インクが流行っているという。
私の感覚では万年筆ありきで、インクの方に人気が出ているということが理解できませんでしたが、多くの若い人を中心に広がっていることなので、理解できなくてもそれが今世の中で起こっていることとして捉えています。
数年前から若い女性がインクの色見本を見ながらインクを選ぶ光景が当店でも見られるようになり、万年筆の業界としてもとても良いことだと思っていたけれど、台湾、中国、韓国からまで若い女性がインクを買いに来るようになって、本当にブームだと思いました。
ブームで終わらずに定着するだろうかと思っていたけれど、ある中国人の女性がこれはカルチャーなのだと言っていて、もしかしたら定着して、少しずつ形を変えていくものになるかもしれない、と思えるようになりました。
転売するためでなく、自分で使うためとか、コレクションするためのインクを探しに来る人は大歓迎で、色々お話を聞きたいと思っています。
たいていそれぞれインクの色見本帳を作っていて、それを見せてもらうと本当にカルチャーになっているのだと思う。
季節が変わるとインクの色を変えたくなります。
冬は空気膨張の影響で、インクとペンとの相性によってはボタ落ちが起こったり、インク出が多くなることがありますが、夏は気にせずにインクを選べると思います。
自由に好きな色を使ってほしいですが、インクによって多少性質が違うため、用途も考慮した方が快適に使えると思います。
インクは万年筆ほどお国柄がはっきりと出るというものではないけれど、いくつかの種類に分けることができます。
日本のインクはどの万年筆に入れても出が良くて、伸びが良いので書き味が良くなるものが多いようです。紙との相性を気を付けないとにじんだり、裏抜けしたします。
手紙や原稿用紙など裏のないものや、良い紙への筆記に向いています。
日本の紙は良いものが多いのでインクの性質もそれを見越したものになっているのだと思います。
最近新たに発売され始めたインクを私はニューエイジのインクと呼んでいます。
ペリカンエーデルシュタイン、カランダッシュクロマチックインク、ファーバーカステルなどです。
どれも今までの万年筆用インクとは比べ物にならない発色の良さを持っていて、にじみもそれほど多くはありません。流れも伸びも良いので、書き味も良いという、さすがニューエイジのインクです。瓶がとても美しく値段も高いのも特長です。
新しいインクがたくさん発売されてくる中で、私がいつも手に取ってしまうのは、ペリカン・モンブラン・エルバンなどヨーロッパの古くからあるインクであることが多いです。
乾くと紙に沈みますので発色はそれほど強くないのですが、インクと紙が馴染むような自然なインクらしい色合いを持っています。
どの万年筆に入れてもインク出が増えるようなこともなく、どちらかと言うと渋くなる傾向にありますので、手帳書きやインク出の良い万年筆に向いています。
特にブルー系のインクはロングセラーのものがあるのがこのタイプです。
用途によって、使う紙の性質によって、インクを変えると快適に万年筆を使うことができると思います。
ただ純正インク以外を使うことは、自己責任でということになります。
でも私はインクをいろいろ変えて使うことができるのが万年筆の良いところだと思いますし、インクが変わると気分が変わり、その万年筆をまた使いたくなることを経験的に知っていますので、書くことをより楽しむためにたまにはインクを変えることをお勧めしています。