ファーバーカステルフェア 8/31(土)~9/28(日)

そのペンが誕生した国がどんなところで、その国の人たちがどんな暮らしをしているのかということに興味があります。

その国に住む、大富豪や有名人の暮らしはメディアなどで垣間見たりするけれど、自分たちと同じような普通の人たちの暮らしというのは意外に知ることができません。

その国のミステリーを読むと普通の市民の暮らしを垣間見ることができると、アイスランドの作家アーナルデュル・インドリダソンは言っていました。たしかに私は一時期集中的に読んでいたインドリダソンの小説で、未知の国アイスランドの人の暮らしに想いを馳せることができた。

物語になる犯罪は特別な悪人ではなく普通の人がちょっとした弾みで起こすものが多く、ミステリーという分野に分類される犯罪小説を読んでいると、普通の人たちの暮らしを知ることができます。

そういうことを踏まえてドイツ人の作家を調べていて、フェルディナント・フォン・シーラッハを知りました。シーラッハは没落した名家の出の元弁護士で、子供の頃の名家での生活と弁護士生活の中で経験したことをヒントに小説を書いている人です。

箇条書きのようなハードボイルドな簡潔な文章が読みやすく、私の好みに合い何冊も読みました。

シーラッハの小説から、普通の人の生活やドイツの、主にミュンヘン周辺などドイツ南部の様子なども知ることができたし、ドイツのペンと同じようにそこに住む人の暮らしに興味のある方には、ぜひ読んでいただきたいと思いました。

小説の中の名家の暮らしやドイツ南部の様子など、シーラッハの小説を読んでいて、ファーバーカステルを連想させるものがあると思いました。(ファーバーカステルも南部ニュルンベルク近郊にあります。ファーバーカステル家は没落していないけれど)

8/31(土)から、当店でファーバーカステルフェアを開催いたします。

ファーバーカステルを代表するクラシックコレクションと、デザインコレクションを品揃えします。

フェア期間中にクラシックコレクション、ギロシェシリーズお買い上げのお客様に、ファーバーカステル本革ペンシースとフェルディナント・フォン・シーラッハの小説の文庫本をプレゼントいたします。

シーラッハの作品は短編も面白いですが、背景や周辺の描写も楽しんでいただきたいので、長編(と言っても短いですが)をお選びしました。

ファーバーカステルクラシックコレクションは、デザインの良さと上質な素材感から、所有欲を満たし、書くことを楽しくしてくれるものだと思います。

私もそのうちの一人ですが、万年筆のほかボールペン、ペンシルも魅力があり、2本、3本と、セットで持ちたくなる魅力があると思います。

⇒FABER-CASTELL TOP

綴り屋販売会 8/24(土)25(日)

先日中国に行ってきました。この度新たに製作していただいた当店オリジナルペン先と、今後発売予定のオリジナル万年筆がどんなところで作られているのか、上海の万年筆工場を視察するためでした。

上海の浦東空港まで代表のスーさんと工場長のシャーさん、通訳のTさんが迎えに来てくれました。

帰ってきて思うのは、単なる視察で終わらず、短期留学と言ってもいいような学び、気付きも得られたということでした。

仕事のことなど遠慮せずに何でも言ってくれるスーさんとシャーさんとの親交も温めることができました。

飾らない彼らの中国での日常にも触れることができましたし、心を込めてもてなしてくれながらもお客様扱いしすぎずに対応してくれ、居心地の良さを感じました。

代官山の出張販売から、綴り屋さんの漆黒の森と静謐万年筆には当店のオリジナルペン先を付けるようになりました。

世界の人たちがターゲットだと考えた時、やはり日本的なモチーフ、それも格調高い、良い軸に見合ったものが必要でした。万年筆という精神的な支柱にもなるものに相応しいペン先にしたいと思いました。

当店のオリジナルペン先の図案鳳凰はそんな想いを込めてデザインしたもので、良いものができたと思っています。

当店はやっと自分たちのものだと言える、自分たちの調整を象徴できるペン先を手に入れることができました。

エボナイトペン芯を装着したしっかりした書き味の14金のペン先は、初期状態で長刀研ぎに近い形状に研ぎ出されていて、漢字の国のペン先の研ぎになっています。私はこの研ぎの形状からアジアらしさを感じて、同じアジア人として嬉しくなりました。

研ぎの形状は当店でいくらでも変えることができますので、パイロット風に丸く研いだり、ヨーロッパ風に四角く研ぎ出すこともできます。

綴り屋さんの軸に当店オリジナルペン先をつけた姿は、別々の場所で作られたものとは思えないほど調和しています。

モノ作りにすでに国境はなくなっていて、多くのメーカーが他産地で作られたパーツを組み合わせて万年筆を作っています。それが現代のモノ作りのあり方で、中国はそれを黒子になって支えている。

当店のような後発の店にとって難しい日本でのモノ作りですが、若い人がこだわりなく付き合ってくれる海外の会社の存在はとても有り難い。

気が付いたら当店にも世界のモノ作りその流れが来ていました。今までできなかったことができるようになって、明るい気持ちで取り組んでいます。

綴り屋さんの作品販売会を8/24(土)、25(日)に590&Co.さん店内で開催します。

万年筆をお買い上げの場合、ペン先装着、調整は歩いて3分の当店内で承ります。

10時~15時は予約制ですが、15時以降はフリータイムとなりますので、ぜひこのタイミングで実物をご覧下さい。

↓590&Co.さんでご来場のご予約も承っています。ぜひご来場よろしくお願い致します。⇒予約サイト(590&Co.)

*オリジナルペン先を装着した受注生産万年筆朧月の受注締切は8/25(日)までになります。そちらもよろしくお願いいたします。

綴り屋漆黒の森 溜塗テクスチャーPen and message.オリジナル仕様

何かを始めたいと思った時、アイデアは自分の頭の中や、お客様や仲間たちとの会話の中にあることがほとんどでした。ネットの中で探さなかったから、他所のお店と違うことをすることができたのかも知れません。

自分と向き合うことと、人と話すことはアイデアの源泉だと思っています。

そしてそれが実現するには、それを作って下さる方との縁がないと形にはなりません。

今までオリジナル万年筆は縁があった時にいくつか作らせていただきましたが、いずれも海外のメーカーでした。

その方が他のお店が取り組んでいないことができると思ったし、何よりも縁があったからでした。

日本のメーカーさんとはそういう縁ができなかったけれど、良いものがたくさんあることは知っています。そんな定番品の中で、良いものなのにあまり脚光を浴びていない万年筆を当店なりのやり方でご紹介する、ということを続けていました。多くの方に共感していただけるのも喜びだったので、それでもいいと思っていました。

綴り屋さんに対しても、鈴木さんのセンスによるモノ作りが好きだったので、綴り屋さんのモノをそのまま販売していましたが、扱っていくうちにその関係は次のステップに進んでいきました。

今まで綴り屋さんの万年筆には、当店でパイロットのペン先をつけていました。それは当時できる最良の選択だと思っていますが、当店の「オリジナル」ではありませんでした。

当店の万年筆であると表現できるオリジナルペン先を開発しなければ、綴り屋さんの軸と釣り合わないのではないかと思い始めました。

次々と新しいアイデアで作り出される綴り屋さんの万年筆を販売する店として、相応しい仕事がしたい。それがペン先調整を看板に掲げる店らしく、オリジナルペン先を持つ、ということでした。

縁あって、中国の工場の若い代表と出会うことができて、様々な話をしました。もともとは国営企業で働くエリートでしたが、20歳から集め出した万年筆を仕事にしたいと思い、今の仕事を始めました。収入は減ったけれど、好きなことを仕事にすることができて充実していると言っていました。仕事に対する考え方や万年筆作り、仕事の仕方についても共感する部分が多くありました。

中国と言うと私たち日本人の昭和世代には粗悪なものを大量に作るイメージがあるけれど、それも古い話だと分かりました。

中国の人も生活が良くなるにつれて良いものを知って、自分たちが本当に欲しいと思えるものを作らなければいけない、という意識が若い人の間では普通になっています。

最初は私も昭和世代の偏見を持っていましたが、彼と話しているうちに、そしてその工場も某有名イタリアメーカーの下請けで万年筆を作っていることなど色々な実績もお聞きして、この会社であればお任せできると思いました。

中国とのビデオ会議ではそれぞれが次々と意見を出し合って、すごいスピードで物事が決まって行きました。最初は少し驚きましたが、すぐにそのスピードが心地よくなりました。それが彼らのやり方で、全てを話し合い、意見を出し合って、次々と物事が決まっていきます。

実際にペン先を作る時は、実際の現場の方とペンポイントの選択から全て、細かく話し合って作り上げることができました。

ペン先作りのごく初期の段階から関わることができた経験は大きく、これでこそ当店のオリジナルペン先と言えると思いました。出来上がった時は喜びも愛着も今までで一番大きかった。

今回の当店オリジナルペン先お披露目のために、綴り屋さんが当店オリジナル仕様の漆黒の森溜塗テクスチャーモデルを作ってくださいました。

溜塗の表情が出るテクスチャー部分を天冠部分だけにとどめ、よりシンプルにしたものですが、これも鈴木さんとのやり取りで決まりました。

また山吹色の下地に潤み色の表塗りのものは当店オリジナル色で、継続して作りたいと思っています。

ペン先作りにも、軸の仕様にも関わることができたオリジナル万年筆。ペン先調整の店として次の段階に進んだことと、綴り屋さんとの繋がりも表現することができたと思っています。

*来週は出張で不在のため、次回の更新は23日(金)となります

⇒綴り屋 漆黒の森溜塗テクスチャーPen and message.仕様 山吹×潤み色(オリジナル色) オリジナルペン先

ペンレスト兼用万年筆ケース~当店の万年筆のあり方を表現したペンケース~

店を始めたばかりの頃、早く年数が経って創業10年、20年と言いたいと思っていました。

それが何か力になると信じていたのですが、当店は今年の9月で17周年になりますが、必死にもがき続けている状態は変わらず、年数を重ねても変わらないようです。

そんな風に思いながらも、自分たちで作り出したことや最初に始めたことにこだわって、世間の売れ筋の商品を追いかけないようにしようと思ってきました。

自分たちが望んだことではあるけれど、こんな考え方だから当店はいつまで経っても同じ規模のまま、同じ場所にあり続けているのだと思います。

いつも何かを生み出さないといけないという強迫観念はいつも持っていましたが、そうする方が楽しいに決まっている。

私たちが早く年数が経って欲しいと思っていた頃、オリジナル商品として、ペンレスト兼用万年筆ケースという3本差しのペンケースを作りました。

それから10年以上経っても変わらずに作り続けている理由は、万年筆が日常のものであって欲しい、という当店の万年筆に対する考え方を表現した存在だからでした。

持ち運び時はフラップをペンに被せるようにして落下を防止して、机上で使う時はフラップをペンの後ろにしておけばペンケースは開いたままになり、ペンを選んですぐに取り出せる状態になります。

平らなペンケースなので、その上にペンを置くことができ、ペンレストとしても使うことができます。

いかにも万年筆を収めているといったペンケースも良いけれど、なるべくさりげなく肩の力が抜けたものを作りたいと思いました。

このペンレスト兼用万年筆ケースに、新たにエレファント革と4本差しを作りました。

エレファントは新品の時、フカフカした軽い毛羽立ちのある革ですが、使い込んでいくうちに毛羽立ちが倒れてシボが潰れていき、これがとても良い風合いに変化していきます。

今年はエレファントの革に縁があって、ル・ボナーさんにはデブペンケースを作っていただきましたし、A7メモカバーもエレファントで再入荷する予定です。

このペンケースの中にペンを入れて膨らんだ状態のエレファントはなかなか迫力があり、その姿もこのペンケースの持ち味です。

4本差しは、このペンケースのサイズをそのままに、仕切りの数を増やして4本収納できるようにしました。

この4本差しにファーバーカステルクラシックの万年筆とボールペン、ペンシルそしてパーフェクトペンシルを入れることも可能です。

3本差しは、モンブラン149などのオーバーサイズのペンが入るようにしていました。

4本差しに入るのは当然細めのペンになりますが、ボールペンや万年筆でもここに入るものの方が多く、充分なスペースではないかと思いました。

このペンケースを使いやすいと思ってくれる方は多いと思います。

万年筆を日常の道具として使われる方の実情を見て、それに合うものとして当店が作り続けているペンケース、ペンレスト兼用万年筆ケースをご紹介しました。

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⇒Pen and message. オリジナルペンレスト兼用万年筆ケース・3本差し エレファント

⇒Pen and message. オリジナルペンレスト兼用万年筆ケース・4本差し エレファント ダークブラウン