メモ帳として使う~オーガニックオイルドレザーの刑事(デカ)手帳

神戸にずっと住んでいると、若い頃と比べて本当に夏が暑くなったと思いますが、きっと日本各地の人が同じことを感じていると思います。

でも、もともと暑かった九州地方、近年最高気温を記録する埼玉県や岐阜県の人から見ると神戸はまだまだ涼しいと言われそうです。

たった30年、40年でこんなにも気候が急激に変動するものなのか。こういうものは数万年単位でゆっくりと変わっていくもののはずですが、それだけ地球内の自然環境が激動しているようです。

暑くなって上着を着ない期間が長くなって、1年の半分以上はシャツ1枚で過ごすようになるのではないかと思っています。

普段から、シャツはなるべく胸ポケットがついたものを選びます。胸ポケットがあることで、ペンを差しておくことができるからです。

でもペンと一緒にメモ帳があればもっと便利なのにと思って、刑事手帳を作りました。

胸ポケットに何か入れるということを、若い人たちはあまりしないのかもしれませんが、昭和の人たちがタバコをそこに入れていたように、刑事手帳なら手帳とペンを入れておくことができます。

小さくて薄い刑事手帳は、季節によって変化する服装にも対応しているステーショナリーです。なるべく薄くなるようにペンホルダーやベルトは付けず、手に持ったまま書きやすいように硬めの表紙にしています。

胸ポケットに入れておくのは薄いメモ帳でもいいけれど、バインダー式のシステム手帳の方が用紙の自由度が高く、一週間の終わりなど、区切りをつけて入れ替えることができます。そしてなるべくかさ張らないようリング径を細くしました。

当店オリジナルのM5リフィルは、よく切れる刃物で紙を切る時のような手応えがありながら滑らかな書き味とインクの収まりの良い名紙、Liscio-1紙に4mm方眼罫を印刷した、シンプルですがこだわり抜いたリフィルです。

紙面が小さいので書く文字は自然と小さくなりますので、4mmという方眼の大きさは絶妙で、使いやすいと思います。

この刑事手帳の今回のロットは、当店のオリジナル革製品の多くを作って下さっているレンマさんが、兵庫県内のタンナーさんに依頼して特別に作っていただいているオーガニックオイルドレザーを使用しています。

その名の通り、タンニンなめしでオイル分を多く含ませることを意識してなめされた革です。使い込んでいくと自然の艶がゆっくりと出てくるとのことです。

美しい艶が出た状態を私もまだ見ていなくて、早々に手に入れて使い始めているレザーペンケースや正方形ダイアリーカバーを使いながら育てている最中です。

手触りはブッテーロより柔らかく、タンニンなめしの革らしいとても良い香りがします。乾いた布や革用ブラシでたまに磨いていただくと、より早く育ってくれると思います。それは急激に変わるものではなく、静かにゆっくりと時間をかけて育てていく楽しみのある革で、そういうところも当店のお客様に合っていると思います。

オーガニックオイルドレザーは刑事手帳の他に1本用ペンシースのレザーケースL、バイブルシステム手帳正方形ダイアリーカバーで作っていただいています。

話をメモ帳に戻すとメモ帳はいつも身に付けておいて、必ずそこに書くようにしたい。いろんなところに書くとメモがどこにいったか分からなくなってしまいます。

メモはどこかに転記したり、パソコンに入力したりすると思いますが、自分が書いたメモも決まった手帳を探す方が見つけやすい。仕事の中では、過去に書いたものを見返すことは意外と多いと思います。

⇒刑事(デカ)手帳オーガニックオイルドレザー

綴り屋万年筆とオリジナルペン先

先週、590&Co.さんのイベントスペースで綴り屋作品即売会を開催しました。

昨年まで、万年筆をお買い上げいただきましたお客様には、当店まで移動していただいてペン先調整をしていました。

でもいくら近いとはいえ不便だし、この暑さは大変だと思い、590&Co.さんに私も同席して万年筆のペン先調整をさせていただきました。

私が調整テーブルを構えていることで会場が狭くなってしまったので、どちらがお客様にとってよかったのか分からないけれど、私は小ぢんまりとしてそれぞれの話が聞こえる、一体感のあるいいイベントだったと思いました。

考えてみると日常的に出入りしているのに、590&Co.さんで調整などの仕事をしたことがありませんでした。でも初めての試みとは思えないくらい自然に、もともとの居場所のようにいることができました。

アーチザンショートなどのスモールサイズの万年筆以外の、アーチザンや静謐(せいひつ)、漆黒の森などは当店オリジナル14金ペン先をセットして販売しています。

オリジナル14金ペン先で今ご要望が多いのは「上弦の三角研ぎ」です。

これは今までの「三角研ぎ」の角を落として、筆記面も滑らかな弧を描くように仕上げたペン先です。

三角研ぎは筆記角度によって線の太さの差が大きく、メリハリが出てとても実用性の高いものですが、上弦の三角研ぎは角度やペン先の向きを気にせずに滑らかな書き味が得られるという特長があります。

その形状通りの滑らかな書き味が得られるペンポイントの研ぎだということが、お客様の感想をお聞きして改めて確認できました。

今回は、イベントに合わせて新たに14金ペン先が入荷しましたので、未研磨のイリジュウムの玉がついた、ペンポイントが大きなペン先もご用意できました。

真ん丸の大きな玉がついていますので、どんなふうにでもできますし、使っているペンに大きなイリジュウムがついているのを見るのも嬉しいものです。

初期状態の真ん丸のイリジュウムのまま(実際は引っかかりが出ないように面取りのようなことはしています)しばらく使ってから、三角研ぎや研ぎ出しなどの何らかの研ぎを依頼されてもいいと思います。当店でお買い上げいただきました万年筆で、1万円以上の新品の万年筆は1年間再調整無料の調整保証書をおつけしていますので、何らかの研ぎをお申し付けいただいても1年以内でしたら料金はかかりません。

そして綴り屋さんのイベント後に仕入れたものが少しあります。

アーチザンコレクションと静謐です。静謐は綴り屋さんを代表する存在のペンで、完成度の高さを感じます。

アーチザンコレクションブライヤーは、ブライヤーの皮の部分を残した仕様で、よく考えつかれたと思います。野生味がありながら、静謐のような造り込みも感じられる、とても独創的な万年筆です。

イベントにはまだ決まった形というものが見つかっていないけれど、お客様に楽しんでいただけるものにしたいと思っています。

⇒綴り屋万年筆TOP

オリジナルペン先の研ぎについて

ペン先の研ぎ〜オリジナル三角研ぎ、上弦の三角研ぎ〜

7/12(土)、13(日)、590&Co.さんイベントスペースで綴り屋作品即売会を開催いたします。今回の即売会のために製作された新作も並びます。

私も会場に常駐し、綴り屋万年筆をお買い上げの方のペン先調整を承れるようにいたします。ぜひご来店下さい。

綴り屋万年筆の静謐(せいひつ)、漆黒の森、アーチザンコレクション(ロング)に、今回のイベントから当店オリジナルの14金ペン先をつけています。これは万年筆コンチネンタルクラシックインスピレーション1985のゴールドニブと同じものです。

オリジナルのペン先は最初かなり大きめのペンポイントがついていますので、それを研ぎ出して万年筆につけています。ペンポイントの大きさ、長さに余裕がありますので、「上弦の三角研ぎ」ができるようになりました。

この研ぎをご説明するためには「三角研ぎ」から説明しなくてはいけません。

万年筆のペンポイントの研ぎによって、文字の形や雰囲気は変わってくると思っています。主観になりますが、ペリカンの万年筆で書いた文字が温かく見えるのは、ペリカンのペンポイントの形状が丸く研がれていてインク出が多めだからで、それがペリカンの特長とも言えます。

パイロットも丸い研ぎですが、字幅によるメリハリがちゃんとあって、細めの字幅ではインク出も抑制されています。

プラチナは中字以上だと丸みのある四角い研ぎになっていて、それが紙への接地面積を稼いでいてまろやかな書き味を得られるようになっています。書く文字にもその感じは表れます。

メーカーそれぞれペンポイントの研ぎの形があって、それが書き味を違える要因のひとつにもなっていますし、縦書き向きか横書きに合っているかなどの使用感も左右するものだと思います。

その研ぎへの執着によってできたのが当店の三角研ぎです。

三角研ぎは大きさが限られたペンポイントで最大限太い、細いの差が出せることを追究した研ぎの形です。

寝かせて書くと筆記面が紙にピタリと接地するので太く、立てて書くと三角形の頂点で書くので細く書ける。

そしてその研ぎの形から書ける文字にキレが出て、ペン先を親指側にひねって書くなど書き方によっては筆ペンで書いたような文字を書くことができます。

オリジナルのペン先ではペンポイントが大きいため、それほど極端に筆記面を作らなくても太い線が書けるので、筆記面をなだらかな孤を描くような放物線としました。

それにより太さの変化がなだらかで、使用感がマイルドになりました。

三角研ぎでは面を合わせて書くとヌルヌルとした滑らかな書き味が得られましたが、上弦の三角研ぎでは面を気にせずとも滑らかな書き味が得られるようです。

オリジナルペン先ほど大きなペンポイントを持たないペン先にも上弦の三角研ぎは可能です。太い線はあまり書くことができませんが、キレのある文字は書けます。

ルーペでみた景色は、三角研ぎは鋭角的でとても斬新な形状になります。上弦の三角研ぎは古典的な長刀研ぎに近い形状になります。

三角研ぎも上弦の三角研ぎも日本の職人さんたちが古くからやっていたペン先の研ぎ方とそれほど違わず、漢字や平仮名を美しく書けるようにしたいと思うとこれらの形に近付いていくのかもしれません。

ペンポイントの研ぎをルーペで見ることは若い頃から好きでやっていましたが、それは今でも変わらず、毎日様々なペン先を見ています。

~変わらない存在~             ル・ボナーデブペンケースプエブロも販売開始

7月12日(土)13日(日)綴り屋さんの作品即売会を、590&Co.さんのイベントスペースで開催いたします。両日15時以降はご予約なしでもご入場可能です。

⇒ご来場ご予約承っております。

イベントスペースには当店の調整士もおりますので、綴り屋万年筆をお買い上げのお客様には、その場でペン先調整をさせていただきます。

綴り屋さんの作品即売会の会場である590&Co.さんのオーダーによるプエブロ革と、以前は当店のオーダーで製作していただいたこともある、エレファントのデブペンケースが出来上がりました。

エレファントはその独特の革目や質感を楽しめる大変丈夫な革です。かなり使い込むとフカフカの表面がツルツルに変化していきます。

プエブロは、同じタンナーバタラッシィカルロ社によるミネルヴァリスシオやミネルヴァボックスと同じようにエージングに特長のある革で、しばらく使ううちにいい艶が出てきます。ご自分でブラシや布で磨いていただくと、より早く艶が出てきます。

それは今回当店のオーダーによって作っていただいたデブペンケース、デンマークソフトカーフと対照的です。

デンマークソフトカーフは静かにゆっくりとエージングする革で、何年か使っていただくと上品な味のある良い風合いに育ちます。

どういったタイプの革を選ぶかは別として、デブペンケースは文房具類を収めて持ち運ぶものとしての大容量さという実用性と良質な革を職人の技で仕立てるというプレミアム感を両立したものとして、ペンケースのスタンダード的存在です。

私は普段持ち歩く鞄は中身がギュウギュウなので、少しでも荷物を減らしたいと思っています。万年筆も専用のペンケースではなく、他の筆記具や文房具と一緒にデブペンケースにガサッと入れています。

しかし、そのまま入れると他のものと当たって傷がついてしまいますので、149ならオリジナルレザーケースMに、M1000やオリジナルコンチネンタルならレザーケースLにと、オーバーサイズのペンを入れてからデブペンケースに入れるようにしています。

そういう持ち運び方なので、オーバーサイズの万年筆の方が軸が肉厚で丈夫なので、持っていても安心感があります。

先週発売開始しましたセーラー万年筆さんに別注して製作していただいたKOPsmoke もオーバーサイズなので、同様に安心して持ち運ぶことができます。

先月、590&Co.さん、フランベルグさんとの別会場での共同出張販売で東京に行ってきました。

出張販売の時は調整機をカートに載せて引いていて、リュックに自分の荷物を詰め込んでいますので、余分なものを持ち運ぶ余裕がありません。

やはりデブペンケースに文房具とオーバーサイズの万年筆を入れて持ち運ぶことになります。

話は変わりますが、代官山の出張の時、新幹線で品川まで行き、山手線で恵比寿まで行っていました。

ギュウギュウの山手線に大きなリュックを背負ってカートを引いて乗り込むのはとても気が引けましたが乗らないと仕方ない。恵比寿についてからも長い坂道を歩いて登り続けて、やっと会場のギャラリーに着きます。

お客様から新横浜から東横線につながる線ができたので、その方が楽かもしれませんよと教えていただき、その通りに今回は来てみました。

時間はほぼ同じですが、電車の込み具合がマシなのと、歩く距離が断然短いし、平らな道なので全く疲れませんでした。

首都圏は行くたびに街が変化し続けていることを感じます。神戸の街はほとんど変わらないけれど、帰るとホッとします。どちらが良いのか分からないけれど、きっと繁栄を続けるには、時代に適応して変化しなければいけないということなのかもしれません。

店のあり方、仕事の仕方、モノについても変わらないものを探し続けて今までやってきました。それが本物だと思ったからですが、今まで見たものではどんなことでも通用する期限はどうしてもあるということでした。

デブペンケースは変わらずにずっと作り続けられていても、変わらずに売れ続けている稀有な存在のモノだと思います。

⇒デブペンケースプエブロ、デンマークソフトカーフ

KOP万年筆smoke