WRITING LAB.立ち上げとキャンバス地ダイアリーカバー

WRITING LAB.立ち上げとキャンバス地ダイアリーカバー
WRITING LAB.立ち上げとキャンバス地ダイアリーカバー

山科のインディアンジュエリーとステーショナリーのお店「River Mail」との共同企画のブランド WRITING LAB.(ライティングラボ)を立ち上げました。

万年筆を使う人たちが面白いと思うモノ、コトをステーショナリーに限らず形にすることを目的にしたブランドで、私たちが企画するものの中にはどこかに楽しめるような面白い要素を持たせたいと思っています。

そのモノに興味のない人から見ると馬鹿馬鹿しいとさえ思えるところにこだわり、それを優れた技術、良質な素材で真剣に作る。そんなモノ作りを柱にした活動をしていくつもりです。
私たちは既に機能を満たしたものは持っているし、たくさんのモノを見てきました。
そういったモノに溢れた現代の中で、ずっと大切にできて、日常の生活を潤いのあるものにしてくれるモノとは機能一辺倒なものではなく、無駄だけど面白いと思えるモノ、愛でる楽しみも持ち合わせたモノだと思っています。

WRITING LAB.ではそういったモノ、コトを理解して下さる遊び心を持った人のための活動をしていきます。

WRITING LAB.のご提供する商品は、キャンバス製ダイアリーカバーに始まり、岐阜の木工家永田篤史氏製作によるデスクと机上用品、神戸旧居留地にアトリエを構える革職人ベラゴ牛尾龍氏による革製ステーショナリーなどを発売していきますので、楽しみにしていてください。

地図が好きです。

それが世界地図でも、どこかの街の地図でも時間を忘れて見ていられる。
同じ地図でも毎回そんな調子でいつも何か新しい発見があります。
私のように無条件で地図が好きな人って、結構おられるのではないでしょうか?
地図にはロマンがあって、世界の知らない街に思いを馳せてイマジネーションが広がります。
それが毎日使うダイアリーのカバーになったら楽しいと思い、キャンバス地のダイアリーカバーをWRITING LAB.で企画しました。
地図は世界地図と神戸の中心元町、三宮の2種類を用意しています。
7つの海を表示し、旅へ誘うコンパスをあしらっている世界地図。
(ちなみに7つの海とは、北太平洋、南太平洋、インド洋、北大西洋、南大西洋、北極海、南極海の7つだということを私は知りませんでした)

世界の切り取り方に気を配って位置を決めています。
神戸の地図は、元町、三宮の観光スポットを表示しています。
この地図を見ながら神戸の街をブラブラと散策しても楽しいかもしれません。
非常にシンプルな作りのカバーですが、何度も試作を重ねて現在の形になっています。
表表紙と裏表紙の回りこみの部分をかなり深くとっているのは、紙面に段差を無くすための工夫で、これで紙面が平らになります。
外周を回るステッチは中身のダイアリーやノートを一定の位置に保ち、端まで出てこなくなっているので、ノートの小口を痛めません。

キャンバス地のダイアリーカバーは、自分たちで使っているオリジナルダイアリーの良さをもっとたくさんの人に伝えたい、一人でも多くの人にこのダイアリーを使ってもらいたいという想いを持って作りました。

丈夫なキャンバス地なので、気軽にどんどん使っていただける。最初硬い感じがするかもしれませんが、使い込むと柔らかく馴染んできてくれて使いやすくなってきます。
安価なのでダイアリーだけでなく、方眼や横罫のリスシオノートを用途別に複数冊このカバーをつけて使い分けることもできます。

現在、ル・ボナーの松本さんが自ら製作してくれていて11月上旬に完成する革のカバーの上質さも魅力ですが、何も気にせず使い倒せるキャンバス地のカバーもぜひ使ってみてください。


⇒オリジナル商品(ダイアリー等)一覧cbid=2557112⇒オリジナル商品(ダイアリー等)一覧csid=1″ target=”_blank”>⇒オリジナル商品(ダイアリー等)一覧

パイロット キャップレスマットブラック 名作の復刻

パイロット キャップレスマットブラック  名作の復刻
パイロット キャップレスマットブラック 名作の復刻

10年近く前にもマットブラックのキャップレスが存在していました。

当時キャップレスにもカラーバリエーションは存在していましたがあまり斬新な色はなく、マットブラックは異色の存在でした。
カラーバリエーションのあるキャップレスは18金のペン先で真鍮のボディ、マットブラックのキャップレスは14金のペン先にプラスチックのボディでしたので、カラーバリエーションのあるキャップレスとは違う、下位モデル的な存在でした。

しかしその下位モデルが最もデザイン的に優れていたと思っていたのは私だけではなかったと思いますし、当時のパイロットの無難な製品展開の中ではかなり過激に見えていました。

余談ですが、当時のキャップレスには5000円でスチールのペン先とステンレスのシンプルなモデルもありました。

話を戻すと、前のマットブラックが存在していた当時、万年筆とはキャップを開けて使うものだという特別なイメージが強かったためか、キャップレス自体それほど注目されるものではありませんでした。

しかし、時代は変わって万年筆を日常の仕事の中で使いたいという人が増えて、キャップレスが再評価され始めています。
キャップを開ける手間がないため、片手で立ったままでも手帳に書き込むことができる。
ノックしてペン先が出てくるため、万年筆を使っていることを気付かれずに会議や打ち合わせでも万年筆を使うことができるなど、キャップレスならでは用途は数多く存在します。

そういった時代の移り変わりの中で、最も過激でカッコ良かったキャップレス、マットブラックの復刻を望む声は多く聞かれていました。
そんな中で登場したのが、新しいマットブラックです。

ボディはスタンダードのキャップレスと同じになり大型になっていますが、真鍮製でより頑丈になり、ペン先も18金にグレードアップされています。
これらは主に書き味を追求しての結果だと思っています。
キャップレスはボディが細くて軽いアルミ製を採用したデシモの方が、キャップレス本来の目的に合った仕様であると思いますが、書き味においては重量のあるキャップレスの方が18金のペン先の柔らかさを感じることができて上質に感じられます。
携帯性、利便性を兼ね備えて、書き味も良いもの。万年筆を1本だけ所有する人にも万年筆の良さを感じていただける万年筆になっています。
キャップレスはその性格を考えるとカートリッジが合っていると思っていますし、インク量の多いパイロットのカートリッジを使えることはメリットだと思いますが、コンバーターも使うことができます。

普通のキャップ式の万年筆と違い、とてもコンパクトなボディになっているため、コンバーターが使えないと思っている方がおられますが、スクリュー式のコンバーター50とゴムチューブ式のコンバーター20なら使うことができます。
おすすめとしては、棚吊りの少ないコンバーター20がキャップレスには合っていると思っています。
その形状からキャップレスは異端に思われますが、万年筆を使う人を増やすことのできる万年筆のひとつだと思っています。

⇒パイロット キャップレスマットブラック

万年筆で書ける和紙 きよこハウスみつまた紙

万年筆で書ける和紙 きよこハウスみつまた紙
万年筆で書ける和紙 きよこハウスみつまた紙

日本の文字は黒でありたいと思うことがよくあります。

それは例えば月1回のペン習字教室の時や、達筆で豪快なお葉書などを狂言師の安東先生のような方からいただいたような時など、日本の文字はやはりかっこいいと思うし、どうせ日本の文字を書くのなら最も美しく見える黒インクを使いたいと思います。

黒インクは実は結構好みが分かれていて、大きく分けると「真っ黒系」と「濃淡系」に分けることができるのではないかと思っています。

真っ黒系はあまり濃淡の出ない、本当に黒い線を書くことができます。
それを好む人は、セーラー、デュポン、シェーファー、プラチナカーボンインク(使用には注意が必要ですが)などが選ばれることが多いようです。

濃淡系は少し薄めの色合いの黒で、インクが溜まっているところと薄いところの差があって、自然な濃淡が出ます。これを選ばれる人は、当店オリジナルの冬枯れ、パーカー、パイロットの黒などを選ばれることが多いようです。

私は濃淡のでる黒インクが好きでよく使いますが、このインクが似合うような美しい文字を書きたいと思います。
書道の墨の色見本を見ると本当にたくさんの「黒」があって、昔から日本人がその文字を最も美しく見せる色としての黒にこだわってきたことがよく分かります。
皆様がインクの色にこだわるのも、この辺りに理由があるのかもしれませんね。

黒インクが日本の文字を最も美しく見せてくれる色なら、日本の文字を最も美しく見せてくれる紙は和紙だと思います。

和紙の柔らかな質感やインク映えなどはパルプで作られている洋紙のすっきりとしたそれとは違う温かみがあって、深みがあるものです。

和紙は楮などの繊維の長い原料を漉いて紙にしているため、繊維同士が絡み合って大変丈夫で、水に浸かっても乾かすと元通りになると言われています。でもその代わり万年筆のインクではにじんでしまう、そして引っかかりが出るという欠点がありますので、和紙と万年筆の相性は良いとは言えませんでした。

エイ出版のノートアンドダイアリースタイルブックvol.4でも紹介されたことのある、きよこハウスの浦部喜代子さんは美濃和紙の伝統的な技法を守りながら紙漉きを行っている作家さんで、今は神戸にお住まいになられているという縁もあって、その和紙作品を拝見し、試筆させていただける機会に恵まれました。

その書き味とにじみのなさから、数ある浦部さんが漉かれた和紙の中でも最も万年筆との相性の良い和紙として、「みつまた紙」の製品を当店で扱い始めました。
一枚一枚漉いて作られる手漉き和紙は、工場で大量に作られる紙と比べるとどうしても高価になってしまいます。

でも日々の使用ではなく、大切な人への手紙を書く時など、黒インクを入れた万年筆で書くような特別な時間もあっても良いと思います。

カランダッシュ RNX316

カランダッシュ RNX316
カランダッシュ RNX316

万年筆の楽しさは書くことだけではなく、その姿形を愛でたり、感触を確かめたり、素材を感じたりすることにもあるのに、私は書くことについてばかり言及してきたような気がします。

もちろん書くことは万年筆の使用目的ですが、それならば書き味の良いペン先とインクを絶やさずにペン先に送り込み続けてくれる優れたペン芯があれば、その他の部分は何もいらない。
それは万年筆の楽しみの半分でしかないし、万年筆を非常に偏った側面だけでしか評価していないことになるのではないかと、カランダッシュの最新作RNX316を見て思いました。

ペン先を金ペンではなく、ステンレスにして、非常に凝った黒のPVDコーティングのペン先からもカランダッシュのその主張は伝わってきます。

この万年筆の直線と曲線が作り出す複雑な造形や、表面処理、装飾的な刻印などを見ていると時間を忘れるほどおもしろい。
ラインをたどったり、小さな刻印を見つけてその精密さに感心したり。

でも、この万年筆を距離を置いて全体を見てみると、安定感のある普遍的でクラシカルなフォルムなのではないかと、ふと思いました。

ペンはこういう形であって欲しいという、中央辺りにやや太さのある、見ていて安心できる形に、万年筆や他の筆記具のデザインセオリーをちゃんと守って作られた落ち着きを感じます。
そして、斬新だと思える首軸の外し方も実はこのクラシカルなデザインを演出するのに一役かっています。

この万年筆は尻軸を回転させることで、首軸のネジが緩んで外れる構造になっています。
首軸を直接回転させる方式だと首軸とボディの角が合わないということも起きやすく、それを防ぐための工夫だと思われますが、回転させるための尻軸ができたことで、金属の塊に見えそうなこの万年筆をクラシカルな雰囲気にさせているのかもしれないと思いました。

もしかしたら、このRNX316の企画者はボディに尻軸のラインをどうしても入れたかったのではないかと思ったりします。
まあこの万年筆が吸入式で、この尻軸が吸入ノブだったら一番面白いのかもしれませんが、それはあまりにもカランダッシュらしくない。

尻軸を回すことでボディ内側にシリンダーが回り、首軸のネジが緩む。これも何度も回して遊びたくなるような機構で、書く以外の楽しみはここにもあります。
新しいものは好きだけどただ斬新なだけでは好きになれない。
どこか古典的な要素も感じられながら、新鮮な要素があるもの。
そんなものに特に男性は惹かれるのではないでしょうか。

メカ好きの男心(女性でもこういった面白さを理解する人もおられますが)をくすぐる万年筆。それがステンレスの名を冠したRNX316です。