さりげなくメモをとり、生かす ~コラボメモカバー~

さりげなくメモをとり、生かす  ~コラボメモカバー~
さりげなくメモをとり、生かす ~コラボメモカバー~

物を考えたり、何かのヒントを得るのに本を読むことは大いに役立ちますが、人と話すことほど刺激になることはないと思っています。
そして話をしている時にその要点をメモするようにして、後で見直したり、まとめたりすることによって、その時人と話した内容が私たちの財産になり、物事を考える助けになると思っています。

メモをとることは予告なく訪れる仕事のチャンスや降りてきたアイデアを実現するための第一歩なのかもしれません。
人と話している時にとるメモの効用は多くの人が実証していて、他者から学べるものは何でも学ぶという謙虚で貪欲な姿勢がメモをとるという行為に表れます。
相手に何でも話してもらいたいという時に大きなノートを開いたり、縦開きのメモ帳を開いて、いかにもメモをとる姿勢をすると、相手に意識させてしまうような気がしますので、小さな手帳にサッと要点を書くくらいのさりげないメモとりをしたいと思っていました。

メモのとり方についてそんなふうに考えている時に、パイロットから復刻発売されたポケットタイプの万年筆、ミュー90Sの人気が非常に高いことが分かってきました。
サイズはコンパクトでも、すぐに外せる勘合式キャップを尻軸にカチッとはめると書きやすいサイズになり、万年筆らしくないデザインのミュー90Sの人気は、メモをとる時にさりげなく使う万年筆を待っておられた方が多かったということを表していて、万年筆でメモをとることについての万年筆側の答えを見たような気がしました。

最初はポケットタイプの万年筆を市販のA7サイズのメモ帳の表紙に挟んで使っていました。大変使い勝手が良かったのでしばらくはその状態で使い続けていました。ですがそのうち、どこか物足りない気分になりました。
それはやはり見た目が事務的すぎるという所にあると思ったので、実用的でありながら見た目も美しいメモ帳のカバーを作りたいと思いました。

レポート用紙に鉛筆で書いた簡単なたたき台はすぐに出来上がりました。
それをル・ボナーの松本氏に作ってもらい、両店で販売したいと思いました。
松本氏が鞄作りで忙しいことは分かっていましたので、少しためらいましたが、多くのお客様がこのコラボレーションを待ち望んで下さっていると思い
ましたので、実現したいと思いました。

松本氏は思いのほかこの企画を気に入って下さったようで、原稿をファックスで送ると、次の木曜日には早速試作品を持って打ち合わせに来て下さり、松本氏の本気度が伝わってきました。
松本氏のアイデアは芯材を使わずに革を厚くすることによってしっかり感を出すという専門的な所から、ペンホルダーの仕様など外観的な所まで随所に生かされています。

サンプルを2ヶ月以上使っていますが、ポケットや手元にこのようなメモ帳がペンと一緒にあることの優位性は高く、私の場合はメモを書き漏らすことが少なくなりました。
夜ほぼ日手帳にその日あったことなどを日記代わりにつけていますが、一日を振り返る時キーワードだけでもメモ帳に記しておくと、その日の流れがよみがえってきます。

しかし、メモ帳にメモをとってそのままになってしまうと、せっかく人の話を聞いてメモをとってもそれを生かすことができません。
A7サイズのメモ帳は、文具各社から様々なものが発売されていて、私はメモをメモ帳の中に埋もれさせてしまうことを防ぐために、切り取り式のメモ帳を使っています。
一日が終わった時に、その日書いたものを必ず切り取るようにすることによって、メモを文章にしたり、予定に入れたりして、何らかの形で活かせるようになってきたと思っています。

たかがメモですが、それが全ての始まりであり、このメモから様々なことが始まるのだと思うと、とても大切な仕事の道具であると思いました。