続・理想のインクとの出会い

理想のインクというのはきっと人によって違っていて、誰かが良いというものが自分にも当てはまるとは限りません。実際自分でしばらく使って初めて、理想のインクと言えるのだと思います。

そう考えると理想のインクを見つけるというのは、本当に幸運な出会いなのだと思います。

私はあまりたくさんのインクを使ってきたわけではありません。多少のにじみや裏抜けは気にしなかったので、パイロットのブルーブラックを「万年筆の書き味が良くなるインク」として使っていましたし、ペリカンのブルーブラックを「インク出が多くなり過ぎるペンのインク出を抑えるもの」として使っていました。

インクについては、色よりも万年筆の機能を補う液体として見ていて、その万年筆と最適な組み合わせのものを使おうとしていました。

万年筆が快適に書けるということだけでなく、紙に速やかに馴染んで定着するというのも、感覚的な好みになるけれど私にとっては必要な条件になっています。書く時はぬるぬる書けるけれど、紙の表面に乗ってなかなか乾かない粘度の高いインクは好きではないので、サラサラとしたインクを使いたいと思っています。

そんな時、ローラーアンドクライナーのインクについて考える機会があって、いろんな色を試してみました。

ドイツの片田舎で作られているという、シンプルなラベルが貼られた薬瓶のような素朴なボトルにも惹かれます。

私にとって万年筆は、どんな高価でも特別なものではなく、自然体で扱う日常のものであって欲しいので、気負いのないデザインと価格が安く質の良いローラーアンドクライナーのインクがしっくりきます。

ローラーアンドクライナーのインクは、濃く深みのある色合いのものが多く、最近流行している薄い色ではありませんが、古くからの万年筆好きの人は、インク出の多い万年筆を好むとともに濃厚な色のインクを好むことが多いので、ぜひ試していただきたいと思います。

ライプツィヒアンブラック、バーディーグリースなどは濃い色のインクの代表的な存在で、単純ではない奥行きのある色合いが使っていて楽しい。

古典インクであるサリックスやスカビオサは、濃い色の多いローラーアンドクライナーのインクの中で、褪せたような薄めの色合いでニュアンスが楽しめるインクです。

人気色以外にもいいインクがあるのではないかと改めて探してみると、「パーマネントブルー」と出会いました。その名前から濃厚なブルーだと決めつけていましたが、違っていました。

書いたばかりの時はターコイズに近い鮮やかなブルーをしていますが、時間が経つと紙にスッと沈んで落ち着き、少し薄めのブルーになります。濃淡もきれいに出ます。

色は薄いのに、ヌルヌルと万年筆の書き味が良くなるところも、書いていて気持ちがいい。耐水性はそれほどでもないけれど、書いたものの保存性は他の染料系インクよりも高いそうです。

耐久性は私の用途にはそれほど必要ではないけれど、中にはそれが重要な人もいると思います。

ローラーアンドクライナーパーマネントブルー、今私が一番気に入って使っているインクです。