Craft A(クラフトエー)のバランス感覚

昨秋の神戸ペンショーでは、急遽Craft Aさんの万年筆を販売することになったのですが、大変好評でした。

590&Co.さんのブースにクラフトAの津田さんご夫妻が常駐して販売していましたが、ボールペンとシャープペンシルの販売で手がいっぱいだからと、そして当店ならペン先調整してお客様にお渡ししてくれるから、ということで、当店に万年筆の販売を任せてくれたのでした。

当店としてはとても有難いことでした。津田さんは当店がペン先調整をしているということを以前から評価して下さっていたこともあって、当店でクラフトAさんの万年筆を扱っていました。

神戸ペンショーの時に好評だったのが、今までのアウトフィットより直径を2.8mm細くした「アウトフィット62」でした。

従来のアウトフィットは太めの寸胴で、豪快な感じの特徴的なペンでした。直径12mmとなったアウトフィット62は、手帳のペンホルダーに挟めるようになりましたし、女性に限らず男性のお客様でもより自然に握ることができるようでした。

アウトフィット62は、当店ではステンレスペン先と、万年筆のインクを使うことができるボールペンのインクローラーを選ぶことができます。

インクローラーは万年筆インクの粘度の低さにより、軽くコロコロと気持ち良く書けるボールペンになっています。

Craft Aさんの万年筆を扱い始めた時、万年筆のペン先は金ペンであって欲しいという思い込みを捨てられずにいて、金ペン仕様にしていただいていました。

でもお客様とお話ししているとステンレスペン先で良い方も多く、頑なに金ペン先にこだわる必要はないのではと思い始めました。

確かにCraft Aさんのモノ作りは良い素材は使っているけれど、キャップや首軸は金属で修理もしやすいとか、なるべく価格を抑えようとする意図が感じられる確実なモノ作りをされています。金ペン先に交換するのは、それに反することのように思えてきました。

それにCraft Aさんの万年筆は、ペン先が金でなくても充分に魅力があります。

当店は金ペン先にこだわるより、様々な面白い模様を持つ木軸のステンレスペン先の万年筆を、金ペン先にも劣らないような滑らかな書き味にして、お客様に長く気持ちよく使っていただけるモノにすることが役目だと思うようになりました。

為替のこともあるし、金相場の高騰もあり特に金ペン先の値段が上がっていて万年筆の価格がどんどん高くなっています。

店としてこだわりは持ち続けるべきだとは思うけれど、現実に目の前で起こっていることに対応するために、考えを改める必要もあるのかもしれないと思っています。

⇒Craft A(クラフトエー)TOP

ラミー2000の4色ボールペン

どうやら私は金属アレルギーになってしまったようです。

パッチテストができる状態になったらはっきりすると思いますが、特定の食べ物を食べるとアレルギー反応が出るので分かりました。

金属アレルギーになっても金属製のペンに触ることはできますし、ペン先調整もできますので、変わらず仕事は続けられるのは本当によかった。

これもペン先調整をする者の職業病と言えるかもしれません。他の調整士の人は大丈夫だろうか。仕事中はマスクをして、見えない粉塵をなるべく吸わないように、顔に金属の粉が飛ばないように気を付けた方がいいと忠告したいです。

私も調整中、防塵マスクとメガネはするようにしています。

テレビなどを気をつけて見ていると何かを削る仕事の人はマスクを着けている人が多い。

たまに店に来てくれて話をするオーダー靴職人で、靴工場もされているイル・クアドリフォリオの久内さんも作業中はマスクは着けているそうです。

金属アレルギーになって、食べ物や身に着けるものに制約ができると、数少ない自分が食べられるものを見つけるとつい買ってしまいます。

金属のバックルがついたベルトもつけられなくなって、代わりになる良いものがなくて探していましたが、近所の雑貨店で金属のバックルを使っていないベルトを見つけて嬉しくて買いました。

制約があると、その制約に引っ掛からないものには肩入れしてしまいます。

ペンについても同じように思うようになっていて、自分が選ぶのだったらなるべく金属を使っていないペンを選びたいと思うようになりました。

ペン先以外一切金属を使わず、エボナイトか木材でペンを作っている綴り屋さんは私のような者には有難い存在です。綴り屋の鈴木さんも金属アレルギーなのだろうか?

ボールペンのお話をしたいと思います。

ボールペンは書く内容によって色分けしたいので、多色ボールペンを使いたいのですが、海外製の多色ボールペンの選択肢はとても少なく、殆どは日本製のものです。もちろんそれでも良いのですが、先の理由で自分にとって非金属製のペンの株が急上昇しているのと、歴史のあるペン、ストーリーのあるペンをなるべく選びたいと思っていると、ラミー2000の4色ボールペン一択に思えます。

ラミー2000は1966年に誕生したペンで、当時きっと未来の生活が訪れているであろうと思われていた2000年まで通用するデザインのペンとして作られながら、2025年の現在でも選びたいと思わせてくれるペンです。

シンプルなデザインで、それほど太軸ではないのに4色ものボールペン芯を内蔵しているラミー2000の4色ボールペンはシックで、美しく完成されている大人の4色ボールペンだと思っています。

樹脂製の軸なので私のように金属アレルギーを発症してしまった大人の方にお勧めできます。

手帳を色分けして書く人も多いと思います。ラミー2000 4色ボールペンは手帳を色分けして書く人にもお勧めいたします。

⇒ラミー2000・4色ボールペン

⇒ラミーTOP

コンチネンタル クラシックインスピレーション1985

阪神淡路大震災から30年が経ちました。当時私は文具店に勤めていて、落ちてしまった三宮センター街のアーケードを無感覚で見ていたのを覚えています。三宮に長い距離を歩いて出てくるまでにひどい光景を見続けて、アーケードが落ちていたり、ビルが傾いているのが異常な光景に見えなくなっていました。

命を落とされた方、けがをされた方、家族を失われた方、お家を失われた方など、大変な想いをされた方が大勢おられたので、そんな状況でも仕事をしていられた自分は恵まれていたと思います。今あんな地震が来て、世の中が万年筆どころではなくなったら、またたくさん人が犠牲になってしまう。そして自分の生活も立ち行かなくなるし、絶対に来てほしくないと思っています。

震災後30年経って、私の20代、30代、40代があっという間に過ぎたことを思うと人の人生の短さを改めて思い知ります。

あの日から30年もの間、文具/万年筆の業界で仕事をしてきました。

これは長くやってきた者の特権かもしれませんが、今までたくさんのペンを見る機会がありました。

それぞれのペンは私と同じ万年筆の仕事に携わった人たちがそれぞれの短い人生の時間で生み出した品々で、それら一つ一つが100数十年の近代万年筆の歴史を形作ったのだと思うと、とても大切なものに思えます。

そういった過去に生まれた万年筆のある時代までは実用品の雰囲気があって、良い万年筆を持つと自分の仕事が良くなると思わせるようなロマンがありました。震災当時の、30年ほど前の万年筆にはその雰囲気が残っていました。

安心して使うことができる現代の仕様でありながら、そんな過去の万年筆の雰囲気を持ったものを作りたいと思って、オリジナル万年筆を企画しました。

製作は上海にある当店の協力工場で、完全機械製作により寸分の狂いもなく作られています。
この工場での万年筆作りはとても近代的で、コンピューター制御の機械によってほとんど作り込まれて、組み立てや仕上げの最終の磨きのみ手作業でしています。

ハンドメイドでの工程を多く残しているヨーロッパや日本での万年筆作りとかなり違っています。

昨年8月に上海と近郊の町泰興に行って工場を時間をかけて見てきました。

オリジナル万年筆がどんな工場で作られているのか自分の目で確かめておきたいと思いました。
お客様に安心して使ってもらえる万年筆を作るために誤差、個体差のない確かなモノ作りは必要なことでしたし、こんな時代だからこそ手に入れやすい価格で作りたいと思っていましたので、中国の良い工場とやり取りすることが必要なことでした。

中国の工場とは本当に頻繁にやり取りしていて、現地に行ったこともあって人と人との付き合いをすることができました。
言語が違うのにこれだけ密にやり取りできるのはテクノロジーのお陰でした。

オリジナル万年筆コンチネンタルクラシックインスピレーション1985は、万年筆がまだ机上の主人公だった時代のアメリカンクラシックな雰囲気を持つ万年筆を現代に生きる人たちのために作りたいと思って製作しました。

黒いキャップはエボナイト削り出し。琥珀柄の軸は廃番になっていたアクリルレジンをこの万年筆のために再生産していただいて、削り出しています。
現在完成しているもののペン先は14金に、エボナイトペン芯仕様です。
吸入方式はカートリッジ/コンバーター両様式です。カートリッジはヨーロッパサイズのものが使用できますが、コンバーターは専用で径の太い中国サイズになります。

一部明日(1/18)からの東京での出張販売にお持ちしますが、まだまだ十分な本数が出来上がってきておらず、品薄状態です。
春頃にはまとまって入荷する予定ですし、スチールペン先仕様も出来上がる予定です。

オリジナル万年筆コンチネンタルクラシックインスピレーション1985

こんな万年筆があったと誰かが思い出して話題にしてくれるような、万年筆の歴史の一部になれたらと思い発売いたします。

工場のある泰興の街並み

工場外観
古い建物の中にある最新式の機械
出来上がった部品を1点ずつ手作業で磨く
組み立ての工程
組み立て工場内観
金ペン先の刻印

雑記用の手帳

photo by N.Takada(BAGERA)

私はダイアリーやシステム手帳など、書き残すための手帳をいくつか持っていますが、何でも書くための「雑記用の手帳」も重要な1冊です。

きっと皆さんも同じような用途のものを持っておられるのではないかと思います。

そういう手帳は、ちょっとメモしたりデータを書いたり、何かの文章の下書きを書いたりするために使っています。

最終的にはそこに書いたものをパソコンで清書したり、ダイアリーや手帳に書き直したりしています。

私は上着のポケットに入るようなサイズの手帳を特にこれと決めずに使っていますが、それを大学ノートなどでしている人もよく見ますので、ノートでされている方が多いのかもしれません。

ダイアリーやシステム手帳は何となく華やかな存在ですが、こういう雑記用の手帳はこだわりなくその辺にあるペンで何でも書く、最も使う頻度が高いものだと思います。

今私の雑記用の手帳は何のこだわりもなく、文具店を巡るのも好きなので、なくなったタイミングでふらっと入った文房具屋さんにある手帳を買って使っています。中には万年筆のインクと相性がよくないものがあったりして、失敗することもありますが、気にせず使います。

でも一番よく使う雑記用の手帳なので、良いものがあればより楽しく使うことができるとは思います。いつも持って歩くので、ある程度小さい方がいいし、文章の下書きも書くので小さすぎても使い辛い。

バゲラさんのベビーバッファローの革を使ったシリーズの文庫本カバーで、文庫サイズ(A6)のノートを包んで雑記用手帳とすると、使うのがとても楽しくなると思いました。

ちなみにこの文庫本カバーはサイズ調整がない、サイズ固定式のカバーです。

バゲラさんはその方が本にピッタリでデザインも使用感もいいものができる、と最初から固定式をイメージされていたようで、私も大賛成でした。

固定式のブックカバーを作る時は、具体的に何かの本をイメージしてそれに合わせて作ります。何の本に合わせるかという話になった時に、ヘミングウェイの新潮社文庫「移動祝祭日」がピッタリ入るように作ることになりました。

私の中ではバゲラの高田さんご夫妻の雰囲気が、華やかな雰囲気を持っていたアーネスト・ヘミングウェイと重なるところがあったし、ヘミングウェイが無名時代を過ごしたパリの街がお二人に合うような気がしたからでした。

そうして選んだサイズですが、「移動祝祭日」の本は特別厚くも薄くもないので合うサイズの文庫本はたくさんありますし、これに合うノートも結構あると思います。

この文庫カバーか「移動祝祭日」の本を持って、文房具店でノートを探すのも楽しいと思います。私が見つけたものを申し上げると、ダイゴーのダイアリーE3020とE8440がピッタリでした。

厚みがある程度あるそのダイアリーは1か月1ページのマンスリーダイアリーなので、8割から9割のページはフリーの横罫ページでメモ帳として使うこともできます。

下書き用だけどこういう雑記用ノートがあると、前に書いたものがページをめくると書いてあってとても便利で、私は読み返すことがよくあります。

雑記だからとバラバラにいろんなものに書くよりも、決まって書く手帳やノートがあると色々便利だし、一番使う用途のものなので、今年は少しこだわってみたいと思います。

⇒BAGERA(バゲラ)ベビーバッファロー革文庫本カバー