別注モデルへの想い KOP smoke(スモーク)

セーラー万年筆さんにお願いして製作していただきました、当店オリジナル仕様のKOP(King Of Pen)万年筆smoke(スモーク)を本日より発売いたします。

大きなペン先とオーソドックスなデザインで、KOP万年筆そのままでも良いペンだとともちろん思っていましたが、KOPやキングプロフィットの内部パーツのメタリックな感じがとても良いと思っていて、それをうっすらと見せられたら素敵だと思いました。

完全に透明も美しいけれど、このうっすらと見せる感じが、素材にセルロイドを使っていた戦前の万年筆の吸入機構が透けて見えていたのに似ていて、私がそうですがメカ好きな人の心をくすぐるのではないかと思いました。

大型のペン先は21金で、柔らかさを持ちながらもインク出は抑えられていて、使いやすい万年筆だと思っています。

このクラスにはモンブラン149やペリカンM1000という万年筆もありますが、書き味ではこのKOP smokeも味わい深さを持っていて、書くことが楽しくなると思います。

当店でペンスタンドやブロッターなどを作っていただいてる家具職人さんのブランドがsmoke furnitureで、同じ名前になっていますが、彼が作る木製品と同じようにマニアックなこだわりが感じられる、面白い存在の万年筆だと思っています。

⇒Pen and message.別注モデル KOP smoke

オーバーサイズへの誘い

Pen and message. 特別注文KOP smoke

私は手が大きい方ではありませんが、オーバーサイズのモンブンラン149とペリカンM1000は愛用の万年筆です。

私の場合もう一回り小さなレギュラーサイズの万年筆の方が合っているのでは、とよく言われますし、その方が選択肢もたくさんあります。

でも私はあまり美しさを気にして文字を書く方ではないので、レギュラーサイズの万年筆ならではの繊細なコントロールのしやすさはあまり必要ではなく、楽にペンを握ることができるオーバーサイズの方が合っているのかもしれないと思うこともあります。

小ぶりな手でオーバーサイズの万年筆を握ると手に余ると思われるかもしれませんが、私はそんなふうに感じたことはないし、オーバーサイズの万年筆を握った時の喜び、嬉しい気持ちは何年経っても変わらなくて、書くぞと思った時にはオーバーサイズの万年筆に手が伸びてしまいます。

他の万年筆よりも大きく太いオーバーサイズのインク吸入量は、意外にもレギュラーサイズの万年筆と変わりません。むしろそのサイズ感の印象から、あっという間にインクが無くなった気がするのはレギュラーサイズ以上です。

オーバーサイズでも内部インクタンクのサイズは同じということになり、無駄に大きいのかと思われるかもしれませんが、その分軸が肉厚だということになります。それは丈夫さにつながると思っていて、旅に持ち出して鞄の中に放り込んでおいても、安心して歩き回れると思っています。

だから私はオーバーサイズの万年筆は旅に携える万年筆でもあると思っています。

私が若い頃、オーバーサイズの万年筆はモンブラン149と発売されたばかりのペリカンM1000くらいでした。

モンブラン149はタフでハードなペン先で、プロの書き手がハードに使っても耐えてくれる強さを持っています。対してペリカンM1000は極端に柔らかいペン先を持っていて、その書き味を楽しむ趣味の万年筆、というふうに性格がはっきりと分かれていました。

今はそれぞれが少しずつ変化して、その違いは以前ほど大きくはありませんが、それでもペン先の硬さの違いはかなりあります。

モンブラン149、ペリカンM1000よりもかなり手頃な価格で手に入れることができるオーバーサイズ万年筆に、台湾のメーカーの「ペンラックス」があります。

軸色と柄のバリエーションがかなり多いので好みの軸が見つけられるし、インク吸入機構もしっかりとしているうえペン先にはドイツ製のステンレスのものが使われています。

149やM1000の他のオーバーサイズのバリエーションのひとつとして選ぶ価値はあると思いますし、ペンケースも華やかになります。

そんなオーバーサイズ万年筆市場に日本で最初に参入したのはセーラーのキングプロフィットです。キングプロフィットが登場したばかりの時、モンブラン149に似ていると皮肉られることもありましたが、その書き味は柔らかく、インク吸入機構もカートリッジ・コンバーター両用式で、吸入式しかなかった今までのオーバーサイズ万年筆とは一線を画していました。

今ではキングプロフィットは完全に定着していて、万年筆の定番のひとつになっています。

当店でキングプロフィットの両切りタイプKOP(KING OF PEN)の別注仕様をセーラー万年筆さんに作っていただきました。

1930年代~50年代のセルロイド製のオーバーサイズ万年筆のような雰囲気にしたいと思い、軸を半透明のグレーにしました。重厚な雰囲気のモデルに、少し軽やかさがあると思います。

セーラーKOPの別注モデルは6/27(金)11時からWEBショップと代官山出張販売で同時に発売開始いたします。

他のお店では買えないオーバーサイズ万年筆をお探しの方は、是非お求めください。

モンブラン149⇒

ペリカンM1000⇒

ペンラックス⇒

セーラーKOP当店別注モデル⇒

鞄職人が作り上げた理想の革〜デンマークソフトカーフのデブペンケース〜

40歳を前にして独立することについて考えていた時にル・ボナーの松本さんに出会いました。

松本さんに出会ってル・ボナーというお店を知って、何となく弾みがついたというか、背中を押された気持ちになって今の状況にありますので、すごく感謝しています。

松本さんとの出会いは奥深い革との出会いでもあり、革についても全て教えていただきました。それまでも革製品は仕事で扱っていたので、ある程度は知っているつもりでしたが、何も知らなかったと反省しました。

それほど「ル・ボナー」は様々な革が溢れている革のワンダーランドだったし、革への愛情がこもった蘊蓄をたくさん聞いてきました。

そんな松本さんを介した革との付き合いの中で、見て、触れて、嗅いで、お話を聞いて、デンマークソフトカーフもとてもいい革だと思っていました。

デンマークソフトカーフという革は実はル・ボナーさんでしか使っていない、ル・ボナーさんのオリジナル革です。

革の原皮は北部ヨーロッパのものが最も良いと言われていて、特にオランダのものは最高級と言われます。しかし、知名度が上がり価格が高騰し過ぎてしまいました。

そのオランダ産の原皮と変わらないクオリティがありながら、品質が安定していて、価格的には安いデンマーク産に松本さんは注目していました。そしてデンマーク原皮を使用したルボナーオリジナルの革デンマークカーフに続き、デンマークソフトカーフも作りました。

デンマーク産の原皮をウェットブルー(初期なめしだけした)の状態で輸入し、日本のタンナーで鞣したものがデンマークソフトカーフです。

高級ブランドが使用する知名度の高い革と変わらない、あるいはそれ以上の柔らかく滑らかな手触りとしなやかな強さも併せ持った、上質な質感のエレガントな革がデンマークソフトカーフです。

自分の腕と感性で有名ブランドの鞄と比較されるほどの鞄を作るル・ボナーの松本さんの反骨心が作り上げた革。

有名タンナーが作ったとか、有名ブランドが採用したという革ではないけれど、50年近い職歴のある鞄職人が理想の革を実現するためにオリジナルで作った革は、私には遥かに魅力的に思えます。

ル・ボナーさんでもデンマークソフトカーフで鞄以外のものは作ったことがないと言われて、注文する時少しドキドキしましたが、とても良いものが出来上がってとても嬉しく思いました。

適度なしなやかさ、キメの細かさがありながら、強靭さも併せ持っている上品な雰囲気のある革、デンマークソフトカーフのデブペンケース。

今までのデブペンケースとはまた違った、ル・ボナーさんのロマンも感じられるものができました。

デブペンケースデンマークソフトカーフキャメル⇒

デブペンケースデンマークカーフネイビー⇒

デブペンケースデンマークカーフマルーン⇒

ブペケースデンマークカーフアントラジス⇒

デッドストックのカヴェコエボナイトシリーズ

もう一年前になりますが、ル・ボナーの松本さん、590&Co.の谷本さんとドイツを旅した思い出は人生の宝物になりました。

拠点であるニュルンベルグから、他の予定があった谷本さんと別行動して訪れた美しい街ハイデルベルグの小旅行も楽しい思い出です。松本さんが手配してくれたホテルの大きなバルコニーのある部屋で、ハイデルベルグの夕方の陽の移ろいを感じながら長い時間話しました。

その時に松本さんにアイデアスケッチを見せながら構想を話したオリジナル万年筆も、やっと形になって販売を始めています。

金ペン先と同時にスチールペン先モデルを作ることは、数量的に当店にとってかなりの冒険だったけれど、軒並み価格が上がった現在の万年筆の状況にあっては、本当に作っておいて良かったと思っています。

同じドイツの旅でカヴェコ本社を訪ねました。

社長が自ら案内して下さって、カヴェコのペンについてたくさんお話を伺いました。カヴェコに対して良いイメージを持ってドイツから帰ってきました。

最初にカヴェコ本社で見せていただいて590&Co.さんとともに販売を始めたのが、デッドストックのエボナイト製のローラーボールでした。

日本のオートの水性ボールペン芯に合わせて作られていて、とても使いやすいものです。1本1本削り出しによって成形される大量生産には向かないエボナイトという素材の持つ魅力と、製作されたのが1980年というビンテージ感もあって、何とも味わいがあります。

ローラーボールの後、1.18mmのペンシルもラインナップに加わりましたが、同シリーズの万年筆があることが分かりました。

エボナイト万年筆はローラーボールと共通のボディで、キャップを閉じた状態では万年筆とローラーボールの見分けがつかないほどです。

インク供給はカートリッジ/コンバーター両用式です。カートリッジはペリカンなどのヨーロッパ規格のショートタイプ、コンバーターはカヴェコ用のミニコンバーターが適合します。スチールペン先ですが、柔らかい書き味で驚きました。

ペン先、ペン芯などのパーツは、ドイツのリフォーム社というOEMを専門にしていたドイツのメーカーのものですが、2003年に倒産しています。この会社で使われていた機材は他所の国の会社に渡ってしまったそうで、同じ刻印のあるペン先を見ることもありますが、書き味は違うのかもしれません。

エボナイトの軸もデットストックですが、その書き味の良いペン先、ペン芯のユニットももう作ることのできないとても貴重なものです。万年筆は他に比べて数が少ないため、ぜひ早めにお求め下さい。

⇒カヴェコエボナイト万年筆

⇒カヴェコエボナイトローラーボール

⇒カヴェコエボナイトペンシル