いつも手元に~パイロットシルバーン~

いつも手元に~パイロットシルバーン~
いつも手元に~パイロットシルバーン~

毎月第1金曜日に堀谷龍玄先生を招いて開催しています「万年筆で美しい文字を書こう6」教室では、原稿用紙に美しい文字を書くという課題に取り組んでいます。
10月に作品展を予定していて、8月2日の教室からは好きな小説の書き出し7行分のお手本を堀谷先生に作っていただいたものを練習します。
書き出しの140文字内が美しい小説を選ぶ作業は楽しくもあり、難しくもありました。
でも選ばれた人が多かった夏目漱石は書き出しも美しい作家だと分かりました。
私はシンプルだけど情緒的な描写をすると思っている志賀直哉の「濠端の住まい」にしました。
小さな家の縁側から見える、夏の濠の風景が美しく描かれていて、自宅の窓から見える風景に対する愛着のようなものに共感できる文章でした。
堀谷先生の文字で、原稿用紙に収まっているものを見るとなかなかどっしりしていて、良いのではないかと思い、さすが志賀直哉、さすが堀谷先生と感心しています。
なるべくたくさん練習して、文章と堀谷先生に恥ずかしくない文字を書きたいと思います。

最近特にペン習字が注目されているように思います。
月1回だけの教室ですが、かなり効果があるものだと思っていますので、興味をお持ちの方はお気軽にご参加いただけたらと思います。

ペン習字ではいろんな万年筆を課題によって取り替えて、それぞれの良さを見極めようと思っていましたが、使う万年筆がパイロットシルバーンで決まってきました。
パイロットシルバーンが、私が持っている万年筆の中で一番きれいな文字を書くことができると分かってしまったからでした。
書くのはあくまでも私ですが、万年筆の影響を大きく受けるのは恥ずかしいところです。
キャップの尻軸への入りが深くバランスが良く、ペンポイントがボディ断面のちょうど中心にあることがその理由だと思われますが、ペンの後ろの方を持って寝かせて書きやすいところもこの万年筆の特長です。
先端の方を持つとペン先が指に触れて、インクを引っ張ってしまい、手が汚れてしまう。あるいは強い筆圧で早く書こうとすると、ペン先が柔らか過ぎてインクが途切れてしまう、という辺りがその特性と妙に辻褄が合っていて、面白いと思っています。
かなり古くからある、パイロット独特のデザインで、私は決して美しいとは思っていませんが、ゆっくり書くことにおいて、この万年筆ほど適したものは他にないのではないかと、今のところは思っています。
ペン習字以外にも、例えばお買い上げいただいた万年筆の保証書を書く時にも使っています。
私の仕事中の手元にはいつも、書きにくいバランスだと思っているけれど、デザインが大変気に入っていて、いつも使いたいと思っているファーバーカステルと、それを十二分に補ってくれるシルバーンを置くようにしています。

⇒パイロット シルバーン

思想を表現するもの~アウロラ88クラシック

思想を表現するもの~アウロラ88クラシック
思想を表現するもの~アウロラ88クラシック

ミュージシャンはより良い音楽を奏でるために良い楽器を手に入れようとします。
その楽器を手にすることによって自分の腕がもっと良くなるのではないかと期待するのがアマチュアのミュージシャンだとすれば、自分の持ち味を際立たせる楽器として選ぶのがプロのミュージシャンということになるのだろうか。

いずれにしても、ミュージシャンはより良い楽器で演奏したいと思うはずです。
良い楽器を求める理由は良い音を求めてということになりますが、ミュージシャンは選ぶ楽器によって音楽に対する考え方、思想を表現したいとも思うでしょう。
そして私たちが万年筆を手に入れようとする心もそれに近いのではないかと思うようになりました。

例えば誰もが知っている有名なブランド、モンブランやカルティエの万年筆を使うことで、信頼感を演出しているのかも知れません。
ペリカンを愛用する人には、道具を実用性で選ぶ堅実さが感じられますし、アウロラを愛用する人は個性・その人らしさを感じます。
それはもちろん私の独断と偏見ですが、アウロラはそれを選ぶことで、その人のこだわりのようなものが感じられる万年筆だと思います。

アウロラの代表的なモデル、オプティマ、88はかなり特徴的な万年筆です。
吸入機構は、カートリッジ・コンバーター両用式が多い中にあって、ボディ本体がインクタンクになっている吸入式です。
アウロラオプティマ、88の吸入機構はリザーブタンクが備わっていて、出先でインク切れが起きても、そこからインクをおろす(その表現がピッタリです)とA4サイズで数枚書くことができます。

リザーブタンクの使い方は、実際にアウロラを使ってみるとすぐに分かる簡単なものですが、なるほどコロンブスの卵的な機構だと言えます。
アウロラの書き味は硬く、カサカサした感じだと言われることがあって、それがアウロラ的だと思われているフシがありますが、実はそんなことはありません。
調整次第で生まれ変わり、滑らかで代わるもののない書き味に仕上げることができます。

万年筆だけでなく、何か物を選ぶ時にあれこれ実質的な理由を挙げて人はそのモノを選ぼうとしますが、私がアウロラ88クラシックを選んだ理由は、自分の万年筆に対する考え方、生き方、思想を表現しているものだからです。

古臭くてもいい、時代に流されない人でありたいといつも思っています。
シガーのように太く凹凸のない丸みのあるボディのシルエット、黒のボディに金のキャップという時代遅れなデザインにも思えるアウロラ88クラシックにそれを見出して、憧れて自分の指標として、その考えを表すシンボルとして、この万年筆以上に適したものはないと思っています。

万年筆は書き味がどうで、どんな文字が書けるから、それでどんな仕事ができるかが一番に論じられることですが、自分の思想を表すものが万年筆であっていいと思うし、万年筆はそういうものであって欲しいと思っています。

私の思想を表す万年筆として、アウロラ88クラシックをご紹介しましたが、私と考えを同じくする方がアウロラ88クラシックを顧みて下さると、とても嬉しく思います。

⇒アウロラ88クラシック

旅の文具入れにも ~ル・ボナー ポーチピッコロ~

旅の文具入れにも ~ル・ボナー ポーチピッコロ~
旅の文具入れにも ~ル・ボナー ポーチピッコロ~

旅行に行く前に一番最初に準備するものが、旅の間に読む本とノートと万年筆なので、いつも妻に嫌味を言われます。
服などの着替え、洗面道具を先に用意すればスーツケースの荷作りも早く終わるのに、そうしないのは旅を考えた時に私はまず、持っていく本と文房具について思い描くからです。
本は行き先が舞台になっているものがあれば理想ですが、なければ何らかの旅行記などが良いと思っています。
今夏の旅行の行き先は伊勢神宮で、同じ近畿圏内のとてもささやかなものですが、近鉄特急に初めて乗るし、新しくできたホテルに泊まれる、近くの贅沢ができるのではないかと思って楽しみにしています。

荷作りに話を戻すと、荷物をバラバラと鞄に入れるのは何となくつまらないし、散らかりやすくなってしまいますので、同じジャンルごとに小分けしたポーチになるべく入れたいと思います。
それによって荷物が重くなったり、入る量が少なくなることもあるかもしれないけれど、ポーチに小分けすることは旅の間の便利さにも繋がるので譲れないところです。

鞄の中で荷物を小分けにするためだけのポーチとして考えると、あまりにももったいないですが、一番こだわっている特別なものを入れるポーチとして、そして宿泊したホテルの部屋からちょっと出る時などに、財布、携帯電話、万年筆などを入れて持って出る時にも使うものとして、ル・ボナーのポーチピッコロほど適したものはないかもしれません。

既にたくさんの人がそれぞれの用途を見つけて使われているようです。
ちなみにポーチピッコロには、持ち手が付いています。
これは手で持って提げるというよりも、ここに親指以外の指を通してポーチに手の平を添え、ファスナーが上を向くように持つように設計されています。
ル・ボナー松本さんの美学なのかもしれません。

当店に来られるお客様の多くは、当店に来られる場合旅行ではないのでポーチピッコロをたいていの場合、文房具入れとして使われています。
私もそのように使っていて、手帳とペンケース、携帯電話などの仕事の道具を入れて、鞄からピッコロを取り出すと仕事を始めることができる。
これが旅行でも同じで、一番大切に思っている、旅の記録をするための道具をポーチピッコロに収めて、ホテルの部屋や特急電車の中で取り出して書き物をしたい。
家族と一緒にいる時に手帳に集中して書き物をしていると、後から何をそんなに書くことがあるのかと聞かれることがあるけれど、書かなくても何も困らないけれど、書きたい気持ちになるということをどう伝えればいいのだろう。

実際は後々のネタに使えたりするので、書かないと困ることにもなるけれど。
万年筆店店主という職業だけど、書くことも仕事の一部で、そういう生き方だとしか説明がしようがありません。
その生き方を写すものをここにはいつも収めていたい。
ポーチピッコロはそんなふうに思わせてくれる、ちょうどいい存在なのです。



*どちらも少量の在庫になりますのでご了承下さい。

万年筆店の思想が見えるオリジナルのペンケース~ペンレスト兼用万年筆ケース~

万年筆店の思想が見えるオリジナルのペンケース~ペンレスト兼用万年筆ケース~
万年筆店の思想が見えるオリジナルのペンケース~ペンレスト兼用万年筆ケース~

万年筆店にとって、自前のペンケースを持つことは自分たちがどのように万年筆を思っているかを表現することであり、オリジナルの万年筆以上に大切なことだと思うことがあります。
つまりオリジナルのペンケースを見ることで、その店の思想のようなものを見ることができるのではないかと思います。

オリジナルペンレスト兼用万年筆ケースは、当店の万年筆への考えが反映されたペンケースであると、自信を持って言うことができます。
発売を開始して3年が経ちましたが、このペンケースをご理解いただいた多くの方に愛用していただいています。
このペンケースは万年筆を道具としている人のためのケースであり、そのための機能と質を持ち合わせています。
持ち運ぶ時はフタをペンに被せるように閉じてペンが傷つかないようにし、ペンを使っている時はフタをペンの枕のようにしておくことですぐにペンを取り出せる。
ちょっとしたことかもしれませんが、ペンの出し入れを繰り返す時、フタを開かずに取り出すことができるというのは、大変便利だと私も使っていて感じています。
ファーバーカステルクラシックエボニーの万年筆とボールペン、細字用として完璧な万年筆パイロットシルバーンが私の鉄壁のオンタイム3本セットで、ペンレスト兼用万年筆ケースにいつも収まっています。

シュランケンカーフは、柔らかさがないと成り立たない構造の役に立つしなやかさを持ちながらも、型崩れしない強靭さも併せ持っています。
このペンケースが長く愛用できるものであるのは、シュランケンカーフという上質な素材に依るところが大きいかもしれません。
シンプルなデザインですが、実はその被せる革の長さや縫い合わせの幅で開け閉めのしやすさが全く違いましたので、製作してくれているカンダミサコさんの腕の良さと行き届いた丁寧さがあって実現したものであることは言うまでもありません。

当店の万年筆の思想。それは何よりも替え難い大切なものであるけれど、仕事など日常の道具として使われるもの。
そういう万年筆をいつもご提供していきたいと思っていますので、そういう仕舞い方ができるペンケースを作りたかった。

それがペンレスト兼用万年筆ケースの起こりで、40本あまりの万年筆を日々駆使しているヘビーユーザー(?)とも言える当店スタッフKの思い付きがこのペンケースに生かされています。
スタッフKは、かなりズボラ(関西弁で面倒臭がりの意)な性格で、私以上にペンケースのフタの開け閉めが面倒だと思っていました。
ペンを取り出す時面倒でなく、素早くペンを取り出すことができて、持ち運ぶ時誤ってペンを落としたりしないようなペンケースが欲しいと思っていた彼女は、手近にあった布でそんな理想に叶ったペンケースを作って使っていましたが、それがペンレスト兼用万年筆ケースの原型でした。

そこからの試行錯誤があり、機能性とデザイン性を兼ね備えたペンケースとして仕上がっていると思います。

⇒Pen and message.オリジナルペンレスト兼用万年筆ケース