モンテグラッパエキストラ1930

モンテグラッパエキストラ1930
モンテグラッパエキストラ1930

もっと早くにこのコーナーでモンテグラッパエキストラを紹介すればよかったと後悔しています。
リシュモングループがモンテグラッパを売却するという話は、当店にとって衝撃でした。
本国のホームページにも当店の名前が取扱店として記されていましたし、当店でモンテグラッパを扱っていることもお客様の間で定着してきた矢先の事でした。
しかし、それよりも何年も前から扱うブランドが変わってもいつも気に掛けてくれて、お世話になったモンテグラッパのブランドコーディネーターリシュモンジャパンの井本さんがこれからどうされるかということが気に掛かりました。
モンテグラッパを扱うことになったのは、井本さんが私と当店をネットで探して来てくれたからでしたし、その縁で大和出版印刷の金賞受賞ポスターをエンブレマで撮影することができました。

当店の新しいショップカードと名刺にはエンブレマの写真を使っています。
あまりにもイメージが高く、実際の価格も高かったモンテグラッパは限られた方のペンだったようで、あまりたくさんは売れていなかったようでした。

その中でネロウーノ、エキストラ1930が当店の売れ筋だったことは、当店に来られるお客様の志向とモンテグラッパというブランドが打ち出すものが合致したからです。
モンテグラッパはペリカン、アウロラなど多くの定番メーカーの万年筆とは一味違ったイメージの良さと、デザインの美しさで他の万年筆から抜きん出ています。
モンテグラッパを使いたいと思う人は、万年筆に妥協のない最高の美しさを求め、そのためには価格の高さに妥協してもいいと思う特別な感覚を持っている人が多いように思います。
売却先はまだ公表されていませんが、美しく、使う人を満足させてくれて、ファンの多いモンテグラッパを扱いたくない会社はないと思います。
力があり、モンテグラッパのイメージを壊さずに大切に売ってくれる会社が新たに扱ってくれるのを願うばかりです。

全ての万年筆の中でお勧めはなんですか、と聞かれることがありますが、そんな時値段に関係なくということでしたら、私の個人的な好みも大きく働いていますが、モンテグラッパのエキストラ1930を勧めるようにしています。

ペン先サイズがオーバーサイズの大きなペン先であるにも関わらず、ボディはそれほど大きくないミディアムサイズで、ペン先とボディの大きさのバランスがとても良いと思っていること、1930年代のセルロイドを復刻させたというオリジナルのセルロイドが渋い色合いを出していて、格調高い美しさを出しているということ、それと使っておられる何人もの方々の満足の声から、この万年筆を当店の定番品の頂点としていました。

エキストラ1930は何本もの万年筆を使って、行くところまで行った人が最後に使うような、万年筆だと思っていますので、これからも手に入る限りお勧めしていきたいと思っています。

デュポン 「ディフィ」ボールペンリフィル

デュポン 「ディフィ」ボールペンリフィル
デュポン 「ディフィ」ボールペンリフィル

ファーバーカステルギロシェのボールペンをずっと愛用しています。
デザインがシンプルでありながら美しいと思っていますし、バランスもよく書きやすいところが気に入っています。
スプリングが内蔵されたクリップが使いやすく、最近では「分度器ドットコムオリジナルCUAエンベループ」のスペシャルポケットに入れて、すぐ使えるようにしています。
とても愛用しているギロシェボールペンですが、不満がないわけではありません。

三菱のジェットストリームの書き味を知ってから、ファーバーカステル純正の芯の書き味が重いことに気付き、筆圧をかけなくても気持ちよく書くことができるものを使いたいと思うようになりました。

パーカージェルリフィルというものが水性顔料インクで筆圧をかけずに書くことができ、ギロシェに入れることができますが、複写用紙を書くときにジェル芯ではインクが出過ぎることがあり、あまり適していない気がします。

やはり油性ボールペンの芯で滑らかなもの、そして海外ブランドのボールペンに切るなどの加工をせずに装着することのできるものが欲しいと思っていました。

以前、何かの用事で加藤製作所を訪れた時に、加藤さんがパーツメーカーからこんなものが送られてきたと言って見せてくれたボールペン芯がありました。
形は世界標準というべきパーカータイプですが、書き味がとても滑らかでした。
性質は水性でもゲルインクでもない油性なのにとても滑らかで気持ちよく書くことができます。
加藤さんはツルツル滑りすぎると言って、あまり興味がなさそうでしたが、私はすぐに採用するべきだと進言したことを覚えています。
それから数年経ち、その芯と再会しました。

デュポンの新シリーズデフィを書かせていただく機会があり、その書き味はすぐにピンときました。
中の芯を確認するとデュポンのロゴが入っていますが、加藤製作所で見た芯そのものでした。

ボールペンはその芯を良いものに交換するだけで、全く別物になったと感じられるほど変わります。
万年筆のインクの色を変えると何か新しいペンが増えたようで嬉しくなるものですが、ボールペンでも同じことが言えると思います。
日本にはジェットストリームなどのとても滑らかに書くことのできるボールペンがありますが、他社の芯との互換がありません。
多くのメーカーが採用しているパーカーサイズで滑らかに書くことができるものをきっと多くの人が望んでいることは、いくら万年筆を使う機会を多くしても、毎日の仕事生活の中でボールペンを使う機会が少なくないことからも想像がつきます

書き味を我慢してボールペンを使われている方のご不満を解消する、ひとつの答えがこのデュポンディフィボールペンリフィルだとお勧めします。

しかし、他社の芯を入れて使うことはメーカーは推奨しておらず、自己責任での使用になるということをご注意ください。

ディフィボールペンリフィル

結婚祝いの万年筆

結婚祝いの万年筆
結婚祝いの万年筆

宮城県の支局で新聞記者をしている従弟が結婚することを知り、何かお祝いを父と一緒に贈ろうということになりました。
その従弟とは歳が離れているので、一緒に遊んだりした記憶があまりありませんでしたが、佐久市の薪ストーブのある家彼の家から元気に小学校に通う姿はよく覚えています。
伯母の葬儀で昨年川上村に帰った時、久し振りに会いました。
スカッとした、とても感じのよい大人になっていて、清清しいものを感じました。
とても忙しい毎日を送っているようで、めったに佐久市の実家にも帰っていないようでしたし、通夜の時も大きな部屋の片隅でパソコンを開いて仕事をしている姿を見ました。
そんな彼の結婚の記念に万年筆を贈りたいということは、父から言い出しました。

そういえばその従弟が新聞社への就職が決まった時、父はラミー2000ブラックウッドのボールペンを贈っていて、新聞記者には筆記具を贈るのが新聞記者を兄に持つ父の流儀のようでした。

万年筆選びを任された私はペリカンM420が頭に浮かびました。
葬儀の時、村から1時間も走らないといけない火葬場へ、彼のビュンビュン飛ばす運転のBMWで行き、その印象もあってドイツ製のものにしたいと思いました。
新聞記者は万年筆で原稿を書いている余裕などなく、パソコンのキーボードに向かっていることの方が多いと思いますが、書くことの象徴である万年筆を贈ることはとても相応しいと思えましたし、やはりM420が彼にとても似合うと思いました。

M420はスターリングシルバーのキャップと尻軸、プレキシグラスの黒ボディで、合わせるとしたら黒いスーツに合う、シャープな印象で、茶系のスーツに合うと思われるキャップ、尻軸がバーメイル、ボディが黄色っぽいトートイス柄のM450の外観とは対照的な印象になっていますが、書き味、バランスなど実用的には同じ仕様になっています。

M800やM1000ではなく、少し小振りだけどアクセサリー的な要素もあるM420を選んだのは、従弟にあると思われる洒落っ気から、真面目なM800よりもM420の方を好むと思ったからでした。

万年筆はその実用性だけでも特別なものに感じますが、それは文房具であると思っています。
しかし、M420のように、キャップがスターリングシルバーになっているようなデラックス版は選ばれる時点で違う、特別感の強いものであると思っています。

父に贈る万年筆

父に贈る万年筆
父に贈る万年筆

65才で43年間勤めた高校をほぼ定年で退職した父の退職後の生活を心配していました。
40年以上も行っていた学校に行く必要がなくなって、毎日手持ち無沙汰に退屈に暮らしていくうちに老け込んでしまうのではないかと思っていたからです。
仕事以外に情熱を傾けるもののない私からすると、仕事のない生活は無為なものに思われ、父は何か新しい仕事を見つけるべきだと思っていました。

ただ、子供の頃からずっと見てきて、教えていた歴史以外(仕事であり、趣味でもあった)にも趣味はかなり多かったと思っていました。
それは今の私が仕事以外にほとんど趣味がないことと対照的なところでした。
父は私が小さな頃から、写真が趣味で日本中写真を撮りに出掛けていましたし、非常にたくさんのカメラを所有していました。
当時写真の趣味は一般的で、多くの男性の間で流行していたようにも思います。
拓本もしばらくの間凝っていて、有名な石碑の拓本をとってきて、表装して何種類も床の間に掛けていました。

その中でも、父が一番長くしていた趣味はテニスだったかもしれません。
毎週末にはテニスに出掛けていて、家にいることはあまりありませんでしたし、凝り性でラケットが何本も家にありました。
様々な趣味を渡り歩く間、ずっと父が静かに情熱を傾けたのは旅行でした。
日本中の様々な所、世界中の主要な都市を学校の長い休みの間に旅していて、その旅行趣味は放浪癖に近いものだと思えました。
学校を定年退職した後の父の楽しみはその旅行でした。
自由に使うことのできる時間をふんだんに使って、車で行き先を決めない旅に出たり、東欧へリュックサックを背負って行き当たりばったりの旅に出たり、東南アジアのリゾート地に出掛けたり、中国に行ったりしています。
自宅にいる父の日常は、午前中は日用品の買物、午後はずっとフィットネスクラブで運動、夕方帰ってきてテレビを観て寝る、という規則正しい生活をしているようです。
そんな父に万年筆の書き味を楽しみながら家でゆっくりとした時間を過ごすのも楽しいと思ってもらえるようなものを贈りたいと思いました。

パイロットカスタムカエデが最適だと思いました。

イタヤカエデという木をボディ材にしていて、使い込んでいくと手の油を吸って光沢が出てくるというところが趣味的だと思いましたし、多くの男性の好むところだと思いました。
通常のカスタム74と違う、柔らかいペン先も書き味が良く楽しめるポイントです。
カスタムカエデなら、通知表付けと採点にカスタム74のEFを使う以外は万年筆を使っていない父にも、その良さが分かるかもしれません。

でも、団塊の世代である私の親世代の人たちの多くは、本当に行動的で人生を楽しんでいるようです。
そんな人生を楽しむ達人である人たちに、万年筆という新たな楽しみを贈るのもいいのではないでしょうか。

パイロット カスタムカエデ