590&Co.さんの3周年と万年筆店のシャープペンシル

590&Co.(コクエンアンドコー)さんが3周年を迎えましたので、お祝いに3人でお店にお邪魔してきました。

当店の閉店後なので、お邪魔するのはいつも遅い時間になりますが、いつもお客様がおられます。木曜日と金曜日は22時まで営業されているので、仕事帰りに行きたくなる人も多いのだと思います。

王子公園近くにあった最初のお店に遊びに行った夜もものすごく暑かった。それからすぐに事情があって元町高架下に移転して、2周年を迎えた後に今の場所に落ち着かれました。

短い間に2回移転しなくてはいけなかったけれど、谷本さんは気持ちを切らさずに、その度にどんどんいいお店を作っていきました。

たった3年で590&Co.は有名になって、出張販売に行くとお客様が店先に並ぶほどの店になりました。

谷本さんのしていることを真似しても仕方ないけれど、その仕事ぶりや気持ちの持ち方には教えられることが多い。見習えるところは見習って、当店らしさについて考えています。

ずっと何を書くのも万年筆しか使っていなかったけれど、谷本さんが590&Co.を始めたあたりから鉛筆やシャープペンシルもいいなと思い始めて用途に応じて使うようになりました。

いろいろ使ってみてこれはものすごく良い、万年筆店らしいシャープペンシルにたどり着いたと思ったのがペリカンD400でした。

D400はそれほど大きくない軽めのシャープペンシルです。垂直に立てて書くことを前提にした製図用シャープのように前重心ではなく、万年筆のように中心にバランスがあるので、自然に寝かせて書くことができます。

D400に万年筆メーカーのシャープペンシルはこうあるべきだという主張を感じました。行き詰っている原稿を少しずつ書いたりするのにシャープペンシルはすごく使いやすく、万年筆と使い分けられると思いました。

芯が尻軸をノックして出てくるのも感覚的に操作できて、使いやすく感じます。何もかも自然な分特別感は少ないけれど、実は隠れた名品なのではないかと思っています。

芯は標準仕様は0.7mmでこのままでもノート書きにはいいかもしれませんが、0.5mmの機構に当店で入れ替えることもできます。私は使い慣れた0.5mmで使っています。

ペリカンD400はずっと以前から存在していたシャープペンシルですが、590&Co.さんというお店と出会うまでは顧みることがなかった。

学生の時や若い頃だったらこのシャープペンシルにこれほど惹かれなかったかもしれません。

実用的な渋い存在の、玄人好みのシャープペンシルです。

⇒ペリカン ペンシルD400

両店の個性を際立たせる

先日代官山で590&Co.さんとの共同開催による出張販売をしました。

代官山という落ち着いた大人の街が好きで、コロナ前までは毎年出張販売で訪れていました。3年ぶりに再開した出張販売でも代官山は外せないと思いました。

徒歩3分ほどの距離にそれぞれがギャラリーを借りて、両店それぞれで3300円以上お買い物して下さった方には、オリジナルミニエコバックをプレゼントしました。そうやって双方をご案内したせいか、両店を訪問して下さるお客様も多かったので、両店の参加が決まっている京都手書道具市・神戸ペンショーでも企画するつもりです。

このミニエコバックは、大和出版印刷さん、谷本さんの分度器ドットコムさん、当店の共同プロジェクトのオリジナル正方形ダイアリーが革カバーごとちょうど入るサイズです。

私は正方形ダイアリーをこのバックに入れて持ち歩きたいと思っていますが、皆様も何かの用途を見出していただければ何よりです。

いつもは東京に来ても、代官山周辺をウロウロするだけで神戸に帰ってしまいますが、今回は谷本さんと表参道でギャラリーを経営しているAさんを訪ねました。

そのギャラリーは、表参道と青山通りの交差点からそれほど離れていない静かな場所にありました。

新しくきれいな小じんまりとしたギャラリーは、人が4人ほど入ればいっぱいになるくらいのスペースで、いい空間でした。やり方次第で、心を通わせるいい場所を作ることができるかもしれないと思いました。

私も谷本さんも出張販売ではたくさんの商品を持ち込んで、借りたギャラリーいっぱいに商品を並べるというやり方をしているので、何か考え方を変えないとこういういい空間で出張販売はできないかもしれない。でも何かやりたいと思わせるAさんのギャラリーでした。

ギャラリー見学の後、Aさんの案内で表参道の裏手を色々歩いて見て回りました。

日本における最先端の情報を発信している街にあるお店は、どこもこだわりを持ってここで営業しているように見えます。ここに立ち並ぶお店のやり方に対して、私たちの出張販売や普段の営業はどうなのだろう。

もちろん、地方都市神戸にある当店と表参道の店ではやり方は違って当然だと思うけれど、もしかしたらすごく泥臭いやり方をしているのかもしれない。

賑やかな表参道周辺を歩いていろんなものを見ながら、自分たちの仕事について考えることができました。

Aさんには今回とてもお世話になりましたし、食事に同席して下さったKさんのお心遣いにも感謝しました。久し振りの上京が思い出深いものになりました。

590&Co.さんとの共同開催の出張販売を続けて、成功させるためには両店の個性は際立っている方がいいし、扱う品物も違う方がいい。神戸の実店舗も歩いて3分ほどの距離にあるので、重なる部分はなるべく少ない方がいいと思う。

当店の取引先は少ない方だと思いますが、その分強いつながりを感じさせるものをお客様に示したいと思っています。

同じ元町にある革小物を扱うお店、フリースピリッツさんのレンマバルコペンケースを扱い始めていて、代官山でも好評でした。

ミネルヴァボックスで有名なイタリアバタラッシィカルロ社によるプエブロレザーは、ミネルヴァボックスと同じようにはじめはマットな質感ですが、使い込むと艶が出てきて、劇的な色変化をします。少し小振りで、女性の鞄でも入るちょうどいい大きさと安定感のある形をしています。大きく滑らかに開くファスナーが付いている、使いやすいペンケースです。

神戸の工房で隅々まで気を配って丁寧に作られているペンケースは、細々とした雑多な文房具を入れてもいいし、大切なペンを当店のレザーケースSドーフィンに入れて、このファスナーペンケースにさらに入れてもいい。

当店は、こういうものを増やしていくべきなのだと改めて思っています。

⇒レンマ バルコペンケース(ペンケース3本以上収納TOPへ)

⇒レザーケースSドーフィン

~理想のペンシース~レザーケースSドーフィン

万年筆と同じようにボールペンも大切にしたい。

しょっちゅう買い替えていろんなものを使うわけではなく、これと思ったものを長く使いたいと思っています。

10年以上使ったのは、ファーバーカステルクラシックエボニーのボールペン。とても美しいボールペンで、この姿が気に入って万年筆とセットで使っていました。

昨年からはS.Tデュポンの、ディフィブラックブラッシュコッパーボールペンを使っています。

このボールペンを使い始めたのは、銅とブラックの組み合わせに惹かれたからです。デザインは私の持ち物の中では先鋭的なものですが、持ち心地の良さと素材に強さが感じられて気に入って使っています。

こういう気に入ったボールペンをそのまま持ち運ぶのではなく、ナイフを収める鞘のように、そのペンをより美しく見せてくれるケースに入れて持ち運びたいと思います。

ボールペンをより美しく見せてくれる、理想的な形の1本用のペンシース「レザーケースSドーフィン」を作りました。

よくあるタイプのペンシースかもしれませんが、微妙なラインにこだわったので、無駄がなく鋭い、美しい形のものができたと思います。

作ってくれたのはM6システム手帳やジョッターなどをお願いしている職人さんで、私のラフなスケッチから姿の良いイメージ通りのシースを作ってくれました。

使っている革はフランスの老舗タンナーレギャーマンのドーフィンという革で、エンボス加工した革に熱を加えて強くプレスした、張りのある、とても上品は印象の革です。

この革の張りがこのケースをより立体的で美しいものにしてくれていますが、これから色々な素材で作ってもらおうと、イメージを膨らませています。

ボールペンにピッタリな細めのペンケースですが、細い万年筆や小振りな万年筆(M400まで)も収めることができます。創業直後から当店を支えてくれた愛嬌あるデザインのカンダミサコペンシースは、すでに多くのお客様にお使いいただいています。そのペンシースととともに、選択肢が増えたと思っています。 

ペンを手に入れた時に一緒に使いたくなるレザーケースがまたひとつ新たに出来上がりました。

⇒Pen and message. オリジナルレザーケースS ドーフィンレザー

2012-2022・プラチナセンチュリーディケイド

プラチナはセンチュリー万年筆発売10年を記念して、センチュリーディケイドを発売しました。

10年前2012年は当店は創業5年のまだ始まったばかりの店でした。

創業15年経っても、まだ世の中の色々な流れに流されそうになったり、迷ったりしているけれど、それはきっと何年経っても変わらないのだろうと思います。

15年やってきたという感慨のようなものはあり、その15年の一部である10年を記念した万年筆には、その期間を共にしたという思い入れを持ってしまいます。

それにしても10年なんてあっという間だった。

半透明の軸で、重厚な黒金が多い国産万年筆とは一線を画したセンチュリーを発売したこと自体、プラチナの挑戦だと思いました。でも今では世の中に認知されていると思うし、このペンで万年筆を使い始めたという人を多く見てきました。万年筆を使う人を増やすことに大きく貢献した万年筆だと言ってもいいと思います。

センチュリーディケイドは、センチュリー万年筆の前作3776の最初のモデル「3776ギャザード万年筆」のギャザードボディをデザインとして取り入れたという特長もありますが、ペン先が新設計のものであるというところにプラチナの意気込みを感じますし、これからのプラチナの万年筆を予告しているとも思います。

筆圧のコントロールが要らないという使いやすさを考慮した、かなり硬めのセンチュリーのペン先よりも、ディケイドのペン先は穂先が細く長くなっていて、しなりを感じるものになっています。

センチュリーのがっしりとした感触も感じられるので、ペン先の厚みは変わらないと思いますが、硬い中に弾力を感じさせる、より昇華した書き味をディケイドで味わうことができます。

キャップの閉まりの感触も良いフィーリングをしていて、作り込まれた上質さのようなものを感じることができます。

やはりこの万年筆はプラチナのこの10年の集大成、そしてこれからの10年を期待させてくれるペンなのだと思います。

自分なりに激動だったと思い、あっという間に過ぎた10年を振り返るのは、手帳や日記、アルバムでもいいけれど、1本の万年筆でもいいのかもしれない。

ディケイドはそれぞれの人のそれぞれの10年を物語るペンになると思います。

⇒#3776 センチュリー 発売10周年特別限定モデル「ディケイド」

オリジナルM6手帳に合うボールペン

オリジナルM6手帳は、美しく見える姿にこだわって作っていただきました。

自然で無理のない姿を追究したら、オーソドックスなサイズ感になっていきました。

同じ型でサドルプルアップレザーとシュランケンカーフの2種類を作っていて、濃厚な雰囲気のものが好きな人と、スマートで洗練されたものが好きな人、両方の好みをカバーできるようにしています。素材を変えたら全く違う雰囲気の手帳になりました。

それぞれ別売で同素材のペンホルダーも作りました。そこに合わせるペンを考えていくと、どちらもモダンなデザインのものよりもクラシックな印象のモノの方が合うようです。個人的には、素材で言うとステンレスよりも樹脂系の方が合うと思いました。

私も今年からオリジナルのM6システム手帳を愛用していて、はじめはペリカンM400や古いエボナイトの万年筆を差して使っていましたが、すぐに書き込むことができるボールペンをこの手帳のペンホルダーに差しておきたいと思うようになり、今はファーバーカステルクラシックのボールペンを差しています。

ファーバーカステルもこの手帳の雰囲気に似合っていてとても気に入っていますが、手帳なので色分けして書き込みたい人もいるかもしれない。そう思って、この手帳に合う複合ペンも探してみました。

ボールペン黒赤とシャープペンシルなどが1本に入った複合ペンは日本製の独壇場と言って良いのですが、この手帳に合うクラシックなデザインのものは見当たらなかった。

海外のものに目を向けてみると、シャープペンシルはついていないけれど、ラミー2000の4色ボールペンはよく合っていました。

でももっとクラシックなものを探して行き当たったのが、カヴェコのディアマルチペンでした。

歴史のあるカヴェコのペンはたくさんの種類が発売されていて、カジュアルなイメージがありますが意外とクラシックなデザインのものも多い。ディアはそんなカヴェコの中でも50年代のペンの趣を持ったシリーズです。その中にまさかマルチペンがあったとは。

やっとこの手帳に合う複合ペンが見つかったと喜んでいましたが、ディアマルチペンは廃番が予定されていて、輸入元に残っているものだけとなります。

出会うのが遅かったのかもしれませんが、完全に無くなるまでは当店で扱っていきたいと思っています。

手帳とペンをコーディネートするのは楽しい。それは服装などと同じかもしれません。 大した服装をしているわけではありませんが、好きな靴を履いて、ファストファッションのものも取り入れて、好きで買った違うブランドのものを組み合わせて、自分らしいカッコができたら、それだけで出掛けるのが楽しくなります。

手帳に合うようにコーディネートしたペンを持って、出掛けていきたいと思います。

⇒カヴェコ ディア マルチペンゴールド