ペリカンM600ルビーレッド 才色兼備な存在

ペリカンM600ルビーレッド 才色兼備な存在
ペリカンM600ルビーレッド 才色兼備な存在

靴が欲しいと思いました。

でも今回はデザインや細かな色の違いよりも、自分の足にピッタリと合うものが欲しいと思いました。
売れ筋から言うと私が履くようなサイズは規格より少し小さめで、それを作ることで効率は悪くなるかもしれません。
でもそれぞれのメーカーや輸入代理店の考え方で、多くの人にピッタリと合うものを提供したいと考えるかどうかが、ラインナップに表れていると思いました。
ネットでいろいろ調べてみて、パラブーツの靴に小さいサイズがあることが分かりました。
歴史があり、日本国内にしっかりした代理店があるところはサイズを揃えていることが多いということが分かり、それはペリカンの万年筆にも言えることだと、今回の自分の買物で分かったのでした。

ペリカンの万年筆もパラブーツと同じように、誰にでもピッタリ合うように、手帳のペンホルダーやベストの浅いポケットにも差すことができるミニペンM300から、筆達者な人にこそ使いこなして欲しいオーバーサイズのM1000まで、それぞれとても意義のある5つのボディサイズをラインナップされていて、誰にでもピッタリ合うようにできています。

ペン先の種類もEFからBBまでありますので(M800とM1000は3Bまで)、それぞれの用途に合うものを見つけることができます。
最近では売れ筋のFとMしか揃えていないメーカーもあって、それは靴で言うと7から9までしか揃えていないことと同じものを感じます。

万年筆のボディサイズやペン先の字幅のサイズも、多く、細やかに揃えている方がピッタリ合って、より快適に満足感を持って使うことができるからペリカンを愛用する人は多いのだと思い当たりました。
携帯性に優れた最もペリカンらしい万年筆M400、タフなペン先とバランスの良いボディで最も万年筆らしいM800という2つの名品の間で、M600は異色な存在だと思っています。
アウロラオプティマと太さ以外は、ほぼ同じ長さと重さのM600の中間的なサイズがペリカンらしくないと考えていました。

しかし、昨年発売し、特別生産モデルグリーン・オ・グリーンや今年限定生産したM605など、ペリカンの中でM600のシリーズを活性化しようとする動きが見られますので、ペリカンとしてはM600をニュースタンダードとして位置付けたいのかもしれません。
そんな動きをさらに強化するような限定生産品M600ルビーレッドが限定1000本で発売されました。
ペリカンでは以前、都市シリーズという世界の都市をイメージした限定品を発売していて、各都市のイメージと合った色合いでとても人気がありましたが、ルビーレッドはその時のマドリッドから透明感をなくして、しっかりとした赤色の強い色を出している、よりイタリアの万年筆に近い色合いをこのルビーレッドに感じます。

ペリカンの、ドイツ仕込みの実用性、耐久性とイタリアの万年筆の美しさを兼ね備えたものに仕上がっているのが、M600ルビーレッドです。
M600はボディが軽いので女性にも使いやすいと思いますし、調整していて言うことをよく聞く、とても素直な柔らかいペン先も特長的だと思いました。
自分にとってピッタリサイズの万年筆を探している時にデザインや色合いは優先されるべきことではないかもしれません。
でも実用的にピッタリ合って、モザイク柄の美しいボディを持つM600ルビーレッドのような万年筆もまた、異色の存在なのかもしれません。

色合わせ~イル・クアドリフォリオメモノート~

色合わせ~イル・クアドリフォリオメモノート~
色合わせ~イル・クアドリフォリオメモノート~

現在発売中ステーショナリーや新たに製作する革小物、オーダー靴の受注を中心としたイル・クアドリフォリオのイベントを9月15日(土)、16日(日)に当店で開催します。
イベント時に私と駒村氏、当店スタッフ久保が久内さんにオーダーした靴の仮履きが出来上がっておりますので、その試し履きも公開します。

靴の出来上がりばかり楽しみにしていられず、イベントの準備で話し合わなければならないことはいくらでもあります。
この日和田岬の工房を訪れたのもそのイベントの話と、WRITING LAB.とイル・クアドリフォリオとで作ろうとしている商品の打ち合わせでもありました。

服と靴と鞄のコーディネートなど、自分なりにできるだけ同じ素材・同じ色調で統一感のあるものにしたいと思っていて、革は服装の中でアクセントになるものなので、特にそうしたい。
それは服装でなくても、小物でも同じことが言えますので、イル・クアドリフォリオが得意とする革のカラーバリエーションは魅力があると思っています。

ペンケースの色が決まっていたら、手帳も財布も名刺入れも合わせたいと思います。
そういうふうに色合わせをしたいと考えて、WRITING LAB.で企画したイル・クアドリフォリオのペンケース「SOLO」が生まれました。
定番色が5色あるので、ご自分の好みの色、個性に合う色を選ぶことができます。
色展開が可能になったのは、パティーヌという無染色の革に色付けする技術のためで、有名なところでは革ブランドベルルッティがその技法をよく使うことで知られています。

イル・クアドリフォリオの久内さんたちは修行先のフィレンツェの工房でこの技術を習得し、日本ではあまり見られないイタリアの香りの強い、奥行きと透明感のある色調のものを生み出しています。
パティーヌによる色展開がペンケースSOLOで上手く行ったので、他のものにも広げて同じ色で揃える楽しみを追究していきたいと思い、サマーオイルメモノート用のパティーヌ技法の表紙を作ってもらいました。

素材に使う革は無色であれば何でもいいわけではなく、しかもメモノートの表紙に使えるしなやかなもので、パティーヌに適したものを久内さんが苦労しながら探し出してくれました。
ペンケースSOLO,サマーオイルメモノートと、仕事の道具をフィレンツェらしいムラのあるアンティーク風のもので揃えることができるようになり、今後もこのバリエーションを増やしていきたいと思っています。

*パティーヌ仕上げのサマーオイルメモノートの表紙は、表紙革だけでもお求めいただけるようになりました。近日中にホームページでご紹介致します。
*画像は店主の私物です。

⇒WRITING LAB. IL Quadrifoglio ペンケース「SOLO」

B5サイズの紙製品とWRITING LAB.革封筒

B5サイズの紙製品とWRITING LAB.革封筒
B5サイズの紙製品とWRITING LAB.革封筒

15年ほど前、多くのお店の定番から、メーカーの製品ラインナップから、B5サイズのファイルが急速に消滅しました。
それは単純に紙が大型化したからだと言ってしまえばそれまでですが、コンピューターの打ち出しによるA4サイズの社内用紙が、B5サイズの手書きに代わりほとんどを占めるようになったためだと考えられます。

そこから逆に考えると、手書きにはB5サイズが適していることになり、A4サイズの紙に文章を書いて収まりの悪さを覚えたのはそういうことだったのかと思いました。
実際、万年筆で文章を書くのにB5サイズはちょうど良く、太字の万年筆で書いても、細字の万年筆で小さな文字を書いてもそれなりに収まってくれるのではないかと思います。
身の周りにあるB5サイズの筆記用紙、原稿用紙、大学ノートなどを使って顧みてみると、一行の分量・見渡せる範囲などがいかに使い易いものであったのかが分かります。
それらを机に置いてみても(環境にもよりますが)邪魔にならない最大の大きさは大学ノートを開いたB4なのではないかと思います。

今まで規格のサイズから外れるからと、選択する候補にも挙がらなかったB5サイズというキーワードで紙製品について考えると、バリエーション豊富にいくつも浮かび上がります。
定番のキャンパスノート、ツバメノート、当店定番で2種類の罫線が交互にあるライフのデュエットノート、綴じ方に特長がある薄型の活版印刷ノート、原稿ノート、満寿屋の原稿用紙、無地の試筆紙など。

B5サイズの紙製品の使い方は、1冊に何でも書くのではなく、用途によって使い分ける方が向いていて、内容別に使い分けているそれらをその日の予定や必要に応じて持って出る。
学校での科目ごとにあったノートのようなイメージで使い分けるのがこれらのノートの正しい使い方なのかと思います。

WRITING LAB.の革封筒の存在がそれらのB5サイズの紙製品を使いやすくしてくれます。
原稿用紙、大学ノート、当店試筆紙などのB5サイズの製品は他のノートやファイルと大きさの違いから、使いづらく敬遠していたところがありましたので、そういったものをまとめて鞄に入れたり、そのまま持ち歩いたりすることができる革封筒はひとつのファイルだと言っていいと思います。

そして何より、持って歩く姿がかっこいい。

上質な栃木レザーのボーノアニリン革は、私とRiver Mailの駒村氏とともに四天王寺にある革問屋さんを訪ねて厳選して、その色気や手触りが気に入って決めた革です。
しっかりとした硬さもある革なので、ふた部を省いて取り出しやすさ、シンプルな造形にこだわった革封筒に非常に適しています。

ステッチなしの張り合わせ加工で仕立てていますので、縫い代や折り返しのデッドスペースが内側になく、バラの紙を入れても端がよれたりすることがありません。
B5サイズにすることによって、使う人を限定してしまうけれど、手書きにこだわる当店やWRITING LAB.ならでは革封筒なのです。

ラミーサファリ ~万年筆の世界を教えてくれる存在~

ラミーサファリ ~万年筆の世界を教えてくれる存在~
ラミーサファリ ~万年筆の世界を教えてくれる存在~

万年筆に初心者用というものはありませんが、万年筆を初めて使ってみたいという人に、それほど値段の高くないものとしてお奨めするのはラミーサファリにおいてないと思っています。
理由はサファリは万年筆の楽しみ方や良い万年筆とは何かを教えてくれる存在だと思うからです。
サファリは万年筆を使う人を増やすのに一役かってくれる万年筆です。

万年筆の楽しみ方のひとつにメーカーの物作りに触れるというものがあります。
その万年筆がどのような背景で作られ、どういう人に使ってもらいたいかを考えた機能があり、どういった所に特長があるか。
もちろん使いたいと思わせるデザイン的な魅力も重要な要素です。

サファリには何にも似ていないオリジナリティがあり、ラミーの万年筆哲学だけでなく、良いプロダクツとはどのような考えで作るのかも教えてくれものです。

サファリを味わうことは、良いプロダクツとはどんな考え方で機能を盛り込むべきかを知ることにも繋がり、私たちのような万年筆を仕事にしている者も参考にできるところがたくさんあります。

サファリは学校で万年筆を使うヨーロッパの学童向けの万年筆として、1980年に作られましたので、かなり新しいデザインに見えますがすでに30年以上も継続して作り続けられています。

サファリには、メーカーが定めたコンセプトやターゲットに必要な万年筆像を見据えたコンセプトがデザインを崩すことなく、機能に盛り込まれています。
学生の鞄のストラップやポケットに留めても壊れない頑丈なクリップ、キャップを外して机に置いても転がらない面のあるボディ、インク残量が一目で分かるボディに空けられた窓、くびれた部分に指を添わせて持つだけでペン先の書きやすい所が紙に当たるようになっているグリップ、コンバーターを使う時にコンバーターが外れないように、ノブを回転させた時に一緒に回って空回りしないように固定する切り込みなど、サファリのそれぞれの機能からは万年筆を使い始めたばかりの子供たちへの優しさが感じられます。

万年筆を使い始めたばかりの人でなくても、サファリを愛用している人はたくさんいます。
それはこの万年筆を好きで使っているという雰囲気さえ持っています。
デザインや機能にオリジナリティがあって何の真似もしていないので、値段が安い万年筆ですが貧しいところが全く感じられないのが、その理由かもしれません。
ペン先はステンレスですが、しっかりと調整されたサファリは滑らかで愛用に足る書き味を持っています。

値段は安いですがとても優れたプロダクツであるラミーサファリ。万年筆でなくてもこんなに優れたプロダクツにはなかなか出会えないかもしれません。

*画像のカタログは1986年のものです

⇒ラミーサファリ

透明ボディへの思い

透明ボディへの思い
透明ボディへの思い

私の暑い夏の過ごし方で、一番好きでこれが夏の醍醐味だと思っているのは、最近時間がなくて少なくなったけれど、暑い日中に板の間の床の上に枕だけ置いてズボラな姿で寝そべって本を読むことです。

床の冷たさを背中に感じて本を読む。
子供の頃の記憶で、父もいつもそうやって重そうな本を読んでいました。
しばらくして見ると、寝てしまっていることもあったけれど。
本が好きな人にとって、こんな幸せな時間はないのかもしれません。

本を読んでいるとメモをとらなくてはいけないこともあります。
後で書こうと思っても、絶対に忘れてしまうのですぐに書かなければいけない。
寝転んだ状態で書くのに一番いいのは軽い鉛筆、ではなく、筆圧をかけなくても逆さ向きでも書くことができる万年筆です。

鉛筆は筆圧をかけないと薄くなってしまうし、ボールペンは一部のものを除き、逆さ向きではかくことができません。
万年筆は毛細管現象の働きでペンポイントまでインクが流れてきていますので、ちゃんと調整された万年筆なら、紙に当てるだけで上を向いていても書くことができます。
その体勢で長時間書くとペン芯内のインクがなくなって書けなくなりますが、ペン先を下にするとタンクやカートリッジ内のインクがすぐにペン芯に補充されます。
枕に寝転んで書くことはないけれど、ソファにもたれた上体だけ起こした体勢での書きものは休みのたびにしています。

こんな体勢でものを書くことが多いから、私には立派なノートよりも軽く切り取りができるメモ帳の方が良くて、でも何でもいいわけでなく、罫線はちゃんと書く気持ちを盛り上げてくれるものの方がいい。
そこで原稿用紙罫のサマーオイルメモノートの替紙を原稿用紙罫で作りました。

そういう背景からも分かるように、これはデザイン的な面白さを求めたものではなく、大真面目に実用的な理由があって作っています。

寝転んだ体勢で書くのに適した万年筆の条件は、ボディが軽く、ペン先は硬め。更にインクがペン芯まで降りてくることが確認できる透明ボディであれば最高に条件が整い、M200クラシックデモンストレーターはぴったりだと思います。

そういうズボラな万年筆の使い方にも、ペリカンM200は妙にはまってしまう。
透明のデモンストレーターボディに金の金具は、何となく古臭い印象もあるし、下手をすればチープにさえ見えます。
でもこの古臭さやチープさに味わいが感じられて、何か懐かしい気分にさせてくれます。

全然関係はないけれど、透明のものを見るといつも連想してしまう観覧車の話をしなければいけません。

一昨年の夏、家族で横浜へ行った時に泊まっていたホテルの向かいにあった大きな観覧車に乗りました。
私は岩国の錦帯橋の上で足がすくむほど高所恐怖症であるにも関わらず、45度おきにある透明の部屋に乗ろうと言い出してしまいました。
外壁だけでなく、椅子も床も透明で、高さを忘れるために目を反らすところがありませんし、目をつぶるのはお金がもったいない。

私たちが乗った部屋が地上を離れ始めた時にしまったと思いましたが、もう逃げ道はなく、手に汗を握りなるべく遠くだけを見るようにして、何とか1周を耐え、地上に着いてドアが開いたと同時に、転がり出るように一番最初に外に出ました。
高所恐怖症で高いところに上がることなど考えられない私を惹きつけるほど、透明のものというのは、特別なふうに見えて魅力があります。

観覧車の話はこの万年筆の良さと全く関係がないけれど、ペリカンM200クラシックデモンストレーターには心を動かす趣と私が勝手に見出した実用性を感じます。