万年筆趣味

人生の先輩方が、シニアリーグで野球をしているとか楽器を習っていると聞くと羨ましくなって、自分も老後に時間がでがきたら趣味に打ち込めるように、今から趣味を持ちたいと何年かおきに思います。

前回そう思った時、きっと自分は生涯仕事をしているのでそんな時間は一生来ないだろうという結論になり、何もしませんでした。

でも今回は少し成長していて、趣味を持つなら、団体行動が苦手な自分には一人でできる趣味の方がいいという結論に達しました。

たしかに自分は大勢での飲み会や打ち上げなどの席が苦手なので、趣味の集まりだとしても気が重くなってしまうことは予測できます。

590&Co.の谷本さんとは出張の時など一緒に食事をしますが、二人ともお酒を飲まないので気を遣いません。

話を戻すと、万年筆も野球や楽器と同じように趣味のものだと思っています。

たくさんの万年筆を眺めて楽しむ人もいれば、書くことを楽しみとしている人もいます。

当店のお客様は一匹狼的な、一人で行動することを好まれる方が多い印象を持っています。だから万年筆に惹かれているのかもしれませんが。

そうやって趣味について考えている時に、システム手帳を持ち歩いて、そこに細々と書き込むことを楽しみとしている人を続けてお見かけしました。

その人たちはそれを趣味にしているとはもしかしたら思っていないかもしれないけれど、自分が本で読んだことや、旅先について調べたこと、興味を持って調べたことを手帳にまとめて書いていて、そうすることを楽しんでおられました。

それを見ていて、手帳を書くということも趣味になり得るものだと思いました。

お二人ともバイブルサイズのシステム手帳を愛用されていました。たしかにある程度まとまったものを書くのであれば、バイブルサイズになるかもしれません。

バイブルサイズより小さくなると、持ち運びや外出先での書き込みにはいいけれど、私の場合は書ききれなくなることがあります。紙面が小さければ何枚にも渡って書けばいいのかもしれませんが、バイブルサイズに自分でも読めるかどうかギリギリの文字で書くくらいの方が、個人的にはページのまとまりもよくて迫力が出る気がします。

そんな風に書けるペンとなると、国産万年筆の細字以下の細さということになります。細かい文字で書くのならボールペンで書いても良さそうに思いますが、趣味で手帳を書くならぜひ万年筆をお勧めします。

万年筆のインクには不思議な力があって、書いて数年たったものには書いたばかりの時には見られなかった、紙の表面にとどまっていたインクが紙とひとつになったかのような馴染み感が生まれていて、まるで印刷したかのような風合いになっています。

全てのインクがそうなるのか分かりませんが、少なくとも私が手帳に使っているパイロットのブルーで正方形ダイアリーに書いたものはそんな風に見えます。

手帳に細かい文字などを書く場合、やはり硬めのペン先の万年筆が合っているように思います。それは筆圧の影響を受けずに揃った文字が書きやすいからです。

プラチナセンチュリー、パイロットカスタム742、743のPO(ポスティング)などは金ペン先の中でも硬めで、書き込む手帳にとても良いと思います。

またスチールペン先も硬めになりますので、スチールペン先も細めなら合っていると思います。

そうやって色々調べて書いたことをシステム手帳に書き残しておいて、何になるのかとよく言われるけれど、自分がいろいろ調べてまとめたページがあるということが嬉しい。

自分で見つけた研究テーマについていろいろ調べて考察する。そしてそれを手帳にまとめて書いておく。自分の考えの幅も広がるし、書くことも楽しい。

それが趣味というものだと思います。

オリジナルバイブルサイズシステム手帳オーガニックオイルドレザー×クロコベルト

パイロットキャップレス

パイロットカスタム742

パイロットカスタム743

プラチナセンチュリー3776

ペンを寝かせて置くもの、立てて置くもの

抵抗力が落ちていたのか、金属アレルギーが顔にも出てしまい、皆様にご心配をおかけしています。少しずつマシにはなっています。本当にありがとうございます。

調整士の方は、ペンを削った金属粉だけでなくインクも金属アレルギーの原因になるそうなので、気を付けた方がいいと思います。

店でお客様をお迎えして万年筆を選んでいただく時に使いたいと思いウォルナット革張りペントレイを作りました。

ペンが10本くらい並べられて、当店の試筆紙をちょうど納めることができるサイズで、シンプルで良いもの。

ウォールナットは家具職人であるSMOKEの加藤さんもよく使う素材で、派手な木目のある木ではありませんが、落ち着いた質感のある、こういうものを作るのに適した素材だと思います。

店の備品として試筆の際に使っていたトレイでしたが、お客様の需要もあるのではないかと、数年前から販売しています。

大切なペンを硬い机の上に直接置くのではなく、革張りのトレイの上に置く安心感は大いにあると思いますし、帰宅した時にポケットの中にあるものや時計を置くためのオーバーナイターとしても使うことができます。

前回のロットまで、内張りの革にブッテーロを使っていましたが、今回からベルマットという革に変更しました。

ブッテーロも使ううちに艶が出てくるとても良い革ですが、何かを置くためのトレイの革としてはもっとソフトで傷に強い革にした方がいいのかもしれないと思いました。

ベルマット革は革張りをしてくれているフリーススピリッツさんが革作りから関わっているフリースピリッツオリジナルの革で、派手さはないけれど、柔らかくて質感の良いていい革だと思います。

複数のペンを用途によって使い分けて書くようなときは、ペンを立てて置いておく方が道具として使いやすいと思います。

私はペン先を調整する時にいくつかの道具を使い分けていますが、それらの道具は穴の空いた木塊に立てて置いて使っています。

道具として立てて置くようになって、仕事の効率は格段によくなったと思います。

ペンを机上に立てて置くアイテムとしてペンテーブルとペンカウンターがあります。

ペントレーと同じSMOKEの加藤さんが作っていますが、どちらも家具職人である加藤さんが生み出した造形で、神戸家具の雰囲気のある完成されたものだと思っています。

大きく告知しなくても静かに売れ続ける商品があって、それは本当に商品力の高いものだと思いますが、ペンテーブルとペンカウンターもそういうもののひとつです。

ペンを寝かせて置くもの、立てて置くものもペンを楽しむためにあっていいものだと思います。

SMOKEウォルナット革張りペントレイ

SMOKE5本ペンスタンド「ペンテーブル」

SMOKE3本ペンスタンド「ペンカウンター」

Pen and message.システム手帳とiiroリフィル

休みの日専用のM6サイズのシステム手帳に、行った場所や行動などを時系列に箇条書きしています。ただの行動記録ですが、後から必要になることもあって、書いておくと意外に便利です。

元々休日をもっと楽しく、主動的なものにしようと思ってやり始めたことでしたが、気付くともう20年近く続けています。

最初の頃は綴じ手帳に書いていたけれど、車の整備記録、病院の記録、読みたい本のリストなど決まって書くことが増えていったので、ページが増やせて、それほどかさばらないM6システム手帳を使うようになりました。

私にとってはM6サイズがプライベートでは使いやすいけれど、バイブルサイズやM5サイズがいい人も当然おられると思います。

実は今、M5サイズのシステム手帳を開発していて、うまく行けば5月頃には出来上がるかもしれません。

当店のオリジナルシステム手帳のM6サイズは、サドルプルアップレザーとシュランケンカーフの2種類を販売中です。

これはオーソドックスなシステム手帳らしい美しいフォルムを持ったものを目指して作り始めたシリーズです。

サドルプルアップレザーはネットリとした風合いの濃厚な質感の革で、使い込むと良い艶が出てきます。

繋ぎ目のない表紙はサドルプルアップの手触りを楽しむことができて、いつまでも触っていたいと思わせてくれます。

シュランケンカーフは大人っぽい配色を意識して、長く愛用してもらえるものを目指しました。この革は柔らかく優しい手ざわりの最高級革で、いつまでもきれいなままで使うことができます。

オリジナルのバイブルサイズはベースをシンプルな革で、ベルトだけクロコ革にして少し華やかさを加えました。15mmリングの少しだけスリムな手帳ですが、ウィークリーダイアリーも1年分入ります。

企画時は正方形ダイアリーとの使い分けを想定して、原稿やアイデアなど書き溜めたものを持ち歩くネタ帳のような使い方をイメージしていました。

実際の私のネタ帳はとても薄くて、アイデアを出さないといけない時はやはり頭を振り絞りますし、定期的に決まって書いている原稿も、依頼が来てから考え始めます。

だから本当はこんなネタ帳をアイデアいっぱいにして持っておけたらと思います。

静かに艶が出てゆっくり変化するオリジナルのオーガニックオイルドレザーは、硬すぎず、柔らかすぎないちょうどいい手触りですし、欠品することが多いシュランケンカーフの在庫も今はあります。

大和出版印刷さんがDICカラーデザイン社さんと協力して50色のカラーバリエーションを持つノートiiro(イーロ)を販売されていますが、そのiiroのシステム手帳リフィル版が新たに発売されました。

片面にテーマカラーのドット方眼が印刷されていて、反対面は無地ですが表のドット方眼が透けて見えます。

紙はクセがなく、万年筆でも滑らかに書ける金菱を使用しています。それぞれの色にストーリーがあって、その色のある風景が目に浮かぶようです。

自分仕様の手帳を考えた時、選択肢はバインダー金具を装備したシステム手帳ということになります。

システム手帳はどう使っていいか分からないという人もおられますが、最初は好きな罫線や色のリフィルを挟んで、普通のノートのように使い始めるといいと思います。

⇒Pen and message. オリジナルシステム手帳バイブル(TOPへ)

⇒Pen and message. オリジナルシステム手帳M6サイズ(TOPへ)

⇒iiro システム手帳リフィル・バイブルサイズ

⇒iiro システム手帳リフィル・M6サイズ

⇒iiro システム手帳リフィル・M5サイズ

オリジナル万年筆のペン先コンチネンタル クラシックインスピレーション1985

オリジナル万年筆「コンチネンタルクラシックインスピレーション1985」(以下コンチネンタル1985)は、軸とペン先ユニットは別々に入荷します。

14金のペン先ユニットはペン先、ペン芯などもバラバラの状態で、ペン先は当店の基準に合うように研ぎ直し、ペン先とペン芯が密着するように調整しています。

一日中ペン先調整をしている日もありますが、調整したペンに喜びのお言葉をいただくと嬉しくて励みになります。私が当店を始めたきっかけはこういう生活がしたかったからなので、とても幸せなことだと思っています。

最近金属アレルギーになってしまい、メガネをかけてマスクをして調整するようになりましたが、それくらい何とも思いません。

オリジナル14金ペン先は、イリジウムの大きさが4種類入ってきて、その形をそのまま生かしたり、極端に細くして国産のF程度に研ぎ出しています。

FはパイロットのFのように細く丸いペンポイントに仕上げて、どの角度で書いても細く書けるようにしています。

イリジュウムの下の絞り込みが寝かせて書いても細く書けるポイントですが、海外の研ぎはたいていコレがありません。

海外のものは標準としたもので、立てないと細く書くことができませんが、書き味は良くなります。

三角研ぎは書いていて文字に変化が出るのでとても面白く、書くことを楽しむためのペン先だと思っています。普通の研ぎと筆記感、筆跡が違うと思っているので、F以上の字幅に三角研ぎも設定しました。

特に親指側(右利きの人は左側)にペン先をひねって書くと細い筆ペンのような文字を書くことができます。

ペン先の鳳凰の図案は、日本的なモチーフにしたかったのと、個人的に万年筆で最も大切なパーツであるペン先には神が宿るということをずっと信じているので、それもモチーフで表現したかった。

神が宿ると言っても特定の神様のことを言っているわけではなく、書き味の良いペン先には、日本人的な感覚の神様がいると思えるくらい他の万年筆とは違った書き味を持っているということを象徴的に表したいと思いました。

軸はレジンを扱うメーカーで廃番になっていたものを、この万年筆のために再生産してもらい製品化することができました。

今回の万年筆を吸入式にすることもできましたが、吸入式にすると軸が太くなりキャップの尻軸への入りも悪くなるので、コンバーター式にしました。

更に軸が透明の方が内部のインクを確認することができるため実用性が高いと思いました。琥珀模様の軸は透明でありながら質感の高さも併せ持ったものだと思います。

たくさんの字幅、ペンポイントの仕上げの違いがありますが、さらにスタブ加工や極細への研ぎ出しなど、オーダーも承ることもできますので(ご購入時のオーダー調整は無料です)、何かございましたらぜひお申し付け下さい。

オリジナル万年筆 コンチネンタルクラシックインスピレーション1985