新しく取り入れた風~2種類の正方形ノートカバー

手帳が好きで、いろんなサイズのものを使っています。毎日持ち歩いている鞄は、何冊もの手帳のおかげでかなり重くなっています。

10月に入ってかなり楽になりましたが、真夏は直射日光の下、第2神明を越える高丸大橋を渡ってバス停まで行くのが辛かった。

荷物を軽くしたいということもありますが、やはり仕事用の手帳はなるべく1冊にまとめた方がいいのではないかと思い始めています。

システム手帳も趣味や用途に分けて使えばいいのだろうけれど、あくまでもメインの綴じ手帳があっての話なのかもしれません。

また原点に立ち戻って、正方形のダイアリーの活用について考えていきたいと思っています。

いつも何か刺激を受けるので、休みの日には乙仲通りをぶらぶらと歩いて、目についたお店に入ります。お店の入れ替わりも激しいけれど古くからのお店もあって、新旧のお店が入り混じるエネルギーを感じる場所です。

創業して15年が経ち、当店に新しい風を取り入れたいと思った時、自然に足は乙仲通りに向いていました。

オリジナル正方形ダイアリーをもっと多くの人に使ってもらいたいと思って、正方形ダイアリー用のカバーを製作してくれるところを探していました。

当店から真っ直ぐ南におりた、乙仲通りにある帆布バックのお店clueto(クルート)さんに布製カバーをお願いしました。cluetoさんは女性向けのバッグを作られているお店で、ずっと以前から知っていました。

全くの畑違いの当店からの依頼に最初は驚かれていましたが、何度かお邪魔して試作をしていただくうちに形が仕上がっていきました。

cluetoさんのカジュアルなカバーは、今まで当店になかったテイストのもので、女性のお客様に使っていただけるものだと思っています。

色展開も6色あり、初回は受注製作となります。神戸ペンショーの終了する11/13(日)までの受注で年内のお渡しが可能です。

そしてもうひとつは、昨年から当店のオリジナルシステム手帳やジョッターを作ってくれている職人さんの革カバーです。

ミネルヴァリスシオという革を使ったベルト付きの本格的なカバーで、彼らしい端正なものができました。

ペンホルダーには、薄いマンスリーダイアリーを入れるならペリカンM800などのレギュラーサイズの万年筆も入り、厚いウィークリーダイアリーを入れるならファーバーカステルクラシックくらいの細めのペンが入ります。

しっかりした万年筆で手帳を書きたい人、革好きの方にも気に入ってもらえると思います。

ミネルヴァリスシオは今流行している革プエブロのベースとなっている革で、この革の表面を擦ってマットな質感にしたものがプエブロです。

ミネルヴァリスシオは滑らかな表面で、プエブロのような劇的な変化をして艶が出てきます。

私もそれなりに齢をとったけれど、15年経つといろんなものが形骸化してきます。ネットではなく足で探した実はすごく身近にいた方々の力を借りて、少しずつ姿を変えて立ち続けたいと思っています。

⇒clueto(クルート)正方形ノートカバー(受注製作予約受付中)

⇒正方形ノートカバー ミネルヴァリスシオ・オルテンシア

⇒正方形ノートカバー ミネルヴァリスシオ・ナポリ

正方形ノートカバー ミネルヴァリスシオ・コニャック

小さなリングノート

ペンショーや出張販売、週末はお客様がおられるので、店にとってはもっとも華やかな時間です。でもそれ以外の時間は準備や蓄積の時間で、店の仕事は地味な仕事の積み重ねで成り立っています。どんな仕事よりも大切な仕事は掃除と片付けだし、年に数回の棚卸しも店を管理する上でやらなくてはならない地味な大仕事です。

店の在庫をチェックして、ネットショップとの誤差をチェックしたりということも日常的にしないといけません。そういった仕事の上に万年筆のペン先調整や販売活動が成り立っています。

毎日の地味な仕事の時に決まって書き込む小さなメモ帳があればとても便利で、役に立つと思います。

ダイアリーやシステム手帳のような立派なものはこの場合使いにくく、気にせずに何でも書き込んでおけるものがいい。そしてそうやって書き込んだものは後で見返して役に立つことがあるので、残しておけるノート形式のものがいい。

リングノートだと折り返して開きっぱなしにして作業することができるので、こういった用途にはより向いていると思います。

そんな小さなリングノートはいくらでもあるけれど、少し良いものを使いたい。

Kデザインワークスの革表紙ノートは、A5とA6サイズのリングノートで、表紙の素材が柔らかい革でできています。使い切ったら表紙はそのままで中身を入れ替えてくれるサービスもあります。

本当に日常的によく使うものなので、贅沢な感じもするけれどこれくらいこだわってもいいのではないかと思います。

書いた後、切り離せるメモ帳も時には便利です。

切り離したメモを手帳に挟んでおいて後で転記したり、人に伝言を渡したりする。こういうメモは間違いのないようにするためのものだからケチってはいけない。どんどん使って、どんどん切り離したい。

当店が以前から作り続けている、革表紙のメモというものがあります。

土台にはとても厚くて硬いサマーオイル革を、表紙には柔らかくてめくりやすいミネルヴァボックスの革を使用しています。適材適所の革を使ったメモ帳です。

革表紙のメモの紙は試筆紙と同じものを使っているので、実は万年筆でも使いやすい。

ミネルヴァボックスはエージングする革で、使い込むと劇的に艶が出ます。

革を切りっ放しただけの縫製のないシンプルなメモは、カンダミサコさんが作ってくれています。鞄職人で、10本用ペンケース「モルトペンネ」も作られているカンダミサコさんがこのメモ帳の革を切ってコバを磨いてくれていると思うと、もったいないような気もします。

先日この革表紙のメモがお客様との筆談でとても役に立ちました。革製の上質な感じが丁寧な気がしました。手話ができたらもっと良かったのだけど、筆談も楽しかった。

ダイアリーとかシステム手帳などは華やかな存在だけど、一番よく使うのは筆記具を気にせずに書けるこういうメモ帳なのかもしれません。

日常的に使うものに少し良いものをご提案したいと思います。

⇒Pen and message.革表紙のメモ

⇒MUCU革表紙リングノートSサイズ

⇒MUCU革表紙リングノートLサイズ

ドーフィン革レザーケース・Mサイズ登場

流行のものは仕入れたらすぐに売り上げになってくれるのでとても有難いですが、確保するのがとても難しい。無視はできないけれど、そういうものばかりを追いかけていたくない。

そういう流行のものは来年も需要があるかどうか分からないので、なるべく無いものとして営業できたらと思います。

でもやはり、売れた時に喜びを感じるのは自分たちで考えたオリジナル商品です。形にするまでには時間も労力もかかるけれど、これほど楽しいことはないと思います。

そういうオリジナル商品と、古くから販売されているメーカーの定番万年筆や筆記具と合わせて提案するのが当店の王道のパターンになっています。それは既存の定番品に改めて注目してもらえるように、15年間当店なりに試行錯誤して取り組んできたことでもあります。

当店オリジナルの1本差しペンケースで、レザーケースSというものがあります。細めで、ボールペンを入れるのにちょうどいいサイズです。

私はペンケースに収める時、ペンのクリップが広がらないよう、なるべくなら何も挟みたくない。上着のポケットなどに安心して挟むことができるペンは、クリップにつなぎ目がない無垢の素材で、スプリングが仕込まれているファーバーカステル伯爵コレクションくらいです。

伯爵コレクションのクリップの効果は絶大で、本当によくできていると思いますが、そういうボールペンばかりではありません。

愛用のボールペンをこのケースに入れて、クリップで挟まずにポケットに入れて持ち運びたい、それは美しい形がいい、と考えてまずレザーケースSを企画しました。Sは通常よりスリムなサイズ感のために敢えてSと最初から付けました。

そのレザーケースに、太軸の万年筆も入れることができるMサイズを作りました。

レザーケースMはモンブラン149がピッタリ入るサイズですが、底が閉じてある形状なのでモンブラン146、ペリカンM800などのレギュラーサイズの万年筆もしっかりホールドしてくれます。

ペンケースというより、ケースもペンの一部として考えて、ケースから取り出すところから書くための所作と考えています。

このケースには、張りがあって丈夫なドーフィンという革を使っていますが、この革の裏が適度に柔らかく毛足が長めなこともあって、ペンを適度にホールドしています。

最近は、使い込むと艶が出て変化していくタンニン鞣しの革が流行していますが、ドーフィンのようなクロム鞣しの革は傷がつきにくく、いつまでも美しく使うことができます。そして一番違う点は、クロム鞣しの革は銀を黒く変色させないところです。

ドーフィンという今まで文具系ではあまり使われなかった革を使ったというのも天邪鬼な当店らしいと思います。流行から外れるけれど、定番の革として、ドーフィンレザーのような素材も使っていきたい。

こういうものを発売することができるのも、私たちの考えに賛同してくれて、几帳面に、手間を惜しまず美しい仕事を心掛けてくれている職人さんの腕があるからで、心から有難いと思っています。

⇒Pen and message. レザーケースMドーフィンレザー

⇒Pen and message. レザーケースSドーフィンレザー

ラマシオンの時間を演出する時計

10月5日、6日は、狂言師安東伸元先生のお通夜、告別式でした。奥さまと一緒に当店で万年筆を買いに来て下さってからもう10数年、人生の師としてお世話になって来ました。

お通夜では奥様、お嬢様のご好意で、かなり早い時間から会場の大阪市北区の光明寺で、先生の謡が流れる中、先生の傍で皆さんと先生の思い出を語り合いながら時間を過ごしました。

前日までの気温が嘘のように涼しく、開け放たれた窓から気持ちいい風が入ってきました。お通夜が始まる前に黄色い陽の光が本堂の中に差し込んできました。

お通夜も葬儀も安東先生が生前に演出を決められていて、最期の場面まで舞台人として演じきった偉大な狂言師の最終幕を私たちは観たのでした。

私の腕にはラマシオンの時計があって、こういう時に意味もなく自分の時計を見たくなります。そしてこの場面と自分の時計の文字盤の景色を重ね合わせて、いつまでも大切な記憶としてこの時計で時間を確認するたびに思い出すのだと思います。

時計作家ラマシオンの吉村さんは寡作の人で、全てのパーツを削り出して作っているボルトアクションボールペンも本業の時計も、なかなか数多くは入荷しません。ボールペンはパーツひとつひとつをハンドメイドで作っているし、時計も全て1点もので、仕方がないけれどお店としては少し物足りない。

待望のラマシオンの時計が久々に入荷しました。

私は時計に凝る方ではないけれど、ラマシオンの時計を3年ほど前から着けています。

ラマシオン吉村さんの時計は吉村さんがグラフィックデザイナーだったということもあるのか、文字盤がデザイン的で1枚の絵を、風景画を腕につけているような感覚になります。

時間を確認するたびにその景色を見る。日常の中の普通の時間にも趣を与えてくれるような、自分の1秒1秒の時間を人生の1コマにしてくれるような感覚をこの時計に感じます。

私の時計は機械式で、1週間に1度1分くらいを修正する程度です。丸1日着けていなくても動くパワーリザーブを持っていますので、充分実用的なムーブメントだと思います。

ムーブメントはシチズンミヨタのもので、これは万年筆のシュミットのペン先と同じくらい時計の世界ではメジャーなものです。信頼性が高く、そう簡単に壊れるものではないし、もちろん修理も可能です。

クォーツ式はセイコーのものを使っているので、時間修正の必要もありません。

でもこれらの時計の価値はそのデザインにあり、派手すぎず、それを着けている人だけが密かに手に入れることができる文字盤の景色だと思います。

自分の人生の時間を自分で演出して生きていたいと、安東先生の生き方を垣間見て思うようになりました。ラマシオンの時計はそんな時間の小道具になるのではないかと思います。

*ラマシオン吉村さんの時計の製作風景動画

 オリジナル腕時計をハンドメイド。神戸の万年筆専門店” pen and message ”の腕時計です。 – YouTube

*ラマシオン時計 TOP