細くて硬いペン先~カスタムヘリテイジ912ポスティング

細くて硬いペン先~カスタムヘリテイジ912ポスティング
細くて硬いペン先~カスタムヘリテイジ912ポスティング

システム手帳を使ううちに細字の万年筆への欲求が高まってきました。
コンチネンタルのシステム手帳はバイブルサイズで、紙面のスペースも限られています。スペースを有効活用するためと、使う紙の枚数を少なくするために書く文字がだんだん小さくなってきたのです。
既に細字の万年筆は数本持っているし、その気になれば使っていない万年筆を細字に研ぎ出すこともできるので、それらを使えばいい。
実際、手持ちの万年筆でシステム手帳に記入するので満足していました。
その万年筆を知るまでは。

お客様のKさんと話していて、1990年頃に作られたパイロットカスタム72という万年筆の話になりました。
Kさんによると、その万年筆が京都の古くからある文房具屋さんにデッドストックで残っているという。
私は、ぜひ欲しいので、京都に行く際に買ってみますと話していました。
Kさんは、私が持っている万年筆の中でも異色なデルタコサックの元持ち主で、私に新たな世界を見せようとする何となく悪友のような存在。
なかなか京都に行く機会が持てず、カスタム72を入手できずにいる私の代わりに、先日Kさんが、ついでがあったからと私の代わりに買ってきて下さいました。
パイロットカスタム72を使い始めて、硬い細字のペン先の魅力に大いに魅せられています。
カスタム72は通常のカスタムシリーズよりも硬いペン先を備えた万年筆で、筆圧の強い人、運筆の早い人、カリカリの書き味が好きな人には好まれるものですが、すぐに生産されなくなって、今では入手することが難しくなっています。

硬いペン先の万年筆を使ってみて分かったことは、均一な文字が書けるということでした。
このペン先は私の欲していた手帳用の万年筆の条件にピッタリでした。
カスタム72はもう定番品ではないので皆様にお勧めはできませんが、パイロットカスタムヘリテイジ912のポスティングというペン先のものが、これに当たります。

パイロットの昭和2年の古い文献には既に今のペン先のラインナップが全て紹介されていて、このポスティングについて「一般の厚紙の帳簿に記帳するのに適当で、ブックキーパー(ペン先種類)の如く数字用でなく、普通の文字を細字に書くのに用ゐられます。極細であるから、弾力が硬い肉厚のものでなくてはならぬのは勿論、穂先は短か穂になっています。そしてブックキーパー程輪郭の鮮明な線は書けない代わり、紙当りを良くする目的から、イリジュウムの角々を丸めて研ぎます。従って書かれた線は濃淡の変化がなく、一本調子で勢いに欠けますが、繊細で清楚な感じを覚えます。」とあります。

繊細で清楚な線とはよく言ったもので、このポスティングも手帳に小さな文字をビッシリと書いても、スッキリと見やすい文字を書くことができます。
柔らかくてインク出の多い万年筆も味わい深くて良いけれど、システム手帳など手帳を書くことにこだわると硬いペン先の細字の万年筆の良さが見えてきます。

⇒パイロット カスタムヘリテイジ912