最後のプラチナブライヤー万年筆

プラチナブライヤーはプラチナ萬年筆らしい、日本の万年筆らしい他にない渋い名品だと思っていました。

硬めのペン先は筆圧の影響を受けにくく、濃さの均一な文字を書くことができます。

勘合式のキャップはこのクラスの万年筆としては珍しいですが、素早くキャップの開け閉めができるので仕事でも使いやすく、少し書いてはキャップを閉じる、会議や打ち合わせでとても重宝するものだと思います。

そして最も特徴的なのはブライヤーのボディです。

ブライヤーはシャクナゲ科の植物の根の瘤部分です。石がたくさん埋まった土の中で根はそれらにぶつかり、ねじれながら伸びることで硬くなり、ブライヤーの特長である複雑な模様になります。

ブライヤーはパイプの素材として有名です。硬くしっかりした質感と、目が詰まっていることで質量が高くなり、適度な重量感があります。長い時間、手の中で感触を楽しみながらタバコを燻らすパイプには適していた素材と、唯一無二の美しい模様が珍重されました。

それらは万年筆の素材としても最適な条件です。

プラチナではこのブライヤーに拭き漆加工を施しています。

拭き漆とは漆を布につけて素材に馴染ませるように塗布する技法です。刷毛を使って何度も重ね塗りして木目を際立たせる漆塗りとは違って、防水、汚れ防止のための技法で、表面に漆の層ができるほどではない、自然な風合いに仕上がります。

木の手触りも残り、使い込むことで色変化や艶が出るエイジングも楽しめます。

私はこの万年筆を、当店の万年筆のあり方を象徴するものだとして販売してきました。

細字は手帳に書く時、細くくっきり書くことができるし、中字と太字はその硬いペン先からダイナミックな書き味を得ることができます。

そして木のボディを味わいながら育てる醍醐味。万年筆はただ書くためだけのものではなく、書くことを楽しみながら、そのものを楽しむこともできます。

この万年筆に海外の万年筆のような華やかさはないけれど、静かな楽しみと他にない唯一無二のものを手にしているという満足感が得られるものだと思って、多くの人に趣味性も感じてもらえる万年筆として伝えてきました。

ブライヤー万年筆は長く欠品していましたが、廃番になるということで、今回最後の製作分が入荷しました。

プラチナの最も特長的な万年筆ブライヤー万年筆がこれで最後だと思うととても残念ですが、気になっておられた方はこの機会に手に入れていただきたいと思います。

⇒プラチナ ブライヤー万年筆

「”&” in 横浜」とビスコンティフェア

今週末5/14(土)15(日)は横浜で590&Co.さんとの共同出張販売「“&” in 横浜」を開催しています。

出張販売には私が一人で行きますので、店は通常通り営業しています。店では5/14(土)~29(日)ビスコンティフェアを開催いたします。

フェアの内容は、ビスコンティヴァンゴッホ以上のペンをお買い上げの方にマイペンシステムでの天冠のオプションをサービスでお付けするというものです。

”マイペンシステム”というのは、天冠のロゴマークの部分に、イニシャルなどのアルファベットや宝石のようなレジンに付け替えて、オリジナル仕様にできるというものです。

ビスコンティが操業して40年が経ちました。

初期の限定万年筆の中には伝説の万年筆工房加藤製作所のものもありました。

加藤製作所は、古くから行われていたセルロイドを轆轤(ろくろ)でひくという製法で万年筆を作っていた、大阪市生野区の万年筆工房です。

若い頃、加藤製作所の加藤清さんを何度も訪ねてお話をうかがって、ビスコンティの話もうかがっていましたので、遠いイタリアの万年筆メーカーでありながら、勝手に親近感を持っていました。

世界で話題になって業界を驚かせたビスコンティの万年筆を、実は日本の大阪にある町工場で一人の職人さんが作っていたというのは痛快な話です。そんな職人さんたちとの交流で、色々な事を教わりました。そして今自分は万年筆の仕事をしています。

加藤清さんは、80年代に入って日本での万年筆需要が下火になった頃、中東での販売に切り替えるなど世界を視野に入れて活動されていました。その姿は今の自分の感覚からすると、かなり先に行っているパイオニアだと思います。

ビスコンティとは、海外での取引を求めて出品していた世界的なステーショナリーの展示会で出会ったそうです。

日本のセルロイド万年筆作りを採用していたビスコンティの万年筆作りは常に進化していると思って見てきました。

ペン先の素材の変遷がそれを象徴していて、最初は14金と18金のペン先でしたが、10年ほど前からより柔らかい書き味を求めて、パラジュウムを採用しています。

パラジュウムペン先はとても柔らかく、この書き味を好むお客様もたくさんおられましたが、近年また18金とステンレスに変わっています。デザインへのチャレンジが目立つビスコンティですが、書き味にもこだわって探究していることが分かります。

ビスコンティの万年筆を大きく3つのシリーズに分けてお話いたします。

ヴァンゴッホに代表される、ゴッホの絵画に着想を得て、カラフルなアクリルレジンをボディにしたシリーズ。

キャップがマグネットでロックするという斬新な構造になっていて、ペン先はステンレス製で手頃な値段になるように設定されています。そして絵画のように美しく、様々なバリエーションのボディカラーがあります。

ホモサンピエンスは、尻軸を引き上げて押し込むことで、一気に大量のインクを吸入するダブルタンクパワーフィラーの吸入方式を採用しています。古くからの万年筆好きにはとても魅力的に感じられるシリーズで、私は一番ビスコンティらしさを感じています。

キャップの開閉もネジをグルグル回す仕様ではなく、軽くひねるだけで開閉ができる画期的なキャップ構造になっていて、スマートに書き始めて書き終えることができます。

黄金比をデザインに取り入れた美しいディビーナシリーズは吸入ノブを引き出し、そのノブを回転させることで、インクを吸入する凝った作りになっています。

ビスコンティの万年筆もイタリアの美と遊びの追究を形にしたもので、オーソドックスな万年筆では物足りなくなった人にも、ぜひ使っていただきたいです。

*準備が出来次第、WEBでもご紹介予定です

ペンを立てる2

ボールペンは気体の圧力でインクを押し続ける加圧式のもの以外、ペン先を上に向けて書き続けることはできません。

上に向けて書き続けると先端から空気が入り、インクを分断してしまうからです。そしてそうなってしまうと、もう二度と書くことはできません。

でも万年筆は、ペン先を上に向けた状態、例えば寝転んだ態勢でも書き続けることができます。

これはペン先とペン芯が適度に密着していて、重力に負けない毛細管現象の働きで、ペン芯で保持しているインクをペン先に押し上げているからです。ソファでテレビを観ながら寛いでいる時にふと思いつくことがありますが、そういう時メモするのにも万年筆は使いやすいです。

もちろんペン芯内のインクがなくなれば上に向けた状態では書けなくなってしまいますが、万年筆を立てて置いておいてもすぐに書けるのは、ペン先とペン芯のこのような働きがあるからです。

もう7、8年作り続けている商品で、店でも私の作業机兼接客テーブルに置いて使っているスモークの「ペンテーブル」があります。

これは5本の万年筆を円状に並べ、飾るように置いておけるペンスタンドですが、私はこれにペンを立てることで、万年筆が道具としてより機能的になると思っています。

数ある万年筆の中でも最も使用頻度の高いものをこのスタンドに立てて机上に置いて、用途によって使い分ける。ペンテーブルに立てておくとペンを選びやすいし、取り出しやすい。ペンが立っているので、省スペースでペンの置場を確保することができます。

万年筆を道具として揃える時、まんべんなく細字から太字や極太まで揃えるか、一番よく使う字幅ばかりを揃えるのか迷うところだと思います。

例えば5本用のペンテーブルにどのように揃えるか、私の場合、用途や自分の文字や書き味の好みからMかBのものが多く、日々使う万年筆はそれらがほとんどなので、太いものばかりを立てて、それらを換えながら使いたいと思います。

ペンを立てて飾るだけでなく、道具として活用するのに使いやすいペンスタンドが、ペンテーブル/ペンカウンターです。

バリエーションとして、5本を円状に立てるペンテーブル、3本を横並びに立てるペンカウンター、10本を横並びに立てるロングペンカウンターがあります。

590&Co.さんとの共同出張販売「“&” in 横浜」に、5本用と3本用をお持ちいたします。

⇒木製品TOP

作家さんたちのステーショナリー

出張販売の準備をする時は、自店の強みというかオリジナリティについてじっくり考えます。

小さな店なので品揃えという面ではある程度限られますが、小さい店ならではの強み、お客様のお顔が見える・声が届くということを活かして、お客様が当店に何を期待されているかは分かっているつもりです。

ペン先調整が求められていることは日々感じています。お店へのご来店の他、ペン先調整については毎日お問い合わせがあり、全国からご相談のあった万年筆が届きます。出張販売でもご依頼が多いので、当店の存在価値になっていると思っています。

他には、職人さんや作家さんのオリジナルで、あまり買えるお店がない商品を扱っていることを強みとしていきたい。これはお客様のお声というよりも当店のご提案になりますが、お客様にぜひ共感していただきたい分野です。

システム手帳リフィルメーカーの智文堂さんの商品は、当店だけが扱っているわけではありませんが、智文堂のかなじともこさんは当店のオリジナルリフィルを作り始めたことが今のお仕事のスタートになっていることもあって、深いご縁を感じています。

智文堂のシステム手帳リフィルの使い方を説明した、全頁かなじさんの美しく読みやすい手書き文字で構成されている小さな本「ZINE」や、かなじさん手作りのバインダーに収められたスターターキットなど、かなじさんのハンドメイド商品は智文堂の真骨頂で、M6サイズシステム手帳を使っている人、これから使いたいと思っている人にはぜひ見ていただきたいものです。

智文堂さんのシステム手帳リフィルを扱っていることは、今も当店の強みで自慢なので、各地の出張販売にもお持ちいたします。

このリフィルは万年筆との相性も考えて選ばれていて、インクの収まりが良く手応えのある書き味の紙です。

そしてもう一つ、私が安心して皆様にお勧めできる紙を使用したバイブルサイズのリフィルも扱い始めました。書き味がとても良く、にじみや裏抜けのほとんどない、吉川紙商事さんのノイエグレーという紙のシリーズです。

システム手帳リフィルは、横罫、方眼、ドッド方眼、無地のベーシックなラインナップです。薄いグレーの紙はブルーのインクとの相性が特に良く、美しく引き立ててくれます。印刷もきれいにできるので、自分でオリジナルリフィルを作る方にもぴったりの紙だと思います。

他に探していたのはM5サイズのシステム手帳でも使える小さなスタンプで、男性でも気兼ねなく使えるシンプルなものを探していましたが、どこにもありませんでした。

そんな時、佐野酒店という屋号で活動している佐井健太さんに相談して作っていただいたのが、手帳用項目スタンプです。

本当は120種類もの項目スタンプが存在しますが、当店のお客様に選ばれそうなものを選んで扱っています。

佐井さんはアールデコ、アールヌーボー調のクラシックなデザインを得意としていて、フレーム模様やL字型のスタンプも作られています。なかなか実際見ることが難しい、佐井さんのスタンプも出張販売に持って行きます。

万年筆の良い書き味を感じていただく以外にも、ステーショナリーの様々な楽しみ方をご提案して、それを使う方の毎日をより豊かなものにする役に立ちたいと心から思います。

⇒智文堂TOP

⇒バイブルサイズリフィル・ノイエグレー

⇒佐野酒店・レーザーワーク木製ステーショナリー

オーソドックスで素朴なデザインの万年筆~クレオスクリベントクラシック~

5月14日(土)15日(日)に590&Co.さんと共同開催する出張販売“&in横浜”  https://www.p-n-m.net/?tid=5&mode=f15 まで1か月を切りました。

ペン先調整、万年筆の調整販売をご希望の方は、こちら(当店HPの予約フォーム)から→ Pen and message. (p-n-m.net) ご予約をお願いいたします。商品のご購入などは、予約の必要はありませんので、お気軽にお立ち寄り下さい。

出張販売にお持ちする商品は、なるべく種類を多くと思っていて、オリジナル商品、革製品、木製品、システム手帳リフィル、スタンプ、インクなどの準備を進めています。

万年筆は私がお勧めしたいスタンダードなデザインのものを中心にと考えていて、特にクレオスクリベントをある程度種類を揃えて持って行くつもりです。

派手なもの、押し出しの利いたデザインのものが持てはやされる現代において、クレオスクリベントはシンプルで素朴なデザインのものが多く、それが特長的でもあります。

万年筆においてそういうものは本当に少なくなりました。

金ペン先の万年筆で素朴なものというのは本当になくて、クレオスクリベントクラシックはまさにこれだと思いました。飾り気がなく、とてもシンプルな素朴な万年筆は懐かしささえ感じさせてくれる万年筆です。

使ってみると少し長めであまり太くないボディはとてもバランスが良く、自由自在に操れる感じがし、通好みの渋い万年筆だと言えます。モンブランNo.24などの1960年代の、万年筆が実用品だった時代の万年筆に通じる雰囲気を持っていると思いました。

クラシックゴールドというモデルが金ペン先を備えたものですが、銀色の金具のクラシックロジウムはEFのみ14金ペン先仕様という変わり種です。

コストパフォーマンスも高く、1本持っていてもいいモンブラン、ペリカンなどと個性がかぶらない万年筆だと思います。

クレオスクリベントは横浜だけでなく、札幌、東京、福岡などの出張販売でも持って行く予定です。

東ドイツの慎ましやかな国民生活をイメージさせる、クレオスクリベントの今の万年筆にはない素朴で実用本位な趣も、魅力的だと思っています。

⇒クレオスクリベントTOP

サドルプルアップレザーの文庫カバー

若い頃は実用書やビジネス書など、何かのためになりそうな本ばかり読んでいました。昼食代を浮かせては本を買って、それを自分へのささやかな投資にしていた。

それらを読むことで自分の仕事が良くなると信じていたし、いずれそれらが自分の血となり肉となると思っていました。実際に仕事に対する考え方や心の持ちようなどは、本から教わったこともあると思います。

その頃からだいぶ齢をとって、今ではもっと幅広いジャンルの本を読むようになりました。小説も読むようになって、読書を今まで以上に楽しんでいます。

通勤時間は集中して本が読める大切な時間で、片道1時間弱のこの時間を楽しみにしています。電車の中でスマホで音楽を聴いたり、映画を観たりするのと同じように、読む人によって見える情景の違う「本」というエンターテイメントを楽しんでいます。

通勤で読むのは文庫本や新書が中心なので、内容や厚みに合わせていくつか持っている文庫本カバーを選んで使っています。

本が好きな人ならきっと私と同じようにブックカバーを取り替えて使うだろうと思って、厚み調整のついていない嵌めころしタイプの文庫カバーを作りました。その方がピッタリ合ったら持ち心地も良いし、見た感じもかなりスマートになります。

イメージしたのは少し厚め、2センチ程度の厚みの本がピッタリ合うようにしています。きっと皆さんのお手元にも合う本があると思いますが、身近なところで言うと新潮文庫の司馬遼太郎の「関ヶ原」などがピッタリです。

他にも例えば厚みの合う文庫サイズのノートを探してみると、本革ノートにもなります。

製作してくれた若い職人さんは、持ち心地の良さを狙ってなるべくステッチが外側を通るようにしてくれています。その方が文庫本とカバーの一体感が増しますし、細かく正確なステッチはブックカバーにより端正な趣を与えてくれています。

最近は、文庫本でも栞のついていない本があります。読み始めてしまってから困ることがあって、そういう経験から今回は栞も作っていただきました。ブッテーロの端材で作った栞は、ブックカバーの内側と同じ素材なので、統一感もあってセットしておきたくなります。

革で商品を企画すると、端材でも何か作れないかと考えます。周りにいる職人さんたちはそういう意識を持って取り組んでおられる方が殆どです。端材なので作れるものには限界があるけれど、大切な資源を無駄にすることなく使いたいと思っています。

サドルプルアップレザーは、滑らかな手触りとタフな質感を併せ持った革でとても気に入っています。実用と美しさを兼ね備えた、理想の文庫カバーができたと思っています。

⇒サドルプルアップレザー 文庫カバー

M6サイズジョッター

お客様と話している時に、メモしたいと思ってもノートや手帳を開くことが憚られます。小さなメモ帳であっても「取り出して開いて書く」という行為が相手の話を遮ってしまうような気がするし、厚いシステム手帳や大きなノートなら尚更です。

昨年11月当店に泥棒が入った次の日、予定していた旅行に半ばヤケクソで出掛けましたが、その旅先でメモジョッターの代わりになりそうなものを見つけました。それをアレンジしてペンホルダーをつけて使っていましたが、これだとお客様と話している時でも自分の精神的抵抗が少なく、とても快適に使うことができました。ジョッターという存在をもっと早く思い出すべきでした。

メモジョッターは、情報カードが使われていた時代にはよく使われていたもので、昔から微妙に違う様々な形のものが作られていましたし、私もいくつか使ってきました。

シンプルなだけに使い勝手は良く、取り出してすぐに書くことができて、薄いのでジャケットのポケットやシャツの胸ポケットに入れておくこともできる。

自分なりにアレンジしたものを半年ほど使ってみましたが、皆さんにお勧めできるものだと思いました。そこでM6手帳を作ってくれた若い職人さんに、M6リフィルと5×3カードが入り、ペンホルダーが付いたジョッターを作っていただきました。その革には、丈夫で美しい銀面を持つサドルプルアップ(チョコ)と、エージングで滑らかな手触りと美しい艶が出るブッテーロ革(ワイン)の組み合わせを選びました。

筆記面と背面がサドルプルアップレザーのものは、紙押えとペンホルダーがブッテーロ。

筆記面、背面がブッテーロのものは、紙押えとペンホルダーがサドルプルアップレザーになっています。

M6用紙と5×3情報カードでは、M6の方が少しだけ幅広ですが、共用で使えるようになっています。

ジョッターの使いやすさのポイントは、紙のセットのしやすさと挟んだ紙の外れにくさだと思っていて、それを満たしたものを職人さんが形にしてくれました。今までこんなに紙がセットしやすいジョッターに出会ったことがありません。

ペンホルダーの一部が紙押えも兼ねていて、これがこのジョッターオリジナルのアイデアになっています。シンプルでとても使いやすいものになりました。

写真で目立つように撮りましたが、革を3段重ねたコバの部分も気に入っています。

私はジョッターに挟んだ紙にその日のメモをいくつも書き込んでおいて、それを家に帰ってから整理してM6システム手帳に転記しています。

厚めのM6用紙だと12枚程度が予備の紙を収納できるスペースに入るので、出先でメモを使い切ってしまう心配もないと思います。

人それぞれメモの使い方があると思いますが、ジョッターは薄くて邪魔にならないという点、表紙のないシンプルな構造であるという点において、様々な使い方に対応する究極のメモ帳としてステーショナリーの定番的な存在だと思っています。

ジョッターはステーショナリーの定番ではあってもマイナーな存在で、今まで仕様にこだわって、良い素材を使ったものは少なかったと思います。当店も5年ほど前にノートカバーの付属品としてしか作っておらず、復活させたかったステーショナリーのひとつでした。

このジョッターのペンホルダーに収まるペンは細めのものをイメージしました。あまり太いペンだとかさ張ってしまって、ジョッターの使いやすさを阻害してしまいます。

イメージしたのは、ファーバーカステルクラシックのボールペン、ペンシルや時計作家ラマシオンの吉村さんがハンドメイドで作っているgate811のボールペン、あるいは鉛筆など9.5mmほどのペンがピッタリ合います。

昔から使われていたけれど、最近あまり使われなくなったものの中にも良いものはたくさんあります。ジョッターもその一つで、こだわった良い素材で、しっかりした良い作りのものができたと思っています。

⇒M6サイズジョッター

ペンを撮る

素人ながらもホームページの写真にはこだわっています。

店を始めたばかりの時はこだわる知識も余裕もなかったし、写真の重要さに気付いていなかったのかもしれません。

必要だったから写真を撮り続けていましたが、お客様方の影響もあって徐々にこだわるようになって、カメラもレンズもそれなりのものを揃えて撮るようになりました。

プロの人に言われたことがありますが、北向きの当店には午前中とてもいい光が入ります。

その光の中で撮った写真は、たまに私の腕でもとても良い出来栄えになります。楽しくていつまでも撮っていられます。ペンを撮っていて困ることはペンを撮る時に転がるという問題です。

何か固定するものを使いたいけれど、店によくあるアクリル製のペンの枕は、木の机の上では写真が何となく白けるようでなるべく使いたくない。

そんな時あればいいなと思っていSMOKE(スモーク)の加藤さんに作ってもらったのが、ウォールナット製のペンの枕です。ご自分のペンを撮ってSNSに上げたりする人は多く、そういう人にもぜひ使ってもらいたいと思いました。

加藤さんにはペンテーブルやブロッター“パゴダ”を作っていただいているので、その端材を活用できたところにも価値があると思っています。

写真を撮らない人でも小さくてシンプルなペン置きは便利な存在で、ペンケースに入れておいて出先で使うことができます。

もうひとつ本格的なペントレイを作ってもらいました。適度な間隔を取ってペンの取りやすさも考えた3本用ペントレイです。

オーバーサイズのペン、例えばモンブラン149などならペンの3分の1くらいが溝に沈むようになっているので転がる心配がありません。

そういうものが机上にあるとペンの決まった置き場所になっていいし、3本置けるというのはとても実用的です。

スモークの加藤さんは均一的に色の揃ったウォールナットよりも、色の濃い所と薄い所のあるような変化のある素材をあえて選んで使っています。そいうものの方が面白いし、自然だからと言われます。

私も加藤さんの言葉に強く共感します。

せっかくの自然素材なので均一さをそこに求めるのではなく、そこに景色を見るのが大人の感性なのではないかと個人的には思っています。

加藤さんの木製品は、寡黙なその人以上に雄弁にいろんなことを語っているような気がします。

⇒SMOKE(スモーク)3本ペントレイ

⇒SMOKE(スモーク)ペンの枕

インクがたくさん入るペン

ページ数の多い分厚い文庫本は得したような気がして嬉しい。

それは早く小説の結末を知りたいという逸る気持ちと、少しでも長くその物語の中に浸っていられるというジレンマを引き起こすけれど、小説を同じ選ぶならなるべく厚い本を選んで、長く読んでいたいと思う。

それと同じ感覚だと思いますが、メモ帳も紙がたくさん束ねられた分厚いものに安心感を覚えます。分厚いメモ帳を一気に使えるはずはないのに、メモが減って薄くなってくると心細く、寂しくなります。

そしてこれも同じ感覚で、できればインクがたくさん入るペンを持ちたいと思います。インクがたくさんその中に入っているということが安心感になる。

私の使用頻度が最も高い万年筆、ファーバーカステルクラシックを使っていてよく思うのは、この万年筆にパイロットのコンバーター70が使えたらいいのにということです。

ファーバーカステルについているヨーロッパタイプのコンバーター、カートリッジインクは私にとっては容量が少なく、すぐにインクがなくなってしまう印象があります。ヨーロッパタイプのコンバーターよりたくさんのインクを吸入することができる、コンバーター70が使えたらいいのにと、インクがなくなるたびに思っています。

しかしコンバーター70はパイロットの独自規格のコンバーターで、パイロットの万年筆でしか使うことができません。

万年筆を使う人の中には、インクの吸入も楽しい作業だと言う人もいるけれど、私のようにインクがたくさん入って欲しいと思っている人も多いので、大容量への憧れもジレンマなのだと思います。

当店で扱っている万年筆でインクが大量に入る万年筆の三巨頭は、パイロットカスタム823とビスコンティホモサピエンスの品々、そしてツイスビーECOでしょう。

前者2つはプランジャー式の吸入機構を備えています。プランジャー式吸入機構は、尻軸を引っ張り上げて、押し込むことで、一気に大量のインクを吸入します。

カートリッジ2,3本分のインクを吸入しますので、吸入作業の回数は半分以下になります。私たちの願いを叶えてくれながらも、ジレンマを強くします。

ツイスビーECOやダイヤモンドが装備しているピストン吸入機構も大量のインクを吸入することができ、吸入したインクがタンクの中でチャプチャプしているのが見えて嬉しい万年筆です。

台湾のメーカーは万年筆を使う人のこうあって欲しいというところを上手く突いてきます。それはツイスビーもレンノンツールバーも同じかもしれません。

レンノンツールバーのオーパス88リン・ユンは、スポイトでインクを注入するという、より原始的な(?)インキ止め方式の万年筆です。

インキ止めというのは、戦前、戦後の日本の手作り万年筆の多くが採用していたインク供給方式で、こういう万年筆を見ると私は古臭さを感じてしまいますが、オーパス88はインキ止め方式を採用しながらも洗練された爽やかな万年筆に仕上がっています。

インキ止め万年筆は、ボディ全体がインクタンクになりますので、インクをたくさん入れたいという人の気持ちを満足させてくれるでしょう。

最近、ラメの入ったシマーリングインクが多く発売されています。

当店もオリジナルインク稜線金ラメ、銀ラメを発売していて、あくまでもガラスペン用としていますが、スタッフがオーパス88(M)に入れてみたところ、1か月ほど経ちますが詰まらずにちゃんとラメがペン先から出てくれています。首軸を外してスポイトでインクを入れるので、ラメ入りでも入れやすく洗いやすいのも良いところです。

しかし、これはメーカーは絶対に止めて欲しいとしている自己責任での使用になります。

インクがたくさん入る万年筆にロマンを感じてしまうのは、不思議な感覚ですが、やはり厚い本を喜ぶ感覚に近いのだと思います。

⇒レンノンツールバー TOP

590&Co.さんとの出張販売

今の時点で確定している出張販売のスケジュールを公開しました。(⇒出張販売スケジュール)

今だに続くコロナ禍での生活にも、気付けば慣れてきた。でも仕事の立場上遠出を控えなくてはいけない方も多くて、何となく不自由に感じられていることが多いのではないでしょうか。

そういう方々のためにも、また出張販売に出ることにしました。

店の仕事を淡々とこなすのも楽しいと思い始めていました。外に出ない生活が当たり前になっていて、家と店を往復する日常も良いものだと思っていたけれど、このまま店の中にいると仕事が決まった中で回るだけのような気がして、焦りのようなものを感じ始めていました。やはり色々なお客様に会って、刺激を受けたい。

どうせなら1年かけて、日本中を巡るくらいのことをしたいですが、店での仕事もありますので月1回くらいのペースになっています。

2月に590&Co.の谷本さんと晩御飯に行った時に、一緒に出張販売をしてみようかという話になりました。

谷本さんのことは、前職の時に取引先の人から「レストランを経営していた人が分度器ドットコムというステーショナリーのWEBショップを立ち上げた」と教えてもらったことがあり、密かにすごい人だと思っていました。

最近では2軒目の590&Co.まで立ち上げられて、やりたいことが次々と溢れてくるようです。

知り合ったのはこの店を始めた頃で、先ほどの取引先の方の紹介で分度器さんのオフィスを見学させてもらった時からでした。

ル・ボナーの松本さんとともにヨーロッパに買い付け旅行に行ったこともあるし、長い付き合いになります。色々な人と知り合ったり疎遠になったりを繰り返してきたけれど、谷本さんとはずっと続いています。

同い年で気が合うということもあるけれど、私は何よりも谷本さんの仕事の才能や目端が利くところを尊敬しています。

そんなおじさん二人の出張販売ですが、当店と590&Co.さんとの共同出張販売なら喜んでくれるお客様も多いと思うし、何よりも自分たちが面白いと思いました。

合同出張販売の名前を“&”としました。

両店名に&があるし、当店と590&Co.さんとの&、お客様と私たちの&、人と人との繋がりを表す記号。この企画はまさに様々なつながりから生まれたものだと考えるとピッタリなネーミングで、このコンセプトとネーミングは谷本さんの頭の中に密かにあったようでした。

開催場所についていろいろ探してみましたが、横浜という場所に思い当った時に、&の最初の開催場所にピッタリだと思いました。

私たちのお客様もたくさんおられるし、横浜の方がはるかに大きな街ですが、神戸に近い雰囲気を持った街だと思っています。

私の息子が初めて一人暮らしを始めたのが横浜市伊勢佐木町で、「& in横浜」 の会場も伊勢佐木町の駅の近くなので様子が分かっているし、交通の便も良いので来てもらいやすいと思います。

出張販売の品揃えを考えると自分の店の弱いところがよく見えてしまいますが、最近は充実してきたと思っています。

オリジナルインクはずっと販売してきた8色の他に、昨年新たに3色追加しました。神戸ペンショーで完売してからしばらく品切れしていましたが、再入荷しました。

「虚空」は、机から目を上げてふと見た何もない空の色を表現した色でした。その時井上靖の”天平の甍”を読んでいて、仏教的なものに惹かれる気分でもあったのかもしれないけれど、色のイメージを表した名前だと思うし、力の抜けた自然体な良い色だと思います。比較的乾きが早くて、にじみの少ない扱いやすいインクです。

「稜線」には金ラメ入りと銀ラメ入りがあります。

私が普段見る山はいつも町から見上げたイメージなので、幼いころ母の実家でよく見ていた、四方山に囲まれた信州の風景が思い出されます。朝日が差してきた頃銀色に輝く稜線、夕日に照らされ金色に染まった稜線という、郷愁の景色を連想させるインクができたと思います。

今回から「稜線・銀ラメ入り」はラメの量をかなり増量しました。

私は横浜での出張販売「&」の後、札幌、東京での出張販売を続けますが、久し振りの旅を楽しみにしています。

⇒オリジナルインク虚空・稜線(金ラメ入り)・稜線(銀ラメ入り)