メディコ・ペンナ~蓮見先生のサイン会~

3年前、コロナ禍で苦しい営業を続けている時に「メディコ・ペンナ」が出版されました。

「メディコ・ペンナ」は神戸北野にある架空の万年筆店で繰り広げられる、調整士である店主やスタッフと、お客様のやり取りを描いた小説です。

テクニカルアドバイザーとして参加させていただいた私の名前を本に記載して下さったこともあって、全国からお客様が来られて本当に有難かった。

当店も私がこの本に関わらせていただいたこともあるし、多くの人が万年筆に興味を持つきっかけになるのではと思って、当店でも積極的に本を販売させていただきました。

当店だけでなく、メディコ・ペンナの単行本は順調に売れて、重版もされました。そして今年9月に、ついに文庫化されました。単行本が売れなければ文庫化されないと思いますので、とてもめでたいことだと思っています。

その文庫化を記念して、10/12(土)14時~16時、蓮見恭子先生のサイン会を当店で開催させていただきます。

予約枠で空いている時間もありますし、飛び込みできていただいても大丈夫ですので、ぜひ多くの方に来ていただきたいと思います。

蓮見先生やポプラ社さんの公認をいただいて、メディコ・ペンナの世界観をイメージしたオリジナルインク「メディコ・ペンナ~北野異空間~」も販売しています。表紙を描かれた名司生さんのイラストをパッケージに使わせていただき、より雰囲気のあるインクに仕上がりました。

この小説のおかげもあって、最近は「ペン先調整」や「ペン先の研ぎ」が、多くの人に知られるようになってきたと思います。

ペン先調整は、たくさんの書き味の良いペン先を見て、その無数のパターンを表現する経験と目とセンスによって成り立つ技術だと思って、日々さらに良くなるように努力してきました。

研ぎはそのペンにさらに個性的な書き味と特別な使用感をもたらすものでなければならないとして、三角研ぎは認知されるようになってきましたが、さらに研ぎのバリエーションが出せるように、お客様の要望を掘り起こして、研究することが必要だと思っています。

メディコ・ペンナは当店にとってそんな励みになる本で、万年筆を知らない人へのアプローチだけでなく、万年筆の業界を活性化させてくれるものだと思っています。

⇒小説・メディコ・ペンナ単行本/文庫本(書籍・文集・ブックカバー・しおり)TOP

⇒蓮見恭子先生サイン会(10/12)予約サイトへ

カヴェコフェア 10/1(火)~10/29(火)

5月にドイツに行った時、カヴェコ本社を訪問できたのは本当に良い思い出で、とても勉強になりました。

日本のカヴェコの総代理店であるプリコの石川社長の紹介ということもあると思いますが、カヴェコのマイク社長は初対面の私たちを歓迎して下さり、社内を案内してくれたり、長時間付き合ってくれました。

マイク社長の姿勢から、世界中で販売しているカヴェコというブランドの販売店、その先にいるお客様への責任の重さをを感じて、ブランドを持つということの心構えを知りました。そして本社を出る時には、カヴェコのペンの魅力にすっかり取り憑かれていました。

カヴェコのコンセプトは、創業1883年という長い歴史の中で生み出された往年のペンのデザインを現代風に復刻して、使いやすく買いやすい価格で販売するということなのだ、とカヴェコ社訪問で理解しました。

ある程度万年筆を使って、ビンテージなども使った経験のある人なら思うことかもしれないけれど、私は古い万年筆のデザインと現代のペンのような安心して使える機能性が融合したものがあればいいと思っていましたが、カヴェコはそれを実践している会社だったのです。

金ペン先で装飾の華やかなイタリアの高価な万年筆もいいけれど、それらと同じように、カヴェコのペンを当店のお客様にも使っていただきたいと思いました。

当店では、10月29日(火)まで当店でカヴェコフェアを開催しています。

先ほど申し上げた、カヴェコのコンセプトが最もよく表れているペンをピックアップして、通常当店で扱っていなかったものも揃えました。

期間中、カヴェコのペンご購入の方に「カヴェコオリジナル缶バッジ」、5,000円以上のペンをご購入で「ドイツBRUNNENレポートパッド」、1万円以上の万年筆をご購入で「カヴェコオリジナルカートリッジケース」をプレゼントさせていただきます。カヴェコを使っていただくきっかけになればいいなと思っています。

カヴェコのペンで代表的なものは、スポーツというモデルになります。

1939年に生まれたペンで、1967年のミュンヘンオリンピックでは公式ペンに採用されたペンです。

独特なデザインのペンですが、キャップを尻軸につけるとちゃんと書きやすいバランスになって、実用性も高いことが分かります。

キャップを閉じると長さが短くなって、M5手帳ともバランスが良い。

カヴェコ全体に言えることですが、どのペンも金属軸のものは、適度な重量感があって、バランスも良く、書き味も良く感じられるので、楽しみながらお使いいただけるモノだと特にお勧めいたします。

カヴェコは基本的にスチールペン先ですが、金ペン先も別売りされています。

アルスポーツ、スチールスポーツ、リリプット、スペシャル、ディアの金属軸の万年筆にそれらを装着することができます。

それがカヴェコらしいかどうかは別として、やはり金ペンにすると書き味がひとつ上のグレードに上がりますし、使っている時の喜びは一層強くなるかもしれません。

もちろん金ペン先、ステールペン先の区別なくペン先調整は書き味良くなるように、使いやすくなるようしっかりさせていただきます。

カヴェコフェア中、カヴェコの長い歴史の中で発売されたペンを収めた書籍も実物をご用意しています。ぜひカヴェコフェアを見にご来店下さい。

⇒カヴェコTOP

研ぎへのこだわりと今の時代のペン

オリジナルペン先を作ったのは、当店のペン先調整、特に研ぎのこだわりを表現したいと思ったからでした。

メーカーのペン先の場合、三角研ぎなどもご依頼があればしていますが、普通の調整ではなるべく削らない最低限の研ぎでその方に合わせるようにします。

それぞれのメーカーの持ち味を残すという意味ではそれが正解だと思っています。

オリジナルペン先は、現在綴り屋さんの万年筆の静謐、漆黒の森に付けて販売していますが、鳳凰のペン先はその雰囲気ともよく合っていると思います。

オリジナルペン先は入荷後、当店で全て調整しています。

今のラインナップはFとMで、研ぎによって5つのバリエーションがあります。⇒フリーページ「オリジナルペン先の字幅・研ぎ」

標準はイリジュウムを大きめに残した研ぎをしていて、私はこれを大陸的な研ぎだと思っています。

やや縦長形状に研がれていて、長刀研ぎに似ています。筆記面が大きいので、ヌルヌルとした書き味をF・Mともに味わうことができます。

ただ線は太めになり、Fで中細から中字、Mで中字から太字の太さになります。

そのため、Fの字幅でもう少し細く書けるものを選べるようにしていて、日本の細字くらいに書ける細字研ぎ出しもご用意しています。

これは日本製のペン先のように、ペンポイントを様々角度から削り込んだ研ぎで、製作に時間はかかりますが、安定して細い線を書くことができます。

三角研ぎは寝かせて書くと太く、ヌルヌルとした書き味が得られ、立てて書くと細く書くことができます。通常、日本製のFからは違いが分かりにくいですよとお伝えしますが、このFは中細から中字の幅があるため違いを感じていただけると思います。

三角研ぎはトメ、ハネ、ハライが表現できて、ペン習字などに向いた、達者な人が書くとそれらしい文字を書くことができるペン先の研ぎです。

三角研ぎは文字が上手い人のための研ぎだと思われている方もおられるかもしれませんが、そうではないと断言します。

私はトメ、ハネ、ハライのないそれほど大きくない丸い文字を書きます。そしてそれを文字がつぶれるくらい太い字幅で書くことを好みますが、太めの三角研ぎで書くとそういった文字も太いながらもなぜかスッキリとそれなりの形に書くことができると思っているので、自分でも愛用しています。

ペン先の研ぎによる書き味の違い、書ける文字の違いを表現したかったので、様々な研ぎが表現できるオリジナルペン先が当店には必要だったのです。

私たちのようにペン先の研ぎにこだわっている、台湾生まれ香港育ちの若い周さんが立ち上げた九星堂という万年筆メーカーがあり、当店でも販売することになりました。

九星堂の万年筆は見るからに新しい感覚で作られている万年筆で、スッキリしたデザインでありながら、凝った作りの吸入方式を持っています。正確に大量(約3.5cc)のインクを吸入することができ、そのメカを操作してインクを吸入するのがとても楽しい万年筆です。

インクの引っ張りの良いエボナイトペン芯を備えた14金ペン先で、ペン先の研ぎにこだわっているだけあって、書き味もとても良いものになっています。このペン先の研ぎにも長刀研ぎへのリスペクトが感じられます。

万年筆が好きで、それを生き方にした若い人が色々なところにいて、その人たちが万年筆の世界に新風を巻き起こしてくれています。

伝統あるメーカーのクラシックな万年筆も魅力があるけれど、その時代の流れを感じるような今のものにも惹かれます。万年筆の世界にもこういう新しい流れがあって、活発な動きを見せています。

⇒綴り屋(オリジナルペン先仕様)

⇒九星堂(きゅうせいどう)

2025年正方形ダイアリーと周辺

2025年版オリジナルダイアリーが出来上がりました。

新しいダイアリーを手に入れたら、スタンプを押したり、すでに入っている来年のスケジュールを書き込んでいきますが、この作業はワクワクする楽しいものだといつも思います。

今年はまだ3か月以上あるけれど、いろんな機会に恵まれたいい年だったので、来年もいい年になってほしいと思いながら書き込み始めています。

いい年だったと思えるようにするにはやはり失敗を恐れずに活発にアクションを起こすことだと今年改めて思いました。

自分から動き出せたら一番いいかもしれませんが、目の前を通り過ぎようとするチャンスを逃さずに飛び乗って行動を起こすことが大切なのだと思います。

それがどういうことかよく考えてから動くことが時には必要なことなのかもしれないけれど、考えているうちに物事は通り過ぎてしまうかもしれない。直感に任せて動くことが私の場合は多いかもしれません。

これも直感によるもので、あっという間に話がまとまりましたが、書き味が選べる下敷きとして知られているTeriw The Matと正方形ダイリーのコラボが実現しました。

Teriwの下敷きの正方形バージョンで、間にL字ポケットがあり最初は吸い取り紙がセットされています。もちろん切り抜きやシールなども挟んでおくことができる、便利な仕様です。

ダイアリーに何かのチケットや切り抜きを貼り付ける場合、一旦この下敷きに挟んで保管しておくこともできる。

正方形ダイアリーに下敷きを使う効果は、安定した筆記面を生み出し書きやすいということ以外にも、スタンプを押す時にも有効です。

大和出版印刷さん、590&Co.さんとの共同企画の正方形ダイアリーですが、コラボ企画は今までしたことがありませんでした。

長年作り続けてきた正方形ダイアリーに新しい風を吹き込ませるためにも、より多くの人にこのダイアリーを知ってもらうためにも、今回のTeliwさんとのコラボは必要で、魅力的な企画だと思いました。

Teriwさんとのコラボにあたって、正方形ダイアリーのロゴを新しく作り、Teriwの正方形バージョンの下敷きとオリジナルダイアリーに入れています。

「KOBE158SQ」地名のようなロゴですが、神戸発祥の158mm×158mmの正方形ダイアリーを中心に多くの人が集い、様々なアイデアが生まれて大きくなって欲しいという願いを込めています。

正方形ダイアリー用の革カバーも若干のリニューアルを加えて2025年モデルとしました。

ベルト部分のホックを昨年のものと凹凸を逆にして、本体側に凹部分を、ベルト側に凸部分を装着しました。こうすることで、筆記時に開いた表紙が机などの上で安定するようにしました。

使う込むうちにゆっくりとエイジングしていい艶を出すミネルヴァリスシオ革は変わらずに採用しましたが、新たに華やかな光沢を持つサドルプルアップレザーでも製作していただきました。

正方形ダイアリーはもちろん私たちも使っていて手放せないものになっているけれど、たくさんの人にとってこのダイアリーがその人のスケジュールや日記を書くことにおいて、なくてはならないものになってくれたらと願っています。

⇒2025年正方形ダイアリー/ダイアリーカバー TOP

4本差しペンケースとファーバーカステルクラシックコレクション

先週に続いてドイツ旅の話になりますが、旅の前半でファーバーカステルミュージアムやお城、ファクトリーを見学する予定でしたが、何かの行き違いで訪問することができなくなりました。

「縁がなかったということか・・」とファーバーカステルのことは忘れようとしましたが、谷本さんは余程残念だったのか、外からでもいいからファーバーカステル城が見てみたいと言うので、中に入れないことが分かっていながらも、わざわざシュタインというニュルンベルグの隣町に行きました。

ファーバーカステル城は写真などから、山の中にあるように思っていましたが、何と住宅街の中の駅から15分程度歩いただけの便利なところにありました。

ファーバーカステル社の敷地の中にファクトリーやミュージアムから少し離れて、本当にお城がありました。

私と松本さんはお城を見て満足していましたが、谷本さんはとても名残惜しそうでした。

だけど中に入れなくても、来て良かったと思いました。世界中に独特の世界観とデザインを持つ筆記具を届けているファーバーカステルの本社を見て、筆記具界最長の250年の歴史の重みを感じました。

万年筆が好きな人の誰もがファーバーカステルには憧れのようなものを持っていて、使ってみたいと思う人も多いようです。所有している人も他の万年筆とは全く違うバランスに苦労しながらも何とか使いこなしたいと思わせる。

クラシックコレクションは一般的な万年筆と比べると細軸で、キャップを尻軸につけると後ろヘビーになり過ぎて書きにくい。

キャップを尻軸につけずに書く方がこの万年筆の場合は良いように思います。

細めの軸のクラシックコレクションだからこそ、手帳のペンホルダーやペンケースに入れやすく、その姿がサマになるということもあるかもしれません。

デザインや機能的にも優れていますが、システム手帳のペンホルダーへ収まった時や、ペンケースに揃いで収まった時の姿に、特にこのペンの魅力を感じます。

クラシックコレクションには揃えて持ちたくなる魅力があります。それはなぜなのか。

ファーバーカステルクラシックコレクションの万年筆、ボールペン、シャープペンシルに統一されたデザイン、特にキャップトップ、クリップのデザインは格調の高さと優雅さを兼ね備えていて、何かに挟んだ時、収納した時にそれが強調されると思います。

オリジナルペンレスト兼用万年筆ケースで4本差しを作ったのも、ファーバーカステルクラシックコレクションを4本収めることができると思ったからでした。

万年筆、ボールペン、シャープペンシルそしてパーフェクトペンシルという、フルラインナップを全て収めることができる。

ファーバーカステルの魅力に取り憑かれた人の夢のペンケースが、ペンレスト兼用万年筆ケースの4本差しだと言っても言い過ぎではないと思います。

⇒フェア開催中(~9/29迄)ファーバーカステルTOP

⇒Pen and message.オリジナルペンケース・4本差し

ファーバーカステルのボールペン

働き出して15年間、立ち仕事をしていました。最初の2週間は脚や腰が痛くなりましたが、慣れてしまうと何ともなくなりました。

15年も立ち仕事をしていたので、いまだに立っている方が頭が冴えるし、ずっと座っていると眠くなってしまいます。

家でもこういった原稿を書く時は立ち机に向かって立って書くことが多い。

ドイツに行ってカヴェコ社を訪問した時、マイク社長がご自分のオフィスを見せてくれました。

机の位置が高く、椅子がありませんでした。いつも立ってデスクワークをしているのだそうです。

立っている姿勢の方が自然だし脚も鍛えられて、立ち仕事の方が体にいいと思っていたので、マイク社長のようにバリバリと仕事をしている人が同じ考えを持っていることが嬉しかった。

立ち仕事だったせいでもあるけれど、仕事中万年筆よりもやはりボールペンを使うことの方が多かったので、色々なボールペンを使って、飽きると換えていました。

新しいボールペンを使うと新鮮な気持ちで仕事ができるし、書くことが楽しくなりました。

ファーバーカステルのペンにはずっと憧れがありました。私には高額でしたが、ある時思い切ってギロシェシリーズのボールペンを買って使い始めました。

まだ30代だった私には気品のある木の軸のクラシックコレクションはまだ憧れの存在で、ギロシェのブラックを選びました。

それでもギロシェを使い始めたら、書くことが嬉しくて仕事がより楽しくなりました。

スプリングが仕込んであってポケットに差しやすいクリップは、無垢の素材でできていて布地を傷めにくくなっています。少し柔らかさも感じる軸の素材の手触りはとても心地良い。ファーバーカステルギロシェのボールペンからは今までのボールペンに感じなかった上質さを感じました。

ファーバーカステルのボールペンの替芯はパーカータイプ(G2規格)で、互換性のある芯が多く、当時滑らかな書き味だと思っていたパーカーの芯に入れ替えたりして使っていました。

店を始めてしばらくした時に、クラシックコレクションエボニーの万年筆を使い始めて、すぐにボールペンも手に入れ、いまだによく使っています。

もう17年近く使っていることになりますが、デザインの良さ、木の温かみのある風合いによる質感、手触りなど、書くたびに嬉しい気持ちになり、特別な筆記具だと思えます。

今当店では、ファーバーカステルフェアをしています。ギロシェシリーズ、クラシックコレクションお買い上げのお客様にファーバーカステルオリジナルの1本差しペンシースと、ドイツ人作家フェルディナント・フォン・シーラッハの小説をプレゼントしています。

シーラッハはドイツ南部の名家の出で、幼い日々の南ドイツの雰囲気や時代背景をこの小説にも盛り込んでいます。

ファーバーカステルも同じドイツ南部に本社があり、シーラッハの小説から、ファーバーカステルのペンがどんなところで生み出されているのか想いを馳せることができると思います。

私たちはペンにただよく書けることだけを求めているのではなく、その背景にあるものにも惹かれるのだと思います。この本を読むことでファーバーカステルのペンによりロマンを感じていただけたらと思っています。

⇒ファーバーカステルTOP

ファーバーカステルフェア 8/31(土)~9/28(日)

そのペンが誕生した国がどんなところで、その国の人たちがどんな暮らしをしているのかということに興味があります。

その国に住む、大富豪や有名人の暮らしはメディアなどで垣間見たりするけれど、自分たちと同じような普通の人たちの暮らしというのは意外に知ることができません。

その国のミステリーを読むと普通の市民の暮らしを垣間見ることができると、アイスランドの作家アーナルデュル・インドリダソンは言っていました。たしかに私は一時期集中的に読んでいたインドリダソンの小説で、未知の国アイスランドの人の暮らしに想いを馳せることができた。

物語になる犯罪は特別な悪人ではなく普通の人がちょっとした弾みで起こすものが多く、ミステリーという分野に分類される犯罪小説を読んでいると、普通の人たちの暮らしを知ることができます。

そういうことを踏まえてドイツ人の作家を調べていて、フェルディナント・フォン・シーラッハを知りました。シーラッハは没落した名家の出の元弁護士で、子供の頃の名家での生活と弁護士生活の中で経験したことをヒントに小説を書いている人です。

箇条書きのようなハードボイルドな簡潔な文章が読みやすく、私の好みに合い何冊も読みました。

シーラッハの小説から、普通の人の生活やドイツの、主にミュンヘン周辺などドイツ南部の様子なども知ることができたし、ドイツのペンと同じようにそこに住む人の暮らしに興味のある方には、ぜひ読んでいただきたいと思いました。

小説の中の名家の暮らしやドイツ南部の様子など、シーラッハの小説を読んでいて、ファーバーカステルを連想させるものがあると思いました。(ファーバーカステルも南部ニュルンベルク近郊にあります。ファーバーカステル家は没落していないけれど)

8/31(土)から、当店でファーバーカステルフェアを開催いたします。

ファーバーカステルを代表するクラシックコレクションと、デザインコレクションを品揃えします。

フェア期間中にクラシックコレクション、ギロシェシリーズお買い上げのお客様に、ファーバーカステル本革ペンシースとフェルディナント・フォン・シーラッハの小説の文庫本をプレゼントいたします。

シーラッハの作品は短編も面白いですが、背景や周辺の描写も楽しんでいただきたいので、長編(と言っても短いですが)をお選びしました。

ファーバーカステルクラシックコレクションは、デザインの良さと上質な素材感から、所有欲を満たし、書くことを楽しくしてくれるものだと思います。

私もそのうちの一人ですが、万年筆のほかボールペン、ペンシルも魅力があり、2本、3本と、セットで持ちたくなる魅力があると思います。

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綴り屋販売会 8/24(土)25(日)

先日中国に行ってきました。この度新たに製作していただいた当店オリジナルペン先と、今後発売予定のオリジナル万年筆がどんなところで作られているのか、上海の万年筆工場を視察するためでした。

上海の浦東空港まで代表のスーさんと工場長のシャーさん、通訳のTさんが迎えに来てくれました。

帰ってきて思うのは、単なる視察で終わらず、短期留学と言ってもいいような学び、気付きも得られたということでした。

仕事のことなど遠慮せずに何でも言ってくれるスーさんとシャーさんとの親交も温めることができました。

飾らない彼らの中国での日常にも触れることができましたし、心を込めてもてなしてくれながらもお客様扱いしすぎずに対応してくれ、居心地の良さを感じました。

代官山の出張販売から、綴り屋さんの漆黒の森と静謐万年筆には当店のオリジナルペン先を付けるようになりました。

世界の人たちがターゲットだと考えた時、やはり日本的なモチーフ、それも格調高い、良い軸に見合ったものが必要でした。万年筆という精神的な支柱にもなるものに相応しいペン先にしたいと思いました。

当店のオリジナルペン先の図案鳳凰はそんな想いを込めてデザインしたもので、良いものができたと思っています。

当店はやっと自分たちのものだと言える、自分たちの調整を象徴できるペン先を手に入れることができました。

エボナイトペン芯を装着したしっかりした書き味の14金のペン先は、初期状態で長刀研ぎに近い形状に研ぎ出されていて、漢字の国のペン先の研ぎになっています。私はこの研ぎの形状からアジアらしさを感じて、同じアジア人として嬉しくなりました。

研ぎの形状は当店でいくらでも変えることができますので、パイロット風に丸く研いだり、ヨーロッパ風に四角く研ぎ出すこともできます。

綴り屋さんの軸に当店オリジナルペン先をつけた姿は、別々の場所で作られたものとは思えないほど調和しています。

モノ作りにすでに国境はなくなっていて、多くのメーカーが他産地で作られたパーツを組み合わせて万年筆を作っています。それが現代のモノ作りのあり方で、中国はそれを黒子になって支えている。

当店のような後発の店にとって難しい日本でのモノ作りですが、若い人がこだわりなく付き合ってくれる海外の会社の存在はとても有り難い。

気が付いたら当店にも世界のモノ作りその流れが来ていました。今までできなかったことができるようになって、明るい気持ちで取り組んでいます。

綴り屋さんの作品販売会を8/24(土)、25(日)に590&Co.さん店内で開催します。

万年筆をお買い上げの場合、ペン先装着、調整は歩いて3分の当店内で承ります。

10時~15時は予約制ですが、15時以降はフリータイムとなりますので、ぜひこのタイミングで実物をご覧下さい。

↓590&Co.さんでご来場のご予約も承っています。ぜひご来場よろしくお願い致します。⇒予約サイト(590&Co.)

*オリジナルペン先を装着した受注生産万年筆朧月の受注締切は8/25(日)までになります。そちらもよろしくお願いいたします。

綴り屋漆黒の森 溜塗テクスチャーPen and message.オリジナル仕様

何かを始めたいと思った時、アイデアは自分の頭の中や、お客様や仲間たちとの会話の中にあることがほとんどでした。ネットの中で探さなかったから、他所のお店と違うことをすることができたのかも知れません。

自分と向き合うことと、人と話すことはアイデアの源泉だと思っています。

そしてそれが実現するには、それを作って下さる方との縁がないと形にはなりません。

今までオリジナル万年筆は縁があった時にいくつか作らせていただきましたが、いずれも海外のメーカーでした。

その方が他のお店が取り組んでいないことができると思ったし、何よりも縁があったからでした。

日本のメーカーさんとはそういう縁ができなかったけれど、良いものがたくさんあることは知っています。そんな定番品の中で、良いものなのにあまり脚光を浴びていない万年筆を当店なりのやり方でご紹介する、ということを続けていました。多くの方に共感していただけるのも喜びだったので、それでもいいと思っていました。

綴り屋さんに対しても、鈴木さんのセンスによるモノ作りが好きだったので、綴り屋さんのモノをそのまま販売していましたが、扱っていくうちにその関係は次のステップに進んでいきました。

今まで綴り屋さんの万年筆には、当店でパイロットのペン先をつけていました。それは当時できる最良の選択だと思っていますが、当店の「オリジナル」ではありませんでした。

当店の万年筆であると表現できるオリジナルペン先を開発しなければ、綴り屋さんの軸と釣り合わないのではないかと思い始めました。

次々と新しいアイデアで作り出される綴り屋さんの万年筆を販売する店として、相応しい仕事がしたい。それがペン先調整を看板に掲げる店らしく、オリジナルペン先を持つ、ということでした。

縁あって、中国の工場の若い代表と出会うことができて、様々な話をしました。もともとは国営企業で働くエリートでしたが、20歳から集め出した万年筆を仕事にしたいと思い、今の仕事を始めました。収入は減ったけれど、好きなことを仕事にすることができて充実していると言っていました。仕事に対する考え方や万年筆作り、仕事の仕方についても共感する部分が多くありました。

中国と言うと私たち日本人の昭和世代には粗悪なものを大量に作るイメージがあるけれど、それも古い話だと分かりました。

中国の人も生活が良くなるにつれて良いものを知って、自分たちが本当に欲しいと思えるものを作らなければいけない、という意識が若い人の間では普通になっています。

最初は私も昭和世代の偏見を持っていましたが、彼と話しているうちに、そしてその工場も某有名イタリアメーカーの下請けで万年筆を作っていることなど色々な実績もお聞きして、この会社であればお任せできると思いました。

中国とのビデオ会議ではそれぞれが次々と意見を出し合って、すごいスピードで物事が決まって行きました。最初は少し驚きましたが、すぐにそのスピードが心地よくなりました。それが彼らのやり方で、全てを話し合い、意見を出し合って、次々と物事が決まっていきます。

実際にペン先を作る時は、実際の現場の方とペンポイントの選択から全て、細かく話し合って作り上げることができました。

ペン先作りのごく初期の段階から関わることができた経験は大きく、これでこそ当店のオリジナルペン先と言えると思いました。出来上がった時は喜びも愛着も今までで一番大きかった。

今回の当店オリジナルペン先お披露目のために、綴り屋さんが当店オリジナル仕様の漆黒の森溜塗テクスチャーモデルを作ってくださいました。

溜塗の表情が出るテクスチャー部分を天冠部分だけにとどめ、よりシンプルにしたものですが、これも鈴木さんとのやり取りで決まりました。

また山吹色の下地に潤み色の表塗りのものは当店オリジナル色で、継続して作りたいと思っています。

ペン先作りにも、軸の仕様にも関わることができたオリジナル万年筆。ペン先調整の店として次の段階に進んだことと、綴り屋さんとの繋がりも表現することができたと思っています。

*来週は出張で不在のため、次回の更新は23日(金)となります

⇒綴り屋 漆黒の森溜塗テクスチャーPen and message.仕様 山吹×潤み色(オリジナル色) オリジナルペン先

ペンレスト兼用万年筆ケース~当店の万年筆のあり方を表現したペンケース~

店を始めたばかりの頃、早く年数が経って創業10年、20年と言いたいと思っていました。

それが何か力になると信じていたのですが、当店は今年の9月で17周年になりますが、必死にもがき続けている状態は変わらず、年数を重ねても変わらないようです。

そんな風に思いながらも、自分たちで作り出したことや最初に始めたことにこだわって、世間の売れ筋の商品を追いかけないようにしようと思ってきました。

自分たちが望んだことではあるけれど、こんな考え方だから当店はいつまで経っても同じ規模のまま、同じ場所にあり続けているのだと思います。

いつも何かを生み出さないといけないという強迫観念はいつも持っていましたが、そうする方が楽しいに決まっている。

私たちが早く年数が経って欲しいと思っていた頃、オリジナル商品として、ペンレスト兼用万年筆ケースという3本差しのペンケースを作りました。

それから10年以上経っても変わらずに作り続けている理由は、万年筆が日常のものであって欲しい、という当店の万年筆に対する考え方を表現した存在だからでした。

持ち運び時はフラップをペンに被せるようにして落下を防止して、机上で使う時はフラップをペンの後ろにしておけばペンケースは開いたままになり、ペンを選んですぐに取り出せる状態になります。

平らなペンケースなので、その上にペンを置くことができ、ペンレストとしても使うことができます。

いかにも万年筆を収めているといったペンケースも良いけれど、なるべくさりげなく肩の力が抜けたものを作りたいと思いました。

このペンレスト兼用万年筆ケースに、新たにエレファント革と4本差しを作りました。

エレファントは新品の時、フカフカした軽い毛羽立ちのある革ですが、使い込んでいくうちに毛羽立ちが倒れてシボが潰れていき、これがとても良い風合いに変化していきます。

今年はエレファントの革に縁があって、ル・ボナーさんにはデブペンケースを作っていただきましたし、A7メモカバーもエレファントで再入荷する予定です。

このペンケースの中にペンを入れて膨らんだ状態のエレファントはなかなか迫力があり、その姿もこのペンケースの持ち味です。

4本差しは、このペンケースのサイズをそのままに、仕切りの数を増やして4本収納できるようにしました。

この4本差しにファーバーカステルクラシックの万年筆とボールペン、ペンシルそしてパーフェクトペンシルを入れることも可能です。

3本差しは、モンブラン149などのオーバーサイズのペンが入るようにしていました。

4本差しに入るのは当然細めのペンになりますが、ボールペンや万年筆でもここに入るものの方が多く、充分なスペースではないかと思いました。

このペンケースを使いやすいと思ってくれる方は多いと思います。

万年筆を日常の道具として使われる方の実情を見て、それに合うものとして当店が作り続けているペンケース、ペンレスト兼用万年筆ケースをご紹介しました。

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⇒Pen and message. オリジナルペンレスト兼用万年筆ケース・3本差し エレファント

⇒Pen and message. オリジナルペンレスト兼用万年筆ケース・4本差し エレファント ダークブラウン