日本万年筆の伝統 セーラー木軸スタンダード

日本万年筆の伝統 セーラー木軸スタンダード
日本万年筆の伝統 セーラー木軸スタンダード

最近お客様とのやり取りの中で、手帳用の万年筆について考えることが多くありました。
仕事のほとんどがパソコンでの打ち込みで完了してしまい、手書きする機会はどんどん減っていて、万年筆が使われなくなってしまうのではないかという意識は常にあります。
でもそれ以上に、字を書かなくても生活していけることに対して、何か人の思考に悪い影響を与えるのではないかという気がしています。

しかし、手帳だけは手書きされていて、いくらI-phoneなどのデジタルツールが普及してもそう簡単に変わらないのではないかと思っています。

万年筆を使う人は、貴重な手書きの機会である手帳への筆記を万年筆でしたいと思うでしょうし、そうでなくても仕事をされている方が万年筆を使いたいと思うのは、手帳への筆記が目的であることが多いようです。

私は多くの方と比べると、まだ仕事の中で万年筆を使う機会が多い方ですが、やはり手帳への書き込みが一番多く、趣味に近い楽しみのひとつになっています。

手帳を楽しく、美しく書くにはやはり日本のメーカーの万年筆が向いていると思っています。
外国のメーカーのものは、どんなに細いペン先がついていてもインクの出が多いものが多く、にじみが出たりして、どうしても文字が太くなってしまいがちです。

後から見た時に見やすい手帳ということを考えると日本のメーカーの万年筆が優れていて、それは1960年代からしばらくの間一世を風靡したプラチナポケット、パイロットエリートに代表される日本特有のポケットタイプの万年筆からの流れなのかもしれません。

柔らかいペン先の書き味を楽しめる万年筆と正反対の存在であるこれらの万年筆は、手帳への筆記を中心に考えられていて、柔らかい書き味よりも線の美しさを追求していたように思います。

そしてポケットタイプの万年筆が手帳用に向いていた理由のもうひとつはその携帯性にもあります。
家でゆったりと書いている時はあまり関係ありませんが、仕事中など忙しい時に手帳に用件だけ書き込んですぐに仕舞うには勘合式でパッと閉められるキャップが適しています。

そうやって手帳用の万年筆に必要な条件を挙げているとピッタリな万年筆に気付きます。
黒檀、智頭杉(ちずすぎ)、鉄刀木(たがやさん)、の3種類の材質をラインナップさせている、セーラーの木軸スタンダードというシリーズです。

それぞれの材の手触りが感じられる最小限の仕上げは、長年の使用で光沢が増し色目が深まるという変化が見られ、ポリウレタン塗装が施された以前の仕上げとは飛躍的に変わったところだと思います。

愛着を持って使い込むことのできるボディは、コンバーターが入る最小限のサイズで、ポケットに差して使うのにもちょうどいいサイズです。

非常に硬いプロフィットやプロフェッショナルギアのクリップに比べてしなやかで使い易いものが付いているところも携帯に向いているところです。

ペン先が細字だけの設定というところにも、セーラーの意思が強く感じられ、手帳用の万年筆について考えた時に筆頭に挙げられるペンが木軸スタンダードです。