KBSドイツ紀行1

5/7(火)~15(水)に、ニュルンベルクを拠点にドイツ南部に行ってきました。

ル・ボナーの松本さん、590&Co.の谷本さんと当店との集まりを「神戸文具シンジケート(略してKBS)」と名付けた、仕事としての旅でした。

旅の目的は2つあって、1つはメーカー訪問をして、そのメーカーさんとの結びつきを強くするということ。もう1つは商品の仕入れでした。

メーカー訪問は今回カヴェコ本社を訪問して社長のマイク・ガットバレットさんにお会いしました。

ニュルンベルク本社の仕事の現場をマイク氏が自ら案内して下さって、カヴェコ創世期から現代に至るまでの様々なペンを拝見して、手に取らせていただきました。

とても楽しく勉強になった訪問で、お休みにも関わらず出勤して下さって、私たちを親しみのあふれた態度で迎えて下さったマイク氏に3人とも感謝しました。

カヴェコの訪問についてはまた次の機会に、改めて書かせていただこうと思っています。

円安とドイツ物価高の影響で、ドイツのものを輸入して日本で販売することがとても難しくなっています。

14年前にも同じKBSのメンバーでドイツに来て、ショップ、蚤の市で商品を仕入れて店で販売しました。あの時はお店で普通に買ったものが日本で販売することができましたが、今はとても難しい状況になっています。

もちろん今回もお店を何軒も回り、滞在中の時間の大半をそれに費やしましたが、悲しいくらい成果がありませんでした。

蚤の市も広大な会場を丁寧に見て回りましたが、ペンを出している人がほとんどおらず、こちらも成果ゼロの状態。

仕入れで助けられたのは、カヴェコのマイク社長のコレクションから譲っていただいたものと、ニュルンベルクペンショーで購入したものでした。

それらはまた何かの機会に販売したいと思っています。

今回ニュルンベルクに宿を取って、ニュルンベルク周辺の街、ミュンヘン、ヴュルツブルク、ハイデルベルグなどを訪れました。

14年というかなり長い期間をおいてから同じニュルンベルクを訪ねましたので、前回との様々な違いを見聞きして、時代の流れを感じました。

円安などの物価の違いの他には、今回たくさんのバスや電車を乗り継いで多くの街を訪れましたが、14年前は行く先々で見かけた日本人を殆ど見掛けなかったということもありました。前回は6月、今回はゴールデンウィーク明けという時期の違いはもちろんであったと思いますが、観光地であり、比較的大きな都市であるニュルンベルグやミュンヘンでも日本人を見掛けなかったことは、14年前との違いのひとつでした。

だからと言って人が少なかったわけではなく、土日祝日はもちろん、平日でも昼を過ぎると多くの人が街に出て来て、レストランのテラス席はどこも満員になっているように思いましたので、景気が悪いようにも見えませんでした。

しかし、ニュルンベルグやミュンヘンなどではホームレスの人を多く見かけましたので、より格差が大きくなっていることを表しているのかもしれません。

あっという間に過ぎた一週間で短すぎると思いましたが、仕事の一つのあり方として糸口が見えた気がしますので、有意義な旅だったことには間違いありません。

ドイツの街を見て感じたことを書きましたが、来週以降また詳しくご報告していこうと思います。

ドイツ行きで国産万年筆について想う

昨年9月にドイツ行きの話が持ち上がって、まだ先だと思っていましたがとうとう来週になりました。

横浜のイベントが終わってから真剣に考えようとか、日常の仕事に忙殺されて、楽しみだったはずのドイツ行きについてあまり考える時間を持てなかったのは少し残念ですが、思い残すことのないように楽しみながら仕事してきたいと思っています。

ドイツ行きの話は590&Co.の谷本さんが持ちかけてきましたが、どうせ行くなら前にも一緒にヨーロッパに行った、ル・ボナーの松本さんも誘って、ドイツ最大の蚤の市トレンペルマルクトに合わせて行こうということになりました。

14年前同じメンバーでドイツ、チェコ、イタリアを旅した時に、ベルリンで蚤の市に行きました。

ベルリンでは週末に街中の色々な場所で大小の蚤の市が開催されていました。それは例えばペンショーのようなイベントが、街中で開催されているようなものでした。

私たちは地下鉄を乗り継いで蚤の市をはしごして、たくさんのペンを仕入れました。お店で定価で買ったものもありましたが、そういうものでさえ日本に持って帰って販売する値段をつけることができたのです。

今回、空港に行く前にある程度のお金をユーロで持っておこうと思い、交換所を探しましたが、コロナ禍以後かなり少なくなっていました。結局休日に訪れた京都で両替しましたが、円の安さを痛感しました。

円の弱さは今の日本経済の弱さを物語っているのだと思いますが、本当にそんなに弱いのだろうか。

確かに日本経済は苦しんでいるけれど、京都にも本当に多くの外国人の方が来ていて楽しそうに過ごしています。

日本はこの国を訪れた外国人の方々に良い思い出を持って帰ってもらって、また来てもらうことに成功していると思います。私たちも同様に努力しなければと思います。

為替の影響もあって、全ての輸入筆記具の価格が上がっています。

ユーロもドルも高いから値段が上がるのも仕方ないのかもしれませんが、値段に見合った価値にすることを考えなければ、売れなくなってしまうと思います。

それに対して日本の万年筆はどうか。国産万年筆も少しは価格が上がったかもしれませんが、輸入筆記具とは比べものにならず、その価格差は広がるばかりです。

その中でも日本の作家さんが作った万年筆の存在が大きくなっているような気がします。

そういう万年筆の場合、使う素材も違うし、ハンドメイドなので本数が少ないということもあって、同じ国産の量産品に比べると価格は高くなってしまいます。しかし希少性やオリジナリティのようなものがあって、コストパフォーマンスの高い量産品を凌ぐ魅力を感じる人も多いでしょう。

当店では綴り屋さんの万年筆を扱っていますが、量産品とはまた違う存在感があると思っています。14金ペン先を装着して、当店らしい書きやすさも感じていただけると思います。

私は綴り屋さんの万年筆を扱い始めて、作品だけではなく、修理などアフターサービスの対応の良さにも感銘を受けました。お客様方に安心して長くご愛用いただけるために、とても大切なことだと思います。

*5/7~16までドイツ出張のため、次回の更新は5/17です

キャップレスを選ぶ

家に帰って夜机に向かうと、まず正方形のウィークリーダイアリーにその日1日の行動記録を書くことから始めます。

その日何をして、誰が来て何を依頼されたかを、細かい字で箇条書きにしておきます。それが後々役に立ったということが、今まで何度もありました。

お客様が万年筆を購入するという特別なことをされる店として当店を選んで下さったことを、その華々しい出来事を誰も見ていなかったとしても、私だけはその場に立ち会っている。お客様とその万年筆との出会いを立会人である私がこの手帳にちゃんと記録しておくことが、ささやかですがお客様のお気持ちに応えることだと思っています。

記録を書くためには、時刻と出来事、できればお客様のお名前もメモしておかなくてはいけません。お客様と話しながら、調整の合間に素早くメモできるように、ジョッターをいつも傍らに置いています。

そして筆記具も素早く書き始められるものが必要です。

急いでいる時はノック式のボールペンなど、すぐに書き出せるペンがあるとついつい手が伸びてしまいます。やはり万年筆のキャップを回して開けて書き出すというのは悠長な行為なのかもしれません。

万年筆を愛用する者として、それくらいの心の余裕がなくてどうすると思わなくもないし、そんなに急いでいるのなら万年筆を使わなければいいということになりますが、書ける文字の美しさや書き味などを考えると、忙しい仕事の時間でもやはり万年筆で書きたいと思います。

そしてそれを解消したのがパイロットキャップレスです。

キャップレスはある程度万年筆に知識のある人なら誰もが知っている万年筆で、その名の通り「キャップのない」ノック式の万年筆です。

キャップを開けるという動作をなくした画期的な万年筆で、最早万年筆の中のひとつの種類というよりも、「キャップレス」という種類の万年筆と言えるほど、独特で大きな存在です。

キャップレスを買いに来た人に他のペンはお勧めしにくいけれど、万年筆を買いに来た人にキャップレスをお勧めすると、喜ばれることもあります。

キャップレスにも様々な種類があって、その特長をご説明します。

最も携帯性に優れたキャップレスがキャップレスデシモです。他のものよりも軽く細めで、ポケットや手帳のペンホルダーにも差しやすい、携帯性に特化した作りになっています。

キャップレスでも万年筆らしい書き味を味わいたいという方には、キャップレス、キャップレスLS、キャップレスストライプ、キャップレス絣、キャップレス木軸など重量のあるものをお勧めします。

重量感があるので18金ペン先の柔らかさが感じられ、どっしりとした安定感があって、筆記バランスも優れています。

キャップレスの中でも、金トリムでブラックのモデルだけ<FM>(中細)の字幅が設定されていて、メモ書きにとても使いやすい太さです。

キャップレスLSは、キャップレスの機能性に上質さを加味したモデルです。

軸の握り心地の良さ、ゆっくりペン先を格納するアクション、さらにペン先を繰り出す際のノック音も無くして、今まで実用品に徹していたキャップレスがこのLSで優雅さも併せ持ちました。

かなりのバリエーションを持つようになったキャップレスシリーズ。

素早く書きたいという欲求から生まれたもので間違いはないと思いますが、そこに相手を待たせたくないという日本的な思いやりが込められている、日本らしさについて思わずにはいられない万年筆だと思います。

⇒パイロット キャップレス TOP

当店が目指すもの

横浜に出張販売に行ってきました。

横浜出張販売は「&in横浜2024」と銘打った、590&Co.さんとの共同出張販売でした。

590&Co.の谷本さんは今最も求められている木軸シャープペンシルを中心に品揃えして、多くのお客様を集めています。早い段階から木軸のシャープペンシルに注目されていましたので、時代が谷本さんに追いついたのだと思います。

中高生から大人までを夢中にさせる590&Co.さんに対して、当店はどういうものが求めらているということと関係なく、万年筆にこだわっています。それは万年筆のある生活を根付かせたいということと、書き味の良い万年筆を提供したいということを追究してきたからです。

たくさんのお客様が来てくださったら尚良いけれど、それよりもまず自分たちの理想とする店のあり方を示すということを目標にしています。

昨年その必要性を感じて、今回の横浜から森脇も調整機を持参し、調整士2人態勢で臨むことにしました。結論として、二人でやって良かったと思いました。

調整の予約枠は全て埋まってしまっていましたので、今までの1人態勢なら飛び込みのお客様に対応できませんでしたが、今回はそういうお客様にも対応できました。

ペン先調整をする万年筆店はそれほど多くないけれど、調整士が2人いるというのはもう当店しかないと思いますので、これは強みだと思いました。

当店の研ぎで名前が知られ始めて、ご注文が多くなったのは三角研ぎです。

1本のペンで太くも細くも書ける研ぎ方ですが、ヌルヌルと書ける太い所で書いても書く文字にエッジがあって、きれいな文字が書ける研ぎだと思っています。

純粋に使うのが楽しい万年筆なので、好奇心もあってご注文される方が多いのだと思います。

でも私は日常店で行っている通常のペン先調整、もともとのペンポイントの形を尊重して、より滑らかに書けるようにすることも得意としています。

これは研ぎというよりもペンポイントの形を整えるような感覚でやっていますので、それぞれのメーカーの書き味を残すという意味でこれが本来のペン先調整と言えるのかもしれません。

横浜出張販売の前夜、準備を終えて日ノ出町まで歩いて中華を食べに行きました。

ネット検索で調べたその店は、扉を開けることも躊躇われるくらい古い昭和風情の店でしたが、中に入ると仕事帰りのサラリーマンで賑わっていました。

対応も親切で、味は今まで食べたものが高すぎると思うくらい美味しかった。

食べ物屋さんは外観がきれいでカッコよくても味が不味かったらどうしようもない。まず美味いものを提供することが一番の、もしかしたら唯一の役割だと、当たり前のことを改めて思いました。

万年筆店もまず書き味の良いペンをお客様に提供するということが最も大切な役割で、それができていないと見掛け倒しになってしまう。

店の外観を疎かにしてもいいという意味ではなく、最も大切なことが抜けていてはダメだということです。

出張販売には万年筆以外に、様々なステーショナリーなどを持って行きますが、結局皆様から求めらていることは、書き味の良い万年筆やお持ちの万年筆を書きやすくするペン先調整なのだと、外に出るたびに思い知らされます。

万年筆の仕事をするようになった時から、ルーペで研ぎの形を見ることが好きでした。

メーカーそれぞれの研ぎの形は違うし、書きやすいと思うペンの研ぎは例外もあるけれど、多くの場合美しい形をしています。

自分の手で美しい形を作り出して、この道を追究して極めたいと思ってずっとやってきました。

店を始めた時よりも今の方が気付くこともあって、当然上手くはなっているけれど、調整の上達に終わりはないと思っています。

研ぎにこだわって書き味の良い万年筆を提供するということが、当店が目指している店のあり方で、それが面白いと思って下さる方がおられるなら、海外にも行ってみたいと思っています。

&in横浜2024 のご案内

4/13(土)14(日)、590&Co.さんとの共同出張販売 &in横浜を伊勢佐木町ギャラリーシミズで開催いたします。

今年で3回目となる&in横浜ですが、前回、前々回とも雨で、お客様方にはご不便をお掛けしてしまいました。今年こそ良い天気であってほしいと思っています。

590&Co.さんは開場前からある程度の時間まで入り口で整理券を配られますが、当店にお越しの方は整理券は取らずに、そのままご入場下さい。

今回お持ちする商品を少しご紹介します。

今回は万年筆をメインにお持ちする予定で、委託販売のペンも相当数お持ちします。

お客様からお持込みいただいている委託販売ですので、その品数にもかなり増減があります。今はかなりの数をお預かりしており、WEBサイトにご紹介できていないものも多数ありますので、横浜にお持ちしたいと思いました。

過去の限定品や、廃番になってしまったモデルなど、今では手に入らなくなってしまったものも多く、ご覧になるだけでも面白いと思います。

綴り屋さんは今回も頑張って下さっています。まだ入荷していませんが、下記のペンが横浜に間に合う予定で、私は最近ずっとそれに合わせるペン先の準備をしています。

昨年の590&Co.さんでのイベントでお披露目して人気があった、漆黒の森溜塗りテクスチャーシリーズ。溜塗の表情を出すために軸の中央部に細かい凹凸をたくさん作るというアイデアは、自由に、より良いものを作りたいと考えている綴り屋さんならではだと思いました。

すごい杢が出ている静謐ウォールナット根杢も、少数ですが作っていただきました。

静謐拭き漆、アーチザンコレクションブライヤーも既に店にあるアーチザンコレクションアンボイナバール、メイプルとともにお持ちします。

先日入荷してすぐ完売してしまった、バゲラさんの新作3本差しペンケースもお持ちできることになりました。

この出張販売に間に合うよう仕上げて下さったもので、バゲラさんらしいアヴァンギャルドで存在感のあるものになっています。革目のちょっとした割れ目にステッチを忍ばせた部分もあり、金継ぎのようだと思いました。

バゲラさんの正方形ダイアリーカバー、システム手帳、1本差しペンケースそして味のある形のレザートレイも3色揃えてお持ちします。

出張販売の時はいつも、作家さんたちの新作をお持ちするのに精一杯でした。そこで少し趣向を変えて、万年筆にテーマを持たせて品揃えしてみました。

今回は、パイロットキャップレスを螺鈿からデシモまでご用意して、当店の特長である「三角研ぎ」もラインナップしています。

キレのある文字が書けたり、立てて書くと細く、寝かせて書くと太く書けるので1本で線の太さを書き分けることができます。また面を合わせて書くとヌルヌルとした書き味になります。

様々な書き味、文字の太さが1本の万年筆でできるので、持ち運んで使うことの多いキャップレスと三角研ぎが相性が良いとよく言われ、人気があります。

筆記線の変化の幅の大きさ、書き味の良さから、Mから三角研ぎにしたペン先を用意していて、お好みの軸におつけする予定です。

ペン先調整のご予約の枠も全て埋まっていて、とても有難いことだと思っています。昨年も一昨年も、飛び込みでペン先調整をご希望される方も多くおられて、ご予約が全て埋まっていてその時はお断りせざるを得ませんでした。
ですが今年は森脇もペン先調整できるようにしておりますので、飛び込みのお客様のペン先調整もなるべく対応したいと思っています。

当店は万年筆店なので、出張販売でも万年筆を中心に品揃えさせたいと思っています。今回は万年筆の様々なものが用意できて、それが実現しそうです。

イベントの前はいつも、お客様が誰も来られなかったらどうしようと、プレッシャーを感じます。あれこれ準備を進めていますので、ぜひご来場下さい。

[&in横浜2024]

4/13(土)10時~18時 14(日)10時~15時

ギャラリーシミズ 横浜市中区長者町5-84三共横浜ビル1F

アウロラのメッセージ

文具業界に就職して32年になります。

若い頃、ローリングストーンズが結成25年で、四半世紀も続いている超ベテラングループと言われていましたが、その時のストーンズよりも長く同じ仕事を続けていることに驚きます。でも、その時店長だった方が今も現役で売り場に立っていると聞くと、私もまだまだだと思います。

就職した時は特に文具が好きだったわけでもなかったけれど、仕事をしているうちに文具が好きになって、32年経った今でも好きだと思えて、仕事にできていることは幸せなことだと思っています。

私が文具店に入った時、ちょうどモンブランヘミングウェイやセーラー80周年ブライヤーなど、後々人気が出る限定品が色々発売されていました。でも当時はまだ時代がついてきていなかったのか、あまり人気がありませんでした。

モンブランの限定品でさえ売れ残っていたので、他のメーカーの限定品も当然売れていませんでした。

ビスコンティ、デルタ、スティピュラなどイタリアの新興万年筆メーカーの様々なテーマの限定品が出回り始め、限定品ブームというものが始まりました。それがブームと言えるような大きな流れになったのは、ヘミングウェイ発売から5、6年後だったように思います。

ブームの始まりはもう少し前で、そういうものに敏感な方々だけが買いに来られていたといった感じでしたが、始まりというのはそういうものだと、何度か経験して思います。

当時はイタリアの限定万年筆ブームでしたが、その中でもアウロラはマイペースだったと思います。

新興メーカーは年に何本もの限定万年筆を発売していましたが、アウロラは5年ごとの周年万年筆か他のテーマの限定品をポツポツと出す程度でした。

それが私たち販売員にはもどかしく思えましたが、今から考えるとブームに流されずに堅実にやっていたということだと思います。

その時ブームを牽引していた他のメーカーたちが現在どうなっているかというと、ビスコンティは経営が創業者の手を離れ、デルタは廃業、スティピュラは長い沈黙をしたまま万年筆を発売していない状態です。そう考えると、アウロラのやり方は正しかったのだと思います。

32年間いろいろなものを見てきましたが、そういうことが自分の仕事の教訓になることが多く、そのおかげもあって今こうしているのだと思います。

仕事は今だけが良くてもダメで、長い年月継続してやっていくこと、立ち続けていないと意味がありません。

そのために時代を読むことも必要なのかもしれないけれど、自分たちが正しいと思うこと、自分たちが楽しいと思うことをやり続けるということをアウロラという会社の生き方から学んだと思っています。

若い頃、自分で買った2本目の万年筆はアウロラオプティマでした。

書き味よりも何よりもそのデザインが気に入っていました。

キャップを閉めた状態では短めで、ペリカンM400くらいの長さで小振りな方ですが、キャップを尻軸にはめると適度な長さになって、バランスも良い。

若い頃はオプティマをスーツの胸ポケットに差して、それだけで朝家を出るのが楽しかった。

色気のあるカーブを持つクリップと黒いキャップトップがちょこんと見えて、胸ポケットに差して絵になる万年筆だと思っていました。

オプティマはアウロラの人気のある定番品ですが、オプティマ365という限定品のシリーズもあって、そちらは18金ペン先になっていて差別化されています。

18金ペン先と14金ペン先のフィーリングの違いについて言うと、14金ペン先の方がかなり硬めになりますが、使っていくうちに柔らかくなって馴染んでくれます。

初めから柔らかくウットリする書き味を持った18金と、使い込んで柔らかくなるように育てる楽しみのある14金という違いがあります。

優劣ではなくただそういう違いということで、育てる楽しみのある14金ペン先も悪くないと思えます。

アウロラのほとんどの万年筆のペン芯がエボナイトでできています。

エボナイトのペン芯の特長は、長年使うとインクを吸収してペン先と馴染んでいき、書き味が良くなっていきますので、14金のペン先が育つのと似ています。

デメリットはひとつひとつ削り出して作らなければならず、大量生産に向かないということが挙げられます。

当店では、ペン先とペン芯の合わせ加減を調整して最適な書き味にしています。アウロラのエボナイトのペン芯で、ペン先とペン芯の調整でより深みのある書き味を作り出すことができるのは、調整の醍醐味だと思っています。

最初はただファッションでオプティマを使っていましたが、気がついたらペン先が育っていて、代え難いものになっていました。

そんな楽しみもアウロラにはあります。

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イタリアのモノづくり

いつかアウロラがあるトリノに行ってみたいと思っています。

アウロラの工場やショップを見学したり、アウロラのペンが生まれる街の雰囲気を感じてみたいし、トリノに日本人の奥さんと暮らしている友人とも久し振りに会いたい。

その友人が日本でアウロラの営業マンをしていた時、アウロラ本社からマーケティング部長が来日して、友人が日本中の店を案内して回ったことがありました。

マーケティング部長は友人とは全くタイプの違う、調子が良くて陽気なイタリア人の典型のような人で、毎日仕事が終わると女の子のいる店に連れて行けとせがんだそうです。

マーケティング部長のような人物像を私たち日本人はイタリア人のイメージとして持っていますが、友人は基本的には無口で感情を表に出さないタイプの人で、付き合ううちにガンダム好きで料理が得意ということが分かり、意外に思いました。でもそんな人だから共感し合えたのだと思います。当たり前だけれど、イタリア人にもいろんな人がいるのだと、その時思いました。

内田洋子さんの本でそのことを裏付けるような話がいくつも書かれていて、リアルなイタリアを感じました。イタリアも、明るい太陽と美味しい食べ物に溢れた天国のような国ではありませんでした。

3月末日までアウロラフェアをしています。

期間中アウロラのペンをお買い上げの方全員に、トリノがある北イタリアの話が出てくる内田洋子さんの本を差し上げています。そしてそのペンが税込55,000円以上なら、さらにアウロラのペン先をかたどったブックマークか、フラコーニ100ボトルインクのお好きな色を1色プレゼントしています。

高価なアウロラのペンを買って、文庫本をプレゼントされて嬉しいのかと思われるかもしれませんが、これがけっこう好評で私も喜んでいます。

ただのイタリア繋がりで本をプレゼントするのではなく、自分で読んだ中からそのペンが生まれた国を身近に感じられる内容のものを選んでいるので、喜ばれているのかもしれません。

中高生の方も最近は当店に来られる機会が増えたのですが、皆さんによく質問されるのは「どのペンが一番好きですか」というものです。

そういう時に私はよくアウロラです、と答えます。

私はアウロラ88ゴールドキャップを長く使っています。程よくエレガントなデザインは、センスの良さと絶妙なバランスを感じさせるし、今でも書くたびにその書き味の良さを感じて、とても気に入っています。

長く使っているとペン先が柔らかくなって、思い通りにインクが出てくる感じになってきます。使ううちにそのように育ってくれる面白さもあり、アウロラの良さを感じるのは、長く使ってからかもしれません。

アウロラは自分たちの理想とするペン作りを貫くために、大きな会社の傘下に入ることなく家族経営を貫いている小さな会社で、全ての部品を自社で製作しています。

各部品を外注したり下請け会社に製作依頼していると、どうしてもロットが発生するため、部品の在庫がなくなると修理が困難になります。でも自社で製作しているアウロラは、たいていのものを修理することができます。

良いものを買って、それを「直しながら長く使う」ということがイタリアのモノ作りの精神で、アウロラはそれを今でも実践している数少ないメーカーのひとつです。

そういうイタリアの良心を持ったメーカーの万年筆を使っているということが、モノを扱う仕事をしている人間にとって精神的な支えのようなものになっています。

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自分らしさを表現する〜バゲラの革作品〜

母校の伊川谷高校の近くに同級生の葛城君がご夫妻で営むベルグバーンというケーキ屋さんがあります。その業界では有名なお店で、アウゲンというお菓子は1年待ちになっているそうです。

高校の同級生が努力して、自分の店を名店と言われる存在にまでしたことを誇らしく思います。

ベルグバーンのケーキはどれも他のお店にあるものとは違っているような気がします。当然どれを買って帰っても美味しいのだけれど、月火の定休日も店でずっとケーキを作っているそうで、長年その仕事に携わっている職人が手を抜かず、全て自らの手で作っているケーキが美味しくないはずはないと思います。

無口な葛城君がケーキなどのお菓子作りで自分らしさを表現しているのを見ることができるので、ベルグバーンに行くのがとても楽しい。

私たちのような小さな店こそ、自分らしさを表現しなければいけないとつくづく思います。

当店は自分たちでモノを作らないけれど、作家さんやメーカーさんが作ったモノの良さをお客様にお伝えして、さらに楽しく使えるように、様々なものと組み合わせてお客様に提案することが仕事だと思っています。

それがお店の個性であり、それがないとお客様に商品を買っていただけないのではないだろうか。情けないことだけど当店はその表現がまだまだ足りていません。当店で買って下さっているお客様が当店のことを自慢に思えるような店になりたいと思っています。

当店に超個性的で素晴らしい作品を卸してくれているバゲラさんは、自分たちらしさを表現するということでも超一流で、バゲラさんの革作品を扱うようになったことは当店にとって大きな刺激になっています。

先日納品していただいた新作の3本差しペンケースは、今まで作ってくれていた1本差しをストレッチしただけではなく、ちゃんと3本がまとまっていて、美しい仕上がりになっています。新作だけど一目でバゲラさんのものだと分かります。3本差しはすぐに売り切れてしまいましたが、また近いうちに入荷する予定です。

オリジナルの正方形ダイアリーカバーは、オリジナルダイアリーをさらに魅力的に思ってもらうためにも必要なものだと当店からお願いして作ってもらいました。

仕様に関しては全て高田さんにお任せしていますが、太さが調整できる伸縮式のペンホルダーを備えるなど、ペンへのこだわりの強い当店のお客様のことをよく分かって下さっている仕様になっています。バゲラさんらしさを出しながらも、ターゲットとなるお客様のお好みに合わせて下さるところも、プロフェッショナルの仕事だと思います。

後ろ表紙の折り返しの部分(裏表紙の裏)に、高田さんらしさが強烈に出ていて笑ってしまいました。直線にカットするのではなく、革の状態の時の自然なままのラインが生かされていて、高田さんの表現の自由さを感じることができました。

他の部分は完璧に作り込んだ上で、1箇所こういう仕上げがあるというのがいいのだと思います。

私は初めて見て、大いに驚いてすごい仕事だと思ったけれど、高田さんからするといままでも普通にやってきたことなのかもしれません。

この部分があるだけでも、私はこのダイアリーカバーを使いたいと思いました。

キチンと正確なモノ作りも尊いものですが、さらに圧倒されるような個性的な表現が盛り込まれている。

私たちも自分たちの仕事で個性を表現していかなければと思います。

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万年筆の価値感~カヴェコ導入~

5月にル・ボナーの松本さん、590&Co.の谷本さんとドイツに行きます。

14年前にも同じメンバーでドイツ、チェコ、イタリア旅行をしましたが、その時にも立ち寄ったニュルンベルグに1週間滞在して、蚤の市、ペンショー、ショップ巡りをしてきます。

カヴェコ社を訪問して社長に会うということも日程に入っています。ニュルンベルグ近郊はカヴェコ以外にもファーバーカステル、ステッドラー、スタビロなどのステーショナリーメーカーがあり、ステーショナリーの街と言ってもいいところです。

神戸も文具店が多いと、他所から来られたお客様によく言われます。たしかに元町には当店と590&Co.さん、神戸と三ノ宮にはナガサワ文具センターさんが3店舗あります。どの店もこだわりのある店で、そういう店が近くに5つもあるのは珍しいことかもしれません。
私の願いは、神戸に様々な文具店はもちろん、文具メーカーも誘致して、神戸をステーショナリーで活性化できたらというものです。

5月のドイツ行きを目指して、谷本さんは忙しい合間にコツコツとドイツ語を勉強しているし、松本さんはいかに旅を楽しくするかを色々調べてくれています。私は何をしているのだろう・・・。
そんな話をしていると、バゲラの高田さんにドイツに行くまでにドイツ語の単語を少なくとも300個は覚えた方がいい、と言われてしまった。
話が少し逸れましたが、カヴェコを訪問することもあり、カヴェコの品揃えを増やしました。


私の世代の万年筆愛好家は金ペンへのこだわりが強く、万年筆は金ペンであって欲しいとどうしても思ってしまう。それは書き味のこだわりで、メーカーごとの書き味の違いや、使い込んで馴染んできた万年筆の書き味を味わうことを万年筆の醍醐味だと思っているからかもしれません。

でも若い人はそれほど金ペンにはこだわっていなくて、もっと自由に楽しく万年筆を選んでいます。
スチールペン先でも楽しめる万年筆の筆頭がカヴェコであることは分かっていましたが、私自身の金ペンへのこだわりが強くて、取り扱いに長らく躊躇していました。
でも今回のカヴェコ訪問を機に、改めて当店なりのカヴェコの楽しみ方を考えてみたいと思いました。


1883年にハイデルベルグで創業し、1950年代最盛期を迎えたカヴェコでしたが、1976年に会社がなくなってしまいます。
1994年にニュルンベルグのグッドバレット社がカヴェコを復活させて、万年筆とボールペンを革ケースにセットした「カヴェコスポーツ」が登場しました。
その時のことをよく覚えています。
若かった私は今より頑なに万年筆は金ペンでないといけないと思っていて、ある日突然入荷した今までの万年筆と全く違うカヴェコを申し訳ないけれどおもちゃみたいだと思いました。
カヴェコスポーツのようなただ持っているだけで外で何を書こうかと思わせる存在の万年筆への理解がなかったし、当時万年筆はまだ実用重視なところがあって、趣味のものだという認識は少なかった。
でも本当に時代は変わって、万年筆の価値はいかに楽しいかというものになっています。

高価な限定品と方向性は違っても、スチールペン先の安価なカヴェコもそれと同じくらい楽しみを感じさせてくれる万年筆だということを、認識する必要があります。
ちょうどアートスポーツというアクリルレジン削り出しの少しゴージャスなカヴェコが発売されましたので、それを機会に以前から気になっていた「オリジナル」と「スペシャル」をラインナップしてみました。

⇒カヴェコ TOP

アウロラフェア開催します・3/1~31

平穏無事に生きたいと思って地道に生きてきた人が、晩年に自分は生涯何をやってきたのかと虚しくなることもあれば、アヴァンギャルドに生きることを実行してきた人が、中年を過ぎた時に後悔しながら平凡に憧れる。人生というのはそう思い通りにならないもののようです。

そう言う自分も、運の良さがあって今までやって来れたので恵まれていると思うけれど、自分の思った通りに生きているとはとても言えません。

それはどこの国の人でも同じで、ただ生きた場所が違うだけだと思います。

もちろんイタリア人でも同じだと思います。

そんなイタリアの光と影、見聞きした普通の人の人生をエッセイにして語る内田洋子氏の本で、私はリアルなイタリアを垣間見て、夢中になって読みました。

内田氏の本は飾りのない読みやすい文体で、現実を飾ることなく冷静に書いています。

ただのイタリア賛美や、一部のお金持ちのゴージャスな暮らしを読んでも多分心は動かない。内田氏は、イタリアに住む私と同じ一般の人のほとんどが送っているであろう上手くいかないほろ苦い日常風景の人生を書いていて、そんなところに惹かれ、イタリアの地に思いを馳せながら人生について考えることが多くなりました。

一時期ずっと読んでいましたので、私がイタリアについて語ることの多くは、内田氏の本の受け売りだったような気がします。

イタリア人の日常の中にアウロラは溶け込んでいて、辛い現実を時には忘れさせてくれるのではないか。書き味もデザインもいいものが多いイタリアの万年筆の中でも、アウロラは書く道具としての機能も高い次元で備えていて、最も好きな万年筆ブランドです。

店主が好きだと公言しているからか、店での販売機会も多いし、当店でペン先調整したアウロラは良い書き味をしていると自負しています。

本日3/1(金)から31(日)まで、アウロラフェアを開催いたします。

期間中55,000円以上のアウロラ製品をお買い上げのお客様に、アウロラのペン先を模したブックマークか、フラコーニ100のボトルインクのお好きな色を1つプレゼントいたします。

これはブランドのフェア特典ですが、当店独自の特典として、内田洋子氏の著書の中から、アウロラのあるトリノ周辺の北イタリアが舞台になっている話が入っているものをプレゼントいたします。

当店の特典である本は、55,000円未満のアウロラ筆記具(インクなど消耗品は除く)でもプレゼントいたします。

ちょうどアウロラでは非常に珍しいエボナイト軸の万年筆88エバニテジャーラが発売になったばかりです。

エボナイトはグリップがよく滑りにくい上に、熱伝導率が低いため手の熱でインクが漏れたり、インク出が多くなるのを防ぐ効果がある素材で、万年筆に適した素材だと言われています。

近年アウロラは華やかでキラキラしたアクリルレジン系の素材ばかりを使っていましたので、エボナイトを軸に使う万年筆を発売したのには驚きました。

イエローのマーブルエボナイトを使用しているのがエバニテジャーラ(黄)で、今後エバニテロッソ(赤)、エバニテベルデ(緑)などが発売されることも予想できます。

黄色のエボナイトの88にはただ華やかだけではない渋さが感じられて、イタリアの光と影を表現したものだと思います。

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⇒AURORA 88エバニテジャーラ