月: 2010年2月
カンダミサコさんのペーパーウェイト発売
昨年12月、ル・ボナーの松本さんから私と分度器ドットコムの谷本さんにカンダさんを紹介してくださってから、カンダさんは私たちの大切な仲間になっています。
カンダさんの作品、物作りへの姿勢、皆が協力してあげたいと思わせる人柄などとても魅力のある人で、カンダさんは私たちの中にとても自然に溶け込んで、私たちは喜んでカンダさんを迎えています。
私たちはお互いを単なる取引先と考えておらず、相手の成功や利益を考える、それは何と呼んでいいのか分かりませんが、仲間と思っています。
私たちはカンダさんの成功を心から願っていて、勝手に今年はカンダさんの年だと言い合っています。
カンダさんの革製品による企画を積極的に進めたい思って、カンダさんと打ち合わせを進めています。
カンダさんは上手く表現できませんが、きっちりとした物作りをしながら、肩の力が抜けていて、そこが使う人を笑顔にさせたり、明るい気分にさせたりすることもあるかもしれないと思っています。
今までの重厚で、堅苦しい革のステーショナリーをカンダさんは変えることができる、そんなふうに思っています。
既に扱っているペンシースは大変な人気で、多くのお客様が色違いでいくつも買われるものになっています。
19色展開のペンシースというものは、私の知る限り他になく、好きな色や中に入れるペンに合わせて選ぶことができるのが人気の理由だと思います。
そのシンプルでカジュアルな感じのするものが、多くのお客様から求められていたものだということは、日々の接客の中で感じています。
2800円のペンシースをカンダさんはひとつずつご自分で作っていて、丁寧に大切に作られた感じがするところもお客様に伝わっているのだと思います。
当店と分度器ドットコムさん、ル・ボナーさんでペンシースが人気になったため、カンダさんに忙しい想いをさせてしまっていましたが、先日その合間を縫って作られていた新作が入荷しました。
カンダミサコさんの新作は、とてもかわいらしいペーパーウェイトです。
ブッテーロ革でできていて、ひとつひとつがカンダさんによって丁寧に磨き込まれた美しい光沢を持っています。
丸型と角型があり、それぞれ違う色で5色ずつあります。
ペーパーウェイトというと、重くて冷たい金属製のものがイメージされますが、このように革を巻くことによって、手に優しく、他のものを傷つけないものになります。
机にいくつか置いておくととても便利で、特にメモをとりながらの読書などに威力を発揮するのではないかと思います。
コンプロット10を使い始めて
その物の良さは一目見た時に分かっていましたし、本当に良い物で楔永田さん渾身の作品だと言ってお客様方にお勧めしてきました。
でも自分では使わないだろうと思っていました。
私にとって万年筆は楽しく文字が書けて、気に入ったデザインであればそれで良く、それは道具としての魅力であり、眺めて楽しむコレクション的な要素はなかったからです。
手帳用、ノート、メモなどの一般筆記用、手紙用などの用途別に各1本ずつを3本差しのペンケースに入れて、たまに組み合わせを変えて入れておけば用は足りますし、それで十分楽しいと思っていました。
コンプロット10は長い間品不足でしたが、やっとバックオーダーが納まり、店で使うことができるサンプルが永田さんのご好意により支給されました。
これは私自身が使ってみた方がいいだろうという営業的な冷静な判断で使ってみることにしました。
今まで万年筆による書くことの楽しさに魅せられて万年筆を使っていて、実用としてのみ万年筆と対峙していましたが、コンプロット10のおかげで違う万年筆の楽しみに気付かされました。
私のように万年筆をコレクションするつもりのない人でも、コンプロット10にペンを入れる時、それぞれのペンのバランスとか、コンプロット10の存在感に負けないペンを入れたいと考え、コーディネートを楽しみたいとさえ思いました。
今の私の実用に徹した万年筆コレクションはコンプロット10に入れると視覚的な統一感や華やかさがなく、とても地味に見えますが、文字を書く前に開いたまま立てているコンプロット10からペンを取り出す前に選ぶ瞬間がとてもスリリングです。
アウロラをお買い上げいただいた保証書の記入にはオプティマ、太い字を書きたければカステルエボニーといった感じで相応しい用途を一瞬で判断してコンプロット10から取り出して書く、それだけのことなのに何でこんなに楽しく思えるのか不思議です。
ル・ボナーの松本さんは万年筆を使い出して、3年と少ししか経っていないのにコンプロット10に持っているペンを入れて、眺めたり、お客様に見せびらかしたりして、万年筆の書く以外の楽しみにも気付いていました。
人生を楽しむ達人にかなり遅れをとりましたが、私も今頃気付いたコンプロット10の楽しみでした。
コンプロット10は、工房楔の永田さんがその美学に合った良材だけを使い、塊を刳り貫いたケースに、鞄店ル・ボナーの店主松本さんが革貼りの内装を担当しています。
杢が派手で美しい一番人気のある花梨と家具、調度品として机上に馴染みやすく味わい深いウォルナット、重量もあって見た目もとても重厚な黒檀、とても美しい真っ白な楓などのバリエーションがあり、使う人のお好みと中に入れるコレクションで選ぶことができます。
最高の良材を刳り貫いて使い、革の内装を施すという、万年筆を10本入れるコレクションケースには贅沢すぎる仕様かもしれませんが、万年筆を使うこと、眺めること、取り合わせることが格段に楽しくなるケースだと知りました。
*コンプロット10は今月末からインターネットでの取り扱いを再開する予定です。もうしばらくお待ち下さい。
*画像は花梨の材です。他には黒檀・ウォルナット・楓があります。
オマス~緊張感と独自性~
サンプルで見せていただいたオマスに触れた時、手に取るだけで背筋が伸びる茶道具などとの共通点を見ました。
最もオマスらしいミロードのシリーズは、大き過ぎず実用的なサイズで、当店でのオマスのスターティングラインナップの中心とし、その中で素材に特徴のあるものを選んでいます。
ミロードのウッドコレクションはオリーブとココボロの天然木を非常に高い精度で12面体に加工されています。
磨きこまれたスベスベした木の手触り、柔らかい素材であるはずの木に鋭角な印象を持たせた緊張感のある佇まいは、この万年筆を使ってみたいという強く心が動かされる逸品だと思っています。
同じミロードのシリーズのセルロイドは、極限まで削ぎ落として軽く作られた茶道具の棗(ナツメ)のような印象を受けます。
そのペンを手に取ると、想像以上に軽く、大切に扱いたいと思わせるものがありますし、羽のような軽さは自由自在に操れるイメージを与えてくれます。
オマスらしさを抑えたボローニャのシリーズは、奥行きがある柄行きのセルロイドを一般的な円筒形のボディにくり抜いたペンです。
オマスが作る実用的な万年筆といった風情で、他社のペンとの差別化に成功しています。
オマスは1925年創業のイタリアの老舗ブランドのひとつですが、日本での扱い会社がなくなるという不遇な年があり、私の認識からも消えかけていました。
昨年シガークラブなどを運営するインターコンチネンタル商事がオマスの輸入代理店となり、日本でのオマスの供給が再開され始め、有名大型店で販売が開始されました。
オマスがインターコンチネンタル商事によって日本にもう一度輸入されるという話をお客様から聞いていて、私もその動向に興味を持っていました。
お客様方からのリクエストと大阪のシガークラブI氏の口添えなどで、インターコンチネンタル商事K女史の訪問を受け、当店でも扱いが始まりました。
店をしている人はきっと皆思うことですが、私も常々他の店と差別化できる商品を扱いたいと思っています。
天邪鬼な性格のため、他店で売れているものは他店で買うことができるから、当店で積極的に扱わなくてもいいと思ってしまいますので、売れ筋の商品が出た時にそれを追いかけることがあまりありません。
他店ではあまり扱うことのない良いものを扱いたいと思っています。
売れ筋を追いかけるよりも、当店の顧客から求められる当店独自の売れ筋を見つけて、それを追求したいといつも思っているので、今までの私の万年筆の経験からは売れ筋と言えるものではないものの中から、当店だけの売れ筋が生まれています。
オマスは価格も高く一般的ではないけれど、高い完成度と独自の魅力があり、当店のお客様方にはとても相応しいような気がしましたので、オマスを扱うことに迷いはありませんでした。
私自身、使ってみたいと強く思えて、そのペンを手に入れることを考えると元気になれるペンと久しぶりに出会いました。
画像は「ミロードウッドコレクション:オリーブ」です。