以前にもいくつかご紹介しましたが、M5システム手帳に合うペンとして、セーラーのプロフェッショナルギアスリムもいいのではないでしょうか。
コンパクトなボディの両エンドを平らにした、ベスト型と言われる長さを切り詰めたような形のペンで、キャップを尻軸につけると持ちやすい長さになり、硬いと言われる14金のペン先は手帳に小さな文字を書くには適した仕様だと思います。
セーラーと言えば、その工場についてよく思い出します。
工場というものはあまり街中に建っているものではないと思うけれど、セーラー万年筆の工場ほど喧騒から離れたところにある工場は少ないのではないかと思います。
呉の小さな漁師町のようなところにあり、こういう立地とセーラーの万年筆の持ち味に関連性があるのではないかと思っています。
それだけセーラーの万年筆には独特な良さがある。
万年筆作りは、変わり続ける世の中の情勢や様々な条件に左右されず、変わらずに良いものを作り続けることができることも大切だと思います。
セーラーがある呉市天応というところはそれが比較的やりやすい場所なのではないかと、あののどかな風景を思い出して勝手に想像しています。
ところでセーラーの万年筆の特長について、私は長い間よくつかめずにいました。
筆記角度を50~60度で、ペン先をひねらずに紙に当てると書き味がとても良いけれど、そこから外れると引っ掛かりを感じる。それは書き方を指定するものだと思っていました。
それはペンポイントの研ぎの形がそのようになっているからですが、その研ぎは書き味のためだけではないのかもしれないと、セーラーの万年筆を使い込んでみて思いました。
セーラープロフィット21という超定番の、セーラーで最も標準的な万年筆を使ってみて気付くのは、どの万年筆よりも自分なりにきれいな文字が書けるということでした。
パイロットは、どんな方向にも同じように滑らかにペンが走り、気持ち良く文字を書くことができる万年筆が多い。その性能はすごいと思うけれど、書ける文字や書き味という、味の点では、セーラーにより深い味わいを感じます。
その味は書くことが単純に楽しいという、私たちが万年筆を使いたいと思う原点のようなものを思い出させてくれるものでした。
それは14金のペン先でも、スチールペン先の安価なものでも同じで、それぞれがちゃんとセーラーの味を持っているように思いました。
セーラーの味はペン先の研ぎに由来するものだと思っていますが、ボディの太さや重さ、バランスなども関係するのかもしれません。
万年筆にはいろんな楽しみ方があって、微妙な書き味の違いを楽しむのもまた万年筆ならではものです。その言葉で言い表しにくい曖昧なものを捉えることも、大人の万年筆の楽しみ方だと思っています。