変わらないという戦略~ヤード・オ・レッド~

変わらないという戦略~ヤード・オ・レッド~
変わらないという戦略~ヤード・オ・レッド~

激動の世界経済の中で、あるいは自然界の中でもそうだと思いますが、環境の変化に適応して姿を変えていけるもののみが、長く続いていけると言われています。

ペンの業界においても、使う人の価値観や販売店の変化、ファッションやインテリアの業界からの影響などから、変化した方がいいという風潮は常にあり、各社なるべく自社のアイデンティティを失わないように変化に適応しようとしているのがよく伝わってきます。
伝統や歴史のロマンもその品質のうちとされる筆記具の業界において、急激な変化は各方面、特に今までのお客様との軋轢が生じてしまいますので、たいていのメーカーが自社の歴史や伝統を重んじながら、慎重なイノベーションを企てることになります。
ですがそれはどこか中途半端で、新しいものに限ってお客様から支持を得られないということが多いように感じています。
変化しているように見えながら実は旧態依然とペンを作っていると万年筆は若い人から受け入れられない魅力のないものになってしまうと思っていました。
しかしヤード・オ・レッドはそんな変化には無縁な、変わらないデザインと手作業によるペン作りを続けています。
多くの愛用者を持ちながらも、そのデザインに多くの若い人たちが魅力を感じていることを知り、変化だけが生き延びる方法なのではないと知りました。
ヤード・オ・レッドと聞いた時に、私たちペンの業界の人間は、その名前に敬意を感じ、別格の存在として認識しています。
その魅力は、伝統的なデザインでありながら、他に似ているもののないことと、上質なスターリングシルバーのタッチとエージングだと、一言で言い表すことができますが、それほど明確にその特徴が多くの人に伝わっているブランドは他にないのかもしれません。

ヤード・オ・レッドの創業は1943年と、そのデザインからイメージするほど古くはありませんが、その前身となったのは1822年に創業した、ハンプトン・モーダン社です。
3インチの芯をリボルバーのように12本繰り出し機構の周りに収めることのできる繰り出し式のペンシルを発明して販売していたモーダン社の創業がヤード・オ・レッドの始まりと言えますが、その繰り出し機構は多くのシャープペンシルの機構の参考になっていることがよく分かります。

そのペンシルの仕様はその歴史の中でも全く変わっていません。1960年代から70年代にかけて、ボールペンの台頭により多くの万年筆、高級筆記具メーカーが潰れてしまいましたが、150年以上作り続けてきた昔ながらのペンシルに特化してきたことでヤード・オ・レッドが今まで生き延びることができてきたのかもしれません。
機構的に特徴のあるペンシルが中心的なモデルになりますが、その他のペンでもヤード・オ・レッドが孤高の存在であることが理解できると思います。
万年筆の独特の書き心地は、柔らかいペン先と少なめのインクの出による繊細なもので、ヤード・オ・レッドの万年筆が好きな愛用者の方もおられます。
ボールペンにおいても古典的なスタイルは今では逆に新鮮に感じられ、自分の個性を表現する道具として受け入れられているようです。

ヤード・オ・レッドの50年代にあったペンのデザインを復刻した「レトロ」というシリーズがあります。
黒い樹脂のボディとスターリングシルバーのクリップのコントラストがとても印象的なモデルですが、当店で日本未入荷のレトロミニサイズボールペンの予約販売の受付を始めています。予約後3ヶ月程納期をいただいておりますので、興味のある方はサイトからご覧下さい。
先日発売を開始したコラボメモカバーとの相性も良く、携帯性に優れたとても魅力あるものだと思います。

*画像はバイスロイ・ビクトリアン/ポケットビクトリアン各万年筆とボールペンです


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