ステーショナリーも上質なものになるほど、実用の要素は薄れ、趣味、ファッションに寄っていくものだと思います。だから高価な万年筆に値段分のスペックだけを求めるのは野暮だと思う。
それくらいの万年筆になると、用途ではなく、自分の心に作用するものだと思います。その万年筆がただ鞄の中に、ペンケースの中にあると思えるだけで嬉しくて元気になれるような、心に作用するもの。必要な用途があって持っているのではなく、心に作用して何故か持っていたいと思えるものを扱っていたいと思います。
ただそのモノに直感的に惹かれて思い切って手に入れてみたら、ものすごく書き味が良かったというものが、私が目指す当店の万年筆のあり方ですし、万年筆以外のものでも同じようにしたい。
値段の高いものが書きにくいということは許されない。
書き味などフィーリングの良さへの要求は、趣味の方が実用で使うものよりも高いものが求められている気がします。人は自分が好きなものだからこそより良いものを求めるのかも知れない。趣味も満足させるクオリティを私たちは提供しなければいけない。
先日発売した、オリジナルのM5手帳、アルランゴートのローズゴールド革は、硬そうに見えるかもしれませんが、実はしなやかで手触りが気持ち良い。手に触れることが多い手帳にも合った、質感の良い革です。
この革をカンダミサコさんに見せていただいた時、これで何か作りたいと思いました。
女性に向けてということはもちろん意識していたけれど、素敵な男性が選ばれることもあって、この革の選択は間違っていなかったと思っています。
この手帳とアシュフォードの小口ローズゴールドのリフィルの組み合わせは、キマり過ぎなくらい完璧なコーディネートですが、もうひとつ組み合わせて持ちたい筆記具が限定発売されました。
カランダッシュエクリドールXSローズゴールドボールペンです。
M5手帳のペンホルダーに収めるためにあるような、かなり短めのボールペンです。このモデルは定番でしたが、数年前に廃番になり、姿を消していました。そのモデルがローズゴールド張りで再販されたというのは、やはり今のM5手帳の盛り上がりが理由なのかもしれません。
このローズゴールドのエクリドールXSボールペン、偶然とはいえこのアルランローズゴールドのM5手帳にためにあるようなものだと思いました。
小口ローズゴールドのリフィルを入れたこの手帳のペンホルダーに、ローズゴールドのエクリドールが差さっている。これ以上のコーディネートはなく、完璧に仕上がっていると思います。
手帳の中身をきれいに工夫しながら書くのも楽しく、趣味にもなることだと思いますが、ここまでくると中に何も書かず、ただ持ち歩くだけでも楽しい気分になる。
もちろん書いても楽しいですが、形を完璧に整えて持っているだけで嬉しいものも当店は提案したい。
当店は書き味の良い万年筆を追究しているから、こだわって調整した万年筆を販売しているけれど、こういう使わなくても嬉しい気分になる、遊びの、趣味のものもどんどん扱いたいと思っています。