イタリアの侘び寂び ~アウロラオプティマ365ブラウン~

イタリアの侘び寂び ~アウロラオプティマ365ブラウン~
イタリアの侘び寂び ~アウロラオプティマ365ブラウン~

各万年筆メーカー、それぞれが美意識を持って万年筆作りをしています。
イタリアの万年筆メーカーは特にデザイン性が高く、遊び心に溢れたものを作っているイメージがありますが、その中でもアウロラはより高度なデザインへのこだわりがあるような気がしています。

私はよくアウロラのペンを「バランス感覚に優れたもの」だとお伝えしてきましたが、もうひとつモノに奥行きを持たせている「侘び寂びのような感覚」も持っているのではないかと思っています。
いわゆる日本の美のあり方である侘び寂びとは違っていて、光と影とでも言えばいいのか、上手く表現する言葉が見当たりません。

特に最近のものにこれを持っているものは少ない。
派手なものは派手、地味なものは地味にシックになっているけれど、派手な中に一筋の暗さのようなものがあるのがイタリアの美だと思っています。

アウロラ365が発表された時、ただきれいで派手なだけではない、奥行きのある魅力を持った万年筆が出たと思いました。
新しい限定品だけどクラシックな魅力のあるもの。
複雑な色合いを持つブラウンマーブルのアクリルレジンのボディ、旧型アウロラのキャップリングに万年筆にロマンを感じていた90年代の記憶が蘇ります。
通常かなり硬めで、馴染むのに時間があかる14金ペン先ですが、柔らかい18金ペン先がこのモデルには奢られていて、差別化されています。

オプティマは独特な万年筆だと思います。
キャップを閉じた時にはシャツのポケットにも差せるくらい短いのに、キャップを尻軸につけるとそれなりの長さになります。
ペン先はおろしたての時はカサカサした書き味で、万年筆の気持ち良いヌルヌルした書き味とは程遠い。
自分がオプティマをお使い込んでヌルヌルした何物にも代え難い書き味になった経験がありますので、当店で販売するオプティマはそのような書き味にしてからお渡ししたいといつも思っていて、ペン先調整次第で始めからそのような書き味にできることが分かりました。
だから私はアウロラに特別なこだわりを持っているのかもしれません。

365というのはきっと日常を意味していて、華やかさや喜びだけではない地味さや暗さのようなものを併せ持ったものだというアウロラのメッセージがこの万年筆に込められています。
365本限定で、キャップにシリアルナンバーが刻印されています。マーレアドリアなど華やかで、誰をも黙らせる美しさを持った万年筆もアウロラは作ることができるけれど、オプティマ365のように少しシリアスな部分も併せ持った万年筆にアウロラらしさを感じています。