カンダミサコブッテーロデスクマット

カンダミサコブッテーロデスクマット
カンダミサコブッテーロデスクマット

当店のお客様が万年筆を試し書きされる席には、カンダミサコさんのデスクマットを置いています。
もう2年半以上経っているので、大した手入れもしていないのに、艶が出て色も変化しています。
デスクマットの素材であるブッテーロの特長がまさにそうで、使えば使うほど艶が出て、色が変化してくれる。
ル・ボナーさんもカンダミサコさんもこのブッテーロ革をよく使われます。

成牛の革を植物タンニンでなめしたブッテーロ革は使い込んだ時のエージングが美しい革で、手を入れれば入れるほどそれに応えてくれる。
革用の布やブラシで磨くと光沢が出て色が濃くなり、水で濡らして固く絞った布で水拭きするとネットリとした表情を見せます。
私はブッテーロをブラシ掛けするのが好きで、キラキラしたツブが立ったような銀面を見せてくれます。
この革独特の香りは革の中で一番良いと思っていますが、これは好みが分かれるところでしょうか。
そんなところに惹かれて革職人さんたちはブッテーロ革を多用するのかもしれません。

不定期ですが、年何回かはカンダミサコさんにデスクマットを製作してもらっています。
一番表面の部分の銀面、中間の床、滑り止めのフェルトの3層構造になっていて、端が反り上がってくることの対策としていたり、A4用紙より一回り大きいサイズで大きすぎず、私たちの机環境に合ったものだと思っています。

発売後3年近く経っていて、売れ筋の色が絞られてきましたので、今年は限定色としてパープルを作ってみました。
ウォールナットなどの濃い色の机にとても合うのではないかと思っています。

シュランケンカーフの豊富なカラーバリエーションをフルに使ったペンシースで3年少し前に始まったカンダミサコさんとの仕事。

カンダさんは今まで会ったことがある革職人さんとのイメージとはあまりにも違っていて、小柄で物静かな雰囲気を持った女性だと思っていました。
でも一緒に仕事をするうちに、芯の強い、とても頑固な職人らしいところのある人だということに気付き、それが丁寧で美しい仕事に表れていることが分かりました。

カンダさんが神戸の鞄工房バゲラさんから独立して4年近くになります。
カンダミサコという名前は急速に浸透して、全国でも知られる存在になっているし、大丸百貨店からは年3回もイベントへの参加を依頼されています。
丁寧な仕事を心掛け、ご自分のスタイルに合ったものだけを少しずつ増やしていき、今の地位を短い期間で獲得した。
それは自分のことのように嬉しいし、そんなカンダさんの歩みを比較的近くで見ていられることができたことも誇らしく思っています。

カンダミサコさんだけでなく、当店にはル・ボナー松本さん、工房楔の永田さん、イル・クアドリフォリオの久内さんたち職人さんが夢を持ち込んでくれる。
そしてこちらの夢もその技術やアイデアで実現してくれます。

カンダミサコさんのデスクマットもそんなもののひとつです。
シンプルなものだけど、奥深い仕様へのこだわりがあって、それはブッテーロの革のように時間が経つごとに、使い込むごとに喜びをもたらしてくれる。
良いものの条件だと思います。

カンダミサコ デスクマット

LAMYの世界観

LAMYの世界観
LAMYの世界観

万年筆を使うことを懐古趣味のように言われたりすると、何となくカチンとくることがあります。
私たちは昔を懐かしんで万年筆を使っているわけではなく、一番書きやすいと思う筆記具だから万年筆を使っている。
今の筆記具として万年筆を使っているからで、それを懐古趣味だと言う人は文字を書くということについてそれほど真剣に考えていないのではないかと、かなり偏った考えだけど思うのです。

でも万年筆のそのモノ自体のデザインは過去にあったものをリスペクトしたものがほとんどで、この辺りがなかなか複雑です。
老舗の万年筆メーカーならたいてい過去に名品が存在していて、それらを復刻したり、それらのデザインをモチーフとしたりすることが多い。
そして私たちもそれを歓迎しているところがあります。

ある程度日常的に使う万年筆が用途別に揃ったら、ビンテージの万年筆に理想を求めたりする人も多く出てきます。
確かに車も道楽を極めるとクラシックカーに向かう人もおられるようなので、人はある程度そのものを知ると、古いものに気持ちが向かうのかもしれません。
新しい取り組みだと思われているイタリアの限定万年筆も過去の万年筆黄金時代再来を目指したものが中心となっています。

過去をリスペクトすることが多い、万年筆の業界の中でラミーだけは取組み方が違う、提示する世界観が違うように思って、共感しています。
ラミーの最もラミーらしさが表れている万年筆ラミー2000も、発売が開始された1966年当時、はるか未来の2000年を意識していました。

他の万年筆とは全く違うデザインで、そのモノに当時の人は夢やロマンを感じたのだと思っています。
何度かの小変更を受けながらも、ラミー2000はほぼ発売時のデザインそのままで現代に生き残っていて、いまだに過去を感じさせないどころか、ラミーの先を見据えた仕事振りに、自分もこうありたいとお手本に思います。
2000年の記念にラミー2000のオールステンレスタイプが限定発売され、覚えておられる方も多いと思いますが、今年からカタログにオールステンレスタイププリミアステンレスが加わりました。今度は定番モデルということで、細部の違いはあるようです。

私が覚えている範囲では、ペン先と反対側の首軸の仕様が違うのと、ステンレスの手触りが若干シルキーな感じになっているところが違うと思っています。
54gとかなり重量級のボディですが、オールステンレスのボディはとてもキッチリと作られていて、ラミーの工作精度の高さがうかがえて面白い。
ビンテージ万年筆に行く前にこういう、見て、触って楽しめるペンがあることも知ってもらいたいと思いました。

ラミーのペンは様々なインダストリアルデザイナーがデザインしていますが、とてもラミーらしいと思っているのは、従来のペンのデザインに囚われず、機能的にも意味のあるデザインです。

私が最もラミーらしいと思うペン、それはステュディオです。
ステュディオシリーズはカラー、素材、仕上げなどで様々なバリエーションが存在し、ペン先も金とステンレスがありますが、実用最低限のステンレスペン先にこの万年筆らしさ、存在意義を感じます。

飛行機のプロペラをイメージしたというクリップは、接触面が小さく、服に差した時に布地を傷めにくい、デザインだけでなく機能的にも意味のある仕様です。
マットステンレスには、ゴムのグリップがつけられていて、万年筆においてこれは非常に珍しい素材の選択です。

でも金属製のボディが滑って持ちにくいと思う人も多くおられますので、実用ペン、事務用ペンとしては使いやすい仕様なのだと思っています。
ラミーの万年筆、筆記具のバリエーションは本当に豊富で、その全てはなかなかご紹介できませんが、どのモデルも万年筆を使うことは懐古趣味ではないと主張しているような気がします。

⇒ラミー2000プレミエステンレス
⇒ラミーステュディオ

想いに応えられるもの ~工房楔シャープペンシル~

想いに応えられるもの ~工房楔シャープペンシル~
想いに応えられるもの ~工房楔シャープペンシル~

私たちの身のまわりには安く買うことができる大量生産品があります。
それらによって生活が便利でコストのかからないものになった代償として、それらの品の生産国である隣国の塵芥が日本に飛んでくるのはとても皮肉なことだと思います。
本当は自国で作られた、理想を言うなら、ひとつひとつ丁寧な手仕事で作られたものに囲まれて暮らしていきたいと思っているけれど、私たちの暮らしは最早そこには戻ることが出来なくなっているのか。
でも大切に思って、こだわっている筆記具くらいはそういうものを使っていたいと思います。

その製品を作ることで、どれくらいの利益を生むかを計算されたものよりも、使う人がどれだけ喜びを得られるかを考えて作られたもの。
工房楔の永田さんはひとつひとつのものの木目や木の方向を読んで、それぞれのものが一番良い木目が出るようにモノを作っています。
大きめに切った材をペンに削り出していく時、木目が一番美しくなるところで止めます。
仕上げの磨きもツルツルにしていいもの、ある程度の粗さを残した方が良いと思えるものなど、その材に合った手触りを残したり、磨き上げたりしています。
永田さんは木については語るけれど、こういったことについては、聞かないと教えてくれない。
それが永田さんの美学だと気付いた時、非常に共感しました。
語らないところに、実はこだわっている部分があって、語らない所に一番大切なことがあるのだと教えられたのでした。

工房楔のシャープペンシルは細身で、作り手の理性が感じられる抑えた雰囲気を持っています。
何の変哲もない姿のペンというのは、こういうものを言うのだろうと思いますが、普遍的な誰にでも扱いやすいもの、でも当然大量生産、大量消費を目的としない、一人一人のために作られた優しい気持ちから生まれたもの。
工房楔のシャープペンシルでこれからいつも思い出すであろう大切にしたいエピソードがあります。

医大の受験を控えた関東の高校生の方が、一昨年当店のネットショップで花梨のシャープペンシルを購入して下さいました。
スタッフKが窓口となり、メールで何度かやり取りさせていただいて、当店の姿勢や工房楔の商品について理解していただいた末にシャープペンシルをお送りしました。
数ヵ月後、工房楔のシャープペンシルで受験し、合格することができたと報告してくださいました。

さらに、当店を訪ねるためだけに新幹線に乗ってわざわざ神戸に来て下さいました。
大学1年間で5回ほど神戸に来てくれた彼は、息子より1つ年上なだけで、文字通り息子のように感じられる存在で、他人には思えない。
彼が受験勉強やその後の勉強で酷使していた工房楔のシャープペンシルはヒビ割れし、色も手の汗を吸って変色したものを楔の永田さんがヒビを補修し、磨きなおしてとても美しい姿に生まれ変わらせました。

シャープペンシルがまた新品みたいになった時、エージングが元に戻ってしまったと思う人もいるかもしれないけれど、永田さんはそういうことも理解して、新品のようにしてみせた。
手に入れて、使い込んで、何かあった時修理に出して直してもらう。

ペンはモノでしかないけれど、そこに想いがこもることで、ペンを購入された時のお客様と私共のやり取りなどの記憶が伴い、ただのモノでない、より大切にできるモノに感じられます。
全てのものがそういう想いに応えられるわけではなく、工房楔のシャープペンシルのような味わいを持つようなものがそのひとつなのだと、永田さんに、今は医大生になった彼に教えられたのでした。

⇒工房楔ペンシル・エクステンダーTOPgid=2125793″ target=”_blank”>⇒工房楔ペンシル・エクステンダーTOP

格を備えたもの ラミーサファリ/アルスター

格を備えたもの ラミーサファリ/アルスター
格を備えたもの ラミーサファリ/アルスター

最近、格とか品ということをずっと考えています。

ある物は格が高いか低いか、品を備えているかどうかなど、それは言葉では定義しにくいけれど、何となく感覚的には分かる。
そしてそれは後から取り繕っても簡単には上げることのできないもの。数値や性能だけでは測ることのできないもの。
それが様々な物の格だと思います。
最近よく考えているけれど、ずっと以前から格ということは商品選びにおいて気にしてきました。

一番格下だと思うのは、何かを真似たオリジナリティのないものです。
万年筆というのは、もともと高い美意識を持った人が使いたいと思う物だと思うので、そういう人たちには、下品な気持ちから生まれた格の低いものを使って欲しくないという想いをいつも持っています。

ラミーサファリ・アルスターを、初めて万年筆を使うけれどあまり高いものを最初から買うのは怖いという人に勧めます。
ただ値段が安い万年筆は他にもあるけれど、そういったものに格が備わっているものは少なく、サファリにはそれを感じるからです。
万年筆としては安い値段のサファリですが、他の低価格の万年筆が持っている高い万年筆の代用品的な感じがありません。

オリジナリティのあるデザインと学童用というターゲットに合わせた全ての仕様。
製品というのはこういう風に作るのだと、この万年筆は同業者や私たちのような販売員にもメッセージを伝えようとしているような万年筆です。
もっと早くサファリの良さを知っていれば良かったと思いますが、品とか格について感覚的でも理解できるようにならなければ、それに気付かなかったのだと思います。
私たちのように万年筆を使ってきたキャリアがある程度あるような人でもサファリは使う理由がある万年筆だと常々思います。

軽いボディとパッチンの勘合式キャップで、丈夫で何でも挟むことができる大型のクリップも備えている。
コートのポケットなどに入れて出先で書く、万年筆での長時間の筆記に疲れたので気分を変えたい。
リングノートのリングに差し込んで持ち歩いたり、カジュアルで何となくアーティスティックな使い方ができると思っています。

新しく発売されたラミーのブルーインク用消しペン「INK-X」もサファリを快適に使う役に立ちます。

万年筆は消すことができないという常識をINK-Xは覆しました。
ブルーのインクに限りますが、白い方のペンが消しペン、消しペンで消した跡には万年筆のインクが乗らないので、反対側のラミーのブルーと同じブルーのペンで書きなおす。
ノートや手帳をきれに保ちたいと言う人にはとても便利で、INK-Xの存在でラミーを使いたいと思っていただけると思います。

当店でサファリ・アルスターを選んでもらう時、まずボディの色を選んでもらいます。
プラスチックのボディで色数が豊富なサファリか、丈夫なアルミボディのアルスターか。
ボディが決まったらEF(極細)、F(細)、M(中)の字幅を試してもらう。
ノートに書くのに使うという人のほとんどはEFになるけれど、FやMの滑らかな書き味も捨て難い。
サファリを調整して販売していると言うと驚く人もおられますが、力を入れなくても紙にペン先を置いただけでインクが出てくれる万年筆らしさを感じてもらいたいし、万年筆を買う楽しさも味わってもらいたい。

万年筆を使われていな方には少し敷居が高く感じられるものを躊躇わず、まず使ってもらいたい。

そんな思いを持ってサファリをいつも勧めています。

⇒LAMY サファリ
⇒LAMY アルスター
⇒LAMY 消しペン「INK-X」