研ぎへのこだわりと今の時代のペン

オリジナルペン先を作ったのは、当店のペン先調整、特に研ぎのこだわりを表現したいと思ったからでした。

メーカーのペン先の場合、三角研ぎなどもご依頼があればしていますが、普通の調整ではなるべく削らない最低限の研ぎでその方に合わせるようにします。

それぞれのメーカーの持ち味を残すという意味ではそれが正解だと思っています。

オリジナルペン先は、現在綴り屋さんの万年筆の静謐、漆黒の森に付けて販売していますが、鳳凰のペン先はその雰囲気ともよく合っていると思います。

オリジナルペン先は入荷後、当店で全て調整しています。

今のラインナップはFとMで、研ぎによって5つのバリエーションがあります。⇒フリーページ「オリジナルペン先の字幅・研ぎ」

標準はイリジュウムを大きめに残した研ぎをしていて、私はこれを大陸的な研ぎだと思っています。

やや縦長形状に研がれていて、長刀研ぎに似ています。筆記面が大きいので、ヌルヌルとした書き味をF・Mともに味わうことができます。

ただ線は太めになり、Fで中細から中字、Mで中字から太字の太さになります。

そのため、Fの字幅でもう少し細く書けるものを選べるようにしていて、日本の細字くらいに書ける細字研ぎ出しもご用意しています。

これは日本製のペン先のように、ペンポイントを様々角度から削り込んだ研ぎで、製作に時間はかかりますが、安定して細い線を書くことができます。

三角研ぎは寝かせて書くと太く、ヌルヌルとした書き味が得られ、立てて書くと細く書くことができます。通常、日本製のFからは違いが分かりにくいですよとお伝えしますが、このFは中細から中字の幅があるため違いを感じていただけると思います。

三角研ぎはトメ、ハネ、ハライが表現できて、ペン習字などに向いた、達者な人が書くとそれらしい文字を書くことができるペン先の研ぎです。

三角研ぎは文字が上手い人のための研ぎだと思われている方もおられるかもしれませんが、そうではないと断言します。

私はトメ、ハネ、ハライのないそれほど大きくない丸い文字を書きます。そしてそれを文字がつぶれるくらい太い字幅で書くことを好みますが、太めの三角研ぎで書くとそういった文字も太いながらもなぜかスッキリとそれなりの形に書くことができると思っているので、自分でも愛用しています。

ペン先の研ぎによる書き味の違い、書ける文字の違いを表現したかったので、様々な研ぎが表現できるオリジナルペン先が当店には必要だったのです。

私たちのようにペン先の研ぎにこだわっている、台湾生まれ香港育ちの若い周さんが立ち上げた九星堂という万年筆メーカーがあり、当店でも販売することになりました。

九星堂の万年筆は見るからに新しい感覚で作られている万年筆で、スッキリしたデザインでありながら、凝った作りの吸入方式を持っています。正確に大量(約3.5cc)のインクを吸入することができ、そのメカを操作してインクを吸入するのがとても楽しい万年筆です。

インクの引っ張りの良いエボナイトペン芯を備えた14金ペン先で、ペン先の研ぎにこだわっているだけあって、書き味もとても良いものになっています。このペン先の研ぎにも長刀研ぎへのリスペクトが感じられます。

万年筆が好きで、それを生き方にした若い人が色々なところにいて、その人たちが万年筆の世界に新風を巻き起こしてくれています。

伝統あるメーカーのクラシックな万年筆も魅力があるけれど、その時代の流れを感じるような今のものにも惹かれます。万年筆の世界にもこういう新しい流れがあって、活発な動きを見せています。

⇒綴り屋(オリジナルペン先仕様)

⇒九星堂(きゅうせいどう)

2025年正方形ダイアリーと周辺

2025年版オリジナルダイアリーが出来上がりました。

新しいダイアリーを手に入れたら、スタンプを押したり、すでに入っている来年のスケジュールを書き込んでいきますが、この作業はワクワクする楽しいものだといつも思います。

今年はまだ3か月以上あるけれど、いろんな機会に恵まれたいい年だったので、来年もいい年になってほしいと思いながら書き込み始めています。

いい年だったと思えるようにするにはやはり失敗を恐れずに活発にアクションを起こすことだと今年改めて思いました。

自分から動き出せたら一番いいかもしれませんが、目の前を通り過ぎようとするチャンスを逃さずに飛び乗って行動を起こすことが大切なのだと思います。

それがどういうことかよく考えてから動くことが時には必要なことなのかもしれないけれど、考えているうちに物事は通り過ぎてしまうかもしれない。直感に任せて動くことが私の場合は多いかもしれません。

これも直感によるもので、あっという間に話がまとまりましたが、書き味が選べる下敷きとして知られているTeriw The Matと正方形ダイリーのコラボが実現しました。

Teriwの下敷きの正方形バージョンで、間にL字ポケットがあり最初は吸い取り紙がセットされています。もちろん切り抜きやシールなども挟んでおくことができる、便利な仕様です。

ダイアリーに何かのチケットや切り抜きを貼り付ける場合、一旦この下敷きに挟んで保管しておくこともできる。

正方形ダイアリーに下敷きを使う効果は、安定した筆記面を生み出し書きやすいということ以外にも、スタンプを押す時にも有効です。

大和出版印刷さん、590&Co.さんとの共同企画の正方形ダイアリーですが、コラボ企画は今までしたことがありませんでした。

長年作り続けてきた正方形ダイアリーに新しい風を吹き込ませるためにも、より多くの人にこのダイアリーを知ってもらうためにも、今回のTeliwさんとのコラボは必要で、魅力的な企画だと思いました。

Teriwさんとのコラボにあたって、正方形ダイアリーのロゴを新しく作り、Teriwの正方形バージョンの下敷きとオリジナルダイアリーに入れています。

「KOBE158SQ」地名のようなロゴですが、神戸発祥の158mm×158mmの正方形ダイアリーを中心に多くの人が集い、様々なアイデアが生まれて大きくなって欲しいという願いを込めています。

正方形ダイアリー用の革カバーも若干のリニューアルを加えて2025年モデルとしました。

ベルト部分のホックを昨年のものと凹凸を逆にして、本体側に凹部分を、ベルト側に凸部分を装着しました。こうすることで、筆記時に開いた表紙が机などの上で安定するようにしました。

使う込むうちにゆっくりとエイジングしていい艶を出すミネルヴァリスシオ革は変わらずに採用しましたが、新たに華やかな光沢を持つサドルプルアップレザーでも製作していただきました。

正方形ダイアリーはもちろん私たちも使っていて手放せないものになっているけれど、たくさんの人にとってこのダイアリーがその人のスケジュールや日記を書くことにおいて、なくてはならないものになってくれたらと願っています。

⇒2025年正方形ダイアリー/ダイアリーカバー TOP

4本差しペンケースとファーバーカステルクラシックコレクション

先週に続いてドイツ旅の話になりますが、旅の前半でファーバーカステルミュージアムやお城、ファクトリーを見学する予定でしたが、何かの行き違いで訪問することができなくなりました。

「縁がなかったということか・・」とファーバーカステルのことは忘れようとしましたが、谷本さんは余程残念だったのか、外からでもいいからファーバーカステル城が見てみたいと言うので、中に入れないことが分かっていながらも、わざわざシュタインというニュルンベルグの隣町に行きました。

ファーバーカステル城は写真などから、山の中にあるように思っていましたが、何と住宅街の中の駅から15分程度歩いただけの便利なところにありました。

ファーバーカステル社の敷地の中にファクトリーやミュージアムから少し離れて、本当にお城がありました。

私と松本さんはお城を見て満足していましたが、谷本さんはとても名残惜しそうでした。

だけど中に入れなくても、来て良かったと思いました。世界中に独特の世界観とデザインを持つ筆記具を届けているファーバーカステルの本社を見て、筆記具界最長の250年の歴史の重みを感じました。

万年筆が好きな人の誰もがファーバーカステルには憧れのようなものを持っていて、使ってみたいと思う人も多いようです。所有している人も他の万年筆とは全く違うバランスに苦労しながらも何とか使いこなしたいと思わせる。

クラシックコレクションは一般的な万年筆と比べると細軸で、キャップを尻軸につけると後ろヘビーになり過ぎて書きにくい。

キャップを尻軸につけずに書く方がこの万年筆の場合は良いように思います。

細めの軸のクラシックコレクションだからこそ、手帳のペンホルダーやペンケースに入れやすく、その姿がサマになるということもあるかもしれません。

デザインや機能的にも優れていますが、システム手帳のペンホルダーへ収まった時や、ペンケースに揃いで収まった時の姿に、特にこのペンの魅力を感じます。

クラシックコレクションには揃えて持ちたくなる魅力があります。それはなぜなのか。

ファーバーカステルクラシックコレクションの万年筆、ボールペン、シャープペンシルに統一されたデザイン、特にキャップトップ、クリップのデザインは格調の高さと優雅さを兼ね備えていて、何かに挟んだ時、収納した時にそれが強調されると思います。

オリジナルペンレスト兼用万年筆ケースで4本差しを作ったのも、ファーバーカステルクラシックコレクションを4本収めることができると思ったからでした。

万年筆、ボールペン、シャープペンシルそしてパーフェクトペンシルという、フルラインナップを全て収めることができる。

ファーバーカステルの魅力に取り憑かれた人の夢のペンケースが、ペンレスト兼用万年筆ケースの4本差しだと言っても言い過ぎではないと思います。

⇒フェア開催中(~9/29迄)ファーバーカステルTOP

⇒Pen and message.オリジナルペンケース・4本差し

ファーバーカステルのボールペン

働き出して15年間、立ち仕事をしていました。最初の2週間は脚や腰が痛くなりましたが、慣れてしまうと何ともなくなりました。

15年も立ち仕事をしていたので、いまだに立っている方が頭が冴えるし、ずっと座っていると眠くなってしまいます。

家でもこういった原稿を書く時は立ち机に向かって立って書くことが多い。

ドイツに行ってカヴェコ社を訪問した時、マイク社長がご自分のオフィスを見せてくれました。

机の位置が高く、椅子がありませんでした。いつも立ってデスクワークをしているのだそうです。

立っている姿勢の方が自然だし脚も鍛えられて、立ち仕事の方が体にいいと思っていたので、マイク社長のようにバリバリと仕事をしている人が同じ考えを持っていることが嬉しかった。

立ち仕事だったせいでもあるけれど、仕事中万年筆よりもやはりボールペンを使うことの方が多かったので、色々なボールペンを使って、飽きると換えていました。

新しいボールペンを使うと新鮮な気持ちで仕事ができるし、書くことが楽しくなりました。

ファーバーカステルのペンにはずっと憧れがありました。私には高額でしたが、ある時思い切ってギロシェシリーズのボールペンを買って使い始めました。

まだ30代だった私には気品のある木の軸のクラシックコレクションはまだ憧れの存在で、ギロシェのブラックを選びました。

それでもギロシェを使い始めたら、書くことが嬉しくて仕事がより楽しくなりました。

スプリングが仕込んであってポケットに差しやすいクリップは、無垢の素材でできていて布地を傷めにくくなっています。少し柔らかさも感じる軸の素材の手触りはとても心地良い。ファーバーカステルギロシェのボールペンからは今までのボールペンに感じなかった上質さを感じました。

ファーバーカステルのボールペンの替芯はパーカータイプ(G2規格)で、互換性のある芯が多く、当時滑らかな書き味だと思っていたパーカーの芯に入れ替えたりして使っていました。

店を始めてしばらくした時に、クラシックコレクションエボニーの万年筆を使い始めて、すぐにボールペンも手に入れ、いまだによく使っています。

もう17年近く使っていることになりますが、デザインの良さ、木の温かみのある風合いによる質感、手触りなど、書くたびに嬉しい気持ちになり、特別な筆記具だと思えます。

今当店では、ファーバーカステルフェアをしています。ギロシェシリーズ、クラシックコレクションお買い上げのお客様にファーバーカステルオリジナルの1本差しペンシースと、ドイツ人作家フェルディナント・フォン・シーラッハの小説をプレゼントしています。

シーラッハはドイツ南部の名家の出で、幼い日々の南ドイツの雰囲気や時代背景をこの小説にも盛り込んでいます。

ファーバーカステルも同じドイツ南部に本社があり、シーラッハの小説から、ファーバーカステルのペンがどんなところで生み出されているのか想いを馳せることができると思います。

私たちはペンにただよく書けることだけを求めているのではなく、その背景にあるものにも惹かれるのだと思います。この本を読むことでファーバーカステルのペンによりロマンを感じていただけたらと思っています。

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