カンダミサコミニ5穴システム手帳

カンダミサコミニ5穴システム手帳
カンダミサコミニ5穴システム手帳

最近ではマイクロ5とかM5と呼ばれるミニ5穴システム手帳を使ってみて思ったのは、バイブルサイズとは違って、気分で本体を持ち替えて使いたいということでした。
趣味とか遊び心がこのサイズには込められるような気がしました。
世にあるミニ5穴システム手帳の多くのものは当店でも扱っているアシュフォードのものが中心で、さすがにアシュフォードは長くシステム手帳を作ってきただけあって、使いやすい手堅いものを作っています。
量産されているものでもいいけれど、また違うものも使ってみたい方は多いのではないかと思いました。

そこで、カンダミサコさんに2種類のミニ5穴システム手帳を作っていただきました。
ひとつは2016年から発売しているバイブルサイズと同じように、カラフルなシュランケンカーフを使って、薄くスマートに使っていただけるもの。
表紙が180℃平らに開く、オリジナルのリング取り付け構造はミニ5穴でも同様です。
上質な革の上品な色合い、質感も楽しんでいただけるカンダミサコさんらしいミニ5穴が、できたと思います。

もう一つを私は賛否両論分かれる問題作だと思っています。
当店がコンチネンタルシリーズで使っているダグラス革は野趣溢れる革で、繊細なものを好まれる方には向かないけれど、使い込むとすごい艶が出る、個人的にとても気に入っている革です。
このダグラス革が生産終了となり、革問屋さんに残っているものをカンダさんに買い占めてもらいました。今すぐなくなるわけではないけれど、2、3年でなくなってしまう量しかありませんでした。
このダグラス革の個性を活かしたミニ5穴がその問題作です。

薄くて携帯しやすいものがミニ5穴システム手帳に求められる要件の一つだと思いますが、コンチネンタルのミニ5穴手帳は、革を出来るだけ厚くしてダグラス革の質感を楽しみながら、コロンとしたフォルムに愛着が持てるようにしました。

ミニ5穴システム手帳の作りから言うと、正解のものと逆の作りなのかもしれないけれど、フォルムを楽しむ、革の質感を楽しむものもあっていいのではないかと思います。
革が馴染むまで革の力で開こうとしますので、簡単なベルトもついています。
仕事だけでなく、休日にも使えそうなカジュアルな服装でも使うミニ5穴システム手帳にはいろんなタイプがあっていい。
コンチネンタルシステム手帳ははじめは使いにくそうだけど、面白そうと思っていただける手帳だと思っています。
いよいよ完成したカンダミサコミニ5穴システム手帳、今後当店を賑わすものになると思っています。

*カンダミサコミニ5穴システム手帳コンチネンタル
*カンダミサコミニ5穴システム手帳シュランケンカーフ

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⇒2016.9.30「カンダミサコバイブルサイズシステム手帳」

アウロラ限定万年筆 インターナツィオナーレ

アウロラ限定万年筆 インターナツィオナーレ
アウロラ限定万年筆 インターナツィオナーレ

アウロラが今年100周年を迎えています。
アウロラが創業した1919年は第一次世界大戦が終わったばかり、世界恐慌前夜の、世界が束の間の平和の中にある時期だったのではないかと想像しています。
だから万年筆という平和的なものを作る会社が多く誕生した。

この時期、多くの万年筆メーカーが先んじて万年筆を作っていたパーカー、シェーファーなどアメリカのメーカーの影響を受けているものを作っていましたが、アウロラも当時イタリアにたくさんあった万年筆メーカー同様、アメリカの万年筆に似たものを作っていました。
それを作りながらも少しずつ自分たちのオリジナリティを出し始めることができて、無数の万年筆メーカーの集団から抜け出し、世界恐慌、第二次世界大戦、リーマンショックなどの危機を生き抜くことができたのかもしれません。
100周年の今年、最初に発売された限定万年筆インターナツィオナーレは、1930年に発売されたモデル「Duplex Internazion」を、ボディ素材をセルロイドからアクリル系樹脂のアウロロイドに、インク吸入機構をレバー式からリザーブタンク式ピスト吸入機構に変更されていますが、忠実に復刻しています。
もしかしたらパーカーデュオフォールド、シェーファーライフタイムの影響を受けたのかもしれないけれど、デュオフォールドもライフタイムも今見るともっと武骨に見えます。
しかし、この万年筆は武骨さとは程遠いエレガントさを感じさせます。
その一因となっているのが、当時トレンドだったアールヌーボー調のキャップリング装飾です。このキャップリングはスターリングシルバーに金張りを施したバーメイル仕上げになっていて、時間が経つと落ち着いた輝きに変化します。細かい部分にもかなりのこだわりが感じられます。

創業して10年くらいしか経っていなかった1930年当時、アウロラはこのInternazionで、海外進出を目指していました。
周辺のヨーロッパの国々はもちろん、当時の万年筆王国アメリカでも勝負できるものでなくてはならない。日本をはじめ、アジアの国々でアウロラの万年筆が売られることを、この時当時のアウロラの社長はイメージしていただろうか。
100周年を迎えたアウロラが、その歴史の転換期の代表的な万年筆を復刻した。それがインターナツィオナーレです。

オプティマ、88などアウロラの定番万年筆の特長は抑え込んだ華やかさだと思っています。
イタリア人の感性のままの製品作りをするともっと遊び心のある、派手なものができたかもしれないけれど、アウロラのバランス感覚はそれを抑え込んでいる。あるいは我慢している。私はその抑制がアウロラらしさだと思っている。
抑制すること、我慢することは洗練するということと同じ方向の力だと思っていて、アウロラの万年筆は洗練されているという言葉に置き換えることができるのかもしれません。
洗練されているというと何か冷たい感じがしなくもないけれど、アウロラからは人の手のぬくもりのようなものが感じられる。
それは手厚いアフターサービスでも言えることで、万年筆は直しながら長く使い続けるものだということを、アウロラの修理に対する考え方から学びました。
万年筆店の一店主として、勝手に身近に感じている万年筆メーカーアウロラの100年の歴史を誇らしく思います。

⇒AURORA INTERNAZIONALE(インテルナツィオナーレ)

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⇒2018.12.21「イタリアの家族経営の物作り アウロラ」

想いを持ち続けて道を究める~3月30日(土)31日(日)工房楔イベント開催~

想いを持ち続けて道を究める~3月30日(土)31日(日)工房楔イベント開催~
想いを持ち続けて道を究める~3月30日(土)31日(日)工房楔イベント開催~

当店が万年筆だけを扱って、そして自分の好きなものだけを揃えるようになっていたら、きっとできることは少なくなってしまっただろう。
今までにその分かれ道は確かにあって、その時お客様や周りの人の声に耳を傾けず、頑なになっていなくてよかったと思います。
人が良いと思うものにも目を向けて、自分の信念を都合よく、状況や時代に沿わせることができる、よく言えば柔軟性が自分にあったからこそ商売をしていられるのだとよく思います。
私がモノを選ぶ時、自分の好みではなく、お客様のどなたかにとって良いものかそうでないかという視点を持たなくてはいけないと思っています。
ひとつの分野を探究して深く掘り下げていくときに、そこに好みを入れるとその道はどんどん狭くなって、自分の信念に縛られて身動きができなくなってしまう。
そのモノや素材への愛情が強いほどそれにはまりやすいし、職歴を重ねて、素材への目が肥えるほど、使いたいと思うものは少なくなっていきます。
自分の目指す方向がはっきりと定まっていて、自分の目利きと腕に自信を持っている職人さんのような、道を究める人もその道に入り込みやすいのではないかと私は思っています。

工房楔の永田さんも、常に向上心を持って努力している人だけれど、自分の目利きや腕に自信を持っている職人さんです。
永田さんは工房楔として活動して今年15年という記念すべき年を迎えています。
職歴としてはもっと長いはずだけど、永田さんの道は狭くなるどころか、その活動は出会った頃よりも柔軟さを増しているようです。
木を見る目は成熟していっていると思うけれど、変わらず幅広い価格帯のものを扱って、楔の作品の間口を広くしている。

その柔軟さを永田さんが持っているのは、工房楔を始めた時に掲げた銘木の杢の良さ、面白さをもっとたくさんの人に知ってもらいたいという想いを今も持ち続けているからなのだと私は思っています。
万年筆を収めるコンプロットなど価格の高いものも健在で、そちらの方面へも拡大を続けていますが、ジェットストリーム用グリップなど、とっつき易いもの、銘木の味わいを手軽に感じることができるものも、ちゃんと用意しています。

当店も万年筆を愛用しているお客様に、普段から永田さんのメッセージを伝えようと努力しているけれど、3月30日(土)31日(日)に開催する、半年ごとの工房楔のイベントは、銘木製品に深く入り込んだ人も、何か銘木のものを使ってみたいと、その世界の入り口のドアを開けようとしている人にも楽しんでもらえると思います。

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薄い色のインク

薄い色のインク
薄い色のインク

以前は何でも万年筆で書きたいと思っていましたが、原稿の下書きなどには万年筆の筆跡が強すぎると思うようになりました。
下書きという、確定していない書き直しができるはずのものが、万年筆で書いてしまうとそれが決定してしまうような気がするのです。
それが万年筆の良いところでもあり、万年筆が想いを伝える道具として優れているところなのかもしれませんが、試行錯誤する原稿には向かないのではないかと思い始めました。
最近は鉛筆で原稿の下書きを書いていて、その何でも書ける気軽さで筆が軽く、上手くいっていると思っていました。
鉛筆ならその程良い筆跡の薄さもあって、場所を選ばずどこででも気負わず書くことができていました。
これが道具を使い分けるということなのだと思ったけれど、原稿の下書きという一番文字を書く機会に「万年筆を使いたい」と思いたい。
鉛筆の筆跡のように気負わずに何でも万年筆で書くには、薄い色のインクが必要だと思いました。

筆跡を読むときに目を凝らして見なくてはいけないくらいのインクが欲しいと思って、薄い色のインクについて考えてみました。
パイロット色彩雫の霧雨や冬将軍は普通の筆記には薄すぎると思いますが、私のイメージする下書きにはとても良さそう。
エルバンも良いものがいくつかあります。ブルーアズール、ミントグリーン、グリヌアージュなどもピッタリです。

台湾の藍濃道具屋(レンノンツールバー)の藍染風インクは、台湾で古来より伝わっていた藍染の過程で出る色をインクで表現した色で、ブルーのインクが好きな人なら惹かれる色があると思いますが、その中で一番薄い色の水色が私の用途に向いていました。
少し青みのついた水の色で、本当に薄い。水色を太字の万年筆に入れて書いてみると、目を凝らさなければ何が書いてあるのか分からない。
一般的な筆記にはあまり向かないかもしれないし、粘度が極端に低いのでペン先が紙にこすれる感触が指に伝わって、太字で書いてもいわゆるヌラヌラの書き味はしませんが、原稿の下書きにはピッタリだと思いました。

月に5,6回は何らかの原稿をノートに下書きして、コンピューターで清書している私にとって、極端に薄いきれいな色のインクは探し求めていたもので、しばらく使ってみたいと思いました。
とてもきれいな水色だし、これだけ薄いと光も通しますので、デモンストレーターなどに入れるときれいに映えるかもしれません。
広くはお勧めしないけれど、私のような用途の方には強くお勧めしたい薄い色のインクとデモンストレーター。暖かくなるこれからの季節にはいいですね。

*藍濃道具屋(Lennon Tool Bar)ボトルインク 藍染め風

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当店の色~ウォールエバーシャープデコバンド~

当店の色~ウォールエバーシャープデコバンド~
当店の色~ウォールエバーシャープデコバンド~

ずっと以前にある人から「ペンアンドメッセージの色は何色ですか?」と聞かれたことがあります。

ホームページやショップカードなどがワインレッドを基調としているとかそういう単純な話ではなく、当店の特長、雰囲気など誰から見てもPen and message.とはこういう店だというように認識してもらっているかという意味で聞かれたと私は解釈しました。
自分でもはっきり分かっていなかったし、当然お客様方にも当店はこういう店だと発信できていなかったので、その質問に即座に答えられなかったことを恥ずかしく思いました。

当店らしさを見つけて確立することは、当店のような小さな店にとっては生命線のような何よりも大切なことで、どの町にもよくある文具店や雑貨店と似ていたりすると当店の存在価値はないと思う。
それから今まで、いつも当店らしさを探しながらやってきたよう気がします。

ウォール・エバーシャープデコバンドは、100年近い歴史のあるアメリカのウォール・エバーシャープ社の、大きなペン先と筒型に近いボディ、クラシックでゴツゴツした男性的なフォルムの万年筆です。
私個人のモノの好みとして、繊細でスマートなものよりも武骨なものを好むこともあって、そのデザインだけでも、こんなに当店らしい万年筆は他にないと思っています。
武骨な外観同様、中身もそれに伴った、直しながら長く使うことが前提になっている仕様です。
尻軸を引っ張り出して、空気孔を指でふさいで押し込んで、指を放すとインクを吸入するインク吸入機構は、シンプルで簡単に修理することができるゴムチューブを使用しています。
ゴムチューブは何かに接触しているわけではなく、空気圧で潰して、その復元力を利用してインクを吸入しますので破れるリスクが低い。
またゴムチューブの交換は当店でできますので、修理のために本国に送って何か月もお待たせすることもありません。
ペン先は細かい仕様変更を繰り返していて、今はフレックス量は大きいですが柔らかさよりも粘りのある仕様になっています。
スーパーフレックスニブで、力を抜いて書くとペリカンMくらい、筆圧をかけてペン先を開かせるとBBくらいの太さ、フレキシブルニブでBくらいの太さまでフレックスさせることができます。
スーパーフレックスニブとフレキシブルニブの硬さによる違いは少なくなっていて、フレックスできる量の違いになっています。
どちらのニブも粘りが強めになっていますので、フレックスさせた時の戻りが早く、使いやすさは向上しています。

デコバンドはエボナイト製の二段ペン芯を使用することで、フレックス量の大きなペン先に対応させています。
ペン芯の素材としてエボナイトは最も適した素材だと思われます。
調整の段階でペン先との密着がやりやすく、ペン先調整をしている当店のような店にはお誂え向きの素材でもあり、より良く仕上げることができます。
デコバンドのこれらの仕様に関しても、当店で扱うためにできたような万年筆で、海外のペンの雑誌で一目見て惹かれたことも不思議な縁のように思っています。

日本国内では当店だけしか扱っていなくて、その仕様は私が万年筆はこうあって欲しいと思っている仕様になっています。そして何よりも蒸気機関車のような武骨なデザインが気に入っています。
ウォールエバーシャープデコバンドを当店のオリジナル万年筆のように思っています。

⇒ウォールエバーシャープデコバンド

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*前の記事「工房楔との相乗効果」