インクコレクション

インクコレクション
インクコレクション

インクが消耗品ではなくコレクションの対象になるのだということをお客様の動向から知りましたが、考えてみると少し前からメーカーサイドからもそのような動きがありました。

カランダッシュは現在のクロマティクスインク以前から、自然の色彩をテーマにした、発色が良く美しいボトルのインク(当時の定価は2,500円で相当高価だと言われていました)を発売していましたし、ペリカンが普及品の4001シリーズとは別に宝石をテーマにしたエーデルシュタインシリーズのインクを発売したり、パイロットの色彩雫もその動きにあたると思います。

ローラー&クライナーから1000個限定でシリアルナンバー入りの「コーヒーカンタータ」が発売されましたが、そういった企画を今のインク市場は歓迎すると思います。
インクを取り巻く環境はそれだけ変化していて、今まで万年筆の二義的な存在だったインクが万年筆を凌ぐほどの華やかな存在になっています。
限定品なのでこのインクを使い続けることはできないけれど、持っていることが楽しかったり、少しずつ大切に使われる存在のインクになるのだと思います。

ローラー&クライナーのインクは発色が良く、インク出もスムーズで、そのクラシカルなボトルとは裏腹にカランダッシュやファーバーカステルなどのような新しいタイプのインクに属するのではないか、より快適に使うことができるインクなのではないかと期待しています。
「コーヒーカンタータ」はローラー&クライナーの発祥の地ライプツィヒにゆかりのあるバッハにちなんだインクです。バッハの小喜歌劇「おしゃべりはやめて、お静かに」はコーヒーカンタータとも呼ばれ、18世紀ドイツのコーヒー事情もうかがい知ることができます。初演はライプツィヒのコーヒーハウスで行われました。
落ち着いた色合いのコーヒー色のインクで、私もそうですがお好みの方も多いと思います。

当店のオリジナルインクは、欲しい色がなかったからオリジナルで作った、当店のこだわりや世界観を色で表現したインクです。
冬枯れ、朔、山野草、朱漆の四季に合わせた4色のインクを作ってから8年(朔にいたっては10年)も経ち、前記のようにインクを取り巻く環境は激変しています。

オリジナルインクはたまに当店の活動に理解を示して下さる方が買われる程度でしたが、今ではインターネットでもよく売れるようになりました。
今まで半年以上かけて売っていたようなものが、1週間持たない。
けれどこの状況はいずれ収まると思っています。

今までオリジナルインクは万年筆とともに買っていただくものでしたので、それで利益をいただくということはあまり考えていませんでした。
しかし最近オリジナルインクだけを買われる方が多くなり、採算の取れない状態では厳しくなってきたため、価格を変更することにしました。
継続してお使いいただいているお客様には申し訳ないですが、何卒ご理解下さい。

先日、全色入荷しましたのでホームページでも販売していましたが、数が少なくなったものは品切れとさせていただき、次回入荷まではご来店のみの販売になります。
オリジナルインクをめぐる混乱はまだ続きそうで、店としてはとても有り難いことなのですが、お客様にはご迷惑やご心配をおかけしていることを申し訳なく思っています。

⇒インク・消耗品TOPcbid=2552140⇒インク・消耗品TOPcsid=1″ target=”_blank”>⇒インク・消耗品TOP

自分らしさを思い出させてくれる存在~ファーバーカステルクラシックスネークウッド~

自分らしさを思い出させてくれる存在~ファーバーカステルクラシックスネークウッド~
自分らしさを思い出させてくれる存在~ファーバーカステルクラシックスネークウッド~

デザインが好きだということは、私にとってはそのモノの全てを認めているということになります。
ファーバーカステルは他のどのメーカーにも似ていない独特のデザインを持っているけれど、どこかクラシカルに思えて、既視感のある馴染みやすい印象があります。
それはきっと300年近く鉛筆を作ってきた歴史もあって、古い鉛筆ホルダーなどがデザインの根底にあるからなのだと想像します。
違っていたら申し訳ないけれど、そういった古典的なものにインスパイアされたデザインでなかったら、ファーバーカステルクラシックの親しみやすさの説明がつかない。
世の中には様々なモノの有り方、デザインがあって、気にしないようにしていても知らないうちに影響を受けていることがあります。
それらの影響によって自分たちの持ち味、すでに持っている色を忘れ、ブレそうになることもあります。
そういう時に自分たちの色について思い出させてくれる人がいることが、とても有り難いと思います。

ペンにもそういうところがあると思っています。
自分が本当に良いと思ったデザイン、モノの有り方のものをいつも手元に置いて忘れないようにする。
いろんなモノを簡単に見ることができて、たくさんの情報が入ってくる現代において、自分らしさを維持することは本当に難しい。
自分のポリシーや世界観を代弁してくれているペンを手元に置いておくのはそんな意味合いもあると思います。
自分の仕事が無難で、特長のないものでいいはずがない。そうならないようにカステルを手元に置いておく必要があると思って、いつも傍らに置いています。

昨年から1761本限定でクラシックコレクションスネークウッドが発売されています。
スネークウッドはとても希少な木で、加工中に割れてしまうという大変扱いの難しい木としても有名です。
限定本数をすぐに作ることができずいまだにポツポツと入荷してくるところからもファーバーカステルが苦労していることが分かります。
今から13年前にもファーバーカステルはペンオブザイヤーのシリーズでスネークウッドに挑戦していますが、カステルはスネークウッドを最高の木材として大切にしていて、節目のような時にスネークウッドを選んでくるような気がします。
私は万年筆のメーカーとボールペンのメーカーは違うと思っていて、両方を揃えたいと思うメーカーは少ないけれど、ファーバーカステルは同じ素材で揃えたいと思うメーカーのひとつで、それは筆記用具というよりも自分の精神的なお守りに近い存在だからかもしれません。

今回の限定品クラシックスネークウッド用にカンダミサコさんが黒桟革で2本差しのペンシースを作ってくれています。これはスネークウッド発売前にカンダさんにスネークウッドのペンの写真を見せて製作していただいたもので、クラシックスネークウッドの対になるものとして相応しいクオリティを持っていると思っています。

⇒ファーバーカステルTOPcbid=2557105⇒ファーバーカステルTOPcsid=7″ target=”_blank”>⇒ファーバーカステルTOPcbid=2557105⇒ファーバーカステルTOPcbid=2557105⇒ファーバーカステルTOPcsid=7″ target=”_blank”>⇒ファーバーカステルTOPcsid=7″ target=”_blank”>⇒ファーバーカステルTOP

アウロラアルファの発売~アウロラの新規顧客開拓~

アウロラアルファの発売~アウロラの新規顧客開拓~
アウロラアルファの発売~アウロラの新規顧客開拓~

本国ではすでに発売されていて、日本では一部店舗のみでしか発売されず、いつ入荷するのかと気をもんでいたアウロラアルファが入荷しました。

アウロラの日本代理店の町山さんがアルファ導入に踏み切ったのは、値段が高くなってしまって購入される方を限定してしまったオプティマや88と、普及モデルイプシロンの間を埋めるモデルが販売戦力的に必要だと思ったからだと考えています。
今までその位置にいたのはタレンタムというペンでしたが、発売後十数年が経ち、当初感じられた目新しさがなくなっていました。
そして顧客がアウロラに求める要素からアウロラのペンがズレてきているという、どうしようもない時代の流れも理由のひとつかもしれません。

新たに日本市場に導入されたアルファは、多くの人がアウロラに求めていることを満たしたペンだと思っています。
アウロラ限定品のスターリングシルバーのパーツを多用したマーレシリーズのデザインを継承したとも言えるドーム型のキャップ、金属製の首軸を持ち、アウロラらしい華やかさと色気が感じられるデザインになっています。

吸入方式はカートリッジ/コンバーター両用式になっていて、ピストン吸入方式のオプティマ、88とは違うメリットをこの万年筆は持っています。

万年筆を知る人には説明の必要はないけれど、ピストン吸入式は軸そのものがタンクになるため大量のインクを吸入することができ、インク補充の手間を少なくすることができます。
カートリッジ/コンバーター両用式はカートリッジも使用できるので手軽にインクを交換することができるのと、吸入機構が不調になってもコンバーターを交換するだけでいいというメリットがあります。
カートリッジ式を採用していることからも分かるように、アルファは外に持ち出して使うということをより意識した日常使いの万年筆であってもらいたいという、アウロラの想いもこもっているのではないかと思っています。

オプティマなどエボナイトのペン芯を採用したモデルは長年使い込むことで、馴染んできてとても書きやすくなりますが、同じペン先、同じペン芯を持つアルファも長年の使用に応えてくれて、育ってくれるものになることは間違いありません。
首軸が金属で重量があるのもアウロラの強い弾力を持つペン先と相性が良く、より柔らかい書き味を感じていただけると思います。

アウロラをより手軽に、気を使わずに使うことができる万年筆がアルファで、移り行く時代に対して、アウロラの出したひとつの回答だと思っています。

趣味性の高いミニペンを持ち歩く~シガーケース型小さいペンケースDue piccolo

趣味性の高いミニペンを持ち歩く~シガーケース型小さいペンケースDue piccolo
趣味性の高いミニペンを持ち歩く~シガーケース型小さいペンケースDue piccolo

ペリカンM300というスーベレーンシリーズのM800をそのまま縮小したようなミニペンがあります。
デザインは他のスーベレーンと変わるところはないけれど、よくここまで小さくすることができたいと思うくらい小さなペンです。
ちなみにM300は400でも600でもない、M800を縮小したものだと私は思っていて、他のサイズのものとでは微妙にデザインのバランスが違うと思っています。

ペリカンスーベレーンシリーズは書く人が選ぶ実用のための万年筆だと思いますが、M1000とこのM300だけは少し違う趣味性の高さを感じます。
M1000は極端に柔らかい大型のペン先で、他では感じられない書き味を持っていますし、M300は度を越して小さいミニペンなのに、書き味は非常に柔らかく仕上げられています。

万年筆は直径13ミリの軸径で重さ30グラムが一番バランスが良くて書きやすいといつも書いていますが、このミニペンは直径8ミリ重さ11グラムしかありません。
これは便利さを狙ったというよりも、小さな万年筆を作りたいという遊び心だと思いますし、この遊び心のあるペンを他の実用的なペンと全く同じデザインとしたのはペリカンのユーモアだと思います。
ちなみにM300は吸入式で、この小さな吸入機構をよく作ったと思われますが、吸入式だからこそ、このサイズにすることができたと思います。
カートリッジ式だとカートリッジよりもひと回りは大きなボディになってしまいます。

ペンケースDueという2本差しのシガーケース型のペンケースをオリジナルで、イルクアリフォリオの久内夕夏さんにお願いして製作していただいています。
入れるペンケースに困っていた太軸のペンも収納できて、しかも保護してくれるようなシェル構造になっているペンケースです。

この度、ペンケースDueでペリカンM300が入るミニサイズ用を作りました。
しっかりとした構造なので、愛用者の間では細軸で壊れやすいと言われているM300を保護してくれると思います。
旅先では長時間何か原稿を書くということはないと思いますので、長時間使うための大型の万年筆を持っていく必要はありません。
宿での夜の時間や休憩に入ったカフェなどでちょっと書くのに粋な感じがするのは、M300のような小さくて目立たない万年筆だと思っています。
この小さな革のケースから小さな万年筆が出てきて、ちょっと手帳に書いてまた収める。
万年筆を外に持って出て、どんどん使いたい人のためのものをいつも作りたいと思っています。

シガーケース型小さなペンケースDueもM300と対になるボールペンやシャープペンシルを出先で使いたい、旅に携えたいと思う人のために作りました。

⇒シガーケース型小さなペンケースDue piccolo

原稿用紙~133年の歴史を持つ原稿用紙~

原稿用紙~133年の歴史を持つ原稿用紙~
原稿用紙~133年の歴史を持つ原稿用紙~

仕入れ値の問題で当店のWEBショップには載せることができていないけれど、店頭では満寿屋(ますや)の原稿用紙を扱っています。

舛屋は明治15年創業の会社で、満寿屋というのは原稿用紙、紙製品のブランド名ということになります。
様々な紙製品メーカーでも原稿用紙を扱っていると思いますが、万年筆での使用を考えると、個人的には満寿屋が最も信頼できるのではないかと思っています。
満寿屋の原稿用紙は、紙選びの段階から万年筆インクとの相性を考えて選定されていて、万年筆での使用を念頭に置いて作られています。それはパッケージに記載されている「万年筆のペン先保護に」という一文からも覗うことがことができて、滑らかな書き味や目詰まりしにくい紙質などの特長があります。

万年筆用の良い紙の条件は、ペン先の滑りが良くて、にじまず、乾きが早いことだと思いますが、それぞれの度合いやバランスは使う人の好みということになります。
少しでもにじむのが嫌だと思う人もいるし、私がそうですが、少しにじんだ方が文字に温かみが出て、インクの伸びも感じられて良いという人もいます。
にじみやペンの滑りに関してもほどほどが良く、どれかが極端だと自然な味わいが欠けてしまう。高い次元でバランスは取るべきだと思うけれど、ただ機能を追究すればいいというわけではない。その辺りが紙作りの難しいところで、センスが問われるところだと思います。

満寿屋の原稿用紙の紙は、黄色みのあるものと白色のものの2種類があり、それぞれ特長があります。
自社生産している黄色みのあるオリジナル用紙はにじみがなく、乾きが早いのが特徴で、万年筆用紙として最上のもののひとつだと思っています。
特に太字の、インク出の多い万年筆でどんどん書いていくのに適していますし、細字で文字の形を気にしながら書く、ペン習字のような用途にも合います。
白いデラックス紙の方が私の好みで、こちらの方がインクの伸びが良くて、書き味が楽しめます。
書道の半紙でも、私は全くにじまないものよりも少しにじみのあるものの方が好みですが、そうでない人もいます。

原稿用紙に文章を書くということは、万年筆を使う人の憧れなのではないかと思っています。
しかし、それはノートに下書きを書いていくのとはかなり勝手が違っていて、原稿用紙の升目を埋めるサイズの文字を書くには少し慣れがいると思います。
升目をきれいに埋めることができるようになると、次は升目をカッコ良く縦断して書くという高等技術(だと思っている)があって、私はその境地まで行きたいと思っています。

現代の形(毛細管現象を使ってインクがペン先に伝わる)の万年筆をルイス・エドソン・ウォーターマンが発明した同じ年に創業した長い歴史と、多くの文豪に愛用されてきた経歴にも敬意をこめて、当店ではおすすめの原稿用紙として、満寿屋の原稿用紙を扱っています。

*当店取り扱い満寿屋原稿用紙*
B5サイズ(200字)No.1・101・102・103・105・11・15
B4サイズ(400字)No.111・112・113・115・25