ペリカンM300の粋

ペリカンM300の粋
ペリカンM300の粋

上着を着ている時は内ポケットがあって、そこに手帳とペンを入れています。
ペンケースも持ち歩いていますが、すぐにメモを取りたいと思う瞬間は突然やってくるので、いつも手近なところにペンと手帳があって欲しいのです。

上着を着なかったり、収納スペースを増やすためにもシャツには胸ポケットがあって欲しいし、ポケットは口の部分が補強された丈夫なものであって欲しい。
今年はまだ涼しいけれど、暖かくなって上着のいらない季節になるとよくベストを着ます。
ベストの良いところは暑い季節に上着を着ずして、何となくちゃんとして見える、お客様に対して失礼のない格好に見えるところです。
マイルス・デイビスの影響か何か忘れましたが、ブルックスブラザーズで服をオーダーすることが長年の夢で、ジャケットまでは作るお金がなかったので、以前ベストをオーダーして今も着ています。
とても気に入っていて、1年中着ていたいと思うほどです。

気に入っているベストですが、わずかな問題があります。それはポケットです。
ベストにもたいてい胸と両腹にポケットがついていますが、それはとても浅いものです。
普通のペンでも、例えばペリカンM400くらいのものでも底が当たってしまうので、多くの万年筆はベストのポケットに差すことができません。
万年筆の両端を平らにした万年筆をベスト型と言うのは、浅いベストのポケットにも入るということでそう呼ばれていましたが、ベスト型で少なくとも私のベストの胸ポケットに差すことができるのはペリカンのM300くらいで、これは昨年も使ったネタですが、ベストとM300の組み合わせをぜひ試していただきたいと思います。

M300はペリカンの万年筆の中で最も遊び心を感じさせてくれる万年筆で、これだけ小さなものなのに、他の普通サイズの万年筆、特にM800とほぼ同じプロポーションを持っていて、そういうところに茶目っ気を感じます。
M300の遊び心はその書き味にもよく表れています。
ペリカンの最も大きなペン先を持つ万年筆M1000がとても柔らかい、とろけるような書き味を持っていることは知られていますが、M300も実はM1000同様にとても柔らかい書き味を持っています。

それらは例えば早いスピードで書き続けるには適さないかもしれないけれど、一文字ずつ味わいながら書きつけることができる。
手帳に一文字ずつ丁寧に文字をしたためていくのに合ったものなのです。
ペリカンの真面目な遊び心に溢れた万年筆M300とベストの季節がやってきまし
た。

⇒ペリカンM300