カンダミサコペンシース・黒桟革の受注製作のご案内

カンダミサコペンシース・黒桟革の受注製作のご案内
カンダミサコペンシース・黒桟革の受注製作のご案内

とてもシンプルな形なのに今までこういうものがありませんでしたし、20色以上ものカラー展開も見たことがありませんでした。
それまでの万年筆用の革のペンケースは、あっても3色くらいのカラーバリエーションで、お決まりの形と大して違わないものばかりでした。

カンダミサコさんのペンシースは革ステーショナリーに革命を起こしたもののひとつだと思っていますし、そのデザインはシンプルだけれど、思いついたことがすごいことで、コロンブスの卵のようなものだと思います。
日頃大切にしているペンを1本だけポケットに忍ばせるためのケース。

いかにもカンダさんらしいコンセプトだと思います。
ペンシースの素材は色数も豊富で、発色も良く、傷にも強い完璧な革シュランケンカーフですが、今回また違う風合いの黒桟革を使って限定製作することになりました。
黒桟革は食肉に使われる和牛の革に漆塗りを施すことで耐久性を上げた純国産の革で独特の風合いがあり、最もカンダミサコさんのイメージからは遠いように思いますが、万年筆を使われるお客様の希望に応えた企画なのだと思います。

今回製作するものは標準、大、特大サイズになります。
標準サイズは、通常のペンシースと同じサイズで、ペリカンM800がピッタリ入り、モンブラン146もスムーズに入ります。
レギュラーサイズの万年筆の多くはこのサイズに入れることができますが、もっと太くて大きなペンを入れたいという声も多かったようです。
大サイズは、デルタドルチェビータミディアム、ペリカンM1000、モンブラン149などが収まります。
特大サイズはかなり限られますが、中屋万年筆シガーロング、セーラー島桑などが入ります。
フラップがついているペンケースも中身を守ってくれるような安心感があっていいですが、どうしてもかさ張ってしまうし、いかにもという感じになってしまう。
ポケットにそのまま万年筆を入れたり、ファスナー式の大きなペンケースに他のものと一緒に入れたいとなど、もっと軽やかに万年筆を使いたいと思った時に、カンダミサコさんのペンシースが一番使いやすいものだと思っています。

*受付期間は2015年3月31日(火)までで、仕上がりは5月を予定しています。


B5サイズへのこだわり~WRITING LAB.革封筒~

B5サイズへのこだわり~WRITING  LAB.革封筒~
B5サイズへのこだわり~WRITING LAB.革封筒~

整理していて見つけたと、スタッフKが共に勤めていた文具店での朝礼の様子が写った写真を持ってきました。20数年前のもので、20代の自分たちが写っていました。
髪型や服装にも時の流れを感じさせるものがありましたし、何よりも二人とも若い。他にもあの頃から色々なことが変わりました。
目に見えて変わったことのひとつに、パソコンやインターネットの普及があります。
それは言うまでもなく、私たちの仕事の仕方だけでなく、情報の取り方、生活の仕方を変貌させましたし、もしかしたら私たち人間のインテリジェンスの有り方も変えたのかもしれません。

入社したばかりの頃、私はファイルを担当していました。
毎日びっくりするくらい売れていくファイルをただひたすら補充していました。
ファイルコーナーはB5サイズとA4サイズと同じだけのスペースがありましたが、A4サイズの売れ行きの方が良かったので、パソコンの普及によってプリントアウト文書が増え、仕事で使われる紙のサイズが、A4サイズに変わっていく過渡期にあったのかもしれません。
でもその現象は手書きにはA4サイズではなくB5サイズの方が向いているということを表しているのではないかと思っています。
当店での万年筆を試していただく、当店のロゴが小さく入った試筆紙もB5サイズになっています。
そこそこ書きやすいけれど、それぞれの万年筆の書き味の違いが分かる、過剰な加工を施していないナチュラルな書き味の、コピー用紙よりも少し良いくらいの紙を使っています。

印刷用紙の中には意外と、万年筆の使用に適した紙があるもので、この試筆紙の紙もそんなふうに選んだものです。
試筆紙は当店のオリジナル商品の中でも売れ筋で、お客様方はこれを大きめのメモ帳として使って下さっているようです。
私もちょっと何か考えたいと思った時には試筆紙を引っ張り出してきて、とりとめなく書き出したりしています。

この試筆紙を入れて携帯するためのものとして作っていたWRITING LAB.の革封筒を再び作りました。
一枚の革を接着止めしただけのとてもシンプルなもので、フタもついていませんが、こういうものが一番使いやすいし、意匠として優れていると思っています。
縫い目を無くすことでジャストのサイズを実現しています。
接着という方法なので、実は素材にはとてもこだわっていて、この加工に適していて雰囲気のある革を、革問屋のハシモト産業さんに相談して決まりました。

革封筒には試筆紙だけでなく、原稿用紙入れにもちょうどいいと思います。
たいていバラの状態(満寿屋の場合)の原稿用紙だからこそ、こういうファイルの原型のような封筒が使いやすいと思います。
なるべくシンプルで、手をかけていないような、その素材感が感じられるものを作りたいという想いは、この革封筒にも込めています。


⇒Pen and message.試筆紙

iiro(イーロ)の革カバー

iiro(イーロ)の革カバー
iiro(イーロ)の革カバー

罫線のカラーバリエーション100色を目指す、大和出版印刷の新書サイズノートiiro(イーロ)を愛用しています。

愛用と言うと聞こえはいいけれど、ひたすらメモや原稿の下書きを書き散らし、使い終わると捨てていく雑記帳のような使い方で、かれこれ10冊ほどになります。
罫線の色で紙面の雰囲気は大きく変わりますので、もっと良く書けるようになるのではないかと、様々な色を使ってみています。

iiroはほとんど立った状態で書く時に使っています。
あまり手の大きくない私でも持ったまま書くことができる限界の大きさです。
いつも鞄に入れて、喜んで使っているiiroですが、実は紙のカバーを掛けて使ってきました。
iiroのノートとしての機能はとても気に入っていますが、表紙の白色が私にはきれいすぎて、自分の服装と合わないような気がしていました。
Iiroの薄さは気に入っていましたので、革の新書カバーは使いたくなかった。だから真っ黒の包装紙でカバーをしてずっと使っていました。

それでもこのカバーを革にしたいとはずっと思っていて、いろいろ探していましたが、良いものは見つかりませんでした。
カンダミサコさんが店に納品に来て下さって話していた時に、iiroのカバーの話を切り出してみました。
私は「革カバーがあれば、iiroはもっとたくさんの人が使ってくれると思う」と言って、数冊のiiroをサンプルとしてお渡ししました。
すると数日後、我が意を得た試作品が届けられました。

iiroの革カバーは、厚みを抑え、サイズもiiroからなるべくはみ出さないように、最小限の張り出しに抑えた様々な工夫がされていました。
私はスーツは着ないけれど、スーツの上着の内ポケットにもストレスなく入りました。
構造はiiroに巻きつけるだけのシンプルなものですが、薄く剝いたブッテーロの革はすぐに中身のiiroに沿って馴染んでくれて、ピッタリと合ってきます。
ブッテーロの手入れの仕方は、いくつかの方法がありますが、私の好みは革用ブラシを掛けて、つぶが立ったようなキラキラした銀面に仕上げることです。
これは傷が目立ってきてからしても有効で、傷が目立たなくなります。
商品の完成をこれほど楽しみに待ったものは久しぶりでした。

自分でもぜひ使いたい(もう使っていますが)、そしてこの革カバーを巻いて電車の中などで、万年筆で書くことを流行させるためにiiroをもっと多くの人に使ってもらいたいと思っています。


⇒iiro(万年筆に適した紙製品:ノート・メモTOPへ)

野趣好み ~コンチネンタルペンレスト兼用万年筆ケース、サマーオイルメモノート~

野趣好み ~コンチネンタルペンレスト兼用万年筆ケース、サマーオイルメモノート~
野趣好み ~コンチネンタルペンレスト兼用万年筆ケース、サマーオイルメモノート~

革の好みのタイプを乱暴に2つに分けると、素材感そのままの光を吸収するような抑えた光沢の革を好む人と、クロムなめしで作り込んだ個体差の少ない、整ったエレガントな感じの革を好む人がいると思っています。

それがその人の外見では判断つかない内面を物語っているかどうかはわからないけれど、ワイルドな印象だから素材感溢れる革を好むかというと、そうではないことも多いので面白い。
これは私が勝手に思っている根拠のないことなので、あまり真に受けて欲しくありませんが。

自分の話で恐縮ですが、私はずっと一貫して素材感のある方を好んできました。
野趣という表現が合うほどの、手をかけていない、あるいは手をかけていないように見せているものが好みで、それが表れている商品が2つできあがりましたのでご紹介します。

「コンチネンタルペンレスト兼用万年筆ケース」は、当店オリジナルの3本差しペンケースで、もう4年近くも色を変えたりして販売しています。
最もこの形に合っていると思われるシュランケンカーフでずっと作り続けてきましたが、オリジナルコンチネンタルシステム手帳と合わせて使えるようにしたいと思って、システム手帳と同じ革ダグラスで仕立ててもらいました。

カーフでも何でもない成牛の革ですが、革の素材感が出るように工夫が凝らされていた革で、こしらえなど太すぎるペンを無理やり入れて酷使した私のこのペンケースはとても良い味が出ています。
扱いにとても気を使ったり、常に手入れしておかないといけない革はあまり好みではない。たまに気が向いた時にブラシをかけたりした時に艶が出てくれるところが気に入っています。
私が最も理想的だと思っている革は、ライティングラボのメモノートで使っているサマーオイル革で、これは艶やかで生命力に溢れ、手触りも良く、色も完璧な私の理想を見事に表した革だと思っています。

サマーオイルメモノートはしばらく品切れしていたけれど、先月この革の問屋さんである四天王寺のハシモト産業さんを訪ねて仕入れてきましたので、また作ることができました。
底に原厚のままコバ処理した厚みのある革を、表には薄く漉いた革でメモ紙を挟み、靴ヒモで綴じただけのシンプルな仕様ですが、このシンプルさもまた、ライティングラボという山科のインディアンジュエリーショップリバーメールさんとの共同ブランドではあるけれど、私のモノの理想を具現化したものです。
一時期、他に代わる革を探してみたことがあるけれど、やはりこのメモ帳にはサマーオイル革しかないと確信しました。
このシンプルな仕様のメモ帳にたくさんの紙が挟んである安心感と存在感は、なかなか理解されないけれど、道具として機能も気持ちも満たしてくれるものだと思っています。
今回底革と同じサマーオイルを薄く漉いて表紙も作りました。
使っていくうちに自然に艶が出てきますし、傷が気になったらブラシを掛けていただくと目立たなくなるのはブッテーロ革などと同じです。

茶道のお稽古で、季節の良い時に先生がたまに野点風の設えで丹波などの土モノのお道具を合わせたりして、それに共感します。
焼物は京焼などの繊細で薄作りの都会的なものよりも、信楽や備前のような厚みがあって、野趣味のある田舎っぽいものが好みだと気付きました。
ものの好みは結構はっきりと分かれるものだと、今まで仕事してきて痛感しています。
両方の好みの人に好まれる店でありたいとは思っていますが、モノを作る時は思い切って偏った方がいいのではないかと思っています。