進化する木工家 ~工房楔春のイベント3月26日(土)27日(日)

進化する木工家 ~工房楔春のイベント3月26日(土)27日(日)
進化する木工家 ~工房楔春のイベント3月26日(土)27日(日)

恒例になっております工房楔春のイベントを明日、明後日開催いたします。
このイベントは2009年から始まっていて、年1回が年2回になり、6年も続けられているのは、たくさんのお客様が毎回ご来店下さっているおかげだと改めて感謝しています。

永田さんは毎回何らかのニュースをこのイベントのために準備してくれていて、今回は真鍮金具の当店オリジナル銘木軸「こしらえ」や、楔オリジナルのチタン製金具の万年筆などです。
普段なかなか見る事のできない銘木のステーショナリーに触れて、作家の話を直接聞くことができるいい機会だと思っています。
思えば初めの頃は代表作であるパトリオットボールペンとカッターナイフ他、数点のステーショナリーしかありませんでしたが、どんどん増えていきペンシルやペンシルエクステンダーなどの筆記具、名刺ケース“ポルタ”、万年筆ケース“コンプロット”など、工房楔のどこを切っても魅力的なものが存在する。
次々と新しいものを作り出し、誰も作っていないもの、誰よりも良いものを作りたいと活動する永田さんの生き方を、少し生き急ぎ過ぎだと思うこともあるけれど、永田さんを突き動かすその情熱があるからこそ、他の木工家よりも良い素材を手に入れることができているのかもしれません。
でもどの作品も銘木だという素材の良さに甘えず、機能面でも使う意義のあるものだということは皆様ご存知だと思います。

それは永田さんが木だけでなく、様々なものに興味を持って使っていることの裏付けです。永田さんを知るお客様が永田さんと言えばオレンジをイメージするほど、オレンジ色の服、オレンジの鞄、靴、時計までオレンジ色という徹底したオレンジ好きです。
そんな永田さんがデルタドルチェビータに惹かれていったのも自然で、オレンジ色のドルチェビータのシリーズをほぼ全種類持っていて、コンプロット10に収めて持ち歩いている。
万年筆に並々ならぬ興味と愛情を持っていて、それらを使うことを楽しんでいるからこそコンプロットが出来上がったのだと思います。

ステーショナリーを楽しむ永田さんの姿を見て、私も木を楽しむことを知りました。
私はウォールナットやチークなど、何でもないように見えながら使ううちに味が出てくるようなものを好み、これらのものをキレイとキタナイの間と言ったりしますが、モノの有り方の中で最上の褒め言葉だと思っています。
それは本当に人それぞれの好みなのかもしれないけれど、工房楔の定番の素材、花梨こぶ杢のように玉杢がビッシリとあるものは華やかだし、黒柿や桑、黄楊は日本的な侘びた風情がある。ブライヤーはダイナミックな模様があるなど、どれも見所があって、味わいが違います。

皆様もたくさんの銘木の中で惹かれる素材があると思いますので、それらを見つけにイベントに遊びに来ていただけたら、そして工房楔と当店の遊びにお付き合いいただけたらと思っています。

工房楔春のイベント開催 3月26日(土)27日(日)

工房楔春のイベント開催 3月26日(土)27日(日)
工房楔春のイベント開催 3月26日(土)27日(日)

工房楔の作品はたくさんありますが、当店のオリジナル企画として発売しているものに「こしらえ」があります。

こしらえはパイロットカスタム742、カスタムヘリテイジ912の首軸から先のペン先ユニットをそのまま使うことができる、銘木万年筆軸です。
書き味も使い勝手も一流のこれらの万年筆を、さらに使い込むことで軸も育てられる楽しみを持つことが出来ます。
銘木の軸は使ううちに木に含まれる油分が表面に出てきて艶を作り、新品の時よりもどんどん良い風合いになってきます。
長い時間使って育てた軸を、ペン先ユニットを差し替えることで違う用途でも使うことができる。それはその万年筆を長く使いたいと思った時有利だと思います。
ペン先も使い込むことで育っていきますので、使い込んで書きやすくなったペン先を違うボディにして気分を変えることもできるという、こしらえには二重の楽しみがあるということになります。

こしらえに使う木軸は様々なものがあり、その時使うことができる良材を工房楔の永田氏が選んで製作してくれています。
花梨はやはり工房楔の代表的な素材で、模様も複雑で面白い。油分を多く含む素材なので艶も出やすいので、楔商品の素材選びに迷われている方には花梨をお勧めしています。
私は「キレイと汚いの間」のような素材感が好きなので、チークや桑、ブライヤーなどが好きですが(あくまでも主観です)、人それぞれの好みが分かれるところです。

こしらえのネジやキャップの内側、キャップのヘリには木以外の素材を使っていますが、ステンレス、エボナイトという順番で発売してきました。
ステンレスは、重量がありバランスのアクセントになって、いつでもきれいな状態にある木との対比が鋭くて良い素材です。
エボナイトは軽いので自然な使用感で、その模様や色合いから木との親和性が高い素材だと思っています。

このたびのイベントでは、新たに真鍮パーツ仕様のものを発売します。
真鍮は磨くとピカピカの金色になり、使ううちに光沢が落ち着いてくる、エージングする木に近い金属だと思っています。
工房楔の永田篤史という木工家の、木を見る確かな目と腕の良さを生かすことができて、万年筆を使っている人の要求を満たしたものがこの「こしらえ」だと思っていて、当店は今後もこのこしらえを永田氏とともにより良くしていきたいと思っています。

永田さんは今回のイベントでチタンパーツの万年筆も仕上げてくれることになっています。
今回も注目するべき新たなネタを持ち込んでくれますので、ぜひイベントに足をお運び下さい。

⇒万年筆銘木軸「こしらえ」cbid=2557546⇒万年筆銘木軸「こしらえ」csid=1″ target=”_blank”>⇒万年筆銘木軸「こしらえ」

オマス追想

オマス追想
オマス追想

ブログでは既に記述済みですが、このコーナーでもオマスの廃業について書いておきたいと思いました。少しお付き合い下さい。

6年前のル・ボナー松本さん、分度器ドットコム谷本さんと行ったドイツ~チェコ~イタリア旅行でボローニヤを訪れたのは、オマスの本社、工場訪問の約束がとれたためで、オマスのおかげでボローニヤやその周辺の街モデナ、パルマを訪れることができたとも言えなくもない。
どの町も古い街並みを持っていて、文具店が何軒もありました。それらを歩いたり、レンタルした自転車で走ったりして巡りました。

6月の始めでしたが、イタリアはアフリカの近さを実感させられるほど、乾いた風と強い日差しで、旅の思い出はその熱い日々とともにあります。
オマスを訪れた時、商品説明の中でパラゴンを「モンブラン149がライバルです」と説明していて、オマス社は本気で打倒モンブランを標榜してペン作りに取り組んでいることが言葉の端々から感じることができて、大いに共感しました。
規模も全く違うし、モンブランはオマスのことをライバルだとは思っていないかもしれないけれど、自分よりはるかに大きなものをライバルだと位置づけてそれを目指すという考え方は好きだと思いました。
大きな力と戦うなら、自分たちの強みや特徴を見極めて、それらを生かした戦略をとらないとまともに行くと歯が立たないに決まっている。
オマス社は自分たちの特長である、歴史的モデルの継承と未来に目を向けたモデルを同時進行させて発売していました。

万年筆の中でもオーバーサイズという範疇に入る大きなボディのパラゴンは、書くことが楽しくなる手応えのある最高の万年筆だと思いましたし、レギュラーサイズのミロードは最もきれいな文字を書くことができる万年筆のひとつだと思っています。私はその派手ではないけれど、万年筆の基本を押さえていた玄人好みなモノ作りにほれ込んでいました。
セルロイドやウッドなどのボディ素材も定番品として作り続けていたのに、自分がそれらを一本も持っていないのがとても残念ですが、もちろん一番残念なのはオマスがもう存在しないということです。
親会社が存廃を検討し始めた時にオマスのスタッフたちは必死になって、新しい引受先を探したそうです。
しかしオマスは譲渡されることなく、工場閉鎖、廃業してしまいました。
昨年90周年を迎えて、記念の万年筆もたくさん発売して活発に活動していると思っていましたので、オマスを失った喪失感は大きい。
タイムスリップしたような古い建物が連なり迷路のような通りを作るボローニャの街同様、オマスも時代に取り残されて存在する役回りを負っていました。

でもその役回りを維持して続いていくことを時代が許さなかったのかもしれず、私はここから何かを学び取らなければならないと思っています。

憧れる不良性 モンテグラッパエキストラ1930/エキストラオットー

憧れる不良性 モンテグラッパエキストラ1930/エキストラオットー
憧れる不良性 モンテグラッパエキストラ1930/エキストラオットー

大人の不良性、というものに憧れることがあります。
言葉遣いや服装など表面的なものではなく、何かちょっとした拍子に垣間見えてしまうもの。
それをわざとらしく演出する言葉遣いや服装、態度をとるということではなく、上手く言えないけれど、その人が醸し出している雰囲気のようなものです。

私は天邪鬼だったけれど、不良性とは程遠い人生を歩んできました。
自分にないものを取り繕っても仕方ないので無理はしないけれど、そういう憧れを抱かせる不良性を持ち合わせたかっこいい大人たちを何人も見てきて、その人たちの仕事には近付きたいとは思います。
その人たちは皆、見た目の取っ付きにくさとは裏腹に優しく、自分の仕事に情熱を持って取り組んでいる大いに語る人たちでした。
何かで怒らせたらものすごく怖いのだろうなと、恐れを抱かせる抑止力のようなものも持っている。

万年筆とは、そういう不良性からは程遠いものだと一般的には思われているけれど、実はそれほど離れているものではなく、そこに近づけてくれたり、その人の生き方、目指すものを投影してくれる数少ないモノのひとつだと思っています。
モンテグラッパエキストラ1930のような万年筆は、不良性を持った大人に似合うのではないかと思いました。

クラシカルなセルロイドのボディに不釣り合いなほど大きなペン先。デザインはそれほど奇をてらったものではないけれど、個性と力強さと色気を感じさせる、明らかに普通の万年筆とは違うただならぬ雰囲気を持っている。
そして、888本の限定で発売されたエキストラ1930の限定版オットーは、クラシカルなエキストラに華やかさを少し加えたもので、こんなにカッコいい万年筆は久しぶりに見たと思いました。

モンテグラッパ。不良性を持ち合わせた大人にこれほど似合うものは他にないと思いますし、自分にない不良性を加味してくれるものでもあると思っています。


⇒エキストラ1930cbid=2557105⇒エキストラ1930csid=3″ target=”_blank”>⇒エキストラ1930