MOLTE PENNE~松本さんからの贈り物~

ル・ボナーの松本さんは、時々様子を見に当店を訪れてくれます。

それは創業時から変わらず、一ヶ月に一度の時もあれば、何カ月も空くこともあるけれど、いつも木曜日の開店前後に「ど~も」と言いながら入って来られます。

ブログ「ル・ボナーの一日」やフェイスブックからも人柄が伝わると思いますが、松本さんが入ってくると店の雰囲気がパッと明るくなります。仕事でのシリアスな一面ももちろん知っているけれど、華やかな存在感がそう感じさせるのだと思います。

何気ない話をするだけで、松本さんにはそんなつもりはないかもしれないけれど、いつも色々なことを教えてもらっています。時には心配をかけていることも分かっていて、それは出会って15年経った今でも変わらずで、申し訳なく思っています。

松本さんが当店に立ち寄った後、元町駅前のかつ丼の店「吉兵衛」に行くのを楽しみにしていると聞いて、私も一緒に行くようになりました。

吉兵衛は以前働いていた会社の近くにもあったので、よく行っていました。当時はご飯大盛り&とんかつダブルも普通に食べられたけれど、今は二人とも普通盛りで満足している。

今年になって、私は自分自身の心の狭さと器の小ささから取引先を失うことがありました。そんなとき、松本さんが万年筆店には必要だろうと、革のコレクションケース 「ペントランク」の製作に動き出してくれました。

途中何度も試作品を見せてもらったり、電話で進捗状況を聞いたりしていましたが、問題点や難しいところを松本さんなりに解決しながら、少しずつ形になって行きました。

このペントランクに松本さんのたくさんのの時間と労力が注がれていることが分かっていましたので、当初の完成予定は過ぎていたけれど、私には催促することはとてもできませんでした。

今思うと、ようやく第1ロットが完成した時、全て手縫いで作るこのペントランクの製作は、65歳の松本さんの体力と集中力を激しく消耗させることにご自身で気付かれたのだと思います。そして、1点ずつ全て手作業で仕上げるしかない商品を量産するのは難しいと判断され、当店への納品をためらわれておられたのだと思います。

その話を聞いて、カンダミサコさんが後を引き継いでもいいと言ってくれて、ル・ボナー松本さんプロデュース、カンダミサコさん製作のペントランク「MOLTE PENNE(モルトペンナ)」の商品化が決まりました。

松本さんが製作した第1ロットと、半額で販売するその前段階の試作品は、現在店頭で販売中で、9月24日~26日の「巡回筆店2021福岡」でも販売する予定です。

カンダミサコさんが作るものからネットショップに掲載していきたいと思っており、それは10月末から11月掲載の予定です。

店に来ていただける方、福岡の出張販売に来ていただける方にはぜひ見ていただきたいと思います。遠方の方はネットショップ掲載までお待ちいただくことになり申し訳ないですが、数が限られていて少ないこと、それぞれハンドメイドの味が濃いことなどもあり、実際に見ていただきたいと判断しました。

 革製で軽く丈夫なので持ち運びも楽で、旅に愛用の10本の万年筆持っていきたくなるケースです。

このMOLTE PENNEは、松本さんからの大きな贈り物だと思っています。

*MOLTE PENNE(モルトペンナ)・・・ブッテーロ革・価格:110,000(税込)/エレファント革・価格:165,000円(税込)

好きなシステム手帳リフィル

フォルクスワーゲンのPOLOに10年乗っています。

10年も乗るとあちこち故障するようになって、去年エンジンの4気筒のうちの1つが動かなくなったし、今年の7月には別の1気筒が止まってしまった。

4つのうち1つが動かなくてもパワーが25%落ちるだけだと思うけれど、小さな車の25%は大きく、前に進むのがやっとという状態でした。

ミッション車のように細かくシフトチェンジしてスピードに乗せてあげないと流れについていけないし、振動と騒音もすごかった。ふと大学生の頃乗っていた25万円で買った4速ミッションの中古の軽自動車を思い出しました。

その故障を直したと思ったら、8月には坂道発進する時にブレーキを離して、アクセルを踏むまでのタイムラグで後ろにツーと下がるようになった。

ミッションの車ならその覚悟もあるからいいけれど、オートマ車でこれは怖い。妻が怖がって直すまで車に乗ってくれなくなった。

先日それも修理して、妻の機嫌も直り車もよく走ってくれています。

こういった車の故障や修理のことは、日付と走行距離とともに智文堂の「そら文葉・飛行機リフィル」に記録しています。

今年は本の当たり年で、1月からずっと夢中になって読める本に出会っているので、暇さえあれば本を読んでいます。改めて、自分が歴史小説や軍記ものが特に好きなのだと気付きました。

最近は司馬遼太郎の「項羽と劉邦」を読み終えて、人の器について考えさせられました。何でも完璧にできると思っている人は、様々な器の人が周りにいてもそれに気付かず、それぞれの適性に応じて用いることが少ない。その才能やリーダーシップに惹かれてついてきてくれる人はいても、助けてあげたいと思ってくれる強い器が集まらない。つまりそのグループはリーダーの能力を超えるものにはなりません。

どんな人も受け容れる度量の大きな人や、大きな空の器のような人には、様々な才能を持った器が集まって、その人を助けてくれる。こういうグループには無限の可能性があるということになります。でもそう思うと自分には、完璧さも度量の大きさもないから困ってしまう。

ストーリーもすごく面白いけれど、そんな「人の器」について考えさせられた本でした。

いろいろ調べて買って読んだ本なので、記録しておきたいと思い、それにも飛行機リフィルを使っています。

飛行機リフィルを使っているのは、飛行機という旅をイメージさせてくれるワンポイントがあって、心が癒されるからです。若い時では考えられなかったけれど、こういう少し可愛らしいもの、ワンポイントあるものも使ってみたいと思うようになってきました。

智文堂のリフィル、バイブルサイズの筆文葉もM5サイズのそら文葉も、その多くは書くことを楽しむための趣味のリフィルだと思っています。

線を色鉛筆などで引き足したり、スタンプを押したりして、工夫しながら使う余地がこのリフィルにはあって、好きなことを書いて、ページを仕上げること自体を楽しむようにできています。

智文堂のカレンダーリフィル(バイブル・M5)もその形式ですが、2つ折り、3つ折りなどの折りたたみ式のリフィルにも惹かれます。

アシュフォードの2つ折りメモも1枚の紙に倍の情報量を書くことができるので愛用しています。

他にも一昨年から扱い始めた、あたぼうのジャバラ式ダイアリーじゃばらんだは、12カ月分のブロック式カレンダーが片面6カ月ずつ表裏で1年になっていて、広げると半年を見渡すことができます。

いちいちページをめくらなくても違う月を見ることができるメリットは大きく、ユニークだけどオーソドックスなレイアウトの使いやすいダイアリーリフィルだと思います。

小さなサイズの手帳の中にそのサイズを超えたサイズの紙があるということが嬉しくて、折り畳み式のリフィルが好きなのだと思います。

私も同じだけど、システム手帳ユーザーの不思議は、ページをめくることや、リングを開いてリフィルを移し替える手間を惜しむところだと思っています。

リングを開けてページを移し替えることができるのがシステム手帳のメリットで、それを惜しむのは、万年筆ユーザーがキャップを開ける手間を惜しんで、勘合式キャップを探し求めたり、パイロットキャップレスを使い出す気持ちに似ていると思います。

車の故障に関しては、POLOが故障しやすいのではなく、走行距離が少ないからといって私が点検に出すのを怠っていたせいだと今は反省しています。

*智文堂 そら文葉「飛行機」

*あたぼう じゃばらんだ・2022年ダイアリー

ラミー2000 55周年記念限定万年筆ブラウン

ラミー2000が発売された1960年代は、万年筆にとって最も苦しい時代だったのではないかと想像しています。

モンブラン146は廃番になり、ペリカンはそれまで主力だった400というクラシックタイプの万年筆の生産を止めてしまっていることからも分かるように、万年筆が売れなくなった時代でした。コンウェイスチュアートが倒産したのも60年代で、他にも多くの万年筆メーカーがこの頃姿を消しています。

その理由は50年代に登場したボールペンが普及して、人が文字を書く道具がボールペンに移行したからでした。

日本では少し状況は違っていましたが、それでも大きなペン先のクラシックタイプの万年筆は姿を消していて、小さなペン先でキャップを閉じると短くなるポケットタイプの万年筆をスーツやワイシャツのポケットに差していた時代です。

万年筆暗黒時代の只中の1966年にラミー2000は発売されています。こんな時に何で?と思わなくもないですが、こういう時代の転換期だったから全く新しいデザインのラミー2000ができたのだとも言えます。

実用の道具としての万年筆の役割は終わって、万年筆メーカーは今までと違うものを示さなければ、売れなくなった万年筆とともに沈んでいくことになります。

万年筆が売れないなら売れないで、事業を縮小できたらよかったのかもしれませんが、時代が変わったからといってすぐに規模を小さくすることも難しかったのかもしれません。

単価を上げて、経費を下げてより利益を確保するということも売れない会社存続の方法だと思いますが、そのためにはその会社の万年筆の在り方から考え直す必要があります。

著名な工業デザイナーで世界的な家電メーカーブラウンの仕事を主にしていたゲルハルト・ミュラーによる、未来の、2000年にも通用するデザインの万年筆の発売でラミーは新しい万年筆の在り方を示して、会社の方向性を示しました。

その向かう方向は今も変わっていないように見受けられ、その時ラミーが筆記具メーカーのひとつの理想像を見つけたことが分かります。

ラミー2000の構造を考えた時、当時発売されていたモンブラン24などの万年筆と共通点が多く、構造的・機能的に新しいことはなかったけれど、無機質で装飾のない当時最先端の工業デザインの考え方を取り入れたということが新しく、画期的なことでした。

そしてそれは55年経っても、全く色褪せないものとして今も在る。

やや遅れた1970年に、アウロラは万年筆・筆記具の歴史に燦然と輝く、細い円筒形の万年筆アスティルを発売していて、工業デザインと出会った万年筆メーカーは歴史的に意義のある万年筆を発売していることが分かります。

アスティルのデザインは1970年代に多くのメーカーが真似してムーブメントになり、暗黒時代にあった万年筆業界に光明が差しました。

一方、ラミー2000に似た万年筆は出てこなかったけれど、それほどラミー2000は個性的だったと言えます。それでもラミー2000は今も作り続けられていて、万年筆のひとつの定番と言えるものになっています。

ラミー2000発売55周年を記念して、2000ブラウンが発売されています。

ボディカラーをブラウンにし、クリップなど金属パーツをPVDコーティングした豪華版の2000には、デザイナーゲルハルト・ミュラーの数多くの仕事を収めた写真集と豪華な牛革貼りのノートが付属しています。

なぜボディカラーをブラウンにしたのか、ラミーから正式な発表はないけれど、ゲルハルト・ミュラーがその多くをデザインしていた家電メーカーブラウン(BRAUN)に敬意を表したからではないかと邪推できなくもないし、3300本という限定本数については、ゲルハルト・ミュラーがラミー2000をデザインした時(発売の前年の1965年)の年齢が33歳だったからだと言う人もいます。

一つの製品が55年間姿を変えず存在し続けたということは稀なことで、万年筆というものの特殊性はあるけれど、ラミー2000がデザインやものの在り方においての偉大な発明であったことには変わりありません。

時代の転換期に新しいものが生まれるのなら、今がその時代の転換期で、今までと違うものが生まれるタイミングなのかもしれません。私たちはそんな時代を今生きているのではないでしょうか。

⇒限定品・LAMY 2000ブラウン

小動物のようなM5サイズ・くるみ手帳

どこもやっていることだと思いますが、組織やグループのリーダーの人は、その考えや考察、記録をグループ内で公開していると思います。それはそのグループの方針や立場の取り方を統一し、仕事の円滑化に役に立つからです。

だからリーダーは、考えや考察・記録を自分しか見ることができない手帳に細々と書いていてはいけない。もちろん手帳を書いてもいいけれど、それを公開して組織の役に立つ形にするべきだと思っている。

もちろんプライベートなこともあるから全てを公開する必要はないけれど、そう考えるとグループのための手帳と自分のための手帳は分ける必要がある。リーダーの個人用の手帳はもしかしたらM5のような小さなものでいいのかもしれませんし、グループ公開用の手帳と個人手帳とを使い分けるということを考えるとM5手帳の活用の仕方が見えてくるような気がします。

加工し過ぎず、野性味を残した革クードゥーでとても可愛らしい手帳をカンダミサコさんに作ってもらいました。

当店の言う可愛らしいは、もしかしたら他所のお店とは少し違っているかもしれませんが、本当に小動物のような愛らしい手帳が出来上がりました。

見た目は可愛らしいですが、サブのメモ用のM5手帳ではなく、メインで使っていただきたいという狙いを持って製作してもらいました。

M5用としては最大径の13mmリングを装備していて、100枚程度のリフィルを挟めるようにしています。そのためメモだけでなく、ダイアリー、アドレス帳、覚書など、この1冊があれば自分の仕事が成り立つ、オールインワンの手帳に仕立てることができると思います。もちろん仕事から離れて、1日1ページの日記帳のような使い方もできます。

M5サイズは「書くことを強制されない大きさ」だと思っています。

バイブルサイズの用紙だと、空白を埋めるためにたくさん文字を書かなくてはと思いますが、M5サイズだとその気持ちの負担も少なくなります。少し文字を書いたらいっぱいになりますので、気楽に使うことができます。

さらに、ペンを完全に保護してくれる太径のペンホルダーも装備しています。

この手帳とのバランスを考えるとあまり大きなペンは合わないので、短めのペリカンM400や、セーラープロフェッショナルギアスリムミニなどがいいサイズだと思っています。

ペンホルダーにジャストフィットして、ペンホルダーに収めた時手帳からはみ出さないモデルは、セーラープロギアスリムミニです。最大径14.8mmで、このサイズのペンとしては太めですが、この万年筆をベースにペンホルダーのサイズを決めていただきました。

持っている人が限られますが、以前のペリカンの限定品1931などのペンもきれいに収まります。私がくるみ手帳を使うなら大切にしている1931ホワイトゴールドをこのペンホルダーに入れて使いたい。

表紙が包み(くるみ)式で、中の紙とペンを保護してくれる仕様のくるみ手帳に、いつも使う万年筆と紙をたくさん挟んだ姿はころんとして可愛らしく、小動物が丸まったような印象があります。

女性のお客様の評価が高いですが、男性でも理由もなくいつも持っていたいと思ってもらえる手帳が出来上がったと思っています。

⇒M5サイズ・くるみ手帳

⇒M5サイズリフィル 智文堂M5リフィルそら文葉 粧ひセット お芋ポッケ

シャーク革のペンレスト兼用万年筆ケース

カンダミサコさんと毎年革をひとつ決めて、その素材に合ったステーショナリーを一年限定で作ってもらうという企画を4年ほど続けています。

今まではカンダミサコさんらしく、どちらかというとアパレルの世界寄りのお洒落な革で企画してきましたが、今年は質感豊かなエキゾティックレザーの「シャーク」で、様々なものを作ってもらっています。

久しぶりに、当店オリジナルのペンレスト兼用万年筆ケースの新作を、シャーク革で作ってもらいました。

ペンレスト兼用万年筆ケースは3本差しのペンケースで、持ち運び時のペンの保護と使用中の使いやすさを兼ね備えた、実用性に特化したペンケースです。

このペンケースは開店当初に作った、当店の万年筆に対する考え方を表現したものですが、それは今も変わらず一番使いやすいペンケースだと思っています。

当店の万年筆に対する考え方は、どんな高価な万年筆も書く道具であり、書くことを楽しむためのものであるということです。

持ち運ぶときはフタを被せて、逆さまになってもペンが脱落しないようになっています。内革には柔らかいヌバック革を使用していますので、しっかり保護してくれます。クロム鞣しの革なので銀製の万年筆に直接触れても黒ずむことはありません。

机上などで使用している時は、フタを万年筆の下に差し入れて枕のようにすると取り出しやすくなり、3本を素早く使い分けたい時に便利です。

フタを折り返す構造のため、硬い革ではこのペンケースを作ることができません。シャークはしなやかで折り目もつきませんので、このペンケースに最適な素材だと言えます。

このペンレスト兼用万年筆ケースは、中にペンを入れると革がその形状になりますので、抜いてもふんわりその形のままになります。そのためペンが入っていなくても2本の溝のあるペントレイとして使うことができて、それがこのペンケースの名前の由来になっています。

またすぐ使うペンを硬い机に直接大切なペンを置かず、このペンケースの上に仮置きすることができます。

ペンレスト万年筆ケースは、継ぎ目のない1枚の革からできているため、大判の革が必要です。

出回っているシャークの革だと、1枚の革からこのペンケースを1つしか作ることができず歩留まりが悪くなってしまいます。余ったところで1本差しペンシースや革のペン置きを作って無駄なく使っています。

模様のある革を使って、色ではなくその質感で変化を出したいと考えたら、シャークのように独特のシボの入った革は理想的です。なるべくなら、均一な型押しの革を使って安く作るよりも、ひとつひとつの表情は違うけれど自然なシボのある革を使いたい。

私はペンケースからペンを取り出した後、そのフタを元通りに戻すことが苦にならない人間だけど、当店のスタッフKはいちいちフタをするのは面倒だと豪語するズボラなところがあります。そんなスタッフKの発案で生まれた当店のロングセラーのペンケースです。

⇒ペンレスト兼用万年筆ケース・シャーク革

⇒1本差しペンシース・シャーク革

⇒1本差しペンシースショート・シャーク革

⇒ペン置き・シャーク革

極北の地への憧れ

星野道夫の本を夢中になって読み漁っていた時期がありました。

アラスカフェアバンクスに家を建て、季節ごとにアラスカの奥地の原野に分け入って、アラスカのさまざまな風景や生き物を撮り続けた写真家、星野道夫のエッセーを読んでヒグマやオオカミ、白くま、カリブーの生態に興味を持ち、極寒の地で暮らすエスキモーやアサバスカインディアンの生活に想いを馳せました。

アメリカ合衆国のネイティブアメリカンへの同化政策やアラスカの開発に反対し、自分たちの民族性やアラスカの大自然を大切にしたいという考えに共感します。日本も西洋化、近代化してテクノロジーを追い求める生き方を卒業してもいいのではないかと思うし、グローバルスタンダードに染まらず、もっと自分たちらしさに誇りを持つべきではないだろうか。

そうやって星野道夫の本を読んで、極北の地への憧れを強めてアラスカやシベリアへ行ってみたいと思うようになりました。

今では、デナリとかアリョーシャン列島、ウラル山脈などの北の地名を見ただけで、心が動くようになっています。実は前作のアンビエンテ・ギアッチャイオにも激しく反応しました。

極寒の地の生活はきっと厳しいと思うけれど、その反面快適な日本では見られない美しい景色も見ることができるのだろう。

アウロラの限定品アンビエンテ・ツンドラに激しく反応する人は私以外にもきっと多くおられると思います。

透明感とニュアンスのあるブルーとブラウンは、北の土地の永久凍土ツンドラを的確に表現しています。

スターリングシルバーを多用したこのモデルを評価する人は多く、デザイン的な理由ももちろんあると思いますが、その使用感が魅力なのだと思います。

人気のあった85周年レッドやマーレリグリアなども同じモデルで、抜群の書き味と高い筆記性能を持ったアウロラの自信作です。

軽く、コントロールしやすいことがアウロラらしさで、そんなアウロラの軽やかさもいいですが、その重量によって強めの弾力に味付けされた18金のペン先のしなりが感じられる書き味の良さは、他のペンでは味わうことのできないものです。

ツンドラは個人的に心揺さぶられるテーマだったけれど、そんなふうにピンポイントでターゲットを狙うテーマの方が、より深く心に刺さるような気がします。

⇒AURORA 限定品 アンビエンテ・ツンドラ

当店のオリジナルインク

当店は2008年に、オリジナルインクとして四季を表現した「冬枯れ」「朔」「山野草」「朱漆」の4色を発売しました。

その後、冬枯れが雑誌「暮らしの手帖」で紹介されて、日本中から女性のお客様が来られるようになり、数年はその雑誌効果が続いたと思います。

2012年に発売したCigarは、同時に発売したオリジナル万年筆Cigarに合わせて作ったインクで、書いたばかりの時は緑色で、乾くとCigarの葉が枯れていくように茶色っぽく色が変わります。そんな遊び心のあるインクを作りたかった。

その後京都のインディアンジュエリーのお店リバーメールとの共同ブランド「WRITING LAB.」を立ち上げ、2012年にクアドリフォリオ、2013年ビンテージデニム、2014年オールドバーガンディを発売しました。それらのインクは全て今も作り続けています。

これらのインクはもちろん実際に使うことも考えての色のラインナップでしたし、オリジナルと言うからには他にない色でなければ意味がないと思っていましたので、それを念頭に置いて作りました。

当時、インクはそんなに人気ではなかったので、売れ行きはゆっくりでした。

でも他所にないオリジナルの色があるということは、やはりお店の特長になっていて、新しい万年筆を購入されたお客様がインクも一緒に買って下さることが多かった。

オリジナルインクがそれだけで売れるようになったのは、インクブームがやってきてからだと記憶しています。

その時しか買えない限定品もいいですし、その方がもしかしたらよく売れるのかもしれませんが、当店としては作り続けることで、多くの人にとっての定番にしたいと思っていました。多くの人が使って下さって、それぞれのインクが使う人の物語の一部になってくれたら何て素敵だろう。

それは万年筆にも言えることで、いつか買いたいと思い続けて、その人のタイミングが合った時に買うことができる定番のものをなるべくご紹介したいと思っています。

そうやって長く作り続けて、継続して使い続けてもらったものはストーリーの一部になる。

私がその背中を、その生き様をお手本のように追いかけている恩師がいます。

万年筆やペン先調整の師匠はいないけれど、生き方を教えられる先生がいます。

出会いは暮らしの手帖の冬枯れの記事を奥様が読まれて、ご一緒に当店を訪れて下さった時でした。

なかなかその人のように重厚に生きることはできないけれど、30歳以上も年上のその先生のように生きたいといつも思う。

恩師がCigar のインクを使い続けてくれています。

いつも世の中の理不尽に怒りを持っていて、楽で落ち着いた老後の生活をしてもいいのに平坦な道を選ばず、誰も歩いたことのない道を切り開き、戦いながら生きておられて、何かあるごとに手紙を送ってくれます。

先生が原稿用紙の桝目を無視して、Cigarのインクでダイナミックに書かれた手紙を何回も読み返したもので私はできている。

当店のオリジナルインクが使われているのを見て、そうやって使い続けられるインクをこれからも作っていきたいと改めて思いました。

ペンを立てる

神戸市垂水区新多聞地区は、昭和40年代頃から山をならして造成されたところで、きっと日本中に同じタイミングで同じような街がたくさん作られたのだと思います。そんなどこにでもある平凡な街に40年以上住んでいます。

この市街地の一番奥に神戸家具発祥の地という看板を掲げた木工センターという、木材加工の工場が集まっている所があります。

早くから外国人が多く住む神戸では、外国人の注文に応じて日本の職人さんが洋風の家具を創意工夫しながら作っていて、そういうものを神戸家具と言うようになったそうです。

木工センターの場所は私が学生の頃までは市街地の突き当たりのような場所でしたが、あっという間に街が大きくなっていって、今では木工センターよりも奥にもいくらでも街が広がっています。

子供の頃から住む街のあまりの変わりようですが、40年も経てば街も変わるのかもしれない。

学生の頃、木工センターという名前を口にすることはあったけれど、その中で家具職人さんが仕事をしているという当たり前のことを、なぜか考えることはありませんでした。

仕事をするようになって、次に木工センターの名前を聞いたのはスモークというブランドで家具作りをしている加藤亘(かとうこう)さんからでした。

木工センターに加藤さんの仕事場があり、毎日そこで作業されているそうです。木工というのは今まで何となく遠い場所で行われている、馴染みの薄いものでしたが、自分の家のこんな近くに木工の職人さんたちがいたのだと思うと急に身近に感じました。

時々、ペンを使っていない時、立てておくか、寝かせておくか、どちらがいいでしょうと聞かれることがあります。

多くの万年筆の場合、立てておく場合はペン先が上になるように置くのが基本です。でも中には、立てておくとインクが戻ってしまい、書く時にインクが下りてくるまで待つか、振らないと書けない万年筆があります。そういう万年筆は毛細管現象の働きが弱く、重力でインクが下りてきているということになります。

そういう万年筆もたまにありますので、強いて言えば万年筆は寝かせて置いておく方がいいのではないでしょうかとお答えしています。

しかし、普通の状態の万年筆の場合、立てておいて何ら問題はなく、今回ご紹介のスモークペンスタンドのようなものも当店では販売しています。

スモークペンスタンドは、加藤亘さんがデザインして、製作しています。

実用一辺到ではなく、細部にこだわった装飾的な意匠で、机上でペンを飾るように置いておける粋なものだと思っています。

ペンを寝かせて並べるよりもスペースをとらないし、万年筆を書くものによって、次々と使い分けて使うのにも使いやすく、機能的でもあります。

立ち姿の美しい5本の違うペンを立ててももちろんいいけれど、この5本のペンスタンドに道具として使っている字幅違いの同じペンが立ててある姿はなかなかサマになる風景ではないかと思います。

当店には陳列用として使っている10本用ペンスタンドもあります。机の上に10本立てておく人がどれくらいおられるか分かりませんが、面白い商品で、加藤さんの遊び心だと思いました。

自分の住む街はどこにでもある平凡な街だと思っていたけれど、神戸の洋風家具発祥の地があって、そこで仕事をする家具職人さんがその影響を受けたペンスタンドを作ってくれていると考えると、この街が少し誇らしく思えるようになりました。

⇒SMOKE(スモーク)TOP

続・理想のインクとの出会い

理想のインクというのはきっと人によって違っていて、誰かが良いというものが自分にも当てはまるとは限りません。実際自分でしばらく使って初めて、理想のインクと言えるのだと思います。

そう考えると理想のインクを見つけるというのは、本当に幸運な出会いなのだと思います。

私はあまりたくさんのインクを使ってきたわけではありません。多少のにじみや裏抜けは気にしなかったので、パイロットのブルーブラックを「万年筆の書き味が良くなるインク」として使っていましたし、ペリカンのブルーブラックを「インク出が多くなり過ぎるペンのインク出を抑えるもの」として使っていました。

インクについては、色よりも万年筆の機能を補う液体として見ていて、その万年筆と最適な組み合わせのものを使おうとしていました。

万年筆が快適に書けるということだけでなく、紙に速やかに馴染んで定着するというのも、感覚的な好みになるけれど私にとっては必要な条件になっています。書く時はぬるぬる書けるけれど、紙の表面に乗ってなかなか乾かない粘度の高いインクは好きではないので、サラサラとしたインクを使いたいと思っています。

そんな時、ローラーアンドクライナーのインクについて考える機会があって、いろんな色を試してみました。

ドイツの片田舎で作られているという、シンプルなラベルが貼られた薬瓶のような素朴なボトルにも惹かれます。

私にとって万年筆は、どんな高価でも特別なものではなく、自然体で扱う日常のものであって欲しいので、気負いのないデザインと価格が安く質の良いローラーアンドクライナーのインクがしっくりきます。

ローラーアンドクライナーのインクは、濃く深みのある色合いのものが多く、最近流行している薄い色ではありませんが、古くからの万年筆好きの人は、インク出の多い万年筆を好むとともに濃厚な色のインクを好むことが多いので、ぜひ試していただきたいと思います。

ライプツィヒアンブラック、バーディーグリースなどは濃い色のインクの代表的な存在で、単純ではない奥行きのある色合いが使っていて楽しい。

古典インクであるサリックスやスカビオサは、濃い色の多いローラーアンドクライナーのインクの中で、褪せたような薄めの色合いでニュアンスが楽しめるインクです。

人気色以外にもいいインクがあるのではないかと改めて探してみると、「パーマネントブルー」と出会いました。その名前から濃厚なブルーだと決めつけていましたが、違っていました。

書いたばかりの時はターコイズに近い鮮やかなブルーをしていますが、時間が経つと紙にスッと沈んで落ち着き、少し薄めのブルーになります。濃淡もきれいに出ます。

色は薄いのに、ヌルヌルと万年筆の書き味が良くなるところも、書いていて気持ちがいい。耐水性はそれほどでもないけれど、書いたものの保存性は他の染料系インクよりも高いそうです。

耐久性は私の用途にはそれほど必要ではないけれど、中にはそれが重要な人もいると思います。

ローラーアンドクライナーパーマネントブルー、今私が一番気に入って使っているインクです。

カンダミサコ革鞄、取り扱い始めました

毎日使う通勤バックは、同じリズムの生活を13年も続けていると、どの季節にどんなものが必要かが大体分かってきます。

私は万年筆や手帳類、水筒などただでさえ荷物が多い方なのに、今の季節は冷房対策の夏用ジャケットも増えます。更に最近は色々な仕事の締め切りが迫っていて、仕方なくパソコンも持ち歩いているため今までで一番荷物が大きいかもしれません。

神戸は雨が少ないと言っても、梅雨なのでいつ雨が降るか分かりません。気にしない人も多いけれど、ブッテーロ革など雨の跡が残るタンニンなめしの革の鞄は何となく避けたい。

そういうことを考えると、フィルソンの大きなトートバッグ以外に考えられなくてずっと使っていますが、さすがに色褪せたり、くたびれたりしてかなり使用感が出てきました。

それがフィルソンの味で、普段使いにはいい感じだけれど、通勤時にはカジュアルすぎる気がしてきました。

新しい鞄が欲しい。でも常に革靴が欲しいと思っているので我慢しようかとか考える時間も楽しく、いい気分転換になっています。

鞄が好きな人は多い。いや鞄を嫌いな人などいないのかも知れません。

当店のお客様、特に女性の方に喜んでいただけると思って、カンダミサコさんの鞄を扱い始めました。

最後にカンダさんが出店した伝説の大丸神戸店でのイベントから8年近く経っています。

カンダさんが公の場所に出なくなったことで、カンダさんの鞄を実際に見ることは殆どできなくなりました。それができる場所になればと思っています。

カンダミサコさんの鞄の特長は、しっかりとしたオーソドックスな鞄をベースに、オリジナリティを感じさせる要素が盛り込まれている所だと思います。基本に忠実に作られた鞄はいろんな服装に合わせやすく、長くご愛用いただけるものだと思います。

カンダミサコさんがメインで使っているシュランケンカーフは、水に強く、汚れも落としやすいので、梅雨の季節でも安心して使うことができます。また、大抵のお店の入り口にあるアルコール洗浄水がついてもシミになりません。

エージングはあまりしませんが、発色が美しくいつまでもきれいに使うことができます。

当店にご夫妻で来店されたお客様が、旦那様が万年筆を見ている間に、奥様が鞄を見て下されば、良い店になったなと自画自賛できます。

男性でも違和感なく使えるものもあり(スタッフMはすでに購入して毎日使っています)個人的にはtoneかPaneが欲しいと思って、毎日眺めています。ぜひ皆様もご覧下さい。

⇒カンダミサコ 鞄TOP