文章を書くノート

文章を書くノート
文章を書くノート

文章を考えるためのノートというのはどんなものがいいのだろうとよく考えています。
その紙面に向かっただけで、文章がスラスラと頭の中から紙に出てくるようなノートが良いと思うけれど、そんなノートは絶対にないし、あっても面白くないような気がします。
どちらかと言うと、一通り苦しんだところを見届けて、限界だと思ったらほんの少し補ってくれて、駄文を少し良く見せてくれるようなノートがいい。

もしかしたら、肩の力を抜いて苦しまずに文章を書いているように見えるかもしれないけれど、私の時間の大半は文章を書くことに費やされています。
週2回のブログ、週1回のペン語り、月1回の雑記から、月1回のWRITING LAB.のブログ、3か月に1回の趣味の文具箱。
どれも最初の頃は気楽に自分の中にあるものを書いていたけれど、最近は力を抜いては書けなくなっている。
始めた後にコトの重大さに気付く方なので、そういうことになっているのかもしれません。
私の場合、どんなものでも手書きしてからパソコンに打ち込むようにしないと書きあげることができません。パソコンのキーボードを前にしていては、書くことどころか校正もできないので、常に紙に向かうようにしています。
その代わりノートへの下書きは完全な状態に近く、そのままパソコンに打ち込めばいいくらいの体裁にしています。

ノートに書いていて思うのは、文章を書きながらずっと後の方の文章を思いついたり、全く他所事を思いついたりすることがよくあるということです。
きっと文章を書くということで、頭が刺激されていろんなことを思いつくのだと思いますが、そういうものはすぐに書き留めないと、すぐにどこかに行ってしまいます。
本文だけでない、そういう他所事を書けるスペースもあるノートがあればいいと思いますが、本当は何でもよくて、ページに縦線を1本入れてページを分割するだけでそれは出来上がります。
リスシオ・ワン正方形ノートの紙面は、正方形のため普通のノートの感覚よりも縦方向に対して横方向が長いように思いますが、そんな時は先ほどのように縦線を入れてページを分割すると便利なので、これから正方形ノートを使われようとしている方にお勧めしたいと思います。

話は脱線するけれど、リスシオ・ワン正方形ノートの5ミリ方眼のものが、方眼は正確なのに、10センチ位になると実際の長さが10センチより長くなることを不思議に思っていました。
大和出版印刷の営業担当の楠さんに聞いてみると、すぐに商品企画の川崎さんが来て説明してくれました。

一般のノートで5ミリ方眼というと「罫線の中心から罫線の中心までが5ミリ」としていますが、リスシオワン正方形ノートは罫線の分は5ミリに入れず、「方眼のマス目(白い部分)が5ミリ」になるようにしているとのことでした。
だから罫線の分、ほんのコンマ数ミリずつズレていく。
正方形ノートの方眼罫をグラフ用紙ではなく、原稿用紙的にとらえているのだと思いますが、そのこだわりが面白いと思いました。

ついでに言うと、リスシオ・ワンは製作された機械が老朽化で廃棄されたため、今では作ることができなくなってしまいました。
その代わりに新世代の紙グラフィーロが開発されていますが、リスシオ・ワンの柔らかい書き味は快感とも言えるし、インクが紙に吸われる感覚も良いので、限りあるものですが、ぜひ使っていただきたいと思っています。

話を戻すと、私たちは良いノートが自分の仕事を変えてくれるとロマンを持っていますが、そのノートへのロマンは、リスシオワン正方形ノートでも感じていただけると思っています。

⇒万年筆に適した紙・Liscio-1(リスシオ・ワン)正方形ノート

ネタ帳~神戸派計画styleノート~

ネタ帳~神戸派計画styleノート~
ネタ帳~神戸派計画styleノート~

文具店で働いていた若い頃、いつもネタ帳を持って歩いていて、休憩時間に一人になれる場所を探しては何か書いていました。
ショッピングセンターのたばこが煙る休憩室やベンチなどで、紙コップのコーヒーを飲みながら万年筆を走らせていました。

書いていたものはホームページのコラムの原稿がほとんどでしたが、今のように書くための時間が確保できる恵まれた環境でなかったにも関わらず、5年以上それに穴を空けずに済んだのは、暇さえあれば何か書きとめていたネタ帳の存在があったからでした。
今のように頭で考えてから机に向かって書くのではなく、何も決まっていなくても無駄にダラダラと書いていたのでロスも多かったけれど、書くことが楽しかったので続けられたと思います。

当時持ち歩いていたのは、モレスキンのラージサイズのノートで、当時はモールスキンと呼んでいました。
今のように選択肢が多くなかったので、私の使い方をするにはモールスキンしかありませんでした。
当時も紙質はあまり上質とは言えず、愛用していたペリカンM800とパイロットブルーブラックのインクの組み合わせでは、盛大に裏抜けしていましたが、気にせずに使っていました。
当時、神戸派計画(大和出版印刷)のstyleノートがあれば、ネタ帳の候補になっていたと思います。

表紙は硬くて不安定な場所でも書くことができるし、製本はこだわって作られていて、丈夫な上に全ページ平らに開きます。
そして何よりも紙が上質で、にじみや裏抜けが少なく、書き味が気持ちいい。
rect style(方眼罫)は当店が試筆紙に使っている紙と同じものを使用していて、インク映えも書き味も自然な紙です。
万年筆の滑りがよくて、細字のかなりカリカリした書き味のペンでも滑らかに書くことができるグラフィーロ紙を使用したgraphilo styleは、にじみも裏抜けも殆どなく、気分よく書くことができます。
ノートと自分との相性が良くて、使い続けそうだと思うと、革のカバーをかけたいと思うのが人情だと思います。
それで性能は変わらないけれど、気分が良いし、このノートをずっと使い続けるという決意表明でもあります
Styleノートにも、ル・ボナーの松本さんが製作に関わった、ノブレッサーカーフを使用した専用の革カバーも最近発売されていて、常に何か書き留めておきたいと思う私のような人のネタ帳に、ぜひセットでお使いいただきたいと思っています。

大人になったら選びたくなるペン~アウロラ88クラシック~

大人になったら選びたくなるペン~アウロラ88クラシック~
大人になったら選びたくなるペン~アウロラ88クラシック~

88クラシックというのは日本でのカタログ名称で、イタリアでは801オッタントットと呼びます。
でもずっとアウロラ88クラシックと呼んできましたので、ここでは88と言うことにします。

先日発売の趣味の文具箱vol.38で88クラシックについて書きました。
店を始めてしばらく経ってから、自分でも、商品としても大切にしてきたペンでしたので、何か万年筆について1本選んで書くということになると、88を選ぶことが多いかもしれません。

88クラシックは黒ボディに金キャップという、今では唯一と言えるようなオールドスタイルなデザインで、そういうところを私は特に気に入っています。
しかし、本当は好みがとても分かれる癖の強いデザインなのかもしれません。
私は40歳すぎまでアウロラと言えば、マーブル模様が大変きれいな上品な華やかさを持ったオプティマがイメージで気に入っていました。

金色の金具はおじさん臭いと偏見に凝り固まっていて、金への抵抗があり、重厚な88クラシックを選ぶという選択肢を全く持っていませんでした。
それは多くの男性が直面する、自分はおじさんにはならないぞという若さへの固執が、金を遠ざけていたのかもしれないと思います。
しかし、歳をとってきて、自分がおじさんということを認めざるを得ないようになると、黒いボディに金キャップのペンが、昔ながらのスタイルのとても堂々としたペンだと思うようになり、金キャップのペンをなるべくなら選びたいと思うようになりました。

本当に好みは加齢とともに変わるものだと思いますが、私もやっと大人になれて、大人に相応しい万年筆である88クラシックを選ぶことができたのだと思います。
最近、男女差で話しを進めることが何となく時代遅れのようになっていて言いにくいですが女性の方の方が年齢に関係なく、きれいなペンとして88クラシックを抵抗なく選ばれる傾向にあるようです。

88クラシックを使ってみて知ったのは、太軸(最大径14mm)で軽め(23g)のボディがとても使いやすいということで、長時間書いていても疲れにくいということでした。
弾力が強めのペン先も安心して筆圧をかけることができますのでそれも疲れにくさに貢献しています。
金キャップばかり気にしてきましたが、88の特長はそのひっかかりのない滑らかなフォルムで、それが数字の8をモチーフにデザインされた88という名前の由来で、モンテグラッパエキストラオットーも8をモチーフにデザインされていますが、それは八角形のボディで、その違いが面白いと思っています。

8月(予定)に88の限定品が発売されます
20数年前に発売されたソーレは、3年ごとに発売されるオプティマベースの限定万年筆で、当時鮮やかなオレンジ色の万年筆というのはあまり目にすることがありませんでしたので、鮮烈な印象を持ちました。
今ではオレンジ色の万年筆も少し増えてきましたが、88の色付きのモデルは珍しいと思います。
ペン先は定番品の14金と差別化されて18金でEF、F、M、Bとあります。限定888本、105,840円(税込)です。ご予約、承ります。

アウロラ360モンヴィゾ

アウロラ360モンヴィゾ
アウロラ360モンヴィゾ

アウロラから突然オプティマをベースにした限定万年筆が発売されました。
世界限定360本、日本入荷数100本という少量の限定品です。

これはアメリカのアウロラの販売店が企画したもののようで、アウロラのホームページにも載っていませんでした。
アウロラのある街トリノの風景をイメージし、トリノの風景に自然の厳しさを与えているモンヴィゾ山の名を冠した万年筆で、360°山々に囲まれて、それらが夏は黒々と、冬は白く見える遠景をこの万年筆は表現しているのかもしれません。
そんなふうに高い山に囲まれた街はどんな感じなのだろうと想像します。
当店のある神戸は、目の前は海、その向こうには対岸の大阪などが見え、背面には裏山と言っていいくらいの六甲山系でトリノの風景とはあまりにも違っています。
雄大な景色を持つトリノは、自動車メーカーフィアットがあることでも知られる工業都市でもあります。
アウロラが興り、発展したのも、トリノが工業都市として栄えたことが背景にあるのだと思われます。
アウロラの代表的で、最も特徴的な万年筆オプティマは1990年代はじめに1930年代のアウロラの万年筆を現代風にアレンジして復刻されたもので、万年筆らしいクラシカルさとイタリアらしい華やかさ、アウロラらしい洗練されたインテリジェンスがミックスされた万年筆デザインの名作のひとつだと言えます。
現代のオプティマ以前にオプティマに似た万年筆はなかったけれど、オプティマ以後オプティマをリスペクトした万年筆を多く目にするようになったのは私の勘違いではないと思います。

1990年代のオプティマのデザインと今のオプティマでも若干の違いはあって、使用しているレジンの色柄とキャップリングの意匠が変わっています。
1990年代のオプティマは3本リングがキャップエンドにあしらわれていて、今のオプティマではそれがよりスッキリとした現代的な1本のリングになっています。
それがデザイン上の一番大きな違いですが、3本リングの方がよりクラシカルな印象を受け、360モンヴィゾは3本リングが採用されています。
定番品のオプティマはペン先が14金で、新品時かなり硬めに感じて、使い込むうちにしなやかなものに変化していきますが、モンヴィゾに使われている18金ペン先ははじめからしなやかな書き味を持っています。

14金と18金のペン先は、実用的に差はないとお伝えすることが多いけれど、最初からしなやかな書き味を持っているのが18金、使い込んでしなやかにしていくものが14金と言えなくもなく、手にしたその時から気持ち良く書くことができる仕様になっていて、専用のレジンを使用した特別なオプティマが360モンヴィゾです。

モンヴィゾは、アウロラオプティマを愛する人が、こうあってほしいと願って、それを実現した万年筆だと思っています。