ペンレスト兼用万年筆ケース新色発売

ペンレスト兼用万年筆ケース新色発売
ペンレスト兼用万年筆ケース新色発売

黒い革のペンケースに金のペンのコントラストがとてもきれいだと気付いたのは、当店のオリジナルのペンレスト兼用万年筆ケースに万年筆を収納した時に上部2cmくらいが見えるからでした。

ここに金の万年筆を3本入れるとなかなか見栄えがしていいのではないかと気付いたのです。

しかし、私が持っている金の万年筆は中字2本と太字が1本。
この3本の万年筆ケースには、細中太字の万年筆を入れて様々な用途のものに対応できるようにしたいと思っていたので、金の万年筆ばかりで細中太字という組み合わせにはできませんので、手帳に書けるような細字の金の万年筆が欲しいと思ったりします。

外国メーカーのシリーズでも日本に入っている金の万年筆が意外と少なく、シェーファーレガシー、クロス、パーカー辺りになります。
ちなみにレガシーブラッシュトゴールドが私の中では有力候補です。

同じイメージのものを字幅違いでそろえたくなるのは、3本差しなどのペンケースの中身をコーディネートしたいという気持ちからで、同じ色合いとか質感で揃えたいと思うのは、この万年筆ケースのようにペン本体の一部分が見えるようなものの存在があるからだと思います。

ふた部分の構造はその素材であるシュランケンカーフのしなやかで強靭な特長を生かしたもので、この万年筆ケースの最大の特長にもなっています。
持ち運ぶ時はふたを閉じた状態にするとペンは露出しませんし、ふたをペンの枕のようにするとペンの上部が露出して、すぐに取り出せるようになっている。
それがペンレスト兼用の名前の由来ですが、なかなか便利に使えるものだと思います。

シュランケンカーフは太い万年筆を入れるとそれに合ってくるし、細い万年筆にも同様にそれに沿うように合ってくる。
傷などに強く、エージングしないと言われているシュランケンカーフですが、使っていると中身に合ってくる良質な革らしさが感じられ、この素材の良さを実感しています。

しばらく品切れしておりました、ペンレスト兼用万年筆ケースが再入荷したのと同時に、ライトグレーにスカイ色の内張りのとても清清しい印象の新色も完成しました。

⇒ペンレスト兼用万年筆ケース(3本差し)gid=2136278″ target=”_blank”>⇒ペンレスト兼用万年筆ケース(3本差し)

中間の忘れられやすい存在 ペリカンスーベレーンM600

中間の忘れられやすい存在 ペリカンスーベレーンM600
中間の忘れられやすい存在 ペリカンスーベレーンM600

クロスのペンでセンチュリーⅡというモデルがありました。

大きく伸びやかなデザインで書くことにおいて最も優れたバランスのタウンゼントと、細い軸でクロスの最も代表的なペン、センチュリーという個性の強いペンの中間のサイズで、携帯性と筆記性能を両立したすばらしいペンですが、なぜかセールス的に苦しんでいました。

この事例は、昔あった三菱の4WDパジェロとパジェロミニの中間パジェロJrにも当てはまったり、ベンツAクラスとCクラスの中間のサイズのBクラスにも当てはまったりするのだろうか。
500円のAランチ、700円のBランチ、900円のCランチならBランチが売れるのに(?)。

ペリカンスベレーンM600の存在は残念ながらクロスセンチュリーⅡの事例に当てはまるのではないかと思っています。

ペリカンの伝統を受け継いでいて、60年以上の歴史のあるM400と、バランスが良く高い評価をいつも得ているM800の中間に位置するM600はM400の携帯性とM800の筆記性能を兼ね備えた大変優れた万年筆だと思いますが、M400とM800のコンセプトがあまりにもしっかりしていて、M600にペリカンとしての存在感が希薄なのが人気が低い理由なのかなと思います。

でも実際M600は程よい大きさの本当に使いやすい万年筆だと思います。

私はこのM600にアウロラの代表的な万年筆オプティマに似たバランスを感じて、特に女性の方には使いやすいのではないかと思っています。

M800は万年筆を使い慣れた人にはとてもバランスの良い万年筆で、万年筆の正解だと思っていますが、初めて万年筆を使う人や女性には少し重さを感じてしまうところがありますし、M400は万年筆を使い慣れた人が机に向かって長時間書き続けるにはボディが少し細いと思っています。
ある程度ペンを寝かしてゆったりと書くためにはM600くらいの太さが必要だと思います。

万年筆で書くことに慣れてきて、筆記角度が低くなってきた女性にはアウロラオプティマとともに、このM600もお勧めしたいと思います。
しかし、唯一無二の存在ではなく、オプティマを引き合いにだされるあたりも、M600らしいところだと思ったりします。

⇒ペリカン M600

アウロラ88オールブラックの普遍性

アウロラ88オールブラックの普遍性
アウロラ88オールブラックの普遍性

万年筆はなぜ黒と金の金具のものしかないのだろうと疑問に思っていました。
しかし、黒に金の万年筆(以後黒金)は、何歳になっても飽きずに使うことができるし、インクのシミなども気にする必要がない。
言わば感覚的にも実用的にも理由のある、万年筆においての普遍性がこの黒金の万年筆にはあると理解してから、黒金の万年筆に対して心が大きくなりましたし、どちらかというと好きになりました。

しかし、万年筆においての普遍性を持った黒金だからこそメーカーはその造形に気を配って作らないと、美しいものとそうでないものの違いが歴然と出てしまいます。
黒金の万年筆で最も美しい形を持ったものの一つとして、アウロラ88オールブラックを思い浮かべます。
ボディのラインは全て自然なラインで繋がっていて、どっしりした安定感さえも感じられる。
装飾らしい装飾はなく、シンプルなキャップリングに小さくロゴではない筆記体のAuroraの文字。
こういうデザインの手法を何というのか分かりませんが、何か理論に基づいて形作られた理知的な感じがします。

黒金の中には、シンプルな中で特徴を出そうと、ラインが不自然になってしまっているものもたくさんあるように思います。

アウロラ88をデザインしたマルチェロ・ニッツォーリはオリベッティのタイプライターやミシン、電話などもデザインしていて、どれも自然な曲線が流れるようなラインになって形作っているものばかりです。
ニッツォーリに限らず88が生まれた40年代から50年代にかけてイタリアには優れたデザイナーが何人も存在し、そのデザインによって世界中を席巻する工業製品を作っていました。

それらはイタリアデザインの第1次黄金期の中にある製品で、他のイタリア工業製品が今見ても美しいと思えるのは88と同様です。

美しい形を持ち、万年筆の普遍性を追求した黒金に、ピストン吸入機構、エボナイトのペン芯などこだわった機能を持った万年筆がアウロラ88オールブラックです。

⇒アウロラ88オールブラック

オマスミロードとボローニヤ人

オマスミロードとボローニヤ人
オマスミロードとボローニヤ人

今夏の旅行に携えて移動中や宿に帰ってからの時間の楽しみである、自分なりの紀行文を書くための万年筆として、オマスアルテイタリアーナミロード万年筆を選びました。

そして旅に持っていく万年筆やノートと同じくらい大切な携行本が、井上ひさし氏の「ボローニャ紀行」で、万年筆と関連性を持たせて旅の間オマスについて考えたいと思いました。
オマスは1925年にイタリアボローニャで創業し、今もその地に根付いて活動している万年筆メーカーです。
万年筆の歴史において重要な名品を生み出したりして、海外では根強い人気があるようですが、日本では輸入代理店が何度も変わったりしたため、不当に知名度が低いようでしたが、喫煙具などを中心に扱っている会社インターコンチネンタル商事が扱うようになって、ようやくオマスを日本でも広めていく体制が整ったようです。

昨年オマスの工場を訪ねるためにボローニャを訪れたことで、オマスにもボローニャの街にも強い思い入れを持ちました。
そんな背景もあり、オマスをモンブランやペリカンなどと同じくらい、一般の万年筆に詳しくない人でも知っているブランドにしていきたいと思っています。

まず自分でオマスの万年筆をとことん使ってみようと思い、昨年から最も代表的で一般的だと思う万年筆アルテイタリアーナミロードをかなりの使用頻度で使っています。
ミロードはペリカンM800相当のレギュラーサイズの万年筆で、決して小さくありませんが、コットンレジンという綿由来の天然素材の樹脂を使っているために質量が軽く、手に重さを感じることはありません。
握った感じも他のメーカーが使うアクリルレジンに比べると柔らかさを感じます。
これらの特長はエボナイトに通じるところですが、変色や臭いがきになるエボナイトの欠点を解消した素材だと思っています。

素材の軽さ、柔らかさは使っていて気分が良いし、多くのイタリアの万年筆の特長である多すぎない適度なインク出とペン先のフィーリングの良さもあって、努めて使おうとしなくても自然に手が伸びる万年筆になっています。

井上ひさし氏の「ボローニャ紀行」を読んでボローニャの街が中央政府とは距離を置いた住民自治によって発展してきた街だと知りました。

1940年代には、イタリアファシスト党やナチスドイツを市民兵であるパルチザンが戦い占領から自治を奪い返した歴史や、社会的弱者の自立を助ける施設を個人が立ち上げて市民の協力によって軌道に乗せたり、市民の声を反映させて古い建物をそのまま利用して会社や文化的な施設として利用したりなどなど、ボローニャ独自の街を良くしようとする活動は住民主導で行われているとのこと。

オマスもそんなボローニャ人気質の中で生まれてきたことは間違いなく、またボローニャの街の発展にも貢献してきたのだと考えると、オマスの万年筆に自分たちの街は自分たちで何とかするという住民自治を貫いてきたボローニャの人たちの大人の精神も感じるのです。

4時間に及ぶ昼休みをとり、夕方になるとスーツでビシッときめて街に出て、友達同士でただおしゃべりしている。そうかと思えばただブラブラと散歩している男たちの姿もまたボローニャ人のそれであり、なかなかおもしろい。

端正で破綻のないフォルムと柔らかな持ち味と書き味のアルテイタリアーナ万年筆は、ボローニャの男たちの姿そのものだと思っています。

*画像は店主愛用のアルテイタリアーナミロード(ブラック)です。