当店が目指すもの

横浜に出張販売に行ってきました。

横浜出張販売は「&in横浜2024」と銘打った、590&Co.さんとの共同出張販売でした。

590&Co.の谷本さんは今最も求められている木軸シャープペンシルを中心に品揃えして、多くのお客様を集めています。早い段階から木軸のシャープペンシルに注目されていましたので、時代が谷本さんに追いついたのだと思います。

中高生から大人までを夢中にさせる590&Co.さんに対して、当店はどういうものが求めらているということと関係なく、万年筆にこだわっています。それは万年筆のある生活を根付かせたいということと、書き味の良い万年筆を提供したいということを追究してきたからです。

たくさんのお客様が来てくださったら尚良いけれど、それよりもまず自分たちの理想とする店のあり方を示すということを目標にしています。

昨年その必要性を感じて、今回の横浜から森脇も調整機を持参し、調整士2人態勢で臨むことにしました。結論として、二人でやって良かったと思いました。

調整の予約枠は全て埋まってしまっていましたので、今までの1人態勢なら飛び込みのお客様に対応できませんでしたが、今回はそういうお客様にも対応できました。

ペン先調整をする万年筆店はそれほど多くないけれど、調整士が2人いるというのはもう当店しかないと思いますので、これは強みだと思いました。

当店の研ぎで名前が知られ始めて、ご注文が多くなったのは三角研ぎです。

1本のペンで太くも細くも書ける研ぎ方ですが、ヌルヌルと書ける太い所で書いても書く文字にエッジがあって、きれいな文字が書ける研ぎだと思っています。

純粋に使うのが楽しい万年筆なので、好奇心もあってご注文される方が多いのだと思います。

でも私は日常店で行っている通常のペン先調整、もともとのペンポイントの形を尊重して、より滑らかに書けるようにすることも得意としています。

これは研ぎというよりもペンポイントの形を整えるような感覚でやっていますので、それぞれのメーカーの書き味を残すという意味でこれが本来のペン先調整と言えるのかもしれません。

横浜出張販売の前夜、準備を終えて日ノ出町まで歩いて中華を食べに行きました。

ネット検索で調べたその店は、扉を開けることも躊躇われるくらい古い昭和風情の店でしたが、中に入ると仕事帰りのサラリーマンで賑わっていました。

対応も親切で、味は今まで食べたものが高すぎると思うくらい美味しかった。

食べ物屋さんは外観がきれいでカッコよくても味が不味かったらどうしようもない。まず美味いものを提供することが一番の、もしかしたら唯一の役割だと、当たり前のことを改めて思いました。

万年筆店もまず書き味の良いペンをお客様に提供するということが最も大切な役割で、それができていないと見掛け倒しになってしまう。

店の外観を疎かにしてもいいという意味ではなく、最も大切なことが抜けていてはダメだということです。

出張販売には万年筆以外に、様々なステーショナリーなどを持って行きますが、結局皆様から求めらていることは、書き味の良い万年筆やお持ちの万年筆を書きやすくするペン先調整なのだと、外に出るたびに思い知らされます。

万年筆の仕事をするようになった時から、ルーペで研ぎの形を見ることが好きでした。

メーカーそれぞれの研ぎの形は違うし、書きやすいと思うペンの研ぎは例外もあるけれど、多くの場合美しい形をしています。

自分の手で美しい形を作り出して、この道を追究して極めたいと思ってずっとやってきました。

店を始めた時よりも今の方が気付くこともあって、当然上手くはなっているけれど、調整の上達に終わりはないと思っています。

研ぎにこだわって書き味の良い万年筆を提供するということが、当店が目指している店のあり方で、それが面白いと思って下さる方がおられるなら、海外にも行ってみたいと思っています。