プラチナ出雲のシリーズは、子会社である中屋万年筆のプラチナ版と言えるものですが、その印象はかなり違っています。
中屋万年筆のシガーやライターモデルは贅肉を削ぎ落としたような洗練されたシンプルなデザインに仕上げられていますが、出雲のシリーズからは力強さのようなものを感じ、対照的なものだと思っています。
グリップ部は誇張したように太く、大きなボディ、尻軸へ向かうほど細くなっていくデザインは握りやすさとバランスを考慮した結果生まれた形なのではないか、キャップを尻軸につけずに書くことを考えたらこういうデザインになったのではないかと思っています。
ペン先は、厚みがあってかなり固めの18金のものが使用されており、使い込むと弾力が生まれ、しなやかに育っていってくれていることが実感できるものになっています。
実際に万年筆を道具として書くことを考えると、柔らかくて馴染みやすいペン先よりも、硬いものの方が使いやすいし、この18金ペン先は非常に書きやすいと多くの方が評価しています。
出雲のベーシックなものは、エボナイトのボディに中屋万年筆の代表的な溜め塗りが施されています。
溜め塗りは、下地に何層にもしっかりと色漆を塗り重ね、その上に黒漆や生漆が一回だけ塗られています。
一回塗りの漆は紫外線を受けると少しずつ透明化していき、年月が経つと下地の色が少しずつ露出してきて、使い手も気づかないほど時間をかけて変わっていってくれます。
首軸やボディの際の部分だけは下地の色がうっすらと透けて見えるようになっていて、それも溜め塗りの特徴で、外観上に良いアクセントにもなっています。
ボディの塗りは中屋万年筆と共通のものが施されていますが、出雲のシリーズからは中屋万年筆と正反対の素朴さのようなものを感じます。
都会的で洗練されたものよりも、道具としての使いやすさを追求した質実剛健さに惹かれます。
作品としての美しさを狙わず、作り手のエゴが見えない道具としての姿に徹した出雲のシリーズに、昭和のはじめに民芸運動を起こした柳宗悦の言った「用の美」を認めます。
出雲シリーズには、白檀塗りなど地方に伝わる様々な塗りを取り上げている高級バージョンもあり、土着のものでありたいという出雲シリーズの考え方、有り方が分かります。