~イタリア限定万年筆黄金時代のモノ作りを再び~マイオーラ~

イタリアデルタ社は1982年に創業して、1990年代中頃から2000年代はじめまでのイタリア限定万年筆ブームをビスコンティ、スティピュラとともに牽引しました。

映画「クローズドノート」では主人公がデルタのドルチェビータ万年筆を使っていたということもあって、ドルチェビータは大ヒットしました。

そんなデルタ社も2018年に社内の紛争などが原因で操業できなくなってしまいました。

当時のデルタの社長ニノ・マリノ氏は何とかデルタを復活させたいと奔走し、2022年に再開した会社がマイオーラでした。

当時は権利の関係で、社長のニノ・マリノ氏でさえもデルタという社名を使うことができませんでした。そこで再スタート成功の願いを込めて、新たにマイオーラという名前をつけました。

マイオーラでデルタ再興を願ったニノ・マリノ氏でしたが、立ち上げ後も資金不足で苦しんでいました。しかし近年出資者が現れて,マイオーラの他に、よりデルタに近いブランド名D-Nも立ち上げています。

今回ご紹介しますマイオーラの筆記具は、デルタの元社長ニノ・マリノ氏がもう一度最もイタリアらしい万年筆メーカーだったデルタを復活させたいと夢を持って取り組んだ最初のシリーズでした。

デルタ復活を願って作った最初のペンだけあり、イタリアらしさに溢れたものだと思います。中でもコスティエラは日本限定で、ボールペンは55本、万年筆は20本のみの生産数となっています。

今ではもう手に入らなくなった美しい色柄の軸。クリップ、キャップリングなど金具の作り込み。妥協なくできることは全てやったと言わんばかりのモノ作りの情熱が感じられるイタリアらしいと思えるペンに、遅ればせながら出会うことができました。

あまりにきれいなペンで、その美しいペンを当店のお客様に今更ながらご紹介したいと思い、今手に入れることができるものだけでもと仕入れました。

万年筆はカートリッジ・コンバーター両用式、ボールペンはG2規格(パーカータイプ)芯のオーソドックスな仕様です。

この美しい軸の万年筆かポールペンをバゲラクラスの手帳のペンホルダーに挟んで使いたい。そう思うモノはなかなかないと思います。それほどモノの力を持ったペンだと思います。

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綴り屋万年筆とペン先の研ぎの時代

綴り屋さんのアーチザンコレクションと静謐が久々に入荷しました。そして今回は、昨年受注製作した朧月万年筆の予備パーツを使って2本だけですが朧月も入荷しました。

今回入荷した朧月には色が濃いものと薄いものがあります。
濃いものは8月に受注製作を承ってお作りしました色と同じで、薄い方はその時よりも薄い色になります。

今回から、静謐・アーチザンコレクションの尻軸の形が変更されていて、キャップポストをした時の安定感が増しています。少しずつこういう改良が常に加えられて、進化しています。

綴り屋さんのペンはデザインも雰囲気ももちろん素晴らしいですが、作り手の鈴木さんのより良いものを作るという意気込みと修理の対応の早さが私たち売り手にとっては頼もしく、安心して販売することができています。

オリジナルのペン先があって、それを調整して販売している当店にとって、綴り屋さんの存在は本当に有難い。当店の東洋風の鳳凰のペン先と、綴り屋さんの軸の雰囲気の相性は良く、図柄もサイズ感も合っていると思っています。

もともと綴り屋さんの軸に付けたいと思ってオリジナルのペン先を開発したという経緯がありましたので、それも当然かもしれません。

ペン先調整だけでなく、オリジナルの研ぎを追究するためにもオリジナルペン先は必要でした。

古い万年筆のペン先を見たり、お客様の要望をお聞きしているうちにするようになったのが三角研ぎです。

三角研ぎ(M)

書く文字への効果は、寝かせ気味にして書くと太く、立て気味にすると細く書けて、漢字など日本の文字を美しく表現できるというものです。

研ぎをする場合、私は書き味の次にその造形の美しさにもこだわりますが、三角研ぎは名前の通り三角の形とメリハリのある線を描くことができるという、実用性と造形の美しさを両立した研ぎだと思っています。

これはどの字幅にも出来る研ぎで、太字だと万年筆でありながら筆ペンのような文字を書くことができ、細字でも線のキレの良さを感じられると思います。

そして最近始めた研ぎで、上弦の三角研ぎというものがあります。

筆記角度を変えた時の変化は三角研ぎよりも少しマイルドで、線の変化も緩やかになります。そのため自然に使いやすく、様々な角度、ペン先の向きで書き味良く使っていただけると思います。書き味と造形の美しさを高い次元で両立するように研いでいます。

古くからあるペン先の研ぎ方で長刀研ぎというものがあります。この長刀研ぎに脚光を当てて、研ぎを前面に出したのがセーラー万年筆の伝説の職人長原宣義先生でした。

長原先生への憧れもあるけれど、私達調整士は研ぎについて考えると、いつか長刀研ぎというものと向き合うことになります。それぞれの調整士が長刀研ぎを自分たちなりに使いやすく表現したものがあって、当店ではそれがこの上弦の三角研ぎなのだと思います。

私は若い頃から万年筆のペン先をルーペで見るのが好きで、本当に色々なペン先を見てきました。

たくさんのペン先を見るうち、いくつものパターンの理想的なペンポイントの形が自分の中ではっきりしてきました。ペン先調整はそれを再現することだと思っています。

研ぎを表現したり、調整で理想的な形、書き味を再現するためにペン先調整をすることは好きでしています。気が付いたら自分が惹かれていた研ぎの微妙な違いを示しながら研ぐことも珍しいことではなくなっていました。

私と同じ仕事をする若い人たちが出てきて、ペン先調整も特別変わったことではなくなってきています。ここまで時代が進むとは思っていませんでしたが、こういう万年筆の面白さのあり方、示し方は自分も求めていたことで、同業の人たちとお互い切磋琢磨していきたいと思っています。

⇒綴り屋TOP

⇒オリジナルペン先研ぎ、筆記見本

ペンラックスフェア 4/1~5/6

PENLUX グランデ ウェーブスカイブルー

作家呉明益氏の「自転車泥棒」という小説が好きで、その世界観に浸りたくて何度も読みました。台湾文学の名作として有名な小説なので、ご存知の方も多いかもしれません。

台湾の小説家は他に好きな人がいます。文学に限らず台湾は独特で繊細な文化を生み出す場所だと思っています。

蓮見恭子先生が当店を取材して書かれた、神戸の万年筆店が舞台の小説「メディコ・ペンナ」が中国語に翻訳されて台湾でも出版されました。やはり本がよく読まれる国なのだと思います。誠品書店という有名な書店もあり、台湾に行った時は私も長居しました。

そんなお国柄なので、万年筆やペンのメーカーがいくつもあります。

当店でも、インキ止め機構を持つ遊び心のある万年筆を作るオーパス88と、ヨーロッパメーカーのOEMを長く請け負って技術力があるツイスビー、メーカーの枠を超えて様々な芯を使用することができるマルチアジャスタブルボールペンのアントウと、オーバーサイズの万年筆を手頃な価格で作っているペンラックスを扱っています。

4/1(火)~5/6(火)まで当店でペンラックスフェアを開催していますので、ペンラックスの充実したラインナップの万年筆をご覧いただけます。

そして期間中ペンラックスのペンをお買い上げの方には、水筒やペンケースが入る縦長の「PENLUXオリジナルバッグ」をプレゼント致します。

ペンラックスの特長は、モンブラン149などと同じ吸入機構を備えたオーバーサイズの万年筆を、美しくカラフルな軸色に繊細な装飾を施して、より魅力的な万年筆に仕上げているところです。

金ペン先もありますが多くはステンレスペン先で、手頃な価格にしていい万年筆をより多くの人に使ってもらいたいという、台湾メーカーらしい志を感じます。

ステンレスのペン先は、大きく柔らかささえ感じるものなので、滑らかに書けるように調整できますし、ステンレスペン先にもフレックス仕様があり、ステンレスペン先でありながらしなりを持つものもあります。

ペンラックスの吸入メカニズムは金属パーツで作られたしっかりしたもので、耐久性の高さもあり、長くお使いいただけるものになっています。

4/25(金)26(土)に開催される「文具事変in仙台」というイベントに、当店も参加します。

590&Co.さんが中心となって、交流のあるお店を集めた今までなかったタイプの文具イベントで、お客様方に楽しんでいただけるものにしたいと思っています。「文具事変in仙台」にもお持ちして、仙台にご来場のお客様にも調整済みのペンラックスを使っていただけるようにいたします。

⇒PENLUX TOP