カンダミサコ新作「ブッテーロ革ペントレイ」完成

カンダミサコ新作「ブッテーロ革ペントレイ」完成
カンダミサコ新作「ブッテーロ革ペントレイ」完成

カンダミサコさんの新作「ブッテーロ革ペントレイ」が完成しました。
昨年から販売させていただいている、ペーパーウェイト、ブッテーロ革デスクマットとセットで使っていただける同じ素材、同じ色で揃えています。

新作のペントレイは、革を7層も積み重ねた構造のもので、色違いの革をカンダさんがコーディネートして重ねた断面のグラデーションが美しい、センスを感じさせる上質なものになっています。

その仕上げに一番苦労したという断面のグラデーションがこのペントレイの外観上の特長になっていて、見て、触っても楽しめるものは今までなかったのではないかと思っています。

こういった革のペントレイは、器型のものがほとんどで、表面に溝がつけられているタイプの革のものは珍しく、大変便利なペン休めです。
私は毎日使っている万年筆を美術工芸品のように扱っているわけではありませんが、大切にしている万年筆を机の上にそのまま置いたり、硬いものの上に置くことが躊躇われていました。

また同時に使っているペン同士が当たることもとても心乱されることで、そういったことを気にせずに万年筆を使うようにしてくれるペントレイは作業効率も上げてくれます。
揃いのデザインのデスクマットも、3層もの素材を重ねて反り対策としていますが、安定感もある大変使いやすいものになっていますので、併せてお使いいただくとより雰囲気のある机上空間が出来上がります。

ペントレイもデスクマットも、革本来の風合いを残してなめしているブッテーロ革を使用していて、革ならではの風合いが模様となっていますので、私もそうですがこういった素材感を楽しめる方には他にない素材です。

最近とても忙しくされているカンダミサコさんですが、そのお仕事の合間を縫って昨年末フィレンツェとパリに一人旅に出られていました。

ヨーロッパで受けた刺激が、このような美しい作品を生み出したのかと思うと嬉しく思いましたし、クリエイティブな仕事をするために外に出てみることの重要性も感じて、ただ毎日作品作りさえしていればいいというわけではない職人の仕事の難しさ、感性の研ぎ澄まし方を垣間見た気がしました。

全てカンダさんとご主人のお二人で全ての工程をこなしていますので、ひとつの作品が出来上がるまでに時間がかかりますが、これからもカンダミサコさんと共に、ゆっくりと歩いていきたいと思いました。

*カンダミサコさんのデスクマットのサイズ別製が可能になりました。

既製品は、A4サイズですが、以下のサイズを参考にのせておきます。(税込み、送料・手数料別途必要)
B1 100,000円 B2 58,000円 B3 28,000円 B4 15,000円
A1 80,000円 A2 46,000円 A3 22,000円

ご希望の方はメールでお問い合わせ下さい。

自分らしいインク色探し ~当店オリジナルインクについて~

自分らしいインク色探し ~当店オリジナルインクについて~
自分らしいインク色探し ~当店オリジナルインクについて~

当店のオリジナルインクは、冬枯れ、朔、山野草、朱漆の4色があります。
他にも作りたいインクの色はたくさんありますが、最近では非常に多くの色が各メーカーから発売されていますし、お店のオリジナル色も珍しい企画ではなくなっていますので、当店が発売しなくてもいいのではないかという天邪鬼な心が働いてオリジナルインクの色を増やさずにいます。

暮らしの手帳に当店の紹介記事を書いてくださったSさんが、冬枯れインクのことを書いて下さったこともあって、冬枯れは非常に人気があります。

冬枯れの色は、文字は黒であって欲しいと思うけれど、ノートにたくさんの文字を黒で書いてしまうと黒々してうるさくなってしまう、後から見た時に、少し薄めの方が見やすいのではないかという実用的な理由と、侘び寂びを感じさせる日本的な色というイメージからできたものです。
黒の万年筆インクは非常に多くの種類がありますが、その中でも黒とグレーの中間にあたる色で、他にあまりない色だと思っています。

朔は手紙に最も適した落ち着いた温かみを感じさせる色だと思っていて、ずっとお客様への手紙に使っていました。
どの万年筆に入れても、流れが良く、そういったところも気に入っている理由のひとつです。
手帳に書いても、目に優しい色で落ち着いた感じがして、朔ばかり使っています。
これは当店スタッフKが以前セーラー万年筆インクブレンダー石丸氏に作っていただいたもので、月のない夜(朔の日)をイメージして作られています。使っていたところお客様からお問い合わせいただくことが多かったので、お店のオリジナルインクとして使っています。

朱漆はなかなか用途を見つけるのが難しいインクなのかもしれません。
このインクの色を赤と思ってしまうと本当に用途が限られてしまいますので、あまり気にせずにメモなどで使う方がいいのかもしれません。
でも、きつい印象を与えない赤々していない採点用の赤インクを探されている方にもぜひ使っていただきたいと思います。

当店の4色のオリジナルインクは、それぞれ四季のイメージに合わせていますが、朱漆は一番説明が必要で実は春の色です。

朱漆と考えた時に、それは何かお祝いごとがあった時に使う朱塗りの器の色だと思いました。お祝い事、ハレの日は、春にあることが多い。
そういった理由で、朱漆は春の色としています。

最近、色インクを使ってみたいと思うようになって、山野草を使うようになりました。
エンツォ・フェラーリはいつも自分専用の非常に鮮やかな紫色のインクを使っていたと言われていて、そこから少しだけインスパイアされて、エンツォより控えめな色ですが愛用しようと思っています。
秋の高原に咲く花々をイメージした色ですが、使ってみるととても気分が良いと思いました。

自分が書いた文字がきれいな紫色というのがとても新鮮で、このインクで書くことが楽しくて仕方ありません。
インクの色というのは、エンツォのようにそれが自分の色になってしまうと、その色を見ただけで誰が書いたものかすぐ分かるようになります。
そうなるまで使い続ける強い意志と努力が必要ですが、何かそういう色を見つけたい。
当店のオリジナルインクが、多くの人にとって自分の色と思われるようになればいいな、と思います。

⇒Pen and message.オリジナルインク

実用的に意味のある吸入式 ”カスタム823”

実用的に意味のある吸入式 ”カスタム823”
実用的に意味のある吸入式 ”カスタム823”

万年筆は吸入式であってほしいと、万年筆に趣味性などの面白味を求めている方は思うことが多いようです。
それは時計は機械式であってほしいと思うのと一緒で、合理的ではないある種の無駄に意味を見出している、万年筆を使うという行為を大切にしている人の中に多いのではないかと思います。

そういった面白みに大いに理解は持っていますが、私などはそのあたりには無頓着で、カートリッジ・コンバーター両用式の万年筆でも全然平気ですし、インク交換のためにボトルインクを持ち歩かなくて済むカートリッジ式の方が便利に感じてしまう方です。
かと言って、実用一辺倒で、ただ書ければいいというわけではなく、色々なこだわりがあって、書き味の良くないものやインクの出が不十分なものは許し難いとさえ思います。

吸入方式にはあまりこだわらないけれど、書き味にはこだわっている私のような者、万年筆は吸入式であってほしいと思う人、あるいは万年筆はハードに使うための仕事道具だと思われている人など、どの人にもどこか興味を惹かれ、場合によれば心奪われるところがあるのがカスタム823で、どんな人にもお勧めしたい万年筆のひとつだと言えます。

カスタム823は、超実用万年筆カスタム743とほぼ同じデザインの万年筆ですが、一番の違いはその万年筆が国産の万年筆には珍しく吸入機構を備えているところです。

吸入式というと、尻軸を回転させることで胴軸内のピストンを上下させてインクを吸入させるものがほとんどですが、このカスタム823はプランジャー式という少しユニークな吸入方式を持っています。

プランジャー式吸入機構は、尻軸を回してフリーな状態にしてから引っ張り上げ、押し下げることで一気にインクを吸入する、空気圧を利用した吸入方式です。
複雑な吸入メカニズムをボディ内に備えていないため、インクタンクを大きくとることができて、インクを大量に吸入することができます。
その動作は劇的で何度やっても楽しいと、無頓着な私でさえ思います。

大量のインクを吸入することによって、本当に長時間書き続けられるということは、このプランジャー式という吸入方式は万年筆としての面白味だけでなく、実用的にも意味のあることなのです。

パイロットがプランジャー式吸入機構を開発したのは、実はかなり古く1933年に遡ります。
携帯時インクが漏れることのないインク止め機能のある、大量のインクを吸入することのできる吸入機構を備えた万年筆を作りたいというのが開発目標でした。
当時、モンブラン、ペリカンに代表される回転式ピストン吸入機構はあまり広まっておらず、吸入量の少ないゴムチューブを使った吸入機構が一般的でした。一気に大量のインクを吸入することができ、インク漏れのない理想的な吸入方式。
それがパイロットが今から80年近く前に他社に先掛けて開発した吸入機構であり、現在でもその存在意義があり、実用的に充分使いうるものだというところに恐れ入ります。

考えてみると、パイロットのカスタムシリーズは実用を追究したモデルで、全てのモデルには実用的な意味があるラインナップだと思われます。
そのためカスタム823の吸入式に実用的な意味があって当然で、書き味・タフな実用性ともに文句ない性能を持つカスタム743に、実用的な意味での吸入式が備えられたものがこの万年筆なのです。

カスタム823は、万年筆のボディに美しさなどを求める方には受けないかもしれませんが、80年以上前に描いた理想の万年筆像を具現化したパイロットの技術者の夢が詰まった理想の万年筆。
万年筆で書くということを楽しまれる方には一度は手に取ってほしい万年筆だと思っています。

⇒パイロット カスタム823

ファーバーカステル伯爵コレクション

ファーバーカステル伯爵コレクション
ファーバーカステル伯爵コレクション

ほとんどの人がそうかもしれませんが、冬が嫌いで外が寒いと外出したくなくなったり、出勤する時間もダラダラと遅くなったりします。
そんな憂鬱な冬を少しでも楽しくしようと、外出したいと思えるようにしようと思い切って買ったグローバオールのダッフルコートは今では冬の間中手離せないものになっています。

かなり厚手のウールなので重さもかなりありますが、それを差し引いてもメイドインイングランドというロマン、オーソドックスで流行に左右されないデザインはダウンジャケットに戻れない満足感を着るたびにくれます。
イギリスで70年もの間変わらずに作り続けてきたというロマン、そしてファッションのトレンドに流されないダッフルコートのスタンダード、これだけでも着る人を幸せにしてくれて、出不精を緩和してくれます。

こういった古くから変らずに作り続けてきて、スタンダードとなったものに私はとても惹かれます。

その好みは多くの場合、他の物にも当てはまり万年筆も同様です。
今までになかったものを作ろうと奇をてらった斬新なものよりも、クラシックで保守的な作りのしっかりしたものがとても好きです。

作り続けるためにはただ何も変えずに惰性で生産するのではなく、少しずつでも改良してより良いものにしていく努力が必要で、長い年月をかけて作り込まれたものに勝るものはないと思っています。

ファーバーカステルは、世界で最初に鉛筆を製造したメーカーとして有名で、その歴史は250年にも及ぶということですので、筆記具メーカーとしては最古参になります。
9000番鉛筆という濃い緑色の鉛筆が最も有名で、ファーバーカステルを製図・デザインの分野で最も尊敬されるメーカーとしている立役者ですが、その鉛筆のノウハウが存分に生きていると思われる伯爵コレクションの万年筆をご紹介いたします。

伯爵コレクションの万年筆は、他の万年筆のようにキャップを尻軸につけてベストなバランスを保ったり、適度な軸の太さがあって万年筆を寝かせてゆったり書くという書き方ではなく、キャップを尻軸につけずに、万年筆を立て気味にして書くというのが合った使い方だと思っています。

それはもしかしたら鉛筆につながる書き方なのかもしれないと思うと、ファーバーカステルが独自に守り抜いてきた鉛筆作りに対してのこだわりが、万年筆に生きているのだと理解できます。

万年筆を使い慣れた人が、他の万年筆からファーバーカステルに持ち替えて書いた時にとても違和感を感じるかもしれませんが、これがカステルが提案する万年筆だと思うと、そして鉛筆作りで250年間の実績があるということは誰をも黙らせてしまいます。

伯爵コレクションのシンプルだけどとてもファーバーカステルらしい、優雅さを感じさせるデザインは、他の万年筆メーカーが良しとするバランスでは作り得ないもので、そういった点において伯爵コレクションの万年筆はスタンダードでないのかもしれませんが、これこそがファーバーカステルがスタンダードとする筆記具だと思えてしまいます。

私にとって外出したくない気持ちを奮い立たせるものがグロバオールのダッフルコートだとすれば、なかなか気が乗らない仕事に向かわせてくれるのがファーバーカステルの万年筆で、そこに伝統とロマンを感じています。

⇒ファーバーカステルcbid=2557105⇒ファーバーカステルcsid=7″ target=”_blank”>⇒ファーバーカステルcbid=2557105⇒ファーバーカステルcbid=2557105⇒ファーバーカステルcsid=7″ target=”_blank”>⇒ファーバーカステルcsid=7″ target=”_blank”>⇒ファーバーカステル
*画像は伯爵コレクション・グラナディラです。