格の違いという魅力 M450

格の違いという魅力 M450
格の違いという魅力 M450

万年筆において同じ形でもボディの素材の違う「高級タイプ」があります。

ボディの素材が良いものになって価格が高くなるのに伴って、ペン先の素材も14金から18金にグレードアップされていたりします。
今までこの素材違いの高級タイプに必要性を見出すことができませんでした。使ったことがなかったために、その良さが分からなかっただけなのでしょう。
5~6万円までが実用においての上限で、それ以上は素材が違うだけで、書くことにおいては何も違わないと、最近までお客様に伝えて来ました。

最近、ペリカンM450を使い出して、「高級タイプ」の存在意義のようなものを知りました。
M400、M600は筆記具として、とても優れたものですが、M450はそれらの道具性よりもさらに上質なフィーリングを持っていて、値段の高いものには何か理由があるということがペリカンの万年筆の中ではちゃんとルールとしてあるということが分かりました。
それは格の違いという、抽象的な表現でしか言い表せない、なかなか具体的な言葉の見つからないものですが、M450はそのペンを持った時の気持ち、書き味の豊かさ(下品な言い方をすると高そうな書き味)など、同型の普及版M400と比べると明らかに別物で、格という曖昧で基準のない言葉を使いたくなるものでした。

私と同い年のある女性のお客様とM450は私達の世代では、少し背伸びしないと使えないペンだと話していました。
40才になった私達にとって、バーメイルキャップで、トートイス柄のボディを持つこの万年筆はかなり使うことに照れが出てしまうペンだと思いました。
中にはこのペンがすでに似合う貫禄を身に付けている方もおられますし、華やかな存在感を持っていて、このペンに負けない魅力を出している方も同年代でおられます。
普通の、どちらかというと大人しいタイプの私達にとっては、無理をして自分自身を合わせていかなければいけないペン、それがM450でした。
同じペリカンM400のデラックスタイプで、スターリングシルバーキャップのM420などなら私達は自然体で使うことができると思いますが、金色のバーメイルトートイスM450は、個人的には少し背伸びが必要な気がします。

それでもそのお客様も私も、このM450を仕事においてはある程度の所まで来て、さらに伸びていくためには高度な努力と見極めが必要になってきたこの年に選びましたが、それはただの偶然ではないと思いました。

まだまだ自分の仕事を良くしたいという気持ちは強く持っていて、仕事と自分への投資だと思える、自分を引っ張ってくれる万年筆だと思います。
M450という万年筆、私はトートイス柄にペリカンの伝統を感じ、バーメイルにヨーロッパのクラフトマンシップ感じていますが、私達の世代にとって何か特別な意味のある万年筆だと思っています。