万年筆を教えてくれたオプティマ~新色ブラックパール発売~

万年筆を教えてくれたオプティマ~新色ブラックパール発売~
万年筆を教えてくれたオプティマ~新色ブラックパール発売~

自分で買った2本目の万年筆は、アウロラオプティマクラシックグリーンでした。
当時、マーブル模様のセルロイドを現代流に復刻した「アウロロイド」という素材でできものをオプティマクラシックと言い、単色のモデルと区別されていました。現在は単色のモデルはなくなって、オプティマは全てマーブル模様になりましたので、クラシックの名前はなくなっています。
確かにマーブル模様の方が、アウロラらしく、このオプティマの個性を際立たせています。

それは今でも良い選択だと思っていますが、1本目の時は、一般的に良いと言われているペリカンM800を選びました。
2本目の万年筆は、自分の好みや用途に合うものをよく考えて選べ、その時の自分の感覚に一番近かったのが、アウロラオプティマでした。

1本目のペリカンM800のMはお客様への手紙用によく使っていましたが、一番万年筆をよく使ったのは、手帳への筆記でしたので、Fのペン先を選びたかった。
立ち仕事でしたので、スーツの胸ポケットやYシャツのポケットに差しても底が当たらない、短めのボディでないといけない。

当時まだ30歳になったばかりだったので、本当はシルバーの金具のものが欲しかったけれど、当時のオプティマには金色の金具しかなく、でもそれもまたアウロラらしさだと思えました。
今では本数が増えて、同じ万年筆ばかり使うことはなくなったけれど、手に入れたオプティマグリーンのFでシステム手帳にいつも何か書いていました。
オプティマは私に様々なことを教えてくれた先生でもありました。

使い始めたばかりの頃はインクが薄くしか出なかったのが、2週間程経って急にインクがスムーズに流れるようになり、エボナイトのペン芯は馴染むのに時間がかかるということ、そして長く使い続けるともっと書きやすく変化してくれるということ。
ペリカンなど他の万年筆に比べるとオプティマはインクの性質に書き味が大きく左右されます。
それによって書きやすくも書きにくくもなる、インクと万年筆との相性について考えることになったのも、オプティマを使っていたからだと思います。

祖父の葬儀で長野に帰った時、通夜の夜更けに整形外科医の従弟と万年筆を見せ合って、同じオプティマグリーンを使っていたことを知って、不思議な縁を感じてとても嬉しく思いました。
服や靴などが同じだと何となく居心地悪く感じたりしますが、万年筆が同じだと何か共感し合えたような、仲間意識のようなものをもたらしてくれ、それは定番の息の長いモデルならでは喜びだと言えます。

オプティマにバーガンディが新色として追加され、銀色の金具がオプティマにも採用されたことにショックを受けてから7年以上経ち、オプティマに新色ブラックパールが加わりました。
これからもオプティマはアウロラの代表作として、そして万年筆の定番として作り続けられ、それを使う人に万年筆というものについて、それを使う喜びについて教えてくれたりする先生であり続けるのだと思います。

⇒AURORA オプティマ ブラックパール

5回目のお礼

5回目のお礼
5回目のお礼

9月23日(日)、開店5周年を迎えます。
今年もまた開店記念の日を迎えることができて、時世を考えると本当に幸せなことだと思っています。
新しくできた事業の半分以上は3年も持たずになくなっていると言われていることを知らず、良い結果だけを信じて始めた店で、今から考えると冷や汗ものの開店でしたが、皆様に支えられて今まで続いて来ることができました。

何度も言っていることですが、今まで続いてくることができたのは、何の取柄もない、未熟な私を支えてくれたスタッフと、応援してくれている取引先の人たち、そしてもちろんお客様方のお蔭以外の何ものでもありません。

当店のような小さなお店にとってお客様の次に大切なことは、魅力的な商品を作って納めてくれる職人さんたちとのつながりであり、このつながりがあるからこそお客様が立ち寄って下さる店となっています。

ル・ボナーの松本さん、工房楔の永田さん、カンダミサコさん、イル・クアドリフォリオの久内ご夫妻、Sky Windさん、これから商品を納めてくれることになっているベラゴの牛尾さんや万年筆、文具メーカーの人たちには助けてもらってばかりで本当に感謝しています。
これからもそのつながりを持ち続けていきたいと心から願っています。

たくさんの商品がなくてもいい、限定品がどこよりも早く入らなくてもいい。
(本当はそうだといいのですが)そういったことよりも、作り手の顔の見える、私自身が使いたいと思えるもの、楽しいと思っているものを提供することが当店の価値なのだと、最近思えるようになりました。

自分が使いたいもの、使っているものを皆様にご提案できることにとても喜びを感じています。
そういったモノづくりや、楽しんでいる事をお客様に見てもらったり、自分の書いた文章でお伝えしたりする。
ある意味大きいお店では絶対にできないやり方なのかも知れませんが、とても幸せだと思っています。

5周年と言ってもほんの少しだけ特別に感じられる節目となる日くらいに思っていますが、これからも今までと同じように続いていくために、今まで以上に何かしていこうと改めて思う日になりました。

そのひとつとして、以前からぜひやりたいと思っていた、文集を作りました。
テーマは「はじめての万年筆」。
ブログや店頭で原稿を募集したところ、40人の方々がそれぞれの「はじめての万年筆」について書いて下さいました。
読むたびにそれぞれの情景が見えるような文章ばかりで、味わい深いものが揃っています。
また、最後のページには当店の略年表や4コマ漫画のキャラクターのイラストが載っています。

当店はマイペースでこれからも続けていきたいと思っています。
今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。

*文集「雑記から」~はじめての万年筆~は、9月22日(土)から販売致します。1部200円(メール便の場合280円)となっています(製本代実費の一部負担)。文集をご希望される方は、メール penandmessage@goo.jp にて承まりますのでぜひお申し付け下さい。
ホームページでもご紹介させていただく予定です。

IL Quadrifoglio(イル・クアドリフィリオ)との出会い 9月15(土)16(日)日イベント開催

IL Quadrifoglio(イル・クアドリフィリオ)との出会い 9月15(土)16(日)日イベント開催
IL Quadrifoglio(イル・クアドリフィリオ)との出会い 9月15(土)16(日)日イベント開催

イル・クアドリフォリオの工房は、久内さんご夫妻がフィレンツェに修行に渡る前に在籍していた革学校の仲間たちと共同で借りている一軒家の中にあります。

外観は昭和40年代に建てられた民家ですが、内装は自分たちで壁や天井を変えて間取りも作り替えられている、今の感覚のクリエイティブな空間になっています。
ここでご夫妻は仲間たちと刺激し合いながら、日々革小物・靴の製作をされています。
仕事を始めて1年半しか経っていないので、暮らしは決して楽ではないと思うけれど、お二人はとても明るく、そして好きなことを仕事にできる幸せを噛みしめながらマイペースな毎日を送っておられるようです。

私はお二人からイタリア人の職人のライフスタイルを見ますし、実際お二人はフィレンツェの工房でのライフスタイルが染み込んでいるようです。
イル・クアドリフォリオのブログ http://ilquadrifoglio.blog53.fc2.com/ 「La Dolce Vita~気ままな生活」というタイトルはあまりにもはまり過ぎている。

私たちは久内さんたちにいつまでもそんな風に暮らして欲しいけれど、作品はなるべく早く見たいと思いますし、お願いしている新製品をどんどん出してもらいたいと思っていますので、イル・クアドリフォリオのお二人について考える時、とても複雑な気持ちになります。

イル・クアドリフォリオのお二人とは、昨年12月頃旧居留地に工房兼ショップを構えるベラゴの牛尾さんから紹介されてお会いしました。
WRITING LAB.として作ってもらいたいと牛尾さんに打診したものがイル・クアドリフォリオの久内さんたちの作るものと合うのではないかと、牛尾さんが気付いて紹介してくれたのです。

今は革製品作りに専念しているけれど、お会いした時久内さんご夫妻はそれぞれアルバイトをされていました。
副業しながらというと、何か悲壮感のようなものがあるのではないかと私の感覚では思いますが、アルバイトをしていることも笑い話にしてしまうような明るくポジティブなお二人と一緒に仕事をしたいと思いました。

その出会いから第1作目のペンケース「SOLO」が出来上がるまで半年近くの時間が経ってしまいましたが、7月にWRITING LAB.とIL Quadriofoglioの共同企画商品として発売することができ、趣味の文具箱vol.23でも取り上げていただきました。
イル・クアドリフォリオの革小物を作る技法「絞り」は木型に革を巻きつけて固めていきます。
巻きつけるのは染色されていない革なので、色を重ね塗りしていく「パティーヌ」技法で色付けしていきます。
この作り方は型の精度がポイントで、試作を繰り返しながら型を修正していくのに労力も時間も掛かりますので、初回ロットが出るまでがとても大変だということが分りました。

パティーヌ技法はイル・クアドリフォリオの革小物に雰囲気を与えています。
奥行きのあるムラと透明感が同居していて、革製品ではないような色合いを感じ、私がイル・クアドリフォリオの製品に惹かれる一番のポイントとなっています。
「SOLO」のペンケースは個人的にも大変気に入っています。
蓋と胴の締まり具合が絶妙で、閉める時に空気が抜けていくのが分ります。
サイズがピッタリ合う、ペリカンM1000、アウロラ88、オマスミロードを収めていることが多く、これらの万年筆の使用頻度が高くなります。

9月15日(土)16日(日)にイル・クアドリフォリオのイベントを開催しますが、革小物の新製品の発表も予定していて、またご報告できると思います。

*画像は前回のイベント時の様子です

インクと香水

インクと香水
インクと香水

昨年から使い出して、とても気に入っていつも使っている香水がなくなってしまったので買いに行きたいと思っていますが、最近の休みの日は他の用事があって(先週は靴を買った!)京都のショップに行くことができずにいます。

インターネットの通販でもしかしたら買えるのかもしれませんし、大阪の百貨店内にあるショップでも買うことができますが、仮に毎回同じ香水を買うにしても気に入っているその空間である京都のお店に行って、一応メニューを見て、何種類かの香りを試してから買いたいと思っています。

当店に来られて、インクを選ばれている方も同じようなお気持ちなのだろうかと思います。
毎回選ぶインクは一緒だったとしても、一応色見本帳で他の色も見て、迷ってから買いたい。あるいはまた違った色を選んで気分を変えてみたい。

香水はサンタマリア・ノヴェラ薬局の香水を使っています。
修道院の一角にある、とても厳かで静かなフィレンツェ本店の雰囲気に気後れしながら香水を選んだ思い出も含めて、その香水を使う理由になっています。

京都のお店は小さいけれど、フィレンツェのお店の雰囲気と京都らしさが良い感じでミックスされていてとても好きなので、なるべくそこに行きたいと思う。
サンタマリア・ノヴェラの香水はとても有名で、多くの人が知る存在だと思いますが、そういうものがよりたくさんの人と共感し合えて楽しいと最近思うようになりました。

万年筆でも定番のものの方が、良いものを見つけた時に多くの人に勧めることができる。
香水とインクはどちらも液体で、なくなっていくもの、瓶の形や素材も重要な選択基準になっているところが、面白いくらいに似ています。
ちなみに私はほとんどの万年筆に当店オリジナルの「朔」のインクを入れています。
まだまだ暑さは厳しいけれど季節は確実に変わりましたので、次は秋の色「山野草」のインクでも使ってみようかな?と思っています。
オリジナルインク山野草は定番としていつでもありますので、多くの人と紫と青の中間のこの色の味わいについて共感し合えると思います。