけたらと願っています。
それはWRITING LAB.を一緒に企画している駒村さんも同じ気持ちで、お二人に出会った時、何か一緒にやりたいと思ってWRITING LAB.として話し合って、アイデアを出し合ってできたのがシガーケース型ペンケースSOLOでした。

最近はあまり見なくなりましたが、以前は海外のメーカー数社からも発売されていたシガーケース型のペンケース。でもそれらとは少し雰囲気の違うものが出来上がりました。
幸いSOLOは多くの人に使っていただいていて、イル・クアドリフォリオの名前が万年筆の世界でも知られるきっかけになったと思います。

私も自分にとってとっておきのペンであるオリジナル万年筆「Cigar」を入れて、仕事の日も休みの日もサニーゴールド手帳のネタ帳とル・ボナー3本差しペンケースとともに、ル・ボナーのポーチピッコロに入れて持ち歩いています。

SOLOはCigarには少し大きく、ペリカンM1000やモンブラン149などがちょうど良く収まるサイズですが、そういうことはあまり関係なく、これだけのペンケースに合う万年筆はCigarしかない、あるいはこれだけの万年筆に合うペンケースはSOLOだけだと思っています。

最近、私の場合は書くということは欲望に近いのではないかと考えるようになりました。
書くことが好きという感じではなく、書くことは快感を得られるものだから、書きたくなる。
書くことは文化的な行為だからそれが好きな自分は文化的な人間かもしれないと少し思っていましたが、それは大きな間違いで、自分の書くという行為はとても本能的なものかもしれない。
そして、本能的であるからその行為に上手いも下手もなく、自分にとっての快感をひたすら追い求めて書き続ける。
書くという行為が人間の根源的な欲によるものであったなら、万年筆はその欲による行為をさらに気持ちよくしてくれる道具だということになり、それそれで辻褄が合っていると思いませんか?

欲望による行為である書くということをより気持ち良くしてくれるのが万年筆なら、ペンケースなどその関連するものはそれを演出する、よりムードを高めてくれるものに他ならない。
ただペンを収納するだけの革製の入れ物というだけでは寂しすぎる。

フィレンツェ伝統の絞り技法によるペンケースSOLOは1本しかペンを入れることができない贅沢な仕様で、日本の製品の中では異色な、欲望を美しく演出してくれる種類のものにひとつだと思っています。
もちろんSOLOに続くものも作っていかなければなりませんが、SOLOをベースとした遊びを久内さんたちは始めていて、1月12日、13日のイベントで発表してくれるようです。

2012年のペン語りはこれで最後になります。今年1年も私が欲のままに書いた文章をお読みいただいて、心から感謝しています。
来年は、もう少し読みやすく、良いものにしていきたいと思っておりますので、何卒よろしくお願いいたします。
良いお年をお迎えください。

手入れのしやすさと丈夫さの魅力 ル・ボナーペンケース

手入れのしやすさと丈夫さの魅力 ル・ボナーペンケース
手入れのしやすさと丈夫さの魅力 ル・ボナーペンケース

革小物の手入れはなかなか疎かにしがちですが、してみると楽しいものだといつも思っています。
わりとすぐにきれいな艶を取り戻してくれるということも楽しい理由かもしれません。
特にブッテーロ革は、手入れをしているのとしていないのとではその様相は大きく違い、手入れをすることで非常に美しく仕上げることができます。

ル・ボナーの松本さんから教わりましたが、油分を多く含んでいるブッテーロ革にはオイルを加える必要はなく、ブラシ掛けか革用の布で磨く。あるいは傷が激しく目立ってきたら濡らした布を堅く絞って水拭きするというのが適したお手入れの仕方です。

私が最近気に入っているのは革用のブラシを掛けることで、ブラッシングすることで光を帯びたキラキラした粒が立ったような表面になりとてもきれいです。
ブラシ掛けでも布で磨いても傷が消える、あるいは目立たなくなるのもブッテーロの特長です。
ブッテーロの革質はコシがあって、張りが出るので厚く使えば丈夫な革製品を作ることができるというところもあり、その良さを生かしたもののひとつにル・ボナーの3本差しと1本差しのペンケースがあります。
万年筆が好きになったからこのペンケースを作ることができたのか、このペンケースを作りたいから万年筆に傾倒していったのか分らないけれど、万年筆好きの鞄職人として有名なル・ボナーの松本さんが鞄作りでも持ち続けているこだわりで作ったペンケースです。

全部分厚めのブッテーロ革を背中合わせに2枚重ねに貼り合せていますので、かなり硬く中のペンを保護してくれる頑丈な構造になっています。
フラップ部も最初は硬めで、馴染むのに少し時間がかかるけれど、それは頑丈さの表れだと私は好感を持っています。
ペンケースには様々なものがあって、ギュウギュウとたくさんの荷物がひしめく鞄の中に安心して放り込めるのはこのペンケースだけだと思っていて、持ち運び用のペンケースとして頑丈さと手入れのしやすさを持った安心して使うことができるものです。

3本差しならペリカンM800やモンブラン146などのレギュラーサイズのものまで、1本差しにはドルチェビータピストンフィリング、モンブラン149、ペリカンM1000などのオーバーサイズのものまで収納することができます。
このペンケースが発売されて5年が経ち、それは当店が開店した年月と重なります。
開店したばかりで、オリジナル商品や特徴に乏しかった当店において、このペンケースは六甲アイランドのル・ボナーさんか当店にしか置いていない言わばオリジナル商品で、このペンケースを目指して当店に来られたお客様も少なくありませんでした。
ル・ボナーさんにとってこのペンケースはなくても困らないものだったけれど、当店にとってはこれがない状態は考えられないものだった。
開発にお金や労力もかなりかかっているし、希少な絞り技法を有する職人さんも探さなければいけなかったはずだけど、松本さんはそんなことを何も言わずただ嬉しそうにこのペンケースを紹介してくれて、全色1つずつ貸してくれました。

当店はこのペンケースと共に歩んで来たところがあり、個人的にもとても思い入れのあるもので、それらのことを私は忘れてはいけないといつも思っています。

⇒ル・ボナーステーショナリートップgid=2125743″ target=”_blank”>⇒ル・ボナーステーショナリートップ

寒さに強い万年筆

寒さに強い万年筆
寒さに強い万年筆

若い頃、家の中がなぜかいつも寒かった記憶があります。
ファンヒーターやエアコンなど便利に使える暖房器具がなく、暖をとるものはコタツが中心だったからなのか、石油ストーブがいつも空だったのか、忘れてしまったけれど。
その反動からか、暖房が必要以上に、あるいは暑いくらいに焚かれていないと心細くなるという性質になってしまいました。
暖房をつけない家では風邪をひきにくい体が丈夫な子供になるかもしれませんが、変なところにその反動がくるのだと自分で分析しています。
寒さが苦手なのは私だけでなく万年筆もですが、寒さに強い万年筆の話です。

万年筆で一番やっかいで、ほとんど唯一のトラブルとも言えるものが、インク漏れです。
最近ではペン芯やボディの構造がしっかり設計されたものが多くなっていますので、書いていて自然にポタリとインクが落ちる、夏目漱石が癇癪を起こしたと言われているようなことは起こりにくくなっています。
しかし、冬にはまた違う理由でインクが漏れる状態に近いことが起こります。
開けるたびにキャップの中にインクが付いているとか、ペン先の根元辺りにたくさんのインクが滲んでいるというようなご相談を集中して受けるのが、冬の間や冬が終わったばかりの時です。

万年筆のインクタンク内がインクで満たされていれば問題ありませんが、インクが減っていて、インクタンクの中にインクと空気両方が入っている場合、冷たい外気に冷やされたタンク内の空気が暖房と手の温もりによって温められて膨張して、インクを押し出します。
これはどの万年筆でも起こりうることですが、ペン芯の設計が新しいと起こりにくいし、ボディが比較的太めのものでは起こらないことが多いと言われています。
どんな万年筆でも、冬場に万年筆を持ち運ぶ時はなるべくペン先が上に向くように固定して、ちょっとしたショックでペン先やペン先の根元に滲んでいるインクが落ちないようにする工夫はされた方がいいと思います。

素材から見た場合、冬でもインク漏れがしにくい万年筆は、ボディが木製やエボナイト製の万年筆です。
それらは温度の伝わり方が緩やかなので、インクタンクの中が急に冷えたり、温まったりしにくい。外気温を内部に伝えにくいので、万年筆内部の温度がある程度安定していると言われていて、同じサイズのボディで木製とエボナイト両方の素材を揃えた2本の万年筆をご紹介します。

パイロットカスタム845はエボナイト素材に漆塗りのボディの万年筆です。
上記の理由で万年筆のボディに適した素材であるエボナイトですが、紫外線や熱、乾燥の影響で変色しやすいという欠点があります。
これを解消したのが、エボナイトに独自の仕上げをして漆を塗るという技術です。
パイロットはこれを80年以上前に確立していて、万年筆に使ってきました。
エボナイトのボディに漆を塗った延長線に蒔絵の万年筆があったと思うと、その発明が日本の万年筆を世界に知らしめたのだと言えます。

カスタム845の大型の18金のペン先は、バネのような弾力があって、高い筆圧でハードに書かれる方でも安心して使うことができるもので、この万年筆が趣味の道具だけではない酷使にも耐える実用の道具であるということ物語っています。

同じペン先を備えた万年筆にカスタム一位があります。
カスタム845と同じプロポーションの万年筆ですが、こちらはイチイの木を圧縮して、目の詰まったものにしており、強度の確保と、手触り良くし、汚れが染み込みにくくしています。
表面加工をしていない自然の木の触感のままなので、使い込んだり、磨いたりして艶を出していく、育てるような楽しみも併せ持ったものになっています。

万年筆には厳しい季節である冬を難なく乗り越えることができる、おそらく実用的には国産最高峰の実力を備えたカスタム845とカスタム一位。
国産ということは、品質的には世界に通用することを誰もが確信していて、国産の万年筆について、特にパイロットについては私たちは顧みないといけないと思うようになりました。

冬だけでなく、1年中愛用していただきたい2本の万年筆からは、メイドインジャパンの誇りが感じられます。

⇒パイロット カスタム845

考えの断面を記す「サニーゴールド手帳」

考えの断面を記す「サニーゴールド手帳」
考えの断面を記す「サニーゴールド手帳」

手帳には黄金バランスがあって、縦:横が2:1になっているものがそれだと思っています。
そのサイズ感から考えるとAやBの規格のサイズは少し横幅が広すぎる。あるいは縦が短すぎる。
片手で持って、立ったまま書くことができる、手の平に収まる横幅でないといけないので、あまり大きすぎないものがいい。
横幅10cmくらいのものが理想で、縦は20cmということになります。
最近そんな手帳の黄金バランスを持った手帳が少なくなっているような、あったとしてもあまり顧みられていないような気がしています。

例えば文庫本サイズのノートが非常に多くなっていますが、これは縦横比が2:1ではありませんので、手帳というよりも小型のノートということに(私に言わせれば)なります。
他にも惹かれる理由はありますが、理想的な手帳の黄金バランスを持っているということで、ライフのサニーゴールド手帳はずっと気になっていました。

ライフのハードカバーノートや手帳、日記帳の装丁の強さ、平らに開く機能にも絶対的な信頼を寄せています。
そういった基本的な仕様を持った量産品でライフに勝るものはないと思っているほどです。

お客様の大和座狂言事務所のK女史の3年連用日記を見せていただいて、ライフの製本の強さに驚きました。
3年連用日記を3年間毎日欠かさずつけられて、たくさんの切り抜きなどを貼って倍以上の厚さに膨らんでいるにも関わらず、製本にまったく乱れが生じていませんでした。
これなら3年どころか、5年でも、もしかしたら10年でも使うことができるかもしれないと思いました。
合成皮革の表紙も、安い革を使うくらいなら合皮の方が丈夫で良いものを作ることができる、というライフのポリシーがあって使われていることを聞いたことがあります。

誰かから聞いたり、本などを読んだりして感じ入った話、あるいは突然頭の中に浮かんだ考えの芽などを今までダイアリーの片隅に書いていました。
それは時系列で並んでいて、後から探すことも可能ですが、時間の経過とともにダイアリーの中に埋もれてしまうような気がしてもったいないと思っていました。
そういった何かのヒントになる、自分にとってとても大切な言葉や考えの断片を書く専用の手帳、ネタ帳のようなものを作ろうと思った時にサニーゴールド手帳を使いたいと思いました。

1ページが30行になっていて、5行ごとに太い罫線が引かれている、1ページが6つに分割されている独特の罫線は、フリーダイアリーとしても使うことができるように工夫された罫線ですが、ちょっとした考えの断片を書くのにちょうどいい間隔でした。
紙質もとても良く、にじみや裏抜けがまったくありません。
今この手帳の罫線を少しずつ埋めていくことが楽しくて仕方なく、一冊埋めつくしたら、自分にとってとても大切なものになるだろうと思います。
でも44年も生きてきたのだから、もっと早く始めたらよかったのにとも思うけれど。

⇒ライフ「サニーゴールド手帳」