憧れて、諦めていた 万年筆

憧れて、諦めていた 万年筆
憧れて、諦めていた 万年筆

仕事柄今まで本当にたくさんの素晴らしいペンを見てきました。
店に新しく入ってきたもの、お客様が修理などで持って来られたものなどの中には、強く心が動かされて、強烈に印象に残っているペンがいくつかあります。

モンテグラッパシガーは、茶色のセルロイドを葉巻のように1本の筒に見せたペンで、タバコの葉を模したクリップが付いているとてもかっこ良く、でも当時30歳になったばかりの私にはまだ早すぎると思っていました。

シェーファーコノソアールをベースにした、錫製のボディに竹の模様のアジアシリーズにも強く心を奪われました。
重すぎて書きにくくてもいい、これを自分のペンケースに入れておきたいと思いました。
今しか買うことのできない限定品で、チャンスは今しかないと分かっていましたが、経済的な理由で手に入れることを諦めていました。

同様に強く憧れて、本当に素晴らしいと思いながら手に入れることを諦めていたものに、ペリカン1931ホワイトゴールドがありました。
往年のペリカンの名品No.100の希少なモデルを復刻したシリーズのうちのひとつです。
ホワイトゴールドという名前ですが、本当にホワイトゴールドではなく、ジャーマンシルバーという素材で、スーベレーンの金属パーツに使われています。黒ずむことのない、とても扱い易い実用的な素材です。

吸入ノブはエボナイトで、そのあたりにもとてもこだわりを感じます。
良い万年筆と言えば、大きいものがほとんどですが、このシリーズは数少ない小さくて良いもののひとつで、紳士の万年筆といった風情も私の心を捉えました。
いつかこのペンを使うようになりたいととても強く憧れました。

でもすぐにホワイトゴールドも私の前から姿を消していきました。

それから何年も経って、ホワイトゴールドを見ることもなく、その存在すら忘れかけていました。

しかし先日、どこから出てきたのか、売っていただけますか、という筆記具問屋様の言葉とともに、1931ホワイトゴールドが店に入ってきました。
日頃から、自分の一番欲しいものからお客様に買ってもらうのがプロだと自分に言い聞かせていて、お客様にもそう宣言していました。
万年筆店の店主として、それが正しくお客様から信頼される店主像で、そうありたいと思っていました。

しかし、今回はそんな事は言っていられない状況でした。

憧れて、諦めてしまった万年筆が目の前にやってきたことで、プロとしての意識は薄れてしまい、調整テーブルのペン置きに置いておいた連休の3日間、お客様にお勧めしながらも気が気ではありませんでした。

そして私は結局ホワイトゴールドを手に入れてしまいました。
使い出したホワイトゴールドのキャップは収納時はコンパクトで、キャップを尻軸に差すととても使いやすいサイズになり、少し細めのボディとともに、とても実用的なサイズであることが分かりました。ペン先も硬くとても滑りの良いもので、今はこのペンばかりを使っています。

オリジナルである1931年に作られたNo100の特別バージョンも手に入れて、もう1本同じサイズのペリカンも手に入れて、字幅違いでピッタリのサイズのペンケースに収めて使いたいと私には珍しく夢が膨らんでいます。

新しい万年筆を手に入れると、仕事の時間が今まで以上にとても楽しくなりますが、とても楽しい仕事時間を過ごしています。
万年筆を使って書くことも自分の仕事だと、皆様から横取りしたこの万年筆に誓い、皆様への情報発信にも努力していきたいと思っています。

Liscio-Port(リスシオ・ポルト)メモホルダー

Liscio-Port(リスシオ・ポルト)メモホルダー
Liscio-Port(リスシオ・ポルト)メモホルダー

机の上はいつも片付けていたい方で、なるべく収納できるものは収納して、机の上に物がない状態にしたいと思っています。

作業する机の上が散らかっていると頭の中もゴチャゴチャしてしまい、パニックになりそうになりますので、シンプルに物事を考えるためには机の上の状態は私にとってとても大切なことなのです。

必然的に仕事の仕方も要領が悪いかもしれませんが単一完結型で、ひとつの仕事をやり終えて片付けてから、次の仕事に取り掛かるというやり方で、同時進行的にいくつもの仕事を平行して完結させていくということは私にはなかなかできません。
机の上をきれいに保つにはきちんと置く、あるいはきちんと収納する場所が決まっていて、しかもその出し入れが面倒でないことが必要な条件なのではないかと思っています。
席を立って、キャビネットを開けてボックスを取り出し、さらにファイルを開いて綴じるというアクションが頻繁に必要であるなら、収納することが億劫になってしまいます。
ついでが出た時に一緒に片付けるということになり、机の上が散らかってしまいます。
収納は簡単でいい加減にできるのが望ましいと常々思っています。

大和出版印刷が工房楔の永田さんに製作を依頼して実現した企画、リスシオ1ポルトは、ウォールナットの質感、メモ用紙には少し贅沢なほどのリスシオ1紙の書き味という特長もありますが、その機能性に一番注目しています。

机の上にブロックメモが1つあればとても便利だということを、デスクワークをされる方は経験されていると思います。
かかってきた電話の用件、他の人への伝言メモ、簡単な下書き、糊付け作業の下敷きなど、その役目は多岐に渡ります。

しかし、一番目のブロックメモに書いたことが処理できていないと、メモを捨てることができず、2番目以降のメモに書きにくいということが発生し、ブロックメモの便利さが大変損なわれます。
書いた後そのメモを処理するまでおいておきたいことは結構多く、そんな未処理メモを立てておく場所があるポルトはとても便利だと思います。

他にも、そのやるべきことを書いて、ポルトに立てておく。手帳を開いて確認するようにポルトのその場所に立ててある紙を確認するという使い方もでき、ポルトはデスクワークをされる方にとって、とても便利に使うことができるものだと思っています。

プラチナブライヤーその後

プラチナブライヤーその後
プラチナブライヤーその後

一昨年から使い出して、その魅力に惚れ込んだプラチナブライヤーは、今も大切な愛用の万年筆として活躍しています。
私は葉書を書くことが多いのですが、中にはコート紙のようなインクがなかなか染み込まないもののもありますので、ブライヤーにカーボンインクのカートリッジを入れて葉書書き専用として使っています。

カーボンインクはインク出もスムーズで、万年筆をヌルヌルととても気持ち良い書き味にしてくれますが、ボトルからインクを吸入すると、ペン先の刻印にインクが絡みつき真っ黒になりますので、どうしても気になっていました。

カーボンインクを吸入せずに使うことができるカートリッジの存在はとても有難いものだったのです。
握りも意外と太めで、持ちやすいので、本当はもっと出番の多い役割を与えたいと思っていますが、葉書用に代替のものが思いあたらず、自宅での使用に甘んじています。
しかし、家でのリラックスしたゆったりした気分の時にいつも使っているので、この味わい深い万年筆の実用性を充分に感じながら使うことができているのかもしれません。

ブライヤーのボディは漆を軽く馴染ませただけの簡素な拭きうるしの技法で仕上げられていて、手の油を吸う余地が残されています。
使う込むほどに艶を増す、自分仕様のエージングを楽しむことができるのは、銀軸でもコーティングされているものが多くなってしまった昨今、珍しい存在です。
このブライヤーの万年筆のような、天然の木を最小限の仕上げで製品化するということは、何気ないことに思えますがかえって手間がかかり、勇気のいることだと思っています。
プラスチックと違い、品質のコントロールが難しく、湿度、気温の変化による割れ、狂いなども生じる恐れもあります。

お客様が使い始めてから、問題が起こらないようにするためにも、細心の注意が払われていることを思うと頭の下がる思いですし、いつまでも続けていただきたいと思います。

プラチナのペン先は、よく硬いと言われます。私も使い始める前はそう思っていました。
しかし、あまりにも大雑把な表現だったと今は思っています。初めは硬く感じるけれど、使い込むうちに柔らかく感じるものに変化するという表現の方が近いと思いますし、他社の万年筆のペン先が硬くなってきている現在、あまり硬いほうではないと思っています。

調整の仕方や、2年間の使用により、私のブライヤーのペン先は柔らかいとさえ思える快感を伴った書き味のものに変わってきています。

このブライヤーの万年筆を細字、中字、太字と3本セットで持ちたいという気持ちは、使い出したばかりの頃の思ったことですが、それは今も変っていません。

⇒プラチナブライヤー

オンリーワンの存在感 ラミー サファリ

オンリーワンの存在感 ラミー サファリ
オンリーワンの存在感 ラミー サファリ

子供の頃、家にレゴブロックがたくさんあり、イメージを膨らませてからレゴを組み立てるのはとても楽しく、絵を描かなかった子供だった私にとっては精一杯創造的な遊びだったように思います。
夢中になって組み立てて、せっかく作ったものを崩してしまうのが嫌で、片付けずに母親に怒られたことを思い出します。

国産のブロックも世間にはありましたが、使われている色が少し違い、強くはっきりしたレゴブロックの色調やパッケージから、子供心に外国(デンマーク製)を感じていました。

ラミーサファリを見ていると、子供の頃遊びながら、その色調やパッケージから外国(特にヨーロッパ)を強く感じていた気持ちを思い出します。
子供の頃、せめて中学生か、高校生の時にサファリを知っていればよかったと思います。

書くということを当時から何となく好きだと思っていて、母親の使っていた大きな万年筆、モンブラン149に羨望を感じていました。でもそれは子供の使うものではないと思っていましたので、そんな時にサファリを知っていれば、気後れせずに万年筆を使うことができたかもしれません。

万年筆を使っていればもっと書くことが楽しくなっていて、成績も良かったのではないかと思ったりします。(きっとそんなことはないと思いますが)成績は別にしても、書くことが楽しいと必ず思っていたはずです。

新入学シーズン目前で、プレゼントなどの必要がある方も多いと思いますが、若い人に贈るプレゼントとして、ぜひサファリを選んで欲しいと思います。
もっと高級な万年筆を選ぶこともできるかもしれませんが、サファリには外国を強く感じさせるデザインがあり、日常の筆記具として使いやすい手軽さ、さりげなさがあって、必ず使ってもらえるものだと思うからです。

サファリは軽く、サラサラした書き心地を持っていて、私たちのように様々な万年筆を使ったことがある手が肥えた者でも、これはこれでいいと思える独特の個性を持っています。
それを証拠に、たくさんのコレクションを持つ人でも必ず1本はサファリを持っていますし、毎年発売される限定色を気にされる方は本当に多く、その安定した人気にいつも感心させられます。

安価な万年筆は今では選択肢も多く、サファリより安い価格のものもありますが、その代表格はやはりサファリですし、実用的にも、デザインの上でもサファリを超えるものはまだ存在していないと思っています。

⇒ラミーサファリ

ジャケットのポケットにライフクロス手帳

ジャケットのポケットにライフクロス手帳
ジャケットのポケットにライフクロス手帳

40歳を前にした頃に急に記憶力が悪くなったのを自覚しました。
何かしている時に思いついたこと、気付いたことを後で書き留めようと、作業をそのまま継続して、いざ書こうとしたときに書くべきことを忘れてしまった、ということが何度かありました。
それからメモ帳は、本当に片時も離せなくなり、書くべきことがあるのにメモ帳に書き留めるチャンスがない時などとても焦ります。

もともとメモ帳にロマンを感じていました。
雑誌のインタビューなどで、有名なデザイナーやクリエイティブディレクターがいつもメモ帳に何か書いているといった内容のことを読むことが多く、愛用のエルメスやカルティエ、ロディアやモールスキン、そして万年筆などが紹介されていると嬉しくて何度も読み返します。

彼らは、時には立ったままで、時にはレストランでの食事中に、移動中の飛行機の中で愛用のメモ帳を開いて、万年筆で何かにとり付かれたように浮かんだアイデアを書き留める。
私はせいぜい、通勤中の電車の中や開店前に昼食を食べている時間ですが、万年筆でメモ帳に書き込んでいる時の高ぶった気持ちは有名デザイナーたちと変わりません。
メモ帳、あるいはそれに書き込むことにロマンを感じていますので、どこかに出かけた時、メモ帳で何か良いものが見つかると、その週の仕事はとても楽しくなります。またそこから影響を受けて、良い効果を得られることがありますので、必要な出費だと思っているところがあります。

メモ帳は本当にたくさん使ってきて自分の好みや仕事の仕方に合ったものが分かってきました。
厚いメモ帳はとてもかっこ良く、そこにビッシリと文字が書き込んであったり、スケッチがいくつも描かれていたりしたらと思うと使ってみたくなりますが、いつもポケットに入っていて、すぐに書き込める態勢でいなければいけませんので、厚い手帳は私のメモ帳にはあまり向きません。

革の表紙のちゃんとしたものも、すごく魅力的で惹かれますが、冷静になるようにしています。
いつも汚い文字の走り書きばかりで、何でも書くことのできる遠慮のなさが必要なことが分かっているからです。
それらの条件を踏まえて今のところ愛用しているのは、ライフのクロス表紙の手帳です。
よく似たもので、コクヨの測量野帳がありますが、価格が高価な分、ライフの方が細部で様々な工夫が施されています。
表紙には補強用のクロステープが貼られ、製本の技術が良いので、表紙を中紙に折り目がつかないように、折り返して使うことができますので、立ったままの姿勢でも書きやすい
仕様であることが分かります。
中紙のクリームライティング紙は、にじみ、裏抜けがなく、ペンの滑りも良いので手帳に相応しい紙だと思います。

ライフの営業担当A氏は、荒っぽく使い倒すための手帳と言っておられましたが、まさにそんな扱いでも耐えてくれる、丈夫で使いやすいライフクロス手帳です。
お店ではジャケットに、通勤時はコートのポケットに、ライフクロス手帳を入れて、楽しみながら万年筆で書き込んでいます。

カンダミサコさんのペーパーウェイト発売

カンダミサコさんのペーパーウェイト発売
カンダミサコさんのペーパーウェイト発売

昨年12月、ル・ボナーの松本さんから私と分度器ドットコムの谷本さんにカンダさんを紹介してくださってから、カンダさんは私たちの大切な仲間になっています。
カンダさんの作品、物作りへの姿勢、皆が協力してあげたいと思わせる人柄などとても魅力のある人で、カンダさんは私たちの中にとても自然に溶け込んで、私たちは喜んでカンダさんを迎えています。

私たちはお互いを単なる取引先と考えておらず、相手の成功や利益を考える、それは何と呼んでいいのか分かりませんが、仲間と思っています。
私たちはカンダさんの成功を心から願っていて、勝手に今年はカンダさんの年だと言い合っています。

カンダさんの革製品による企画を積極的に進めたい思って、カンダさんと打ち合わせを進めています。

カンダさんは上手く表現できませんが、きっちりとした物作りをしながら、肩の力が抜けていて、そこが使う人を笑顔にさせたり、明るい気分にさせたりすることもあるかもしれないと思っています。
今までの重厚で、堅苦しい革のステーショナリーをカンダさんは変えることができる、そんなふうに思っています。

既に扱っているペンシースは大変な人気で、多くのお客様が色違いでいくつも買われるものになっています。
19色展開のペンシースというものは、私の知る限り他になく、好きな色や中に入れるペンに合わせて選ぶことができるのが人気の理由だと思います。

そのシンプルでカジュアルな感じのするものが、多くのお客様から求められていたものだということは、日々の接客の中で感じています。

2800円のペンシースをカンダさんはひとつずつご自分で作っていて、丁寧に大切に作られた感じがするところもお客様に伝わっているのだと思います。

当店と分度器ドットコムさん、ル・ボナーさんでペンシースが人気になったため、カンダさんに忙しい想いをさせてしまっていましたが、先日その合間を縫って作られていた新作が入荷しました。

カンダミサコさんの新作は、とてもかわいらしいペーパーウェイトです。

ブッテーロ革でできていて、ひとつひとつがカンダさんによって丁寧に磨き込まれた美しい光沢を持っています。
丸型と角型があり、それぞれ違う色で5色ずつあります。
ペーパーウェイトというと、重くて冷たい金属製のものがイメージされますが、このように革を巻くことによって、手に優しく、他のものを傷つけないものになります。
机にいくつか置いておくととても便利で、特にメモをとりながらの読書などに威力を発揮するのではないかと思います。

⇒カンダミサコペーパーウエイト

コンプロット10を使い始めて

コンプロット10を使い始めて
コンプロット10を使い始めて

その物の良さは一目見た時に分かっていましたし、本当に良い物で楔永田さん渾身の作品だと言ってお客様方にお勧めしてきました。
でも自分では使わないだろうと思っていました。
私にとって万年筆は楽しく文字が書けて、気に入ったデザインであればそれで良く、それは道具としての魅力であり、眺めて楽しむコレクション的な要素はなかったからです。
手帳用、ノート、メモなどの一般筆記用、手紙用などの用途別に各1本ずつを3本差しのペンケースに入れて、たまに組み合わせを変えて入れておけば用は足りますし、それで十分楽しいと思っていました。
コンプロット10は長い間品不足でしたが、やっとバックオーダーが納まり、店で使うことができるサンプルが永田さんのご好意により支給されました。
これは私自身が使ってみた方がいいだろうという営業的な冷静な判断で使ってみることにしました。
今まで万年筆による書くことの楽しさに魅せられて万年筆を使っていて、実用としてのみ万年筆と対峙していましたが、コンプロット10のおかげで違う万年筆の楽しみに気付かされました。
私のように万年筆をコレクションするつもりのない人でも、コンプロット10にペンを入れる時、それぞれのペンのバランスとか、コンプロット10の存在感に負けないペンを入れたいと考え、コーディネートを楽しみたいとさえ思いました。
今の私の実用に徹した万年筆コレクションはコンプロット10に入れると視覚的な統一感や華やかさがなく、とても地味に見えますが、文字を書く前に開いたまま立てているコンプロット10からペンを取り出す前に選ぶ瞬間がとてもスリリングです。
アウロラをお買い上げいただいた保証書の記入にはオプティマ、太い字を書きたければカステルエボニーといった感じで相応しい用途を一瞬で判断してコンプロット10から取り出して書く、それだけのことなのに何でこんなに楽しく思えるのか不思議です。
ル・ボナーの松本さんは万年筆を使い出して、3年と少ししか経っていないのにコンプロット10に持っているペンを入れて、眺めたり、お客様に見せびらかしたりして、万年筆の書く以外の楽しみにも気付いていました。
人生を楽しむ達人にかなり遅れをとりましたが、私も今頃気付いたコンプロット10の楽しみでした。
コンプロット10は、工房楔の永田さんがその美学に合った良材だけを使い、塊を刳り貫いたケースに、鞄店ル・ボナーの店主松本さんが革貼りの内装を担当しています。
杢が派手で美しい一番人気のある花梨と家具、調度品として机上に馴染みやすく味わい深いウォルナット、重量もあって見た目もとても重厚な黒檀、とても美しい真っ白な楓などのバリエーションがあり、使う人のお好みと中に入れるコレクションで選ぶことができます。
最高の良材を刳り貫いて使い、革の内装を施すという、万年筆を10本入れるコレクションケースには贅沢すぎる仕様かもしれませんが、万年筆を使うこと、眺めること、取り合わせることが格段に楽しくなるケースだと知りました。

*コンプロット10は今月末からインターネットでの取り扱いを再開する予定です。もうしばらくお待ち下さい。
*画像は花梨の材です。他には黒檀・ウォルナット・楓があります。

オマス~緊張感と独自性~

オマス~緊張感と独自性~
オマス~緊張感と独自性~

サンプルで見せていただいたオマスに触れた時、手に取るだけで背筋が伸びる茶道具などとの共通点を見ました。
最もオマスらしいミロードのシリーズは、大き過ぎず実用的なサイズで、当店でのオマスのスターティングラインナップの中心とし、その中で素材に特徴のあるものを選んでいます。

ミロードのウッドコレクションはオリーブとココボロの天然木を非常に高い精度で12面体に加工されています。
磨きこまれたスベスベした木の手触り、柔らかい素材であるはずの木に鋭角な印象を持たせた緊張感のある佇まいは、この万年筆を使ってみたいという強く心が動かされる逸品だと思っています。

同じミロードのシリーズのセルロイドは、極限まで削ぎ落として軽く作られた茶道具の棗(ナツメ)のような印象を受けます。
そのペンを手に取ると、想像以上に軽く、大切に扱いたいと思わせるものがありますし、羽のような軽さは自由自在に操れるイメージを与えてくれます。

オマスらしさを抑えたボローニャのシリーズは、奥行きがある柄行きのセルロイドを一般的な円筒形のボディにくり抜いたペンです。
オマスが作る実用的な万年筆といった風情で、他社のペンとの差別化に成功しています。

オマスは1925年創業のイタリアの老舗ブランドのひとつですが、日本での扱い会社がなくなるという不遇な年があり、私の認識からも消えかけていました。
昨年シガークラブなどを運営するインターコンチネンタル商事がオマスの輸入代理店となり、日本でのオマスの供給が再開され始め、有名大型店で販売が開始されました。
オマスがインターコンチネンタル商事によって日本にもう一度輸入されるという話をお客様から聞いていて、私もその動向に興味を持っていました。
お客様方からのリクエストと大阪のシガークラブI氏の口添えなどで、インターコンチネンタル商事K女史の訪問を受け、当店でも扱いが始まりました。
店をしている人はきっと皆思うことですが、私も常々他の店と差別化できる商品を扱いたいと思っています。
天邪鬼な性格のため、他店で売れているものは他店で買うことができるから、当店で積極的に扱わなくてもいいと思ってしまいますので、売れ筋の商品が出た時にそれを追いかけることがあまりありません。
他店ではあまり扱うことのない良いものを扱いたいと思っています。

売れ筋を追いかけるよりも、当店の顧客から求められる当店独自の売れ筋を見つけて、それを追求したいといつも思っているので、今までの私の万年筆の経験からは売れ筋と言えるものではないものの中から、当店だけの売れ筋が生まれています。

オマスは価格も高く一般的ではないけれど、高い完成度と独自の魅力があり、当店のお客様方にはとても相応しいような気がしましたので、オマスを扱うことに迷いはありませんでした。

私自身、使ってみたいと強く思えて、そのペンを手に入れることを考えると元気になれるペンと久しぶりに出会いました。

画像は「ミロードウッドコレクション:オリーブ」です。