ラマシオンの時計

ラマシオンの時計をつけ始めて3ヶ月ほど経ちました。結婚して25年経って、その記念となるものを形として残しておこうということになり、大きさだけ違えて同じ時計を2つ作りました。

それまで使っていたセイコーの時計は20年くらい毎日つけていたけれど、ラマシオンの新しい時計をつけるようになってから、数日で止まってしまった。

時計屋さんに持ち込んだけれど、直すのはもう難しいとのことで、1年ほど前にこれが最後の修理になりますという最後通告を受けていたので諦めがつきました。

今も裕福ではないけれど、ウチがもっと慎ましく生活していた頃に、妻が苦しい家計をやりくりしてくれてプレゼントしてくれた時計だったので、初心を忘れないためにも無理矢理修理して使い続けていた。

でもその時計は苦しかったときのことを思い出すから妻は好きではないと思っていたことが、時計を諦めたときに分かり、それからラマシオンの時計だけをつけています。

ダグラス革のベルトは、3か月経って自然に艶が出て来始めています。革ブラシで磨いて艶をだそうかとも思いましたが、時計というものの時間を考えると服に擦れて自然に艶が出るくらいゆったりと構えたいと思いました。

シチズンミヨタのムーブメントは結構正確で、1日では誤差も出ず、機械式時計の中ではかなり正確な方なのではないかと思います。日本製のムーブメントへの信頼性は高いと思われますので、シチズンのムーブメントを採用しているのはこの時計にとってアドバンテージだと思います。

バスや電車に乗る時、ペン芯を温めてペン先と密着させる時には必ず時計を見ます。

気に入っている時計はそういう日常のちょっとした時間を楽しいものにしてくれるし、他に同じものをしている人がいない自分だけの仕様だと思うとより嬉しく感じられます。

ラマシオンの吉村さんと作った当店オリジナル仕様の時計もシチズンミヨタのムーブメントを使用していて、安心して毎日使うことができます。

ダイヤル部分には、当店らしい素材として花梨こぶ杢を、ベルトにはこれも当店らしい素材ダグラス革をカンダミサコさんから譲ってもらって使用しています。

どちらも時計にはあまり使われることがなかった素材ですが、万年筆店である当店が発売する時計らしいものだと思います。時計も万年筆などの筆記具も、毎日を楽しくしてくれるものだと思っていて、それを提案することが当店の役割のひとつだと思っています。

⇒ラマシオン メンズウォッチTOP

⇒オリジナル機械式腕時計スケルトン文字盤

タフな道具としての万年筆

ペン先が柔らかくて書き味を楽しめるもの、書いていること自体が楽しいと思える万年筆もいいけれど、タフな道具としての万年筆のあり方に万年筆に惹かれる原点のようなものがあって、そういうものも持っていたいと思います。

いざという時、とにかく書かなければいけない時に、書くことに集中できる万年筆の代表的なものがモンブラン149とペリカンM800だと思っています。

オーバーサイズの149とレギュラーサイズのM800を同列で比較するのは不思議な感じがするかもしれないけれど、モンブランはオーバーサイズの大きさが自然に握れる万年筆だと考え、ペリカンはレギュラーサイズをそう考えたのだと思います。そういう点で、この2本の万年筆は同じ方向性にある万年筆だと思っています。

どちらも書くということだけを突き詰めた硬いタフなペン先と、自然に持てて書くことに集中できる、慣れると代わりが利かないほど馴染むバランスの良い万年筆です。

同じモデルであっても、万年筆は時代を得て少しずつ変化しています。

技術の進歩によって効率的なもの作りがされるようになって、素材は扱いやすく大量生産に向いた素材に変わり、技術もより効率の良いものに変化しています。柔らかいペン先も少しずつ硬いものに変わってきています。

それは万年筆を使う人のノスタルジーから言うと寂しいことだけど、仕方ないことなのだと思います。昔ながらの物作りが理想だったとしても、例えば万年筆が今の10倍の値段になったら誰も買わなくなってしまう。

モンブランは部品点数の少なさから、さすがに効率よく作られているように見受けられ、今の物作りの最先端を行っていると思います。

個体差が少なく、どれも同じように問題なく書ける。だけど、そのままではどこか味気ない。

ペリカンは手間のかかる縞模様を今も作り続けていて、ほとんど変わらない値段で販売しているのはすごい企業努力だと思うし、好感が持てる。

ペン先の状態に関しては、若干個体差が多く、インクの出の多い少ない、書き味の良し悪しにバラつきがある。

現代の物作りでも、ペン先の調整はきっとどうにもならない。

当店は書き味をより潤いのあるものに、そして一番良い状態にすることが今の時代に万年筆店をさせてもらっていることの使命だと思っています。

文豪のように猛烈に文字を書くこともできる2本の万年筆。

モンブランはそのブランドイメージから何となくエリート的な、ステイタスシンボルとしての万年筆のイメージを持ち、ペリカンには少しマニアックな文房具の延長としての万年筆の印象を持っています。私はエリート的なものへの反発心から、ペリカンに好感を持っているのは、昔の、巨人に対しての阪神フアンの心境と同じなのかもしれない。

でも、モンブラン149はステイタスシンボルというだけのものでは決してないし、ペリカンM800は趣味のものというよりも毎日使う完璧な仕事の道具だと思っていて、物作りが変化してもそれに変わりはない。

私たちが万年筆で書きたいと思った原点を振り返った時、こういう万年筆を求めていたのではないかと思い出すもの。

生産工程が変化しても変わらず存在し続けている書くための機能を突き詰めた2本の万年筆。

当店は現代の万年筆に足りないものを少しだけ足して、この2本の万年筆がいつまでも書くことにおいて完璧な機能を備えた万年筆であり続ける手伝いをしたいと思っています。

⇒モンブラン マイスターシュトゥック149

⇒ペリカン M800万年筆

〜自分の色〜 アウロラフラコーニ100インク発売

木工家の工房楔・永田篤史さんはオレンジ色が好きで、永田さんを知る人はオレンジ色を見ると永田さんを思い出すほど、それは自他ともに認めるものとなっています。

好きなオレンジ色のものを揃えて、そのオレンジ色好きを周りに刷り込んで、印象付けてきた永田さんの徹底ぶりがすごいと思いました。

私にはそのくらい好きな色が今までありませんでしたが、ある時からモスグリーンやアーミーグリーンのような色のものに惹かれるようになって、お店で見つけると買うようになりました。

インクもあまり決まった色がなく、ブルーやブルーブラックなどの無難な色の中からそれぞれのペンの用途に合う理想的なインク出になってくれるものを使うという、どちらかというと、インクを色ではなく性質で選んでいました。

私も日常的に、モスグリーン系のオリジナルインクCigarやクアドリフォリオあるいはエルバンエンパイアグリーンを使えるようになるだろうか。

昨年創業100周年を迎えて、限定万年筆を連続して発売していたアウロラが100周年記念インクを発売しました。

万年筆のインクの色として定番の色を押さえながら、それぞれの色の世界観がイタリアの遺跡やアート作品で表現されていて、そちら側からそのインクに惹かれる方もおられるかもしれません。

中身は今回の企画のために新たに作られたものですが、ボトルは1930年代から40年代にアウロラが発売していたものを復刻しています。

前述しましたが、アウロラは昨年100周年ということでかなりの数の限定品を発売しました。それらはもちろん今しか買うことのできない、通常はない仕様のもので素晴らしいけれど、当店としては今年もう一度定番品に立ち戻りたいと思っています。

少し小振りで華やかなオプティマはアクセサリーのようで、女性の方にもお勧めできますし、88は男性の方の一生もののペンの候補として、ぜひ一考して欲しい万年筆です。 

私はイタリアの製品の良さの一つは流行に流されないところだと思っています。各社自分たちの美意識をしっかりと持っていて、デザインを流行とは違うところで作り上げている。

アウロラの万年筆にもそれをいつもそれを感じていて、そういうものが生涯愛用するのに相応しいものではないかと思っています。

⇒AURORA 88ゴールドキャップ

⇒AURORA オプティマ ロッソ

細く書く

「三菱ジェットストリームエッジ」というボール径0.28ミリの油性ボールペンが発売されて、そのデザインの良さもあって、とても興味がありましたのでいくつかの店舗を回って手に入れました。

同じ三菱でも、水性染料インクの0.28ミリは書き味がガリガリと感じられましたが、このエッジは同じ太さなのにヌルヌルと気持ちよく、大変細い線を書くことができます。インクが粘度を抑えた油性ということもあるのかもしれませんが、品切れするお店が続出するほど売れているのも分かる気がしました。

ボールペンや線引きペンの方が細く書くことに関して有利に思われがちですが、私は万年筆の細く書く機能も侮れないものがあると思っています。

国産の極細(EF)などはジェットストリームエッジに見劣りしない細い線を書くことができます。

油性ボールペンのインクは、すぐに紙に浸透しないので、書いてしばらくして手が触れると筆跡がこすれることがあります。でも万年筆のインクの場合は比較的早く紙に浸透してくれますので、しばらくしてこすっても筆跡が流れることはない。これは私の個人的な経験なのかもしれないけれど、そういった万年筆が有利な点もあります。

細く書くことができる万年筆、国産のFやEFのペンについて考えてみました。

例えばパイロットカスタム74とプラチナセンチュリーを比較すると、そのフィーリングや書いた線の感じが違います。

2つのメーカーの金ペン先を比較すると、パイロットはペン先が柔らかめで、プラチナは硬めということになります。

少しマニアックなペン先調整の話になりますが、パイロットは標準の状態で、ある程度ペン先の寄りを強くして調整してあります。そのため軽い筆圧で書くととても細い線を書くことができますが、筆圧がかかると線が太くなります。

プラチナは多少個体差がありますが、適度に寄せてインク出をある程度抑える調整が施されています。

柔らかいペン先は筆圧のわずかな加減で線の太さが変わりますので、柔らかいパイロットの方がシビアな筆圧のコントロールが要求されます。そうなると硬めのプラチナの方が筆圧の影響を受けにくいので、安定して細い線を同じ濃さで書くことができる。細く書くということに関してはプラチナの方が扱いやすいと思っています。

そしてプラチナにはEFよりもさらに細いUEFなるペン先があり、こうなるとその細さにおいて他のメーカーを凌駕します。

細く書く、それもとても細く書くということに関して、以前からプラチナにある程度そのイメージを持っていますが、それは今も変わらず伝統的に受け継がれていることを今回改めて思い出しました。

いろんな好みや用途がありますが、三菱ジェットストリームエッジのような細い線を例えば手帳に書くという用途に関して言うと、プラチナセンチュリーが使いやすく、お勧めできるものだと思っています。

⇒プラチナ萬年筆 センチュリー