WRITING LAB.オリジナルインク Quadorifoglio(クワドリフォリオ)

WRITING LAB.オリジナルインク Quadorifoglio(クワドリフォリオ)
WRITING LAB.オリジナルインク Quadorifoglio(クワドリフォリオ)

私たちがボトルインクの売り場に行くとつい気になって見てしまったり、他の人が使っているインクの色がいつも気になるのはなぜなのだろうと思います。
人によって理由が違うのかもしれませんし、何か決まった理由があるのかもしれない。

でもひとつ言えるのは、私たちは常にもっと良いと思える、今の気持ちに合ったインクの色を探しているということなのだと思います。

万年筆メーカーやインク専業メーカーからたくさんの種類のインクが発売されていて、インクの色は本当にたくさんあります。今のところ存在しないインクの色は、万年筆用として作ることのできない金銀白くらいなのではないかとさえ思えます。
日本中の万年筆を扱っているお店からオリジナルインクも発売されていますので、とうの昔に万年筆の筆記に適した色は出尽くしていると思っています。

でもこのオリジナルインクは、販売する側としてもぜひ企画したいものなのです。

オリジナルインクは、自店のこだわりや、万年筆においての世界観を表現する重要なものだと思っています。
色の選択、名前、ラベルのデザインなど。
オリジナルインクに込められたこだわりからお客様はそのお店の世界観を感じとることができる。
当店と山科のインディアンジュエリー・ステーショナリーショップRIVER MAILとの共同企画のブランドWRITING LAB.もとうとうインクを作りました。

先述の私のオリジナルインク観通り、そこにはWRITING LAB.のこだわりや世界観が込められています。
インクの名前Quadorifoglio(クワドリフォリオ)はイタリア語で四つ葉のクローバーという意味です。
私たちがWRITING LAB.の色とした色は葉の緑だったし、幸運のお守りとしての四つ葉のクローバーのイメージが、仲間たちで集まってひとつひとつのモノについて話し合って作り出したり、そういった集まりにおいての出会いからモノが出来上がるWRITING LAB.の感じをよく表していると思っています。

Quadorifoglioの名前は革製品を一緒に企画して作っていこうとしている久内(きゅうない)さんご夫妻の工房の名前で、お二人との出会いもこのインクの名前の由来になりました。

久内さんご夫妻はフィレンツェで革製品作りの修行をして、現在神戸に工房を構えて活動されています。
ご主人の淳史さんは靴職人、奥様の夕夏さんは絞り技法の革小物を作っておられます。

久内さんとは、当店の本当に近くの旧居留地にベラゴというアトリエ兼工房を構える鞄職人牛尾龍さんを通じて知り合いました。

ル・ボナーの松本さんに教えてもらって、RIVER MAILの駒村さんとともにベラゴさんに飛び込んだのが昨年の夏で、少しずつ親交を温めながら、久内さんを紹介していただくに至りました。
ちなみにベラゴさんの商品も少しずつ扱っていきたいと思っています。

ベラゴの牛尾さんとQuadorifoglioの久内さんご夫妻は、4月18日(水)~24日(火)神戸大丸1Fで開催されるイベントに出展されていますので、ぜひ見に行ってみてください。
カンダミサコさんも5月2日(水)~8日(火)、同イベントの後半に出展されています。

出会いがあって新しく立ち上げたWRITING LAB.の標榜する世界観は、笑顔になれるもの、幸せを提供されるものとしてこのオリジナルインクに込められています。

⇒WRITING LAB.オリジナルインク クアドリフォリオ

工房楔の机上用品 ペントレー

工房楔の机上用品 ペントレー
工房楔の机上用品 ペントレー

WRITING LAB.で工房楔の永田さんに依頼して作ったもらった机は、木工家永田篤史のこだわりを表現したモニュメントのような存在になっています。

この机の存在が永田さんがライフワークとしている木の良さや杢のおもしろさを多くの人に伝えるために一役かってくれると私は思っています。
この机は、ここで仕事もできるし、趣味を楽しむこともできる。コンパクトな一人の時間を楽しむための空間をこの机が作り出せたらと思っています。

当店が関係しているものなので、万年筆をより楽しむための仕掛けをしていきたいと、もちろん考えています。

ひとつの机の理想的な形を作っておいて、それを活用するための机上用品を今後作っていこうと、机を作ってもらう時に話し合っていましたので、今回ご紹介するペントレーはその机で遊ぶための机上用品第1弾ということになります。

天板が開くライティングデスクの収納スペースの中にこれらのトレーを組み合わせて入れることによって、収納スペースをトレーできっちりと埋めることができます。
このペントレイも、今後発売していくつもりの机上用品もこの机にあることをイメージして作りますが、それぞれ単体で使うことも可能です。

ただ机上用品を企画する上で、何の机もイメージせずに作るよりも、こういった実際に存在する机をイメージしながら作っていった方が良い結果が得られると思っています。
トレーは、ウォールナットの無垢材でできていて、コンプロットなどに見られる刳りもの(くりもの:材料をくり抜いて作る)ではなく、指物(さしもの:組み合わせて作る)で作られています。
平面に革を敷いて、ペンなどのそこに置くものに傷がつかないようにしていますが、ここにはピッグスエードを貼りました。

ライティングデスクの天板裏に仕組まれたブッテーロのデスクマットがウォールナットの材質に合わせてワイン色になっていますので、このピッグスエードもワインにしています。

また、トレーにはいくつか種類があります。

ペンを11本並べることができるものは、万年筆店として当店が永田さんに最も熱望していたもので、万年筆を何本も持っている方には必需品だと言えます。
11本以上お持ちの方も、これを何段でも重ねることができますのでお重箱のようにペンを保管することができます。
仕切りのついていないフリーのトレーも大変便利です。
万年筆以外の、例えば時計やアクセサリーなどのものを保管しておくにの便利ですし、フリートレーを机上に置けば、そこで万年筆の手入れなどする時にも便利だと思います。
フリーのトレーにはワイドとスリムがあり、スリムは机上で使用中のペンを仮置きするペントレイとして使うことができます。
ちなみにこれらのトレーは、WRITING LAB.のライティングデスクには2段重ねて入れることができるようになっています。

このような形のペントレーは他にもありますし、万年筆を並べて保管する形態としてはオーソドックスなものかもしれませんが、質の良いウォールナットは使い込んだ時に美しい艶を持ちます。

長く愛着を持って使うことができる、というのも永田さんが作る机上用品の良いところだと思っています。

*今回の発売は11本ペンを並べることができる「ワイド・11本用」です。フリーのものやサイズ違いは4月中の入荷予定になっています。
*画像はWRITING LAB.オリジナルライティングデスクに組み合わせたものです。サイズがぴったりと収まるようになっています。

⇒工房楔 ペントレー・ワイド(11本用)

アウロラ マーレ・ティレニア

アウロラ マーレ・ティレニア
アウロラ マーレ・ティレニア

万年筆メーカーは、ルパンⅢ世の峰不二子のようだと思うことがあります。
特にアウロラは万年筆メーカーの中でも峰不二子度合いが一番高い。

どういうことかと言うと、例えば先日発売されたばかりの480本限定のマーレ・ティレニアは、前作マーレ・リグリア、85周年記念レッドとベースは全く同じで、色違い、装飾違いのモデルですが、マーレティレニアに魅力を感じる人は多い。
もちろんマーレ・ティレニアの万年筆自体の魅力もありますが、レッド、マーレ・リグリアを持っている人なら尚更マーレ・ティレニアが欲しくなる。
内容は全く同じだと思っていても、色違いで持ちたい、揃えたいと思ってしまう。

万年筆を実用で使いながらも、でも趣味のものとも言える人の弱いところを熟知している。そしてお客様は万年筆メーカーがそれを知って、突いてくることを知っている。
峰不二子は最終的に欲しいものだけ手に入れてどこかにいってしまうことを知りながらも、次元と五右衛門になじられながらも騙される振りをするルパンとの関係。
峰不二子には、ルパンをそういう気持ちにさせるだけの魅力があって、ルパンにはそれに乗っかってやれるだけの大人の男の余裕がある。

それは筋書きが分かって楽しんでいる大人の男女のプレイで、万年筆メーカーとお客様方との限定品をめぐる関係もまたそのように感じます。
マーレ・ティレニアのベースとなる万年筆は、バランスやフィーリングにおいて相当高いポテンシャルを持っていて、アウロラもそれに自信があるから同じ筐体で大切な限定品のシリーズを出してきているのだということは、言うまでもありません。

しかしアウロラは、定番の万年筆を少し変えるだけでとても魅力的に見せる方法をよく知っています。
代表的なオプティマと男っぽいシンプルな88とは、ペン先をはじめとする多くの部分でパーツを共用しながらも、全く違う性質のものに見せていて、製品の安定性と同時にモデルの充実をそれによって実現しています。
そういう感覚に優れたメーカーなのかもしれません。

レッドやマーレ・リグリアの色違いと言われても仕方ないマーレ・ティレニア、明るすぎず深すぎないグリーンのチョイス、ハードな使用でも滑らかな良い書き味を損なわない適度に硬いペン先など、非常に優れた万年筆で名品だと多くの方が賛同してくださるのではないでしょうか。

オリジナル万年筆「Cigar」とインク

オリジナル万年筆「Cigar」とインク
オリジナル万年筆「Cigar」とインク

当店5周年の記念としてオリジナル万年筆「Cigar」を発売します。

「Cigar」は一昨年ル・ボナーの松本さん、分度器ドットコムの谷本さんとともに訪問した、最も思い入れのある万年筆メーカー、イタリアボローニヤに工房を構えるオマスが製作しました。
オマスの代表的なモデル、アルテイタリアーナのミロードを少しコンパクトにして、スターリングシルバーに金張りのバーメイルのキャップが外観上の強烈なアクセントになっています。

以前から、今では少なくなってしまった男っぽい万年筆を作りたいと思っていました。
それは時代遅れとか、オールドスタイルなのかもしれませんが、時代に流されない頑固な男でありたいという想いを反映したものだと思っています。

私が仕事を始めた頃、まだ1980年代の残り香があって、そのような雰囲気をカタログや本などで見つけると嬉しかった。
明らかに古臭いけれど作り手の夢やロマンを感じる、長く使われることを期待した、消費物ではない物たち。

そんな中に必ず黒いボディに金キャップの万年筆は存在しました。

万年筆で見ると80年代はニューヨーク近代美術館に永久所蔵されているアウロラアスティルに代表される先鋭的なデザインのものが隆盛した70年代の反動で、40年代、50年代を回顧した時代だったと思っています。

万年筆は色鮮やかな色をボディに纏い、デザインを面白くすることで90年代を乗り切り、そして現代も生き残って新しい客層をとらえています。
それは否定しないし、そういう万年筆にも魅力を感じますが、当店がオリジナルとして万年筆を作る意味を考えると、当店の心から生まれた自分たちらしいモノ、そしてメーカーから発売されていないモノを作りたい。
「Cigar」はまさにそういうものになっていると思っています。

この万年筆の名前「Cigar」という言葉には、雰囲気や味わいを楽しむ男っぽい、でもオールドスタイルなものという意味合いを込めています。

葉巻のシガーが個人的な楽しみであるなら、万年筆もまた個人的な楽しみの部分が大きく、そのモノのあり方に近いものを感じています。

キャップの金張りの下地をスターリングシルバーのバーメイルにすることによって、時間が経つごとに色合いが変化して落ち着いてくるエイジングするものにし、オマス独特の柔らかい書き味を得て、この万年筆はより個人的な楽しみのあるものだと思っています。

個人的な楽しみをより演出するものとして、オリジナルインク「Cigar」も発売します。
書いたばかりの時は深い緑色で、時間が経つと焦げ茶色に変化していくインクです。
緑色のシガーの葉が乾燥して枯れた色になっていく様をインクで表現しています。

5年という、重ねてきた年月に重さを感じています。
4周年までは今年も迎えることができて良かったということで、素直に年月を重ねてこれたことを喜ぶことができましたが、5年という歳月はその店の成果を試されるようなプレッシャーを感じています。
5周年の記念としてこの万年筆を発売することができたことをとても誇らしく思いながらも、でもまだまだこれからも他にも自分たちが作りたいものを作っていきたいと思っています。

40本のみ製作の「Cigar」は4月上旬に入荷します。
ご予約いただいたお客様には4月のお渡しになりますので、よろしくお願いいたします。


⇒オリジナルインク Cigar

サマーオイルメモノート、革封筒に新色追加

サマーオイルメモノート、革封筒に新色追加
サマーオイルメモノート、革封筒に新色追加

WRITING LAB.企画のサマーオイルメモノートと革封筒に新色を追加しました。

サマーオイルメモノートには、ベージュ色のピーナツ、ブルーグリーンのピスタチオ、オフホワイトのエッグの3色で、クロスのステッチを入れています。

昨年末に発売しましたサマーオイルメモノートでしたが、冬に選んだせいか、私と駒村氏の好みのせいか、暗めの重い色ばかりになってしまいましたので、今回はWRITING LAB.の女性陣による革のチョイスとステッチのデザインになっています。

サマーオイルメモノートは今まで革ヒモでメモを綴じる仕様になっていましたが、より柔軟で結びやすく、丈夫な靴ヒモに変更しました。
本当は最初から完璧なものを出すことができればいいのですが、こうやって少しずつでも改良を加えていきたいと思っています。

ブログの下書きや覚書など、A4サイズ1枚以内のちょっとしたものなら、このサマーオイルメモノートのA6サイズで充分用は足りて、電車の中など移動中でも今までで最も使っている紙製品です。
立ったままで書いて、転記したり、パソコンに入力したりすると千切って捨てていく。

整理したいから仕事を片付けていく。ただ好きで書いただけでは自己満足で終わってしまう。コンピューターに入力して、活用できる状態にしないと私の仕事として不完全だといういましめにもなります。
紙をただヒモで綴じただけのシンプルなメモ帳ですが、シンプルな仕様でその機能を満たすために素材にこだわっています。

革封筒はB5サイズの原稿用紙や当店の試筆紙、大学ノートなどをまとめて持ち運ぶことができるようにB5サイズを少し幅広にしたサイズで、取り出しなどを考えてフタがついていない仕様になっています。

袋なのでしなやかな性質は必要ですが、腰がないとモノとしてつまらないし、口の部分がヒラヒラしてしまう。
そんな用件を機能的に、質感的に満たしてくれたのがボーノアニリンという革でした。

駒村氏の言う「色気のある革」で、しっとりとした手触りがありながら、しっかりとした革質に惚れ込んで革封筒の素材に採用させていただきました。

アマーロのダークブラウンの深い色合いは、確かに色気を感じさせるものではありましたが、あまりにも男性的すぎる。
女性の方やカジュアルな服装の方でも使っていただけるものを作りたいということで、同じボーノアニリン革のナチュラル色(ドルチェ)で革封筒を作りました。
今までのアマーロの色では重厚すぎましたので、ナチュラルカラー(ドルチェ)は軽快な感じがして、これからも季節にも良いかもしれません。

ところで、革封筒の色名、こげ茶をアマーロ(苦い)、ナチュラルをドルチェ(甘い)としたのはフィレンツェ帰りの靴職人久内(きゅうない)さんの助言によるもので、とても気に入っています。

久内さんは、近々発売するWRITING LAB.オリジナルインク「クワドリフォリオ」の名付け親でもあります。


禁断のキャップレス

禁断のキャップレス
禁断のキャップレス

パイロットのキャップレスという、ボールペン並みの手軽さを持った仕事の強い味方であるこの万年筆に、「禁断の」という背徳的な言葉は最も似つかわしくないはずです。
しかしキャップレスについて考える時、私はどうしても「禁断」という言葉を思い浮かべずにはいられません。

私にとってキャップレスのどこが禁断かというと、その使いやすさによって他の万年筆を使わなくなってしまう怖さがあるからです。
キャップレスは尻軸をノックして、ペン先を出すことによって筆記できる万年筆です。

ちなみにペン先は出たり引っ込んだりするだけでなく、ペン先の動きに伴って空気を遮断するシャッターも内部で開閉しているので、ペン先が乾くことがありません。

キャップレスとよく比較されるというか、一緒に話題にのぼるスティピュラダヴィンチは、ペン先を引っ込めた時に扉は閉まりますが扉にパッキンがなく空気が隙間から通る感じですのでペン先が乾きやすい。
でも乾いても許せるデザイン性があり、もしかしたらキャップレスと非常に対照的な万年筆なのかもしれません。

キャップレスが乾かないのは、実はそのインクの性能にも秘密があります。

私はキャップレスはカートリッジインクで使うことをお勧めしたいと思っていますが、パイロットはキャップレスに使うことを意識して、今の乾きにくいインクを開発したという話もあります。

ボールペンを使うのと何ら変わらない使いやすさがあって、書き味の良さと、インクの筆跡を持ったキャップレスは、特に手帳には使いやすいと思います。
私がキャップレスの存在によって他の万年筆を使わなくなってしまうのではないかと思ったのは、私の万年筆の用途の大半がメモ書きだからです。

机に向かった姿勢ではない立ったままで書くことも多いメモ書きにおいて、キャップを開ける動作のない、片手で書き始めることのできるキャップレスは最もメモを書くのに適した万年筆だと言えるでしょう。

メモ書き用の万年筆にとって、携帯性というのは非常に重要で、ポケットに差しても嵩張らなくて、軽いことは条件のひとつになります。

そんな中、キャップレスシリーズで唯一軽いアルミ製のボディを採用し、細軸のキャップレスデシモこそ最もキャップレスの用途を追求したものだと言えると思います。

今までキャップレスには、細字、中字、太字しかありませんでしたが、新たに極細が追加されたのは、手帳書きをより快適にするキャップレスの特長をより生かす、とても意義のあることだと思います。
字幅の追加と同じくして、ボディカラーに今までなかったことが不思議だったシンプルな色も追加されています。

私はキャップレスを使いたくない。なぜならあまりにも使いやすくて他のたくさんある万年筆を使わなくなってしまう可能性があるから。
そう言わざるを得ない、他の万年筆にとって脅威となる究極に使いやすい万年筆がキャップレスデシモです。

⇒パイロット キャップレスデシモ

ペリカンのペンケース

ペリカンのペンケース
ペリカンのペンケース

万年筆を使い始めた時、ペリカンの3本差しのペンケースを使っていました。
3本の万年筆を入れることができて、しかも価格が安かったので、万年筆初心者としては手が出しやすかったのが使い出した理由でした。
しかし、使い出してこのペンケースの機能性が分かりましたし、このペンケースからたくさんのことを教えてもらいました。

機能的に優れたペンケースとは、コンパクトでたくさんのペンが入ること、そして入れたペン同士が当たって傷つかないこと。
様々なサイズのペンを無理なく収めることができること。
以上の要件が機能的なペンケースにとって必要なことで、この3つの要件をクリアしているペンケースは意外と少ないのです。
万年筆用のペンケースとしての要件を知ることができたので、その後いくつものペンケースを企画することができましたし、自分の得意分野のひとつだと思えるようになりました。

ペリカンのペンケースが機能に特化できたのは、ペリカンが万年筆メーカーで、万年筆の側から考えられたものだからだと言えます。
最近は少なくなってしまいましたが、以前はそれぞれの万年筆メーカーが自分たちのこだわりを反映させたペンケースを作っていたように思います。
どれも高級ではなかったけれど、コンパクトで、でも傷の心配をせずに安心して持ち歩くことができるものでした。

ペリカンのペンケースの万年筆を傷付けない工夫はとてもシンプルなことで、間の仕切りがちゃんと底まで届いているということです。
ペンの入り口付近だけ仕切りがついたものが見受けられることがありますが、それでは下の方でペン同士が当たってしまいます。やはり仕切りは底まで届いているべきで、些細で表面的には分からないことですが、ペリカンの良心がこのペンケースの仕様に現れています。

言うまでもなく、ペリカンのスーベレーンはM300からM1000までの様々なサイズの万年筆が揃っています。
それらを全て収めることができるようにするためにはそれなりの工夫が必要で、仕切りを倒れるようにしてM1000のように太いペンでも入りやすくして、フラップを長くとることで長いものから短いものまで収納できるようにしている。
ペリカンのペンケースの種類がたくさんあることは、種類が多くて色数が多いペリカンの万年筆をそれぞれの用途に合わせて揃えて使って欲しいという狙いがあるものだ思っています。
でもまさかこれにペリカンばかり入れるのはメーカーの思うつぼだと思っていましたが、例えばメモ用にM400、原稿用にM800、手紙用にM1000などのように用途を違えて3本差しのペンケースに入れたり、入れるインクの色に合わせたボディカラーの違うM800ばかりを同じペンケースに入れるということが素敵だと思えるようになりました。

3本差しから5本差しまでは、用途分けした万年筆を一緒に持ち歩くペリカンらしいペンケースで、どれも仕切りが倒れ、フラップを長めにとってM300からM1000までの万年筆を問題なく、コンパクトに収めることができます。
その中で20本差しのラウンド型のものはかなり特異な存在で、持っている万年筆を入れて本棚に入れておくようなコレクションケース的な使い方をされることが多いのだと思います。

この手のケースの中ではかなりしっかりした作りで、安心してたくさんの万年筆を入れておくことができます。
革のペンケースに入れておくと銀のものがよく黒ずんだりしますが、それも少ないことも良いところだと思っています。機能的には完璧なペリカンのペンケース、使う価値は十分にあると思います

⇒Pelikan ペンケース(ペンケーストップへ飛びます)cbid=2557544⇒Pelikan ペンケース(ペンケーストップへ飛びます)csid=1″ target=”_blank”>⇒Pelikan ペンケース(ペンケーストップへ飛びます)

パイロットの2つの木の万年筆

パイロットの2つの木の万年筆
パイロットの2つの木の万年筆

木の万年筆を直感的に好ましく感じる人は多いと思います。

木の自然な手触りや、使い込むと光沢を増すボディに愛着を持って使う、万年筆の理想を見るからだと思います。

でも木の万年筆の楽しみ方はまだあって、私は佐々木商店のつやふきんを使っていますが、美しい光沢に磨き上げるということも木の万年筆ならではのものです。
万年筆は自分の想いや考えを紙に記す、書くということを書き味を楽しみながらできる、言わば個人的な、自分の内面を見つめ直す作業の中で使われるものであるから、それはどちらかと言うと個人的なものだと思っていました。
磨いて光沢を出した万年筆はもちろん自分の楽しみでしていることですが、それは必ず人に見せたくなる。
その場合の万年筆は、個人的なものではなくて、そのモノ自体がコミュニケーションの中心にあるように思います。

木の万年筆を磨いて美しい光沢を持たせるということは、他の人にその美しさを見せて「きれいですね」と言ってもらいたい。
そんな他の人とのやり取りを想像しながら磨く楽しみのある木の万年筆を2本ご紹介いたします。

カスタム楓(かえで)。かなり以前からパイロットの定番品としてモデルチェンジをしながら今も作られている万年筆です。
イタヤカエデという材をボディに仕立てています。
何をしても手堅いパイロットらしく、木のボディにヒビや割れが生じないように樹脂を含浸させています。
しかし、表面はナチュラルなままですので使っていくうちに磨かれたり、手の油を吸って光沢が出る余地が残されていますし、元々かなり変化しやすい性質なのか、使いこむだけで艶がでてきますので、磨き甲斐のある素材だと言えます。

またカスタム楓は他のパイロットの万年筆とかなり書き味が違っていて、それは磨く楽しみのあるボディという趣味的な要素と釣り合いを持たせた仕様と言える柔らかいペン先を装備しています。

この柔らかいペン先を利用して美しい文字を書くことも可能です。
筆圧を掛けると線は強調され、力を抜くと線はスッと細くなる。強弱をつけてじっくり文字を書くことを可能とする万年筆なのです。

そんな文字を書く楽しみを持たせているのが、カスタムカエデの万年筆として味付けです。
21000円という実用一辺倒の国産万年筆が揃う価格帯の中で、かなり異色ですが、無視できない趣味的な書く楽しみ、磨く楽しみのある万年筆だと思います。

そして52,500円という国産ハイエンドモデルが揃う価格帯の中で格の違いを見せ付けているのが大型の万年筆カスタム一位(いちい)です。

その名前から縁起の良い木と言われている一位の木を圧縮して、密度の高い、キメの細かい万年筆のボディに相応しいものにしています。

そのまま使える材ではなく、使えるようにするために圧縮するというのは何か強引な力技という気もしないではないですが、その加工のおかげで木の感触を残したままで、ヒビや割れ対策を実現しています。
カスタム楓と違う方法で、木を万年筆のボディに使うデメリットである割れ対策をしたことにパイロットの技術の幅を感じます。

カスタム一位のキメの細かいボディのスベスベした手触りはとても気持ちよくて、この万年筆をより上質なものに感じさせてくれますし、使い込んだり、磨いたりした時の艶の出方は相当美しいと予感できます。(昨年発売されたばかりの万年筆なので、予想になりますが)

カスタム一位は、パイロットの名作万年筆だと多くの人が評価するカスタム845のボディの素材違いとなっていて、ボディサイズ、ペン先などのボディ以外はカスタム845と共通になっています。
カスタム845はパイロットが世界に示す、書くことにおいて完璧な万年筆のひとつの形で、世界に示すために日本らしい素材の仕上げである漆塗りがボディに施されているのだと想像します。

パイロットが世界に示す、書くことにおいて完璧な万年筆の書き味は非常に弾力の強いものになっています。
私は一位や845の書き味をバネみたいだと表現していますが、バネのようにビョンビョンと跳ね返りの強い書き味はハードな筆圧で、早く書くことに適した仕上げだと思っています。
カスタム845の木軸バージョンである一位もまたパイロットが世界に示す、書くことにおいて完璧な万年筆なのです。

磨く楽しみのある木軸の万年筆ということで、カスタム楓とカスタム一位という2つの万年筆をご紹介しましたが、文字を書くことを楽しむ楓、ハードに使う実用の道具に木の余裕を持たせた一位、というふうに個性や狙いが違っていて面白いと思っています。

*「つやふきん」は商品自体を卸されていませんので、そのまま商品として購入したものをお分けしています。店頭のみの扱いになりますのでご了承下さい。


⇒パイロット カスタム楓(かえで)

WRITING LAB.が目指すものを表現したデスク

WRITING LAB.が目指すものを表現したデスク
WRITING LAB.が目指すものを表現したデスク

WRITING LAB.から依頼し、工房楔の永田さんが製作したデスクがあります。
ウォールナット無垢の材料を惜しみなく使っていて、永田さんらしく、WRITING LAB.が目指す遊び心を表現したものが出来上がりとても嬉しく思っています。
ライティングデスクを開けながら、ラボデスクの天板を擦りながら、つい顔がほころんでしまう。そんな机です。

山科のインディアンジュエリーのお店リバーメールと当店が一緒に仕事をすることになったのはこの机作りが発端でした。
ステーショナリーの範囲を広げてその空間を作ろう。大人がその場所に戻ると遊び心が持てて、童心に返れるような場所。
書斎は持てなくても、デスクならそれは可能かもしれない。
大人の秘密基地である一畳書斎を作るというのが駒村氏が持ち込んだアイデアであり、WRITING LAB.が毎週土曜日に頭を寄せ合って、宅配の弁当を食べながら打ち合わせをするようになった最初の仕事でした。

机はオフィスデスク以外仕事で扱ったことがありませんでしたので、お客様方にご自宅のパーソナルデスクについてお聞きすることでヒントにしようとしていました。
本当に有難いことで、たくさんのお客様から書斎や机のお話をお伺いすることができました。
アンケートのようなことに慣れてない、拙い私の質問に親切、丁寧にお答えいただきました皆様に心から感謝しています。

出来上がった2つの机は皆様からお伺いしたお話がヒントになっています。

ライティングデスクは、当初遊び机と言っていたもので、面白い仕掛けが盛り込まれています。
天板を開くと趣味の道具(万年筆を中心とした)を仕舞うことができる空間があって、その上で時間を忘れて遊ぶことができる。そんな趣味の机をイメージしました。
工房楔のコンプロット10も収めることができるし、今後ペンを並べて収納することができるペントレーも作る予定です。
オリジナル真鍮削り出しの金具の働きにより、天板を表裏両面で使うことができ、裏面はブッテーロを張りデスクマットになっています。

ラボデスクは仕事机のイメージ。コンピューターなどが置けるようにコードを通す穴を天板に空け、電源タップのポケットを天板下に設けています。
天板は4枚の板から成っていて、一番奥のピースには金属板が外からは分からないように埋め込まれていて、今後発売する机上用品をマグネットで固定して使えるようにしています。

シンプルな造形の中に様々な機能を盛り込んだものになっていますが、この2つのデスクのもうひとつの特徴は、木目を美しく見せているというところです。
天板や側面など木目を方向、色合いを合わせて、まるで1枚の板のように見せる技術は永田さんの木工家としての経験の豊富さ、美学の現れで、この机のパーツ全てを同じ木から取ったことで可能になっています。
今回机を作って欲しいと働きかけたのはWRITING LAB.ですが、その企画に対して回転する天板や収納スペースなどのアイデア、工夫は永田さんが出してくれたものでした。
当店にあるラボデスクは1200mm幅ですが、リバーメールには1500mm幅が入っていて、京都でもこの机を見ていただくことができます。

万年筆を使う人の遊び心に訴えかけるものを提案していきたいというWRITING LAB.を象徴する机、ライティングデスク、ラボデスクです。
机と揃いのウォールナットの美しい椅子も用意していて、とてもシンプルでスマートなものになっています。

*ライティングデスク、ラボデスク、椅子は受注生産品です。
近日中に商品ページでご案内させていただきます。

WRITING LAB.革封筒

WRITING LAB.革封筒
WRITING LAB.革封筒

身の回りの書類はほとんどがA4サイズなので、ファイルなど紙を収納するものは、A4サイズだけあればいいと思っていました。

しかし持ち運んで使う紙類、ノートや原稿用紙、レポート用紙などにはB5サイズがまだまだありますし、携帯性と筆記スペースの確保などのバランスを考えるとB5サイズを見直すべきだと思うこともあります。

当店で万年筆を試し書きしていただく、専用の試筆紙があります。
これには万年筆本来の書き味を確かめていただけるように、自然な質感を持った紙を選んでいます。
大きすぎず、でも筆記面をしっかりと確保したB5サイズで、長辺に天のり加工をして、横型で使っていただけるようになっています。
1冊300円という価格もあって、これをメモ用紙代わりに持ち歩いている方が結構おられることは以前から知っていました。そこで、表紙のない試筆紙をきれいな状態で持ち歩くためのものがあればいいなと思っていました。

京都山科のインディアンジュエリーショップ、リバーメールの駒村氏との昨夏から始めた企画WRITING LAB.の活動(異業種でアイデアを出し合いながら、少しずつそれらを商品化する)の中で試筆紙や原稿用紙を収めて携帯することのできる革封筒が出来上がりました。

上質な色気のある革ヴォーノアニリン革をなるべくシンプルに仕立てて、先に商品化しているサマーオイルメモノートと同じ世界観を持たせることが出来たのでとても気に入っています。
革を切り放して貼りあわせただけに見える革封筒ですが、素材、シンプルに見せる作りなどにこだわっています。

手触りの良いものを使いたいけれど、それだけではなくしっかりとした素材でないと口の部分がかっこ悪く広がってしまう。
ステッチを使って縫ってしまうと奥まで紙が入りにくくなってしまう。
シンプルな封筒形状は実用的にもとてもメリットのあることだと思っています。

私は最近、なるべく原稿用紙を使いたいと思っていて、綴じられていない原稿用紙を保管したり、持ち運ぶものに苦慮していました。
しかし、この革封筒ならB5サイズのバラ原稿用紙をスマートに持ち運ぶこともできますし、大学ノートなら3冊くらいならまとめて入れておくことができる。
紙の封筒ならたくさんありますし、PP製の袋状のファイルも市販されています。
そういったものの代わりになるものを上質な革で作ってしまうのがWRITING LAB.の考え方です。
個人的な活動である思考を豊かにしてくれるものであるけれど、他人から見た時のイメージを大切にしたい。
そしてそのものについて語り合えるものを作りたいと思っています。